研究テーマ

調査研究
1.イノベーション関係
   日本は、明治維新による近代国家の建設と第二次世界大戦後の戦後改革により民主化と経済発展を実現し、一時は世界経済でトップクラスの地位を占めました。その後、日本はバブル経済が崩壊し、1991年から「失われた20年」といわれる景気後退に陥り、経済的優位性を失うなど、かつて日本経済を支えた様々なシステムが壁に突き当たっています。また、企業経営に積極性が欠け、収益力は国際的に劣位になり、政策の消極性も加わって、技術開発力も停滞を続けています。
 2015年末以来アベノミクス新三本の矢が提案されていますが、少子高齢化の急速な進行、医療制度改革の遅れ、社会制度のきしみ、教育レベルの劣化、地方の衰退など、社会や人間に関するさまざまな問題が明らかになってきています。これらについて解決の道筋を提示することは、日本にとって、より明るい未来を切り開くために有益であるとともに、将来同様の状況が発生するであろう世界諸国に対して貴重な情報発信となると考えられます。
 当研究所では2012年9月以来、「地球産業文化懇談会」を設置し、地球的な課題の解決に取り組んできました。その一環として2014年6月から、今日の日本にとって最も重要なイノベーション問題を取り上げ、有識者や政府関係者を招いて9回の会合を開いて活発な検討を進めてきました。
 その結果、イノベーションの対象を、従来から関心が向けられてきた「経済(企業)分野」のみならず、「社会(人間)分野」、更には「国際(地球)分野」に拡げることにして、3つの分野のイノベーションを一体的に展開していくことが、不可欠であるとの結論に達し、2016年3月に「インベーション立国論」を発表しました。
 今後については、この提言を活用して発展させさらに深耕すべく、新機軸で議論を進めていく予定であります。

2.排出クレジットに関する会計・税務関係
   1997年にCOP3が京都で開催され、温室効果ガス排出量の数値目標等を定めた京都議定書が採択されました。京都議定書では、各国の数値目標を達成するために市場原理を活用する京都メカニズム(共同実施:JI、クリーン開発メカニズム:CDM、排出量取引:ET)が導入されました。
 当研究所は2000年度から京都メカニズムの会計・税務問題について調査研究を進め、さらに、2008~10年度は国内排出クレジットに関する会計・税務問題について、幅広い調査研究を実施しました。その後、COP17(南アフリカ・ダーバン)以降の京都議定書の取扱い、将来枠組みなどのテーマについて、その現状を整理するとともに会計・税務の課題を整理し議論を行い、事業者における排出クレジットの会計・税務取扱い等について先駆的に論点を抽出・整理しました。
 さらに2015年、パリ協定が合意されたことを受けて、蓄積してきた知見をベースにこれまでの議論を踏まえ会計・税務の観点を中心としながら、JCM(二国間クレジット)、キャップアンドトレード、炭素税、その他について調査研究を行いました。今後、我が国産業界、さらには地球温暖化対策の推進に資することを目指してさらに議論を進めていく予定であります。

3.地球環境関係
   2014年にとりまとめられた「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書」では、「人間の影響が20世紀半ば以降に観測された温暖化の支配的な要因であった可能性が極めて高く」、「気候変動を抑制するには、温室効果ガス排出量の抜本的かつ持続的な削減が必要である」とされました。
 このような問題意識が世界で共有されたこともあって、2015年11月、パリで開催された第21回気候変動枠組条約締約国会議 (COP21)では、先進国のみに温室効果ガス削減の法的拘束力を課していた京都議定書と異なり、先進国・途上国ともに対象とした新たな2020年以降の国際的枠組みであるパリ協定が採択されました。
 画期的な国際合意となったパリ協定を受けて、気候変動問題は大きな転換期を迎えていますが、従来から本研究所では、COPを中心とする地球環境問題に係る世界大での動向を発信してきました。その一環として、国内外の第一線の研究者等による最新の研究成果や知見を幅広く共有するべくCOP開催時に並行して行われるサイドイベントを関係機関と共催で実施する、またCOPでの現地での交渉の経過や成果などを関係省庁、経済界およびシンクタンクの専門家が報告し、意見交換等を行う場としてCOPシンポジウムを開催するといった活動を続けてきました。今後は、国際社会および各国がいかに実効的な気候変動対策を策定し、実践していくかに議論の焦点は移っていきます。本研究所では引続き、その動向等をタイムリーに情報発信していきます。
 気候変動対策は経済成長と両立させながら推進していくことが重要です。また中長期的な温室効果ガスの大幅削減を実現するためにはイノベーションが不可欠といえます。本研究所では、今後ともこれらの点を踏まえつつ、地球環境問題についての調査・研究を進めていきます。

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