1997年5号

最近のエネルギーと環境の動向

  12月のCOP3に向けて、政府間の交渉が活発化し、一方NGOの活動も国際的な連携を強めながら、それぞれの独自性を発揮すべく、多角的な活動を行っている。4月1日の持続可能な開発のための日本評議会の評議員会で、ヨーロッパの気候変動に係るNGO活動の中核となって活躍しているClimate Netork EuropeのDelia Villagrasa女史から、EUのエネルギーと環境に関する政策についての説明があったので、これについて(社)日本化学工業協会 ブラッセル事務所の坂本氏からの情報も合わせてご紹介し、さらに3月にインドネシアで入手した同国のエネルギーと環境に関する調査報告について、要点をお示しする。

 まず、EUにおいては、CO排出抑制の観点から、1992年度提案とは質が異なる?化石燃料に対する既存の課税を強化する。方針を打ち出し、これについて、欧州議会、閣僚評議会で議論されている。また、?輸送に伴うCO排出対策として、自動車走行100kmについて、燃料消費量 を5リットル削減を目指す。さらに、?需要サイドでのエネルギー利用を効率化するため、家電製品のエネルギー使用原単位 を向上させる。ことについても、検討が続けられている。 現在?については、自動車業界との議論が行われており、また?については、現在、白物家電を、AからEまで、効率の善し悪しによってラベリングしており、加えて、冷蔵庫について、「一定の消費電力を満たさなければ売ってはならない。」という強制規則が執行されているものを、後者の規制の対象を拡大する具体策を提案しているところである。

 これらによる効果を、Delia女史はこう説明している。「EUおよびスイス、北欧を含めて、年間のエネルギー消費の伸び率を5.4~5.6%にとどめ、かつ再生可能エネルギーを2010年までに12%のシェアに引き上げるとの大胆な方針が打出された。これについて、エネルギー担当閣僚会議で議論される予定である。」と。

 これと裏腹の関係にあるEUでのCO排出については、1990年の基準年次に対して、2010年で減少を目標としている国が7、増加が5で、据え置きが2のバランスになっており、全体でひとかたまり(バブル)として扱うことを主張している。

 これまで、OECDヨーロッパ諸国におけるCO排出量 予測は、IPCCに報告された次の数値が基本とされてきたが、上記の省エネと域内排出権取引の実行によって、目標達成を図ることを明らかにしたと解せられる。

 デンマークでは、需要サイドのエネルギー使用抑制や、石炭利用工場の閉鎖、ソフトなCO税の導入等により、CO排出を2010年に1990年レベルより15%削減する方針を打出している。

 次に、インドネシアのエネルギーとCO排出予測について入手した報告は、1995年7月に出され、技術評価応用庁 ( BPPT ) がドイツ技術協力庁との共同作業によるものである。これによれば、2021年のエネルギー消費とCO排出をベースケースと3つの強度での対策導入ベース(ケース1から3)で予測している。概要は次のようである。

 ベースケースは、石油と石炭の価格が1995年以降緩やかに下降する(2021年の石油価格は1995年の72%)との前提で、2021年までのエネルギー需要とCO排出総量 (11億2,100万トン)を求めている(図1)。 これに対し、リオ・サミットでのUNEP(国連環境計画)の勧告削減レベル(ケース1が25%、ケース2が50%、ケース3が75%)における、対策とそのコストを試算している。この削減ケースでは、反射的に石油、石炭価格が、ベースケースの約2倍低下する(2021年の石油価格は1995年の45%)。

 このための技術として、2021年までに対策をもっとも大きく取った場合を、石炭噴流床燃焼を6ギガワット、石炭統合ガス化コンバインドサイクルを5ギガワット、燃料電池を3ギガワット設置することとした。

 これをもとに、2021年までの対策費の集積値をケース1と2について試算した。この時点でのCO排出量 が8億4,000万トンであるケース1では、1,570億ドル(CODン当たり平均56ドル、限界値で56ドル)で、また、CO排出量 が7億8,400万トンであるスケース2では1,912億ドル(CODン当たり平均57ドル、限界値で61ドル)である。

 これはあくまでも、インドネシアのある仮定での予測にすぎないが、アセアンの他の国について予測する場合の参考になりうる。

 IEA(国際エネルギー機関)は、東アジアについて、エネルギー節約を図った場合におけるそして一次エネルギー、電力需要等とCO排出量 の予測をしている(表2)。

 これにおいては、この地域の2010年時点でのCO排出は23億6,500万トンであり、1990年に比べ151%とみている。

 いずれにしても、この東アジアにおいて成長を前提としつつCO排出をどう抑えるかが、最も注目されているところであり、この課題の解決の方策が、全世界の持続可能な発展への道筋を開くことになるといえよう。

▲先頭へ