1999年6号

第2回アジア・太平洋地域クリーナープロダクション (CP)ラウンドテーブル


 標記の会議が、4月21日(水)~23日(金)に、オーストラリア・ブリスベン市のConvention & Exhibition Centreで開催されたので、概要について下記の通り報告する。


1.会議開催の経緯

 CPラウンドテーブルは、世界の産業界、政策決定者、コンサルタント、研究者がそれぞれのCPに関する知識、経験に基づいて、問題点の整理と解決策を提示し、それらについて参加者全員で共有化することを目的としている。CPの導入により、産業界におけるエネルギー、水、資源の使用量 削減、廃棄物発生の減少と汚染の発生防止を図り、生産性と同時に国際競争力の向上をも目指すものである。
 第1回目のCPラウンドテーブルは、1997年11月にタイ・バンコクでタイ政府主催により開催され、アジア・太平洋地域から日本を含めて26カ国250名が参加した。第2回目となる今回のCPラウンドテーブルは、UNEP(国連環境計画)、USEPA(米環境保護局)、アジア開発銀行、アジア生産性機構(APO)、オーストラリア・クイーンズランド州環境保護局、BP Amoco他地元6社の民間団体の後援により開催された。参加者を国籍別に見ると、地元オーストラリアをはじめ、日本、米国、中国、台湾、香港、韓国、アセアン諸国等20カ国以上から約350名が参加した(名簿登録ベースでは535名)。

2.会議の主な内容

2.1 全体会合

  • カイゼン(改善)研究所の今井所長が、“カイゼン手法”によるCPの進め方と現場管理の重要性を、日立製作所国際環境保全センター横山部長が、環境達成評価とより良いグリーン化技術の確立がCP推進のカギと説明した。
  • アジア開発銀行と米国・アジア環境パートナーシップ(USAEP)が、それぞれのアジア地域途上国でのCP活動への支援を、オーストラリア産業界を代表して、フォード・オーストラリア、BPオーストラリア等が自社におけるCPへの取り組み事例についてそれぞれ発表を行った。

2.2 分科会

  • アジア・太平洋地域における国際的なCPの経験について、オーストラリア、ニュージーランド、台湾、インドネシア、スリランカ、パキスタン等の諸国を代表して、それぞれの専門家が、各国の工場でのCP実施状況、廃棄物削減に向けたリサイクルの取り組み等について発表を行った。
  • 日本よりは、“Export to Japan”をテーマとして、日本の環境技術市場へアプローチするアクセスの手段として、見本市(Environment Japan '99, 10/20-23於:インテックス大阪)について、JETROシドニー駐在員による説明会が行われた。

3.まとめ

  • 各国代表者の発表を通じて、企業組織内でのCPへの取り組み度合いや意識に差があり、トップマネジメントを巻き込んだCP推進活動や、従業員スタッフに対するCPに関する教育トレーニングを通 じたキャパシティビルディングの必要性が認識された。
  • CPを各産業および各企業へ着実に普及させていくためには、各国毎にその中核となる「CP促進センター」を設立するべきである。また、CPを確実に実行し、その成果 を検証するためには、各企業によるISO14000の取得が不可欠となろう。
  • アジアの途上国では、次第にEnd-of-pipe(末端処理)のみから工場全体でCPを導入する動きが見られ、産業界のみならずサービスセクターへもCPの考え方が広がりつつある。産業廃棄物を別 の産業分野での資源として再利用することや、オーストラリアや台湾など先進、中進国では、一歩進んで製品ライフサイクル(LCA)や環境に配慮した製品設計(Eco-design)も行われるようになってきている。
  • 最後にCPを着実に実行するための3つのキーワードが提示された。すなわち、――Economically viable, Environmentally sound and Socially responsible、である。

4.今後の活動と次回開催予定

 今後、CPラウンドテーブルを定期的に開催するための「常設事務局」を設置し、法人・個人会員を募集し、会報誌等を通 じて、CP関連情報を産・官・学で共有化することを計画している。次回第3回目のラウンドテーブルは、来年度中にフィリピン・マニラ市で開催される予定である。

(伊藤 裕之)

 

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