2002年3号

GLOBE2002(地球温暖化関連)出席報告

平成14年3月13日~15日、カナダのVancouver Convention & Exhibition CenterにおいてGLOBE2002が開催された。GLOBEは、1990年にカナダ政府、企業、研究所など「環境(地球温暖化)とビジネス」に関わる組織の下に設立された団体であり、2年に一度の割合で大規模な会議+展示会を開催している。GLOBE2002は、”Corporate Sustainability” ”Environment and Energy” ”International Opportunities” と大きく3つのテーマを取り上げており、ここでは、”Environment and Energy”の中の”Climate Change”のセッションから、CDM、排出量取引を中心に、議事概要の報告を行う。


1.Opening Plenary

(1) Maurice Strong (Canada), Earth Council
地球規模の問題を解決するには、抜本的な改革(fundamental change)が必要である。
南アフリカで開催されるWSSDに向けて、もう一度勢いをつけなければ(regenerate momentum)ならない。
カナダは京都議定書を批准して、温暖化問題解決のリーダーとなるべきである。

(2)David Anderson (Canada), Minister of Environment
持続可能な発展に向けて前に進まなければならないが、大気、水、森林、気候変動といった環境問題に対応しなければならない。また、経済的便益(benefit)も重要である。
京都議定書の批准については、推進派、慎重派と双方の意見があるが、近々結論を出す予定である。
国内排出量取引は重要である。


2.Track3 Climate Change:
  Global Strategies for Adaptation and Mitigationの概要

Session 1(気候変動一般)
(1)Gwen Andrews (Australia), Australian Greenhouse Office
”Climate Change _The International Situation”
京都議定書の批准については、EU、日本、NZが批准の方向、ロシア、カナダ、オーストラリアが検討中である。
今後の課題としては、米国、途上国の参加問題がある。
また、気候変動に関する科学的知見の信頼度を高める必要がある。

(2) Michael Jefferson (UK), GEEL
”Rhetoric, Reality and Requirement”
条約4.7条には、途上国への支援が明確に書かれている。
1980年代には世界のGHG排出は5.4Gt-Cであったものが、1990年代には6.3Gt-Cに増加した。
今後は、50年といった長いタイムスケールで検討する必要がある。

Session 7 (CDM関連)
(1) Charles Cormier (USA), World Bank
”The Prototype Carbonfund: Pioneering the Global Market for Greenhouse Gas Emissions Reductions”
PCFの目的は、(1)プロジェクトリスクの最小化、(2)取引費用の削減、(3)経験の蓄積である。
現在の事例としては、ラトビア:Landfill GAS、ウガンダ:水力(5.1MW、1.5MW)、チリ:水力(25MW)、ブラジル:Planterなどがある。(コスタリカ:水力、ルーマニア:熱供給改善などが続いている。)
最終的な地域比率は、東ヨーロッパ:35%、ラテンアメリカ:25%、南、中央、東アジア:各10%、アフリカ:10%を目指している。
認証(Validation)には、4ヶ月、30,000ドルのコストがかかる。
プロジェクトコストは、$3/t-CO2といったところである。(効率改善:2.0~3.0、風力:0.9~1.3、水力:1.2~2.6)

(2) Paulo Manso (Costarica),
”Early Action and Clean Development Mechanism: A New Partnership for Sustainable Development”
コスタリカの持続可能な発展のキーは、政治的・環境的安定(political, environmental stability)、っ社会的公平性(social equity)である。
2000~2010年において、1000MWの電力施設が必要となる。(水力資源は豊富である。)
CDMの推進には、政治的サポートが重要である。

(3) Rick Weidel (Canada), Shell Canada
”Experience Developing a CDM for China”
シェルの自主削減目標では、CO2排出量を1997年の4.8mil-tから、2010年には1.75mil-tまで削減することとしている。
中国では、肥料プラントプロジェクトを行い、年間150kt-CO2の削減となった。

Session 8 (排出量取引関連)
(1) Allan Amey (Canada), Climate Change Central
”Carbon Trading Options for Canada”
現在の疑問点としては、「本当にみんながwinnerとなるのか?」「確実な商品は出てくるのか?(ロシアのホットエア)」「制度ができるのにどれ位の時間がかかるのか?」といったところがある。
カナダは2010年に120milt削減する必要があり、削減コストを$10Cdn/CO2とすると、総コストは$1.2bilとなる。

(2) Corinne Boone (Canada), CO2e.com
”Emerging Issues and Opportunities in the Green House Gas Trading Market”
CO2e.comは、炭素貿易(carbon commerce)の世界的仲介役(global hub)を目指している。
検証は、CH2Mhill、PricewaterhouseCooperが行っている。
現状では、企業の自主的取引、国内取引が行われている。
現在の価格は$1~2CaD、2008~2012には$4~7USとなると見込んでいる。

(3) Neil Cohn (USA), Natsource
”North American Update: Exploring Potential Links to the Global Carbon Market”
現在で年間76件、85milt-CO2の取引が行われている。(価格は、$1~3US)
京都議定書は批准されると予想している。
米国は、取引可能なクレジットを発行し、やがて第2コミットメント期間には枠組みに戻るであろう。


3.Closing Plenary

英国プレスコット副首相

”Gearing up for the Johannesburg Earth Summit”

(1)John Prescott (UK), Deputy Prime Minister

・9/11のテロを受けて、今回のヨハネスブルグサミットは新たな国際化(globalization)に向けた大きな転機となるであろう。

・貧困は大きな課題であり、すべての人の便益を考慮する必要がある。(途上国の子供たちは恵まれておらず、深刻な問題である。)


4.見本市

会議と併設して、北米(主にカナダ)の政府関係、企業などがブース(総数:200~300)を設置。内容は、環境問題関連技術が主流で、温暖化対策だけでなく、ローカルな環境問題(水、廃棄物etc)も目立った。温暖化関連については、風力、燃料電池といったハードものが多く、CER(ベースライン)の認証ビジネスは、ISO認証ビジネスのブースで若干触れている程度であった。

(文責:定森一郎)

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