2004年1号

国連気候変動枠組条約 第9回締約国会議(COP9)の概要


2003年12月1日から12日までイタリアのミラノで、国連気候変動枠組条約第9回締約国会議(COP9)が開催された。併せて締約国会議の補助機関であるSBI(実施のための補助機関)とSBSTA(科学上及び技術上の助言のための補助機関)の第19回会合も行われた。各国政府代表団、研究者、産業界、環境NGO等、世界167カ国から約4600名が参加した。会場はミラノ中心部の北西、フィエラ・ミラノ国際見本市会場である。晴れた朝には市内からも北に白く輝くスイスアルプスが遠望された。



【総括】

COP9での我々の主な注目点は、
京都メカニズムに関する主なルールのうち、唯一まだ決まっていない吸収源CDMの定義やルールの決定
正確なGHGの国別報告書(インベントリ)を作る上で必要となる「土地利用・土地利用変化、及び森林に関するグッドプラクティスガイダンス」(LULUCF GPG)の受諾
UNFCCCでのIPCC第三次報告書(TAR)の利用方法の検討
特別気候変動基金等途上国支援に関する事項の検討
カナダやブラジルによる独自の提案の扱い
(カナダ:クリーンエネルギー輸出)(ブラジル:歴史的累積排出量の削減目標への反映)
ロシアの動向
閣僚級会合の内容
COPでの交渉そのものではないが、
CDM理事会(第12回)の交渉内容(COPでもCDM理事会から報告された)
サイドイベント等を通じたCDMに関する活動、排出権取引市場動向、2012年以降の将来の枠組について議論動向等
であった。

ロシアが批准すればCOP/MOP1ということで大変盛りだくさんな会議になるところであった。しかし、結局COP単独の会議となり大きな機軸を打ち立てたというより、マラケシュ合意からCOP/MOP1に至る間の個別検討課題を粛々と詰めていく比較的地味な会議という印象であった。また、主要議題をみて分かるように対立が尖鋭化するようなシビアなテーマは少なく、交渉の外側にいる我々には静かに検討が進んだようにみえた。

会議を通じて、吸収源CDMのルールの合意により京都メカニズムの実務ルールは完成を見、LULUCFのグッドプラクティスガイダンスも採択された。また、サイドイベント等を通じた情報交換や人的交流の蓄積からは、CDMや排出権の市場を巡る様々な取組が、準備・検討からいよいよ実動の段階には入りつつあることが感じられた。

議定書の発効はともかく、温暖化対策へ向けた各国各層の様々な取組が地道に進みつつある印象をもった。

 気になるロシアの動向に関しては、秋のモスクワでの気候変動会議で示されたスタンス(批准は経済的利益・国益をもとに慎重に判断していく)を織り込み済みであり、ロシア政府高官の様々な発言の報道にも会場は比較的冷静であった。結局、特に踏み込んだ発言等はなく、目新しい動きはなかった。

 一方アメリカは大代表団及び多数の関係者(計100名近く)が参加し、独自の温暖化対策についてのスタンスを示した。京都議定書の枠外ではあるが、長期視点にたつ技術開発を中心とした明確な姿勢と活動は、1つの温暖化対策の流れを形成しつつあるといえた。

 COPの交渉は、過去10年に及ぶ交渉の経緯を経て、各国の立場・利害の差が明確化・固定化する傾向にあり、テーマごとに途上国と先進国、先進国間でもEUとアメリカ、EUの中でも旧15カ国と新規加入予定の中東欧諸国、途上国の中でも産油国と非産油国・島嶼国というように、複雑に意見・立場が分かれ、全体としての合意することの難しさが表面化している。なるべく、対立を表面化させず、信頼関係を保ちつつ一定の合意に交渉を導くのは相当の手腕を要し、各ワーキンググループでの合意成立に際してはグループの議長が涙する場面も見られた。

 この点、昨年のCOP8(インド・ニューデリー)では、デリー宣言へ盛り込む内容に関し途上国と先進国の対立がかなり表に出た(途上国の削減義務等を巡り対立)。そこで、今年は相互の信頼関係の醸成を意識し、会期の後半(10日、11日)に行われた閣僚級会合では交渉ではなく自由な議論を行うことになった。昨年のようにコンセンサス文書は出さず、内容は議長サマリーとしてまとめられた。なお、閣僚級会合では日本の小池百合子環境大臣が3つのセッションのうちの1つで共同議長を務めた(テーマ:気候変動、適応〔気候変動による悪影響への対処〕、緩和〔温室効果ガスの排出削減及び吸収〕及び持続可能な開発)。

 次回COP10は、2004年11月~12月、アルゼンチンの首都 ブエノスアイレスでの開催が予定されている。


【主な交渉内容とその結果について】


上記にあげた主な注目点にそって、主な交渉内容と結果を概括する。

 なお、蛇足であるが、COPでの交渉の仕組みを簡単に説明すると、はじめにCOP全体会合で検討すべき議題を採択し、それらを内容に応じてSBSTA、SBI両補助機関での検討に付す。SBSTA、SBIではそれを受けて、各議題を検討するために議題ごとの交渉・作業グループ設ける。各グループでの結論はSBSTA、SBIの中の全体会合にあげられ、そこで採択されればCOP全体会合にあげられる。そこで採択されてはじめてCOPとしての決定となる、という手順を踏む。
吸収源CDMの定義やルールについて
COP7の積み残し案件である「議定書12条(CDM)の規定に新規植林、再植林を含めるための定義及び規則」に関する議論がSBSTAにて行われ、その結論はCOP全体会合で採択され、決着を見た。主な結論は以下の通り。
再植林とは基準年(1989年末)以来森林でなかった土地を森林とすること
森林特有の問題である非永続性(森林が途中で焼ける、枯れるなど)に鑑み、期限付きのクレジット2種類(Temporary CER、Long-term CER)を用いることが認められた。
小規模吸収源CDMが認められた。但し、対象はホスト国が特定する低所得コミュニティー等が開発・実施する排出削減量8000トンCO2/年以下のプロジェクトである。
「土地利用・土地利用変化、及び森林に関するグッドプラクティスガイダンス」(LULUCF GPG)の受諾について
IPCCは、COP7にて標記ガイダンス作成の要請を受け、2003年11月3日~7日の第21回IPCC全体会合で採択した。それが今SBSTAにて紹介され、COP全体会合で受諾が決定した。このガイダンスにより、各国は土地利用や森林に関し透明性、一貫性のあるGHGインベントリを作成することができ、かつ共通のガイダンスを用いることで相互比較も可能となる。COPの決定では、附属書I国は2005年以降はこのガイダンスを利用して議定書でいう年次のGHG排出報告書(annual inventory)を作成することになった。
UNFCCCでのIPCC第三次報告書(TAR)の利用方法の検討について
TARを今後の国際交渉の基礎として活用するための議論が行われた。今回決定されたのは、SBSTA20(次回)から設けられることになっている新規の議題(緩和と適用に関する科学的・技術的・社会経済的側面)のもとで情報交換等の活動を進めることである。そこでのテーマは、「持続可能な発展」、「(気候変動に適用する、または気候変動を緩和する)機会と解決法」、「気候変動に対する脆弱性とそのリスク」の3つである。
特別気候変動基金等途上国支援に関する事項の検討について
途上国支援に関する問題は、途上国による支援範囲の拡大の要請等があり交渉は難航した模様である。COPでの決定では、特別気候変動基金(SCCF)の使い道に関し、技術ニーズ評価結果の導入、技術情報、技術移転のためのキャパシティビルディングに関する事項を優先し、現在GEF(地球環境基金)により資金提供されている活動を補完することとされた。
カナダやブラジルによる独自の提案の扱いについて
(カナダ:クリーンエネルギー輸出)(ブラジル:歴史的累積排出量の削減目標への反映)
カナダは、第1約束期間に、温室効果ガス低排出エネルギーを(アメリカへ)輸出することで、年間7000万トン CO2までクレジットが得られる仕組みを提案したが、ロシアのみが賛成するだけで、次回(SBSTA20)での継続テーマとなった。
ブラジルは、過去の歴史的累積排出量を各国の排出削減目標算定に反映する提案をCOP3(京都会議)にて行った。以来、英国の大学等で学術的な研究が進められている。歴史的累積排出量と気候変動の関係が科学的に明確になれば、新しい約束の枠組にも影響する可能性もあるが、現時点ではまだ知見の蓄積段階であり、次回以降のSBSTAでも成果が報告される予定である。
ロシアの動向について
上記の通り、特段の進展はなかった。ロシアは、京都議定書の批准によって得られる経済的利益に着目して、国益を踏まえた検討を行っている、とのことである。
閣僚級会合の内容について
以下の3つのテーマにわけ議論行われた。
第1セッション:気候変動、適応(気候変動による悪影響への対処)、緩和(温室効果ガスの排出削減及び吸収)及び持続可能な開発(小池百合子環境大臣が共同議長)
第2セッション:技術の利用と開発、技術移転
第3セッション:気候変動枠組条約などに定められた目的や約束がどの程度果たされているかの評価
議論の内容は議長サマリーとしてまとめられた。主な内容は以下の通り。
第1セッションについては、多くの締約国が気候変動は人類にとって最も重要な地球規模の課題であると強調し、議定書早期発効への強い支持が表明された、また、途上国へのキャパシティビルディングの手段・将来のパートナーシップ構築の手段としてCDMの重要性が強調された、とする。
第2セッションについては、持続可能な開発の文脈において緩和及び適応に関する技術革新、開発、普及を進めるとともに既存の技術をいかに活用するかの問題は、各間の対話の中心となる、また、将来有望視される技術の中で、水素関連技術、再生可能エネルギー源及び炭素隔離・貯留技術について言及された、とする。
第3セッションでは、多くの国や地域において既に取組が実施されていることがわかった、しかしいくつかの国は附属書I国が気候変動対策や温室効果ガスの排出抑制に向けたリーダーシップを実際に示していないことに対して不満を表明した、とする。

【CDM理事会第12回会合について】

COP9に先立つ11月27日、28日に、同じ会場でCDM理事会第12回会合が行われた。
主な議題は、①OE(operational entity)の信任、②CDMの新方法論(ベースラインとモニタリング計画に関する方法論)の承認、③CDM登録簿の構築についてであった。
については、19社の申請があるが、今回もDOE(designated OE)としてCOPに推薦された社はない。審査が最も進んでいるのはJQA、DNV、トーマツ等4社。早ければ次回(3月1日、2日)の理事会で承認される見通し。
については、今回提出された3つの方法論全てが認められた。穀物ガラを燃料とするコジェネによる燃料転換、埋立地からでるメタン回収(発電・熱供給)、小規模ダムによる水力発電での電力供給、である。現在、CDM理事会により認められた方法論は9つとなった。CDM理事会メンバーである日本の岡松壯三郎氏は、ランドフィルガス等同種の案件について個別にいくつも方法論ができつつあるが汎用性の高い方法論の確立を促進する必要性があるのではないかと主張し、CDM理事会としてもそのためのガイダンスの提供を求めることとなった。
については、事務局にて登録簿の開発に関する調査を一層進めることが合意され、一般から寄せられた登録簿ソフトを使えるかどうかを中心に次々回(第14回)のCDM理事会で進捗報告を行う予定。

【サイドイベント】

(1)概括

COPでは政府代表団の交渉と併行して会場内の小部屋や近くのホテルでサイドイベントが行われる。研究機関やNGO、産業界、各国代表団等が主催する。特定のテーマについて最新の動向や主張が紹介されるほか、参加者とのディスカッション等を通じた多様な情報交換も行われる。参加者にとっては人的な交流も含め、貴重な情報収集・気付きの場となる。
12日間の会期中、約150余りのイベントが開催された。120余りの公式イベントと、約20のIETA とWBCSD(※) の共催イベントがその中心である。午後1時~、3時~、6時~、の3つの時間帯で、各2時間程度で行われ、参加者は、各10名~50名程度である。

 今年テーマとして目立ったのは、
CDMに関するもの(公式イベントだけで24件、IETAイベントで5件)
特に、CDMを効果的でスムーズに実施するのに必要なこと、といった視点のものが多かった。実際のプロジェクトで得た知見について紹介するイベントもあった。
カーボンビジネス拡大の動きに関するもの
排出枠取引市場の拡大やファンド等への活用等 、IETAとWBCSDが主催のものが中心。
(①と重複するものもある。)
また、数こそ多くはないが、自主的な取組に関するものや、2012年以降の枠組・長期視点での政策に関するもあった。前者は、京都の枠組の柔軟な活用或いはその枠外での独自取組という意味合いで、日米豪の経済団体が発表したものや、GHGプロトコルのVoluntary Targetに関するガイダンス紹介など。後者は、有効な合意形成のアプローチ等について様々なシナリオの提示等があった。

 日本の国内制度設計の参考になるのではないかと期待していたEU排出枠取引指令下での各国のナショナルアロケーションプランや、国内法制度整備状況に関しては、直接的・具体的に言及したイベントはなく、その方面に関する情報はあまり得られなかった。

 多数のイベントの中で、異彩を放っていたのは、排出削減量の取引市場等温暖化ビジネスに関するIETAとWBCSDの一連の共催イベントである。会場でも独自のプログラム冊子を配布し、産業界をはじめ多数の参加者を集めて存在感があった。開催された21のイベントの中には、京都の枠組外での活動、自主行動計画(voluntary approach)、カーボンファンド、排出削減量取引の財務会計処理、CDMの最新動向、GHGプロトコル自主行動計画策定ガイダンス、GHG市場の動向、EUと京都のリンク 等、気になる内容が多数盛り込まれていた。

プレゼンテーターには、弁護士事務所や金融機関からのメンバーもいた。活発なGHGマーケットは、多数のステイクホルダーの存在と、特に金融機関と産業界の緊密な連携により効果的に発展するという印象を持った。金融機関と産業界の連携は、今後日本においても国内制度の進展に伴い更に進むと思われる。それは、プロジェクト投資・資金調達面のみならず、カーボンリスクのヘッジなども含めた証券・保険業界までも含んだダイナミックな広がりを持つものではないかと考える。

 他には、アメリカの独自路線も目をひいた。アメリカ政府は報道されているように京都議定書の枠組とは一線を画した動きをしている。「科学的知見をベースにしたリスク回避とチャンスの活用」というキーワードのもと、技術革新を軸とした長期視点での取組の必要性を、公式の交渉の場のみならず、サイドイベント、配布資料等でもかなりアピールした。政府団による説明会のほか、ゴージャスな作りの資料も配布された(Climate Change Science Program Strategic Plan)。

これに対しては、環境NGO主催のサイドイベントで政府の政策に批判的な意見が出される一方、CCX (シカゴ気候変動取引)など民間や州レベルでの独自の取組にふれるもあった。また、USCIB(United States Council for International Business)のイベントでは、産業界での自主行動計画の紹介もあった。このように、アメリカの内部では政府の政策意向と併行して色々なレベルで多様な価値観・利害のもと独自の取組活動が個別に、大変活発に進んでいることが各イベントを通じて伺えた。中でも、CCXは欧州の動きの向こうを張るものである。かつて排出枠取引の導入を強硬に主張したアメリカだけに、民間レベルでもEUに遅れをとらないよう独自の動きを進めている。その背後には、温暖化関連のビジネスチャンスはゲットする、そのためにも、アメリカを軸とした新しい枠組を作りたい、という意思が感じとれた。

なお、アメリカの研究機関やNGO、大学等が主催したイベントは公式イベントだけで13あり、一国としては最多の部類に入る。

(2)個別傍聴報告


参加イベントを選ぶ際に着目したテーマ・切り口は、
emission/carbon マーケットに関するもの
各国での自主的な行動(計画)に関するもの
EU排出枠取引(他制度とのリンクも含め)に関するもの
CDM事業の進展や、推進の支援に関するもの
2012年以降の枠組議論に関するもの
である。時間の関係等で全ては網羅できなかったが、上記視点から代表的と思われた以下のイベントについて簡単に概要を紹介する。
技術変革と気候変動への挑戦(国際商業会議所:ICC、米国国際ビジネスカウンセル:USCIB)
トヨタ(経団連)、新日鉄(鉄連)、アメリカ:電力部門、オーストラリア産業温暖化ネットワーク(※)・世界アルミ産業連盟から、各自主行動計画のもとでの環境対策(技術革新も含む)による独自の競争力強化策の紹介
  ※:この団体と民間企業間での自主合意が存在
自主行動計画(日本経団連)
経団連:自主的行動による技術革新、気候変動のフレームワークに全ての国が入ること、原資を効果的に使う〔緩和措置等に〕、京都の枠組自体は大切(JI・CDM)
IETA:長期視点での対策の重要性と、自由なマーケットの活用による好循環、多様な枠組の緩やかな相互連携(UK、EU、カナダ、CCX、WEFRegistry、US(州単位) 等)
GHGの財務会計処理:IETA(International Emissions Trading Association)
IETAのIFRICの解釈案(排出枠:無形資産 等)へのコメントを中心に議論
IETAとしては〔financial instruments〕を主張。asset とliability を峻別するべき点を前提に、初期無償割当の場合の負債認識方法、遵守リスク・価格変動リスクがGHGを巡る市場行動に大きく影響することを勘案して会計上の性格を考えるべきであると主張。排出枠はamount of cash であり、financial rights と認識すべきであるとした。
(ただ、日本では、割当も法的削減義務もなく、法律上の権利義務として認識していない点を指摘すると、IETA案でも contract right ではないとの返答あり。)
排出削減量取引とCDM:長期視点での課題(AnnexⅠ Expert Group)
OECDとIEAのプレゼン:追加性の定義や、ベースラインはじめ方法論の選択において主観的要素に左右される現状を指摘、方法論の選択のための指針が設けられるべきであるとした。
長期視点では、確実にプロジェクトを実施していくための能力を育成するためのキャパシティビルディングの重要性を指摘、そのためにGIS等の枠組を活用し、国際協力等による技術共有等多角的な協力関係を築く必要性についても言及。
2012年~の政策シナリオ (Fridtjof Nansen Institute ほか)
ミカエロワ氏(ハンブルク国際経済研究所):①カナダ・EU・日本等の市場のリンク、取引の拡大(途上国等新メンバーの巻き込み)、②交渉自体の小グループ化・徐々に交渉の枠組を広げるべし、③軽い義務と産業別アプローチ、全締約国でなくメンバー国のみ の枠組の有効性を主張。
杉山氏(電力中央研究所):個別条約の並立・協調(Orchestra of treatise)
対立を避ける枠組、利害の関係する国同士のバイ交渉、個別国同士の関係深化、徐々に相互連携を広げ、実働する枠組に育てるべき。
他、ジンハ・パン氏(中国)が途上国にも低い目標でのキャップをかける選択肢もあること、人材育成の重要性を強調。
総括としては、色々なアプローチがあるが、既存のリソースの上に積上げること、新しいネゴの場を作ること、コミットメントのバリエーションを増やすことが、あげられた。
国内でのGHG取引枠組(IETA)
国際的大市場とするために、各国での独立した市場が、価格レートのような形でリンクするのが望ましいとしつつ、EUETSとのリンクについては、リンクする国に国内キャップがあることが前提とした。
CDM マーケット活動(IETA)
IETA、Holcim(スイスのセメント会社)、CCX、UNFCCC等がプレゼン。
Holcim は、自主行動計画下での柔軟な取組の効果を強調。世界各国のグループ会社間での自主目標に基づく排出権取引による、グループ全体での排出削減事例を紹介。
CCXは、SO2市場の成功から説き起こし、キャップ&トレードを前提とした価格決定等の市場機能と、プロジェクトベース(ベースライン&クレジット)でのオフセット(クレジット)による市場の流動化の両面あってこそ、カーボンの市場がうまく機能することを紹介。
UNFCCCは、GHGインベントリのためのガイダンスの策定を紹介。
(GHGプロトコル等を参考にしたとのこと)
GHGプロトコル 自主目標(WBCSD&WRI)
WBCSD、WRIより、コーポレートモジュールでの自主行動計画策定に関する章の追加が発表された。なお、全体は1月末完成予定。
GHGプロトコル プロジェクトモジュール(WBCSD&WRI)
プロジェクトモジュールにつき、同様の事例について複数の方法論が存在し、その選択の基準が明確でないとの問題意識を提示、多数のロードテストを実施中であり、一般化された理論体系作りを目指すことを表明。
GHG市場動向(IETA)
市場を作る際、従来のように一定ルールをまずつくって、それをもとに各市場を形成しようとしてもうまくいかない。個別市場が独立に各政治、地理的要請の中で立ち上がり、それを緩やかにまとめて、1つの大きな市場としていくことが、有効なGHG市場の形成の鍵であるとした。
2Eカーボン・アクセス:小規模CDM支援ファシリティ-(E+Co)
  得られるクレジット量に比べ費用やリスク面から取り組みにくいとされる小規模CDMについて(特に再生可能エネルギー関連)、融資のみならず、必要書類の作成、獲得したクレジットの売買仲介・価格交渉、市場調査、ホスト国のキャパシティビルディング等の一連の必要作業を包括的に支援するファシリティーに関する紹介。(EcoSecurity社により立ち上げられたものである。)この枠組を活用することで、小規模CDMを活用するチャンスが格段に広がるとのことである。

【雑感など】


ミラノは、COP初日の12月1日から雨の中公共交通機関のストにみまわれ、参加者にとっては戸惑うこともあったが、後半は天気にも恵まれ、初冬のロンバルディアの古都の美しさは格別だった。閉会にあたりペルシャニ議長(ハンガリー)がミラノの町の中心にある有名なドゥオモが過去数百年かけて建築されてきたことになぞらえて、温暖化の対策も息長くこつこつ積上げていくことが大切である、という趣旨の挨拶をした。過去のCOP、今回のCOP、これからのCOPをみても、色々な意味で示唆に富む比喩だと思った。
当のそのドゥオモは現在清掃作業中で足場に覆われていたが、清掃でさえ何年もかかるという。ミラノは1943年の爆撃で多くの歴史的建造物が瓦礫になってしまったが、戦後数十年かけて正確に復元し続けている。息長く地道に積上げる、という言葉が印象に残った。

(篠田健一)

▲先頭へ