2004年4号

「東アジア地域のサプライチェーン構築に向けた官民の役割」 研究委員会

1.背景
 
 経済活動のグローバル化が進展する中で、企業は収益向上を目指して事業活動を展開している。とりわけ地理的に近接している「東アジア」においては、分業関係が深化しつつあり、経済の相互依存性が高まってきている。また、EUやNAFTAのように、市場の拡大による貿易・投資の呼び込み、東アジアを一体化する取り組みも進みつつある。

  アセアンにおいては、統一アセアン市場であるアセアン自由貿易地域(AFTA)が最終段階を迎えており、中アセアンFTAの動きや日韓、日アセアン経済連携の動きなど、FTAを軸とした経済連携の動きが加速している。こうした動きは、企業の経営戦略、収益にも大きな影響を与えるものであり、多くの企業が、いつ、どのような仕組みができ、実施されるのかに関心を持っており、その帰趨が実際の投資・戦略にも大きな影響を与える可能性が高い。

【我が国経済にとっての東アジア地域】イメージ図

東アジアビジネス圏における業績拡大と日本国内への好影響
〔出所:「東アジア企業戦略を考える研究会」 中間とりまとめ より〕
 
 経済産業省が主宰した「東アジア企業戦略を考える研究会」(座長:木村福成慶大教授、平成13年2月設置)の「中間とりまとめ」(同年9月)の「提言」では、企業戦略の方向性として、以下の5つの具体的戦略を提言している。

a) 収益向上に向けた東アジアワイドの戦略の確立
b) 原材料・部品コスト削減による効率的サプライチェーンの構築
東アジア地域で製造を行う企業は、製品に占める原材料・部品などの材料費が
占める割合が大きく、この点のコスト削減やリードタイム短縮により収益確保に
向けて最適なサプライチェーンを構築することが求められる。)
c) 販売網の再構築(物流面、現地代理店、サポート体制の整備)
d) 中国とアセアンとのバランスを確保
e) 現地企業と本社の適切な分業体制の構築


2.研究目的
 
 日本を含む東アジア諸国の競争力を強化し、東アジア地域の貿易・投資を円滑化するためには、同地域におけるハード・インフラを整備するだけでなく、効率的な物流ネットワークの構築等、ソフト・インフラの整備が不可欠。サプライチェーンマネジメントは、効率的な物流ネットワーク構築の一つの手段であり、欧米諸国では多くの企業が導入しており、コストのみならず、高生産性、高付加価値を要求されつつあるアセアン域内産業に対し、サプライチェーンマネジメントを広く啓蒙・普及することにより、ひいては我が国企業の貿易・投資を促進することが可能になる。

 東アジア地域のFTAや経済連携が進む中、貿易・投資の促進のためには域内の商流・物流網整備が喫緊の課題となっている。このため、アセアン各国のメーカー、物流事業者、卸業者及び販売会社(小売店)等、商品供給に関わる者が、いかなる商流・物流管理を行えばいいのか検討し、官民が力を合わせて日本企業の商流・物流マネジメントのレベルアップを実現する必要がある。

 本研究では、企画・開発、原材料調達、営業(需要予測、販売計画等を含む)、受発注、経理、生産、出荷、輸送・配送、保管・流通加工、荷役、在庫管理、包装、仕入れ、販売、情報システム構築、品質管理等々、商品供給に関し、東アジア地域の現状と課題を検討し、また、商流務・物流情報システムの最新技術と具体的な事例を研究することを目的とする。
具体的には下記のテーマであるが、特に、現在行われているFTA交渉を睨み、東アジアに展開する日系企業の経営戦略としてのサプライチェーンの整備に必要な諸施策を、官民の立場から整理し、提言としてまとめる。


3.具体的検討テーマ
 
・海外展開する日本企業におけるサプライチェーンの重要性
・東アジア地域におけるサプライチェーンの現状と分析
・東アジアにおける調達・生産・販売体制構築にむけたサプライチェーンの可能性
・経済連携における円滑化措置としての物流の効率化
・東アジア地域におけるサプライチェーン構築のための官民の取り組み


4.研究委員会名簿 (敬称略、五十音順)

  委員長 小林 英夫 早稲田大学大学院 アジア太平洋研究科 教授
       
  委 員 安積 敏政 松下電器産業(株) グローバル戦略研究所 首席研究員
    石井 徹郎 (社)日本ロジスティクスシステム協会 理事 総合研究所長
    大川 三千男 東レ(株) 顧問
    奥村 裕一 日本貿易振興機構(JETRO) アジア経済研究所 理事
    木村 福成 慶應義塾大学 経済学部 教授
    黒川 久幸 東京海洋大学 海洋工学部 流通情報工学科 助教授
    黒須 誠治 早稲田大学大学院 アジア太平洋研究科 教授
    合田 浩之 日本郵船(株) 調査グループ調査チーム 課長代理
    近藤 信一 (財)機械振興協会 経済研究所 調査研究部 研究員
    杉田 定大 経済産業省 貿易経済協力局 通商金融・経済協力課長
    竹野 忠弘 名古屋工業大学大学院 工学研究科 助教授
    辻村 雅則 オムロンロジスティック クリエイツ(株) 第1営業グループ
グローバルロジ課 グローバル係 課長代理
    野口 直良 日本貿易振興機構(JETRO) 海外調査部 アジア大洋州課長
    森本 博行 ソニー(株) インスティチュート オブ ストラテジー VP

 (委員会事務局 松本 邦夫)

▲先頭へ