2005年4号

平成17年度「多文化共生社会を考える」研究委員会


1.背景と研究の目的

   1990年に入国管理法が改正されて以降、日系人を中心に外国人労働者の流入が急増し、低廉労働力として日本の産業を下支えしてきた。当初は短期滞在・母国回帰の所謂出稼ぎ型就労を指向していた彼等が、母国での再就職に失敗して再来日し、日本国内で家庭を構え、母国から家族を呼び寄せるなど、定住化が進んでいる。

 しかし社会保障制度等はじめ日本の諸制度は、彼等の日本定住を充分想定して作られたものではなく、今後、扶養家族を抱えつつ彼等自身の高齢化が進めば、年金・医療・介護負担などで問題の顕在化が懸念される。

 また、彼等の子女への教育機会提供にかかわる問題を発端とする不就学問題は地域治安とも絡み、すでに一部で深刻な社会問題を引き起こしており、人道面の課題としてのみならず、社会秩序維持の面からも重大な課題を包含している。

 一方、日本の労働人口の減少、就業者の高齢化加速が見込まれるなか、産業競争力の維持のために、e-ジャパン戦略の一環として3万人の情報技術者を海外から招集する計画をはじめ高度の専門性を備えた外国人の導入促進が国の方針として打ち出され、また産業界は併せて、より多くの外国人を操業要員として日本に迎え入れられる様、求めている。

 2004年の世界経済フォーラムの移民に関する報告でも、日本が現在の生活水準を維持するためには今後毎年60万人強の外国人・移民の受け入れが必要となることを指摘している。

 本研究委員会では、日本が国際的な競争力を維持しつつ、産業構造の高度化を図るなかで外国人労働者の受け入れ・活用をどのように考えるべきか、また、同時に公正で秩序ある日本社会を築く視点から、外国人をどのように受け入れ、そのために社会環境や制度面で如何なる整備が必要となるのか、総合的な分析を行い、活力ある多文化社会構築のための提言を導くこととする。


2.研究委員会

   千葉大学大学院・手塚和彰教授を委員長に、下記委員で構成する研究委員会を設置、上記各主題を議論し、日本社会の外国人受け入れと多文化共生についての提言をまとめる。

    氏 名   所属・役職
  委  員 池上重弘   静岡文化芸術大学文化政策学部国際文化学科 助教授
  委  員 井上  洋   日本経済団体連合会 総務本部秘書グループ長
  委  員 小野五郎   埼玉大学経済学部 教授
  委  員 高梨  昌   信州大学名誉教授
  委  員 清成忠男 法政大学 学事顧問
  委員長 手塚和彰   千葉大学大学院専門法務研究科 教授
  委  員 藤川久昭   青山学院大学法学部 助教授
  委  員 藤正  巌   政策研究大学院大学 フェロー
        (敬称略,五十音順)


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