2005年5号

IPCC作業部会III第8回会合・IPCC第24回全体会合 参加報告



 IPCC作業部会III第8回会合が2005年9月22日(木)~24日(土)、IPCC第24回全体会合が9月26日(月)~28日(水)、ともにカナダ・モントリオールのICAO(International Civil Aviation Organization:国際民間航空機関)本部で開催された。

 作業部会III(以下、WG3)の会合では、各国の代表が執筆者と「二酸化炭素(CO2)回収・貯留に関する特別報告書(Special Report on Carbon Dioxide Capture and Storage:SRCCS)」の「政策決定者向け要訳(以下、SPM)」(30ページ弱)を一行ごとに議論、適宜修正し、承認、その後本文を(行ごとではなく全体をまとめて)受諾した。全体会合では、各作業部会の進捗報告、新排出シナリオの策定といったIPCCの活動内容に関わるものから、IPCCのアウトリーチ、IPCCビューロー(議長や各作業部会の共同議長など)の選挙規則といった事務的なことまで、幅広い議題を検討した。以下に概要を報告する。

 
   
IPCC第24回全体会合風景

1.IPCC WG3第8回会合

 SRCCSのSPMの承認および本文の受諾が行われた。CCS( Carbon Dioxide Capture and Storage)はCO2の排出を抑制しながら中長期的に化石燃料の利用を可能にする緩和対策オプションの一つとして期待されていることや、IPCCが初めて作成する緩和対策オプションに関する報告書であることから、将来のCCSの位置付けを左右する非常に重要な会合となった。

 海洋貯留推進の立場をとる日本、韓国など、海洋貯留反対で地中貯留推進の立場をとるヨーロッパ諸国(特にドイツ、デンマーク、ベルギー、フランス)、海洋貯留反対の立場は取らず地中貯留推進のUS、オーストラリアなど、各国のスタンスは分かれた。海洋、地中貯留のどちらでもCCSが推進された方が望ましいサウジや排出量が多く将来CCSを利用せざるをえない中国は、様子見の立場を取ったため、物議をかもし出すような発言は余りなかった。会合ではこのような国同士の駆け引きや貯留ポテンシャル等において引用される数値の根拠、用語の定義などについて忍耐を要する交渉が連日続き、最終日の深夜にようやくSPMが承認され、本文が受諾された。CCSの実用化に向けて、技術開発やコスト削減は勿論であるが、生態系への影響や安全性の評価、CO2貯留における法規制上の問題など解決すべき課題も多い。
(SPMの原文は、http://www.ipcc.ch/activity/ccsspm.pdf 参照)


2.IPCC第24回全体会合

 先のWG3第8回会合でのSRCCSに関する決定の受諾、各WGの進捗状況の報告、新排出シナリオ策定、長年の懸案であるIPCCのアウトリーチ活動やIPCCの選挙規則などについて話し合われた。
(1)SRCCS
  先の第8回WG3会合での決定を受諾した。
  ドイツが再生可能エネルギー及びエネルギー効率向上に関する特別報告書を作成すべき旨を提案し、多くの国が支持したが、パチャウリ議長は、第4次評価報告書(以下、AR4)の作成中でキャパシティが不足しており、現時点で新しい特別報告書を作成することは時期尚早とし、それ以上の議論は行われなかった。
(2)WG3からの進捗状況報告
  「オゾン層と気候系の保護に関する特別報告書」が本年9月に公表された。
  AR4第1次ドラフトは、順調に執筆が進んでおり、11月末から専門家レビューに入り、第3回の執筆者会合が、2006年2月に中国・北京で開催される予定である。
  AR4統合報告書:内容を充実するため、COP13を4週間遅らせる方向でUNFCCCと調整中。(COP11 and COP/MOP1で審議される予定)
(3)新排出シナリオ
  新排出シナリオについては、6月末にオーストリアで開催されたワークショップでの議論をもとにした議長案[IPCCが直接作成せず、IPCCの推進(facilitation)と調整(coordination)の下で科学者や専門家が作成する。新たに15名からなるタスクグループを立ち上げ、具体的な協力と調整の有り方について検討し、次回会合で報告される]が承認された。タスクグループの人数や構成についてはここでの議論を踏まえ修正される可能性もある。
(4)IPCCビューローの選出手続き
  非公式会合が全体会合外で何度も開催されたが、ある条項を巡ってどうしても合意が得られず*、次回会合で当条項についてのみ再度調整を行ったうえで、全体の採択を行うこととなった。
*最終案における第20条について、同一地域内で他国から推薦された候補に対する当該国及び当該地域の承認の必要性(候補者を人”person”とするか国”country”とするか)ついて、ロシア、アルゼンチン、サウジ等が強く主張し合意が得らなかった。
(5)アウトリーチ*
  コミュニケーション担当の人員を新たに事務局で採用し、IPCCのコミュニケーション戦略を各国のフィードバックを元に策定して行く。
*アウトリーチとは、IPCC各種報告書の配布やIPCC ウェブサイトの運営、UNFCCC 等関連会合でのイベント等IPCC の活動をより多くの人々に理解してもらうための活動である。
(6)NGOの参加に係る手続き事項
  IPCC全体会合の参加を希望するNGOの参加承認プロセスについて。事務局提出案は、審査項目(組織の明確な定款、非営利機関で有ることの証明、IPCCとの関係を示す活動記録等)を事務局及びビューローがスクリーニングを行った後、IPCCパネルが参加オブザーバーを承認するというものであったが、合意が得られなかったため、各国からの書面でのコメントを募集の上修正案を作成し、次回会合で採択を行う。
(7)次回会合について
  次回(第25回)IPCC全体会合は、2006年4月26日から28日にモーリシャスもしくはその1週間後にケニア・ナイロビで開催される予定。


以上
((財)地球産業文化研究所 地球環境対策部 角野光治)


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