2008年1号

H19年度 「排出クレジットに関する会計・税務論点調査研究委員会」

1、委員会設立趣旨
 平成17年2月に京都議定書が発効し、日本政府は、国際条約上、温室効果ガス排出量基準年比6%削減の法的義務を負ったことになる。議定書目標を達成するには、国民各層の更なる創意工夫が必要であり、既にエネルギー効率が世界最高水準にある我が国機械工業界にとって、京都メカニズムを適切に活用することは事業活動上も重要な戦略である。京都議定書目標達成計画においては、産業界の自主行動計画が主要な対策のひとつと位置付けられており、各産業界および企業は自らの目標達成のための合理的な措置として既に多くの排出クレジットを購入している。
 弊所ではこれまでも数年間にわたり、京都メカニズムクレジット類の会計処理や法的性格の検討をおこなってきており、企業会計基準委員会(ASBJ)の解釈指針案策定に際しても本調査研究での研究成果がベースになるなど、これまで大きな成果を挙げてきた。国際取引ログ(ITL)の接続も完了、日本企業もいよいよ現物の排出クレジットを手にすることとなり、会計・税務処理に関する関心も高まっている。
 そこで、当委員会ではこれまで積み上げてきた検討内容を再度点検して整理するとともに、新たに生じた具体的な論点に対して、先駆的に一定の解釈指針を示すことで多くの事業者の悩みに応え、我が国の機械工業振興に寄与することが標記委員会の設立趣旨である。

2、調査研究予定
■事業者ヒアリング
 ファンドに出資している事業者や直接プロジェクトを実施している事業者に対して、現在想定している会計・税務処理についてお聞きして、これまでの研究委員会での議論がどの程度浸透しているかを確認する。また、同時に、実務遂行上での不明点・疑問点等を挙げてもらい、それを題材とした検討も実施する。結果については各事業者にもフィードバックを行う予定である。
 <主な確認事項>
  • 期末・売却・償却時のクレジットの評価方法(個別法 or 平均法 or 先入先出法)
  • ファンドへの出資の場合の取扱い(出資金 or 前渡金)
  • 償却時の取扱い
  • クレジット取得に係る費用処理
  • シンククレジットの扱い
■排出クレジットの評価方法について
 以下のような場合における評価方法について検討を行う。
 <検討事項案>
  • 排出クレジットにブランド価値(プロジェクト種別、国別に価格差)がある場合
  • 原価計算した結果と時価に乖離がある場合
  • ファンド出資の場合、見込みを大幅に上回る配分があった場合
■カーボン・オフセットへの対応
 最近の地球温暖化問題への関心の高まりを受け、個人・自治体・企業が自ら温暖化対策に貢献する手段を提供する新たな手法として、「カーボン・オフセット」が注目されている。これは、欧米では広く実施されており、日本でもサービスを開始する事業者が現れてきている。
 カーボン・オフセットの最新動向を有識者からお聞きしたうえで、こうしたサービスを提供するプロバイダー、組み込み商品を提供するメーカー、利用するユーザー それぞれの立場での会計・税務処理について検討を行う。特に、京都クレジットとは異なるクレジット(VER)を用いた場合を中心に考えることとする。

3、検討委員会メンバー(敬称略 50音順)
委員長: 黒川 行治 慶應義塾大学 商学部教授
委員: 伊藤 眞 慶應義塾大学 商学部教授
  大串 卓矢 株式会社日本スマートエナジー 代表取締役
  小林 繁明 税理士法人トーマツ パートナー
  高城 慎一 八重洲監査法人
  村井 秀樹 日本大学 商学部教授


以上
(文責 地球環境対策部 松本仁志)
                     

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