2008年5号

IPCC第29回総会参加報告

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)の第29回全体会合がスイス・ジュネーブで開催された。本総会の主な議題は、第5次評価報告書(AR5)作成に向けた体制作りの根幹となるIPCCビューローメンバーおよび国内温室効果ガスインベントリタスクフォース(TFI)ビューローメンバーの選出であった。また、総会の開催に先立ち、初日8月31日にはIPCCの設立20周年を祝う式典が行われた。本総会には約160カ国から約300名が参加した。

1.会議の概要
 (1)日時:2008年8月31日~9月4日
 (2)場所:スイス・ジュネーブ
  • “Batiment des Forces Motrices”(8/31)
  • “Centre International de Conferences de Geneve” (CICG) (9/1-9/4)
設立20周年式典会場
設立20周年式典会場
総会会場
総会会場


2.IPCC20周年記念式典(8月31日)
 記念式典では、パチャウリ議長、国連潘事務総長の挨拶に続き、関連機関ならびにスイス政府から祝辞が述べられた。また、気候変動科学の変遷をIPCCの活動を通じて振り返る内容のパネルディスカッションなども行われた。
 パチャウリ議長は挨拶の中で、「設立20周年を迎えたIPCCは今まさに歴史的岐路に立っている」とし、「昨年のノーベル平和賞受賞を契機にIPCCに対する周囲の期待が一段と高まりをみせる今日、気候関連知識の需要増加にIPCCが応えていくには、組織内部における変革が不可欠だろう」と述べた。

3.ビューローメンバーの選出
 会期の大半は新ビューローメンバーの選出に費やされた。選挙プロセスの確認や各地域内での立候補者数調整の討議が長引き、選出作業は途中で他の議題の審議を挟みながら最終日午前まで行われた。今回の選挙は第25回総会で採択された「選挙手順規則」に則って行われたが、多くの国から規則を更に明確に示すべきとの声があがった。
 議長にはパチャウリ氏が無投票で再選され、会場からは大きな拍手で歓迎と賛意が示された。再び登壇したパチャウリ議長は、「客観的かつ透明性のある形で運営を行い、合意の精神と最高水準の科学をベースに、今後もIPCC活動のさらなる推進のため最善をつくす」という決意表明を行った。
 引き続き残りのビューローメンバーの選出を行い、日本からは平石尹彦氏がTFIの共同議長に再選された。WG3共同議長(途上国)の選挙は1票差の接戦となったが、選挙規則上の「単独過半数」の定義について議論となった。調整の結果、今回に限り本来2議席のWG3共同議長を3議席、代わりに副議長を1議席減らした5議席とした。


4.その他討議事項
 本総会ではIPCCの今後あるべき姿についても議論が行われた。前回総会で設立されたタスクフォースは、IPCCの将来の活動を「将来の課題」「手法、手順」「AR5で強調するべき事項」の3つの柱にとりまとめ、次回の総会で最終報告書を提出する予定であると述べた。
 そのほか、「災害リスク軽減に関する特別報告書」作成に向けたスコーピング会合開催への合意、「新しい排出シナリオ検討」の進捗についての報告があった。また、昨年受賞したノーベル平和賞の賞金の使い道として、途上国出身の気候変動科学者への奨学金基金を設立することを決議した。


5.次回総会について
 次回第30回総会はトルコ・イスタンブールにて2009年4月上旬に開催される予定である。

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