平成24年度「排出クレジットに関する会計・税務論点調査研究委員会」報告


1.委員会設置趣意

 2011年末のCOP17/CMP7において、米中など全ての主要排出国を含む包括的な将来枠組みを2020年から発行させる合意文書を採択し、また、2012年満了となる京都議定書の延長に関しては、我が国をはじめ、ロシア、カナダが不参加を表明する中、第2約束期間の設定に向けた合意が採択された。続く2012年末のCOP18/CMP8において、具体的な第2約束期間や先進国の削減目標等に関する更なる議論が行われたところである。
 これらの動きに対して、日本政府は、将来枠組み決定までは法的拘束力のない自主的目標のもとで対策を実施することとしたほか、二国間オフセット・クレジット制度(BOCM)などの新たな市場メカニズムの検討・準備を鋭意進め、制度構築に向けた政府間協議を通じてインドネシアやモンゴル等と制度運用開始に向けた合意に至るなど、交渉が加速している。
 このような状況を背景としつつ、当研究所では過年度から京都メカニズムの会計・税務問題について調査研究を進め、国内排出クレジットに関する会計・税務問題についても幅広い調査研究を実施してきたが、今年度は、これまでに蓄積してきた知見をベースに、昨年度までの議論を踏まえ、会計・税務の観点から二国間オフセット・クレジット制度(BOCM)、将来枠組み制度全般について、論点の抽出・整理、調査研究を行い、我が国産業界さらには日本としての地球温暖化対策の推進に資することを本委員会の趣旨とする。


2.委員
研究委員会委員名簿

(五十音順・敬称略)

委員長:黒川 行治慶應義塾大学 商学部教授
委 員:伊藤 眞国士舘大学 経営学部教授
委 員:大串 卓矢株式会社スマートエナジー 代表取締役社長
委 員:高城 慎一八重洲監査法人 公認会計士
委 員:高村ゆかり名古屋大学大学院 環境学研究科教授
委 員:武川 丈士森・濱田松本法律事務所 弁護士
委 員:村井 秀樹日本大学 商学部教授
(平成25年3月現在)

3.「平成24年度 排出クレジットに関する会計・税務論点調査委員会」開題
― 政府・国家の自然資産市場管理の必要性と道徳的慣習 ―
委員長
黒川行治(慶應義塾大学)

(1)はじめに
 2012年度も本研究委員会が開催され,充実したご報告と活発な討論を行うことができた。これは報告者,委員,情報提供者を兼ねたオブザーバー,そして事務局の多くの方々のご尽力があったからこそ実現できたのである。とくに,わが国が京都議定書の第2約束期間において遵守国の一員から離脱し,さらに排出クレジット価格と取引量の大幅な下落という事態に至った現在,本委員会の存続意義も問われていただけに,蔵元専務理事の揺るぎない信念と方針の賜物であると思う。本研究委員会に参加された皆様すべてに,心より感謝申し上げます。
 このような状況にある時期だからこそ議論すべき課題もあるというものである。次々に生じるすぐさまに対応が求められる問題を題材として,工夫はないものかとあれやこれやと議論することが多かったこれまでの本委員会の討論内容とは趣を異にして,現状をどのように理解し評価すべきかといった価値観をも問う基本的な問題や,将来に向けての展望を議論しておき,再び,早期に解決すべき課題が立ち現れたときの心の備えをする一方,情報や知見を継続して蓄積しておくことである。このような観点から,いささか実用性を欠きかつ取りとめもない内容であることをご容赦いただき,2012年度の本委員会の報告書の開題を述べることにしよう。

(2)国際交渉の難航と共有地の悲劇
 地球温暖化問題と温室効果ガス抑制の国際的取り組みは,人類にとって全体的かつ長期的課題解決活動であり,誇張していえば,例外者を許さない人類存続のための智恵と努力,そして協力精神を結集すべきものである。しかし,われわれの社会は,個々人の自由意思を尊重する民主主義を基礎として成立しており,国際問題においては,個々の国家の利害に基づく個々の国家の自由意思を尊重することで対処している。京都議定書に関連する諸メカニズムの存続や義務の拡大に対する各国利害の主張や議論の応酬は,このような国家の自由意思を尊重するという基本的な合意に基づくものであり,合意に向けての当事者の忍耐と粘り強い交渉の努力は,しばしば言及される民主主義のコストであり,また合意に至らない期間が続いたとしても,それはこのような価値観からすれば想定内のことであって,悲観したり非難されたりする筋合いのものではない。
 とはいえ,「共有地の悲劇」すなわち,財産権が設定されず,あるいは社会的慣習によって,保存しようとする暗黙の合意がないと,自己の短期的利益を追求する一群の人間の出現によって自然資産は略奪され,絶滅・枯渇する問題をわれわれは知っている。例えば,漁業資源の枯渇を招くような蛮行を過去にそして現在も許容している国々をわれわれは見てきた。(注1)地球の大気の構成と気象環境も,共有地の悲劇の対象となる自然資産であると見ることができる。各国に対する温室効果ガスの排出枠の設定は,人為的に財産権を設定したとも理解でき,排出クレジットが財産権類似の無形資産であるからこそ取引の対象となった。地球温暖化とそれがもたらす人間社会への影響に関する研究が進み,包括的な合意に至るまでの時間が長ければ長いほど共有地の悲劇は進行し,やがて取り返しのつかない事態になってしまうことを認識しない人や国家は少なくなったであろう。しかし,このような状況は続いている。

(3)自由の尊重と市場経済重視
 われわれの社会では「自由の尊重」を最上位の価値と考えることが伝統的である。そこでは,言論の自由,出版・報道の自由,集会の自由,信教の自由などが挙げられる。(注2)
 レッセフェール(自由放任派)の立場では,自発的選択が尊重され支持される社会こそ正義を実現する社会であると考えている。リバタリアン(自由至上主義者)は,経済効率を理由とするのではなく,人間のもつ自由への基本的権利(他人が同じことをする権利を尊重するかぎり,自らが所有するものを使って,自ら望むいかなることも行うことが許される権利)を理由として,制約のない市場を支持するものである。(注3)。
 この規準にしたがえば,個人としては他者の承認があることを前提とする自由を最重視する。とくに,経済問題についてみると,国は規制緩和を求めて国際交渉に臨む一方,自国についてはフェアな競争を心がけるはずである。ハイエクやフリードマン等の新自由主義は,1980年代から1990年代にかけて,主要先進国の政権運営の基本的方針となり,規制緩和,経済の自由化,小さな政府を目的とする民営化が推進された。そして,社会の在り様として,自然淘汰を市場に委ねる市場至上主義が喧伝されていった。
 排出枠の設定と排出クレジットの取引というアイデアは,このような市場経済重視の思想に依拠して環境問題に対処しようとしたと解釈することができるであろう。

(4)19世紀の自己調整的市場の進展と20世紀初頭の反動の原因
 市場の機能を信奉する思想の根底には,市場には自己調整的機能が備わっているとする大前提があり,しかもその大前提は実証的にも肯定されていると考えていることにある。市場で取引される財・サービスは需要と供給との関係によって適正な価格と適正な量に調整される。政府の役割がもしあるとすれば,このような自己調整的機能を十二分に発揮できるような高質な市場環境を作り上げることである。例えば,当事者の平等な競争を阻害するような一部の利害関係者の便宜を図る規制を撤廃するとか,当事者の公正な取引を阻害する情報の非対称性を極力解消するために情報のディスクロージャーを徹底するという政策である。
 自己調整的市場の大前提は果たして実在するのか。ここで,この大前提に疑問を投じたカール・ポラニーの名著『大転換』を想起する。ポラニーは,19世紀から20世紀初頭にかけての市場自由主義社会の進展とその後に起こった第1次世界大戦,世界大恐慌,ファシズムの台頭,そして米国ルーズベルト大統領のニューディール政策等を分析対象に,自己調整的市場の大前提はユートピアにすぎないと主張する『大転換』初版を1944年に上梓した。自己調整的な市場経済システムを構築するためには,取引(交換)するために生産される商品だけでなく労働,土地,貨幣すらも商品化する必要があり,それはわれわれの社会の有り様を破壊するように機能する。したがって,このような市場至上主義の影響が深刻になるにつれ人々は抵抗し,人間社会と自然環境の破壊を防止しようとする動機が生まれ,われわれの社会を存続させようと行動すると論じた。振り子の幅が大きくなるように自由放任の弊害(とくに経済的弱者の苦痛)が大きいほど,その反動も大きくなる。人間社会を防御しようとする反動は過度な保守主義を招き,グローバルな国際間取引の減少と経済圏(市場の囲い込み)競争は第1次世界大戦へと発展し,自由放任の拒否は民主主義の思想をも捨て去るように作用してファシズムの政権奪取を許した。(注4)

(5)現在も妥当する自己調整的市場のユートピア性
 このようなポラニーの論理・主張は初版上梓後70年を経過した現在でもいささかも陳腐化していない。1990年代以降とくに顕著となった金融資本主義の進展とその猛威をわれわれは現在体験している。情報の非対称を原因として市場が高質でないときにはいつにても市場機能を介しての社会の最適資源配分が達成されないことは自明である。しかし,そもそも市場取引に参加する人間のヒューリスティックな行動は,ファンダメンタルな経済の諸条件を理性的に分析して意思決定するという仮定に反している。理性的な決定と感情的な決定の複合,取引参加者の予測の極端な変動は,市場価格等の過度な不安定性を招いている。その不安定な市場を狙っての投機的な取引によって莫大な利益を稼ぐヘッジファンド等の存在・活動を,短期的資本移動の自由化は許した。東アジアの通貨危機,リーマン・ショックによる金融危機を経て,現在われわれはヨーロッパの経済危機に直面している。
 わが国に照らしてみれば,バブル崩壊後20年に及ぶデフレ基調に対処してきたことによって国家財政は悪化の一途を辿った。そして負債の対GDP比が210パーセントを超えるような国家財政の瀬戸際での金融緩和・円高是正政策,さらなる財政出動と経済活性化対策の行方を,固唾を飲んで見守る状況にある。このような高リスクの政策が近い将来どのような帰結に至ったとしても,過度の保守主義,民主主義を捨て去る全体主義的社会の再現だけは回避しなければならないであろう。それが歴史を振り返り,原因を分析し,過去の誤りに学ぶというものである。

(6)自己調整的市場の特徴                  
 ポラニーの主張をもう少し辿ってみよう。われわれの社会は経済的動機や価値観,規準のみによって成立してはいなかった。ポラニーによると,経済原理は『互酬』,『再分配』,『家政』,『市場交換』の4要素によって体系できるが,産業革命以前の伝統的社会は,そのうちの『互酬』,『再分配』,『家政』の原理により経済活動システムを説明でき,そのような経済システムでは政治や社会的諸活動と経済活動が一体化していた。
 ここでいう互酬とは,「共同体内あるいは共同体相互において,個人あるいは集団はそれぞれ自己の「片割れ」をもち,相互の贈り物のやりとりとも考えられるような関係を結ぶ」ことである。また再分配は,「共同体の成員による生産物は,いったん首長すなわち中心に位置する人物に集められ貯蔵され,さまざまな機会に再び成員に分配される」ことである。いずれの場合にも利潤という観念は締め出され,取引性向は姿をあらわさない。家政は,「自ら使用するための生産の謂いであり,閉ざされた集団という制度的パターンで機能する。」(注5)
 一方,19世紀の資本主義経済においては市場が支配的な役割を果たすことになる。「取引,交易,交換は,市場パターンが存在して初めて有効に機能する。市場パターンは,それ自身に特有の動機,すなわち取引・交換動機と結びつき,特定の制度を作り出すことができる。市場による経済システムの支配が社会組織全体に対して圧倒的な影響を与え,市場がその付属物ともいうべき社会を動かすことになる。経済が社会的諸関係の中に埋め込まれているのではなく,反対に社会的諸関係が経済システムの中に埋め込まれている。」(注6)
 このような「『交換』が主たる行動原理となった自己調整的市場社会は,理念的にいえば,私的な物質的利益を自由な交換によって獲得しようとする個人の集合体である。諸個人は,生活に必要なすべての物質とサービスを出入り自由な諸価格決定市場で調達することになっている。つまり,自己調整的市場社会では,人間の固定的・相互依存的な関係を支えてきた伝統的な組織や制度は融解する。・・・ここでは経済活動が,独立した個人を単位にして,政治的・社会的諸活動から切り離され,それらの干渉や介入を受けない自律的な自己調整的市場組織において営まれると考えられているのである。」(注7)
 産業革命以降に生じた人間社会の大転換,「伝統的諸社会から自己調整的市場社会へ短期間に移行すること,すなわち有史以来人間の相互依存関係を支えてきた行動原理や価値観や組織を短期間に否定し破壊することがどれほどの困難と苦痛をともなうものであろうか。」(注8)保守的な対抗運動が生じる理由はここにあるのである。

(7)労働,土地(自然資産),貨幣の擬制商品性
 ポラニーは,労働,土地(自然資産),貨幣を「擬制商品」と呼び,これらを自己調整的市場原理に無制限に委ねることはできない。すなわち政府・国家による市場の管理の必要性を論じていた。この主張は,政府・国家を市場の外部に存在するものと主張する市場自由主義との対極に位置づけられるものである。フレッド・ブロックは,『大転換』の「紹介」で次のように論じた。
 「たとえ経済が自己調整的であるとしても,国家はインフレーションとデフレーションという双子の危険を避けるために,貨幣の供給と信用と供与を調整する役割を継続的に果たさねばならない。同様に,国家は失業中の労働者に対する救済資金の提供,将来の労働者の教育・訓練,また国内外の移住の奨励などによって,労働者に対する需要をうまく調整しなければならない。土地の場合,政府は収穫量の変動や価格の不安定などの圧力から農民を守るためのさまざまな方策によって,食料生産の維持に努めてきた。都市部においては,政府は環境規制や土地利用規制を通じて,既存の土地利用を統御している。要するに,擬制商品を統御する役割は,国家を3つのもっとも重要な市場の内部に位置づけるのである。つまり,国家は経済の「外部」存在するものだとする市場自由主義者の見解を支持することは全く不可能となる。擬制商品は,経済を社会から切り離すことが不可能であることを示している。現実の市場社会においては,市場を統御するために国家が積極的な役割を演じることが必要であり,そのような国家の役割には政治的な意思決定が必要となる。つまり,国家を何らかの技術的もしくは行政的な機能に限定することはできないのである。」(注9)
 今や常識となった国家の金融政策,各国政府がそれぞれ行う為替水準誘導政策,各種の厚生労働政策,そして食料危機への対処のための農業保護対策や自然環境規制は,19世紀以来の過去の歴史に学んだ結果である。

(8)結語-自然資産市場に対する政府・国家の管理の必要性と道徳的慣習- 
 本稿ですでに言及したように,地球環境は土地と同様の自然資産である。自然資産に財産権を設定し,自己調整的市場経済に組み込んだとしても,それらは,ここでいう擬制商品であり,政府・国家の統御下に置くことが重要だということである。新自由主義は,政府・国家の市場への参加を,今やネガティブなニュアンスを感じる用語=「規制」と呼ぶ。しかし,地球環境への対処は国家(それの構成員である国民,あるいは地球市民としてのわれわれ一人ひとり)の意思決定で決断しなければならない問題であって,自己調整的市場で放任する課題ではない。さらに,道徳的にも自然資産に対して,伝統的人間社会の大半はそれらを保存し,自然と寄り添うように将来世代に引き継がせるという社会慣習を醸成してきた。市場至上主義信仰は,人間社会の道徳的慣習をも世代を経るにつれて変質させてしまったのである。
 本稿での議論を京都メカニズムに引き続く地球温暖化に対処する国際的取組に関して応用してみよう。地球温暖化対策が何らかの市場機能に期待するものであっても,市場の自律性に委ね放任するのではなく,各国政府あるいは国際機関の介入,統制は必然のものとの理解が重要だということである。また,国際的取組に対する各国の協調は,結局のところ、「現在世代が将来世代に何を残すのか?」という問いへの回答であり,市場資本主義の蔓延以前のわれわれ人間社会の伝統的道徳慣習が,どれだけわれわれに残されているのかが試されているのだと思う。
 また、本研究委員会でも検討課題の一つであった「国内の再生可能エネルギー対策」について考察すれば、同様の論理によって、自己調整的市場に任せるだけでは成功しない。政府・国家の強い意志をもっての政策遂行、時には市場介入も必要だということである。国民はそれぞれ利害を異にする。しかし,政府・国家の規制に対する痛みを各自がどれだけ負担し合うのか,公共社会の維持に対して協力しあうのかは、結局のところ,国民各層の道徳心に依存するということであろう。
 最後に,ポラニーが想定する『社会的自由』の概念について,いささか長文であるがそれを引用させていただき,本稿の結語としよう。
 「社会的自由の真の概念は,人間と人間との実在的関係に基づいている。社会的自由の概念はわれわれに,次のような二重の認識によって,この責任の要求を押しつける。すなわち,一方では,社会的な結果を全くともなわないような人間の行動など存在しない,ということであり,他方では,社会のなかでは,どういうかたちであろうと個々の人間の行動に基づかない存在,構築物,法則は存在しないし存在しえない,ということである。社会主義者にとって「自由に行為する」というのは,われわれが人間の相互関連――その外に社会的現実は存在しない――に関与することに対して責任があるという事実,まさにこのことに対して責任を担わなければならないという事実を意識して行為する,ということである。自由であるというのは,したがってここではもはや典型的な市民のイデオロギーにおけるような義務や責任から自由だということではなく,義務と責任を担うことによって自由だということである。それは選択を免れた者の自由ではなく,選択する者の自由であり,免責の自由ではなく,自己負担の自由であり,したがってそもそも社会からの解放の形態ではなく,社会的に結びついていることの基本形態であり,他者との連帯が停止する地点ではなく,社会的存在の逃れられない責任をわが身に引き受ける地点なのである。」(注10)

(注) 
(注1)自然資産の人類による収奪の問題について,例えば,ポール.コリアー著、村井章子訳『収奪の星』みすず書房、2012年を参照。
(注2)平等主義的傾向にあるロールズでも「善く秩序づけられた社会=公共世界」創出のために人々が最終的に合意し合うであろう正義の第1原理は,「各個人が最大限に平等な自由(政治的自由,言論の自由,良心と思想の自由,心理的圧迫と肉体的暴行や殺傷からの自由,恣意的逮捕や押収からの自由,個人的財産=動産を保有する権利など)をもつことの保障」である。山脇直司著『公共哲学とは何か』東京大学出版会2004年142-143頁。および,ロールズ,J.著,川本隆史・福間聡・神島裕子訳『正義論(改訂版)』紀伊国屋書店,2010年,84-85頁,114頁,402-403頁。
(注3)マイケル・サンデル著、鬼澤忍訳『これからの「正義」のはなしをしよう-いまを生き延びるための哲学』早川書房,2010年,第3章,とくに80頁参照。
(注4)カール・ポラニー著,野口建彦・栖原学訳『[新訳]大転換-市場社会の形成と崩壊-』東洋経済新報社2009年。本文は21章から構成される大著である。本書から得られるさまざまな示唆はもちろん本文を熟読しなければ得られない。しかし,ポラニーの主張・真意をより明確に理解するためには,長文のジョセフ・スティグリッツ(ノーベル経済学賞受賞)の本書への「序文」(翻訳書で15頁もある),フレッド・ブロックの「紹介」(翻訳書で31頁分),および「訳者あとがき」(16頁分)と各章に設けられた訳者梗概を読むことが重要である。本稿の論述も,これらの序文,紹介,訳者あとがきと梗概を大いに参考にしている。
(注5)同上,第4章および訳者による梗概。
(注6)同上,第5章,とくに99-100頁。
(注7)同上,「訳者あとがき」,538-539頁。
(注8)同上,「訳者あとがき」,539頁。
(注9)同上,フレッド・ブロックの「紹介」31頁。
(注10)カール・ポラニー著,若松みどり・植村邦彦・若松章孝編訳『市場社会と人間の自由』大月書店,2012年,33-34頁。

4.委員会概要

(1) 第1回
日時:日時:2013年1月17日(木)18:00~20:30
場所:地球産業文化研究所 会議室
概要:「二国間オフセット・クレジット制度の状況について」
 我が国が推し進めている二国間オフセット・クレジット制度の現況について、経済産業省木村様から解説いただき、引き続き質疑、議論を行った。
「COP18の結果と今後」
 2012.11.26~12.8に、カタール・ドーハで開催されたCOP18/CMP8の結果概要と今後の動きについて、経済産業省河野様から解説いただき、引き続き質疑、議論を行った。
(2) 第2回
日時:2013年2月13日(水)18:00~20:30
場所:地球産業文化研究所 会議室
概要: 「EU-ETSの現状と今後の方向性」
 EU-ETSを進めるEUの施策目的、排出クレジット価格の動向、会計処理基準等について、村井委員より解説いただき、引き続き質疑、議論を行った。
「国内クレジット制度の現状と将来」
 国内クレジット制度およびJ-VER制度の現状と、今後の制度統合に向けた動き等について、大串委員より解説いただき、引き続き質疑、議論を行った。
・オブザーバからの情報提供
「経団連低炭素社会実行計画」
 東京ガス 吉田様より、本年1月に経団連より示された低炭素社会実行計画について、紹介が行われた。
「アフリカでの地熱プロジェクト」
 トーマツ 松本様より、二国間FSの事例として、ジブチでの地熱開発プロジェクト等の紹介が行われた。
(3) 第3回
日時:2013年3月5日(火)18:10~21:10
場所:地球産業文化研究所 会議室
概要: 「京都議定書第二約束期間の規則に関する合意
 2013年以降の京都メカニズムの活用などCOP18、CMP8の結果を受けての今後の動きについて、髙村委員より解説いただき、引き続き質疑、議論を行った。
「東京都排出量取引制度の状況について」
 東京都環境局 唐木様より、東京都排出量取引制度の状況に関して、取引価格の査定結果や税務処理上の国税局見解なども含めて紹介いただき、引き続き質疑、議論を行った。
「固定価格買取制度施行後の再生可能エネルギーの状況」
 固定価格買取制度の概要ならびに制度施行後の各再生可能エネルギーの状況等に関して、資源エネルギー庁 安田様より解説いただき、引き続き質疑、議論を行った。
・オブザーバからの情報提供
「エネルギー政策に関する動き」
 日本商工会議所/東京商工会議所 神山様より、エネルギー・電力問題に関する商工会議所の考え等について紹介が行われた。

以 上 

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