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1994年8月号

チャイナカウンシル
「公害防止部会及びモニタリング/データベース分析部会」活動状況

国立環境研究所地球環境研究センター
総括研究管理官 西岡秀三


〔CCICEDの全体活動については、前号の横山長之博士の報告を参照されたい〕

部会の活動

 CCICEDの外国側専門家は標記二部会に共通 であり、オランダ国立衛生環境保全研究所(RIVM)のT.Schneider共同議長のもとに、米国環境保護庁研究所、ドイツシュツットガルト大学、そして筆者からなる。中国側は、公害防止部会が曲格平人民会議環境保護委員長、モニタリング部会が金鑑明前環境保護局副局長の共同議長のもとに、大学研究者や地方自治体の環境担当者からなる20名近くの作業チームを形成している。部会の任務は、個別 の公害防止技術の状況評価ではなく、観測・情報・技術・制度などを含めた、地域公害防止システムについて検討し、提案することにある。部会はすでに三回の会合を開き、ケーススタディと全体会議への提案をまとめつつある。

中国の環境状況

 「3同時の原則」や環境影響評価の実施など、法制度的にみると中国は公害防止面 で十分に整備された国であるが、実情は大気汚染、水質汚濁、廃棄物処理など、日本の1960年代を彷彿させる汚染状況にある。「中国環境状況報告−1993年」でみると、年間日平均硫黄酸化物濃度は8〜451μ g/m3であり、77都市平均ではほぼ100μg/m3である。窒素酸化物も同様なレベルにあり、平均pH3.94〜7.63の酸性雨が73市で観測されている。重慶、武漢、南京、上海等都市部を流れる河川の汚染がすすんでいる。中国はこうした状況を深刻に受けとめ、「国家環境保護法(1984年)」のもとでの法体系の強化をすすめ、1991〜1995年の計画では環境関連投資をGNPの1%に増大することを目標としてかかげている。

 この部会では、ケーススタディを通 して地域環境の状況把握を行い、環境保全システムの問題点を洗い出し、今後の対策を提案することを目的に作業をすすめており、典型的な対象地域として、広州および重慶、及び藩陽をとりあげている。

 広州のケーススタディでみると、中国の環境保全政策にはいくつかの問題がある。第一に急速な経済発展に対応する環境保全側の計画と制御のシステムがうまくできていないことである。典型的には、汚染排出費制度である。勿論排出基準を遵守しなければならないことを前提としてではあるが、企業が基準を越えて汚染物質の排出をしたとき、これをモニターして排出超過分について「汚染排出費」を徴収する。徴収された金の80%は当該企業にもどされ公害防止投資に使われ、残りは当局の諸費用あるいは公害防止投資用貸付基金となる。「右のポケットから左へ金を移すだけ」ともいわれるこのシステムは、現実に動いてはいるが十分には機能していない。いまの汚染排出費の額が低すぎる一方、経済成長が10%を越えるようなこの時期には、汚染排出費用を払ってでも生産量 を高めることが利益になるからである。

 第二に、関連部署の縦割り制度があり、統一した情報を有効に使う仕組みになっていないことである。モニタリング部署の役割は環境の状況を示すだけにとどまり、発生源とはリンクしない。汚染費徴収の部署は、任意の個別 汚染源の監視をして徴収するが、継続的なモニタリングをしているわけではない。18の環境質、100の発生源、25の移動モニタリングがされてはいるが、それらの因果 をモデルを用いて結び付けるまでにはいっていないのである。

 第三に、環境計画の前提である、経済諸活動と汚染の関連についての情報分析が、できていないことが、計画段階の発生源で絶つ政策をとるのにボトルネックとなっている。たとえば、1986年から1992年にかけて広州の廃水量 は7倍に増加しているが、これに対応する廃水処理施設の増設が間に合わずに、8か所の整備が設計容量 をこえた運転をつづけている。アンモニア体窒素でみて90%のモニタリング点で、水質基準をこえた汚染の状況である。しかるに、この廃水増加がどこから来たのか同定が十分にされていないため、用水計画にフィードバックする有効な情報とならない。また、大気汚染の多くを占めるに至った自動車からの排出についても、交通 量の把握がおくれているので制御できない。今回広州には自動車交通による大気汚染のモデル構築作業が提案された。

中国に注目する欧米

 この部会活動に対して、議長国であるオランダはきわめて積極的に対応している。北京での第一回作業計画会議のあと、第二回は中国チームをオランダに招き、オランダの新環境計画(NEPP)のもとでの環境管理システムや研究活動や研究活動について、3日間の講義を行なった。確かに同国の環境政策は、目標設定と保全主体への働きかけ、政策結果 の評価とフィードバックの体制がしっかりしていて、日本でも学ぶべき点が多い。今回5月の会議に先立って、オランダから派遣された大気・水質・廃棄物の専門家5人が一週間にわたって広州市の環境状況について徹底的に調査し、環境状況報告書を作成した。次回は重慶について同様の調査をする。また、モニタリング部会では、米国が主導して地方自治体の担当者を対象に、計測器やモニタリングシステムの民間企業と共同で、観測システム構築に関するワークショップを開催する計画が提案されている。

 モニタリング装置や公害防止機器の面 で、日本の技術面の援助が中国の環境保全に寄与することはいうまでもない。さらに重要なことは、日本で地方自治体がなしとげた地域公害防止のための行政的システムについての知見が、現在の中国に必要なことで、日本のシステムについての知識の移転は中国の環境を大いに改善するであろう。中国の環境問題は地域的に日本と関連することでもあり、官民一体となった環境協力が望まれる。