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1997年5月号

安田火災の環境保全のための取り組み

-認識から行動へ-


1.損害保険業界と環境問題

1) 地球の温暖化と風水害等自然災害の増加の恐れ

自然災害発生について1960年代と1983ー1992年の10年間を比較すると件数、経済的損害で3.9倍、保険の損害で9.8倍という統計があり、温暖化と損害保険との関係は深いものがあるとみられている。

2) 環境汚染リスク

 米国土壌汚染浄化法(スーパーファンド法)に関する訴訟は長時間かつ一件あたりの支払い額が高額になる。 A.M. BEST社の推定によると本法による全米の保険会社の総支払額は300億ドルと見積もられている。当然、再保険により日本の保険会社の分担も生じるわけで決して見過ごすことはできない。

3) 紙資源等、資源・エネルギーの消費

 安田火災として紙、電力の使用量は決して低いものではない。(95年度5400トン、1億3500万キロワット)環境問題は公害問題ではなく地球環境問題、都市・生活型の環境問題に変わってきており、その意味では損保、金融機関であっても環境負荷をあたえている企業であることには変わりがない。その責任を自覚するところから安田火災の環境保全の取り組みが始まった。

2.環境保全のための具体的取り組み

 まず、各業務部門の課長クラスからなるプロジェクトチームをつくり、省資源、社会貢献、商品サービスなどについて議論をし、社内的なコンセンサスを醸成するよう努力した。

1) 事業者としての対応

・省資源、省エネルギー活動の推進

  環境マネジメントシステムを情報システム本部へ導入、紙、電気、ガスの使用量 の削減を数値目標を定めて実施。一応の成果をみたので全国へ展開。

・地域の環境保全の推進、職員の環境保全活動の推奨

 「安田火災ちきゅうくらぶ」を設立。従業員の自発的ボランティア活動を情報支援。

2) 金融、保険業としての対応

・市民向け

  NGOとタイアップして市民向け環境公開講座を月2回開催。(すでに78回継続)体系的に環境問題を学べるプログラムとなっている。96年度の講義内容をまとめて出版の予定。

・企業向け

 社内に「企業と環境問題研究会」を設立し、社内、社外向けに情報発信。他にも中小企業向に環境情報誌の発行、ISO14000にかんするコンサルタント業務、認証取得のための勉強会開催などのサービスを実施している。

  以上、環境問題の取り組みにあたって注意したことは決して地球環境室だけの活動にはしない、なんとか社内の他の部門を巻き込もうということであった。それは社員が参加し、活動することが環境教育になるということ、環境問題への理解度を高めファンをつくることによって地球環境室の仕事が理解され、環境問題取り組みへの積極推進ははかられると期待してのことであった。92年に地球環境室が設置され4年半が経過したが、後藤会長のトップダウンの形で始まった環境問題取り組みを、ボトムアップとどううまくミックスさせていくかということに心を砕いてきた4年半であったと考える。(表 社員参加のプロセス参照)

  (本稿は3月6日の第28回地球環境問題懇談会で行われた安田火災海上保険株式会社 地球環境室 福井光彦課長の講演を事務局でまとめたものです。)