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1997年11月号

LECTURE ON

第30回地球環境問題懇談会から
「『産業廃棄物』をめぐる諸問題」


 平成9年9月17日、日本自転車会館3号館において標記懇談会を開催した。その中で(財)クリーン・ジャパン・センター間宮陸雄参与にご講演いただいたので、以下にその概要を紹介する。


1.廃棄物問題

 地球環境問題・地域環境問題・廃棄物問題・省エネ省資源問題の中で、私どもがやっているのは主に廃棄物問題です。クリーン・ジャパン・センターで作った日本のマテリアルバランス(1993)でわかるのは、まず日本全国で21億トン近い資源を生産のために投入しています。その中で9%強が再生資源として再投入されているのは、ある意味では大きいと言えるでしょう。一方、最終処分量 は9900万トン、約1億トン近くあるわけです。そのうち一般廃棄物、すなわちごみの最終処分量 が1500万トンであるのに対して、産業廃棄物は実に8400万トンもあります。この8400万トンが、新しい立地はもうほとんど不可能な状況になっている民間の最終処分場へ押しかけています。

 したがって、リサイクルももちろん大事ですが、本当のところ、今日的な喫緊の課題は、最終処分量 をいかに早く減らすかということだと言っても過言ではないでしょう。この産業廃棄物の量 を減らすに当たって、従来のように、何が何でもリサイクル、再資源に回すことだけを考えなくても結構なんです。それがコスト的に非常に厳しいとか、あるいは逆に環境負荷、悪影響を与えるとかの場合には、安全でさえあれば、中間処理をもう少しやってこの最終処分量 を減らすと言うことでも結構なんです。

 

2.産業廃棄物関係の最近の動向

 これまで、「一般廃棄物は、自治体さん、ちゃんとやりなさいよ。産業廃棄物は企業の責任で適正処理、処分、再資源化して下さいよ。」となっていたわけです。大企業さんですと、「少々コストアップになっても」という活動をなさっているわけですけれども、そうでない企業さんも多くて、やはりコスト競争力が非常に厳しい中でリサイクルすると、最終処分場へ持っていくよりも高くつくとか、そういった場合になかなか前向きにはなれなかった。しかしそうとばかりは言っておれない世の中になってきています。

 その1つ目はISOの環境管理システムです。これはもう去年JlS化されていますが、前向きに引っ張ってくれるいいアイテムです。2番目は廃棄物処理法の改正、3番目はダイオキシン対策、4番目は最終処分場技術基準の改正です。

 2番〜4番は尻たたきの手段ですが、廃棄物処理法を改正して、産廃対策も進めてもらいますよと。それから、ダイオキシン対策などについては先月閣議決定して12月1日から施行です。これも大いに産廃の適正処理などに絡んでまいります。なかんずく中間処理とか最終処分を頼むときの単価がこういったことで急激に上がってくるはずなんです。ただ4番目の最終処分場の技術基準の改正はまだ決まったわけではありませんが、もう準備に入っています。これも政省令の改正だけで済み、法改正ではないものですから、12月に間に合うかもしれません。これは、現在ある最終処分場の形態は、簡単な方から、安定型、管理型、遮断型とあるわけですけれども、もう今後は安定型なんてない。素掘りなんていうのはだめ、管理型を3段階ぐらいに分けるとか、非常に厳しいレベルアップになるかもしれません。これによって住民が少しは安心するということと、逆に企業側から見ると、最終処分単価が上昇するだろうという話が続いているわけです。

2.1 SOと廃棄物

 まずISO関連ですが、去年JlS化されたのは、環境マネジメントシステムと環境監査の世界の話だけです。続いて環境ラベリング、環境パフォーマンス評価及びライフサイクルアセスメントがあります。中でもLCAは、一番基本のところは、もうISOになったわけです。環境ラベリングについても大分話が進んでいます。タイプIのラベリングは第三者認証による環境ラベルということで、例えば日本の場合ですと、エコマークが準備を始めています。タイプIIのラベリングは、自己主張の環境ラベルです。リサイクラブル、すなわちリサイクル可能なものですよ、という主張です。シンボルを使うだけで、あとは文言は何もつけません。リサイクラブルということは、当然静脈産業的に元にちゃんと戻れることが確認できることとか、そういう基準がついてくるわけです。次にリサイクルド、すなわちりサイクルドコンテントということで、マークとパーセントを、例えば紙ですと、メビウスループに大きい文字みたいので70%とか書いたりします。次にタイプIIIのラベリングは、これは定量 化された環境情報ということですが、なかなか進みが悪いようです。例えば、アメリカのある商品なんかで、横軸にグラフが十何本も、CO2に対しては、これは幾らぐらいだとか言うものです。あの様な表示が消費者に本当に理解されて役に立つのかどうか。いろんな問題もありますが。

2.2 廃棄物処理法の改正

 次は、廃棄物処理法の改正ですが、その前に廃棄物、特にその中でも産廃に対する国のスタンスといいますか、法律に対する考え方が大きく変わりつつある、ということをまず最初にお話ししたいと思います。

 何かといいますと、平成3年に成立したリサイクル法、次の年の廃棄物処理法の大改正、それから省エネリサイクル支援法など、どれをとっても、ガイドライン的な数字はあるにしても、ぜひこの業種はこうやって頑張ってという法律であって、規制法ではなかったわけです。ところが、産業廃棄物の最終処分量 を見たら、もうほとんど横ばいでなかなか減量化が進まないということで、流れとしては法規制に変わりつつあるわけです。容器包装リサイクル法は、コスト負担者も決めて、初めて法規制で来ています。

 それに続きますのが6月10日の廃棄物処理法の改正です。それから、今度の8月26日、閣議決定しましたダイオキシンを中心とした政省令の改正と続きます。これも従来は「ごみ処理にかかわる焼却に関しては」ということで、今年の1月23日に出ていたものなどはガイドライン、行政指導だったんですが、今度は廃棄物処理法体系の中で政省令として位 置づけ、罰則もきちんとついているという方向に動いてきているわけです。もちろんこれは大気汚染防止法ともうまくあわせているわけです。

 そんな中で、廃棄物処理法の改正が出てきました。改正の目的は最終処分場の逼迫対策および不法投棄の対策のためです。改正のポイントは1番目に廃棄物の減量 及び再生利用の促進です。2番目には、最終処分場をつくりやすく、地元住民も納得しやすく、信頼性と安全性の向上ということで、手続の明確化とか、情報公開とか、許可要件の強化とかが出てきています。また最終処分場の廃止の確認は、都道府県の確認を受けて初めて廃止できるようになり、それを受けなければ、事後管理でずうっとお金がかかってもやってくださいということです。3番目に不法投棄対策として一番大事なのは、マニフェスト制度の拡充です。従来あったマニフェスト制度では、産業廃棄物の中でも特別 管理産業廃棄物だけを、法的に管理しなさいと言っていた。例えば、燃え殻から始まる19種類の、いわゆる特管以外の廃棄物に関しては行政指導はあったんですが、法体系の中に位 置づけられていたわけじゃありませんから、直罰も何もない。それが今回は産廃に関しては全部対象になりますということです。産廃である限りは全部マニフェスト管理、すなわち、排出する事業所さんは、現在どういう状態で中間処理にあるのか、あるいはそれが終わって最終処分は、どういう業者で、どういう形でされたか。それはフィードハックしていなきゃいかん。また、それは都道府県にきちんと出せと言われれば、出さなきゃいかんということで、非常に手間がかかることになります。また罰則の強化は、本当に悪質なものに対しては1億円。投棄禁止違反ですね。要するに一番悪いやつです。改正廃棄物処理法の施行スケジュールとしては、H9年12月、来年の6月、12月の3段階に施行日を分けています。マニフェストなんかは準備が要りますから1年半後、すなわち、来年の12月施行です。

2.3ダイオキシン対策・廃棄物処理法政省令改正(12月1日施行)

 8月に決まりました政省令の改正で、ダイオキシン対策を中心に政省令が変わります。施行日は12月1日です。これは、廃棄物焼却施設のダイオキシン対策、野焼き防止対策、そして最終処分場対策の一部変更です。廃棄物焼却施設のダイオキシン対策では、排ガス側のことばかり頭に浮かびますが、実は排ガス側に加えて、焼却灰あるいはばいじんのダイオキシン対策と分かれて決められています。

 ご存じのように、一般廃棄物、ごみの焼却施設でいいましても、今度の基準で0.1ng(ナノグラム:1ng=10-9g)云々あたりをきちんと守れるぐらいになりますと、排ガス側に出ていくダイオキシンはわずか10%とか20%ですね。主にばいじん、飛灰側に来るのと一部ボトムアッシュを合わせますと、80%とか、場所によっては、あるいはその日によっては90%ぐらいアッシュに落ちているんですよ。もちろん排ガスの場合にばすぐ大気中に拡散され、地元住民にすぐ影響を与えますから、重要なことであることは間違いないんですが、このアッシュのことを忘れていると、アッシュ中のダイオキシンが食物連鎖の中に入ってしまいます。排ガスばかりクリアにしてもだめです。

 平成4年以前に完成した自治体さんの焼却施設は、現在でも飛灰とボトムアッシュ、焼却灰がコンベヤーで一緒になっていたり、コンベヤーは別 だけれども、結局落ちるアッシュピットが同じだったり、それが管理型の埋立地へ行っているわけです。ご存じのように、一般 廃棄物の埋立地の重量で半分か半分強はばいじんを含めた焼却灰です。新基準では、例えば重金属、鉛等でありますと、そこへ持っていくには0.3ppm以下でなければならないとなっています。す。ところが、昔どおり合わせているのが全国の施設の80%前後あるものですから、とてもじやないけれども、0.3ppmなんか守られていないわけです。新しい基準からいくと、驚くような重金属が入ったままいっているわけです。そういうことがあり得るので今回は5年と切ったわけです。それと排ガスだけじゃなくて、アッシュの後始末をきちんとやらないと不十分ということになります。量 としてはアッシュ(焼却灰と飛灰と両方のこと)に入っているダイオキシンの方がよっぽど多いんですと言いたいのです。しかも今度は一廃、産廃全体に関して廃棄物処理法の政省令に入り、法規制になったと言うことで、違反は改善命令が出るし、命令違反は罰則になると言う点も大きく変わったことです。焼却施設の許可対象範囲も、従来は5トン/日以上の焼却能力を有する施設が規制の対象であったものが、こんどは時間能力できちんと200kg/時間以上の焼却施設が都道府県の許可を必要とするようになると言うことで、本当に小さな焼却施設まで対象になると言うことも認識しておかねばなりません。

 次に、野焼きについてですが、野焼き防止について、従来はどうだったのというのを、私も一所懸命廃掃法を詳しいところまで、調べたんですけれども、出てこないんです。ただ、例えば埼玉 県なんかですと、県の公害防止条例の中にいわゆる野焼き的な行為はだめです、罰則をつけますというのもありましたが、法律では「焼却施設で燃やすこと」とある程度で、きちっとしたものがなかった。

 それが今度は施設の規模にかかわらず、廃棄物を焼却する際に遵守すべき基準、焼却設備と方法を明確化し、政省令で野焼きはだめとしています。例えば焼却施設にあっては、空気取り入れ口と煙突の出口以外の場所で燃焼物と外気とが接触してはならない、という回りくどいことを書いてあるんですが、要するに、囲っただけでもだめ、積み上げて燃やすのはもちろんだめ、焼却炉でなきやだめですよということを言っているわけですから、野焼きはだめなんです。

2.4 最終処分場技術基準の改正

 次に厳しいのは、最終処分場対策の問題です。今までは、許可対象に裾切りがあり、素掘りの安定型では3,000平米以下、管理型では1,000平米以下は、許可は必要なく、届け出だったんです。3,000平米といったら1,000坪近いですから結構大きい埋立地です。ところが、今度は裾切りをやめましたので、10平米の埋立地でも許可を必要としますということです。

3. まとめ

 これらから、今後皆さんに何が響いてくるかというと、具体的には中間処理単価、あるいは最終処分単価が必ず相当のスピードでアップするでしょうと言うことです。これは、廃棄物をゼロにはできないわけですから、安全に処理・処分すること、新しい安全な処分場を早く手をつけられるようにするためのコストです。たまたまJETROさんのお手伝いでドイツに行ったときに聞いたんですが、ドイツ連邦全体で考えると、最終処分場の単価は過去5年間で、ちょうど5倍ぐらいになったと言うことです。日本も相当厳しい状況になるでしょう。

 したがって、廃棄物対策を考える場合に、現時点のコスト構成からいくと、とってもこの物質は再資源化なんかできないと思っていても、皆さんの企業、あるいは皆さんがいろいろご指導なさる場合でも、とにかく、簡単に何年後に何倍とかと想定して、処理処分をお願いしたときに、現在トン2万円で処理処分を終わっているやつが4万円になった段階だと、この再資源化はどうだとか、あるいは5万円になったときにどうだというのはいつでも机上でできるわけですから、準備なさっておくのが1つの有効な手段でもあるし、最終処分量 を少しでも早く減らす対策の準備にもなろうかと思います。