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20001月号

REPORT

第19回IPCCビューロー会合出張報告
―ジュネーブ、スイス―


  ジュネーブ、新WMOビルにおいて1999年11月30日から12月1日に第19回IPCCビューロー会合が開催された。参加はIPCCビューローメンバー、各国代表者合わせて40名程度であり、日本からの参加者はIPCC副議長である東京大学谷口教授をはじめ、IPCCタスクフォースインベントリ(TFI)共同議長のIGES平石氏、国立環境研究所原沢氏、通 産省但馬氏とGISPRI田中である。


  Watson議長(米)の挨拶、議事説明に続いて、議題に沿って討議が始まった。

  • 第18回ビューロー議事録案の審議

  • 第3次評価報告書(TAR)の各作業部会、報告書などの進捗状況
    第1作業部会(共同議長、Ding―中国)
    第2作業部会(共同議長、Canziani―アルゼンチン)
    第3作業部会(共同議長、Metz―オランダ)

  報告にあたり、特に政策関連の10の質問(A)とクロスカッティングイシュー(B)の扱いについて報告がほしいと議長から要請があった。この政策関連の質問への回答は統合報告書の主要部分であり、政策担当者が最も興味を寄せる部分である。今後の報告書作成作業においてもれらの回答を如何に執筆するかが焦点になる。また、クロスカッティングイシューは谷口教授及びインドTERIのパチョーリ博士を中心に検討が進められており(GISPRI協力)報告書の内容の整合性を高めるものとして重要視されている。

  各部会では外部専門家による査読段階に入っている(既に終了したものなど若干の進捗状況の相違あり)。執筆者による会合は何回か既に行われ、今後も専門家、政府関係者によ査読コメントをもとに検討が進められる予定である。前述の(A)については第1作業部会では特に安定化、気候シナリオ、排出シナリオなどについて検討が進んでいる。第2、3では具体的に一部の章が総合的に対応しているといった状況である。(B)については関連する章で対応しており、特に気候モデルや気候変動の影響に伴う「不確実性」について明示的に進めており、さらに発展性、公平性、持続可能性(DES)といった問題や適応策・緩和策のコスト評価、意思決定手法なども統一に用いられるガイダンスペーパーに基づき議論を進める予定であるとのことであった。


クロスカッティングイシュー(副議長, Pachauri―インド、谷口)

 コロンボDES専門家会合、東京コスト専門家会合の成果 の報告、前日の第2作業部会執筆者のためのクロスカッティングイシュー会合の報告を行った。執筆者と査読者をガイドする方法の一つとして、ユーザーズガイドの作成を進めていること及びその内容詳細を資料に基づき報告した。来年初めに執筆者を対象とした電子メール会合を行いガイダンスペーパー及びユーザーズガイドを早期に完成すること、また、ワークショッププロシーディングを含めてIPCCの出版物(IPCC Supporting Material)とすることが決定した。

航空と大気の特別 報告書

 コスタリカにおいて了承した。ケンブリッジから出版予定である。

排出シナリオ特別 報告書(Metz)

 本報告書については多くの排出シナリオの中で参照となるものについて多くの論議がなされてきた。結局今までいくつかの将来ケースの代表とされていた4つのマーカーシナリオを強調しないこととし、40のシナリオをロードマップと説明とともに公開することとなった(ウェブサイトで2001年秋まで公開)。

技術移転特別 報告書(Metz)

土地利用変化と森林の特別 報告書(Watson)

TFIについて (TFI 共同議長, Nyenzi―ジンバブエ、平石)

 Nyenzi氏より最近の進捗状況について資料に沿って説明があった。後に平石氏が、IPCC
の他の仕事とは違った性質の仕事であるが、ワークショップを2000-2003年に開くという点、専門家の知見を集めることが重要という点では性質が同じであると述べた。

データ配布センターについて(第1作業部会技術支援ユニット長, Griggs―英)

 影響研究、気候モデルのインベントリを作成した。すべてのプログラムは利用可能であ
り、CD-ROMを無償で配布するとのことであった。

  • 通 信に関する戦略 (Pachauri) 

     すべてのIPCC 出版物、CD-ROMを含む電子媒体による通信・データ提供、検索エンジン・インデックス・将来の計画通 信に関する戦略を検討するグループが東京で6月末に発足した。今後ウェブサイト上のリンクの強化(UNFCCCや、関連サイト、また、多言語のIPCCに関連するサイトなど)が図られることになった。
     また、IPCC事務局長から第4番目の報告書について統合報告書に3つの作業部会の政策決定者向け要約と 技術報告書を加えた、総計で 150 ページ程度の第4番目の報告書を作ることが提案、決定され、少なくとも国連言語で翻訳することになった。

     

  • 予算について(Fethi―米)

     
    予算については相変わらず厳しい状況が続いている。モーリシャス、ペルーのように途上国でも拠出金を出す(中国も拠出金を出す旨のコメントあり)一方、多くの先進国が出していない状況である。今後とも、さらなる資金源を開拓するとともに、拠出金をだしていない先進国に拠出している途上国などの資料を添えて拠出を依頼することになる。次回の全体会合までに、国連スケールやNGOからの寄付の取り扱いについての案を作成して提出し審議することとなった。

     

  • 手続きに関して (Warrilow―英)

  • 統合報告書の検討

     統合報告書の執筆チームは議長、副議長2名、各作業部会の共同議長各1名、各部会の執筆者4名(地域バランスと専門分野のバランスを考慮して各共同議長による推薦)とすることになった。

     

  • UNFCCCとの関係について

     COP5ではIPCCの特別サイドイベントが好評であった。UNFCCCにおける今後の
    サイドイベントについて話し合われた。SBSTAからの効率のよい要請があり、ビューローによって指導された場合に開催すると議長により締めくくられた。

     

  • シナリオ評価ツールについて(Houghton―英)

     

  • その他

    次回全体会合の開催場所についてはモントリオール(カナダ)、ナイロビ(ケニア)が
    候補地としてあがっており、現時点では前者が有力である。

<新WMOビルを訪れて>

 ジュネーブの街から少し離れたところに現在のWMOビルがある。非常に新しく、斬新 なデザインである。「ガラス張りの青緑色の寒そうなビル」と言えば誰にでも間違いなくつれてきてもらえそうな外観である。中に入ると木とガラスの印象が強い、清潔でセンスが よいオフィス空間が広がっていた。エレベータもガラス張り、各部屋と廊下のしきりもガラス張りである。「世界気象機関」だけあって空の上にいるような気分になれる。窓の外は青いガラスが1,2メートルのすきまをあけて外壁を覆っており、日照によって可動させ るようである。その青いガラスが実は湿式の透明太陽電池だというのでなければ、一見、 断熱効率が悪く、エネルギー的に不経済なビルであるが、IPCC事務局長の話では熱効率が 非常に高いと誇る建物らしい。計算してみないと実際のところは分からないが、温暖化を 扱う機関にしては印象が悪いのではないかと心配だった。それにしても非常にさわやかな場所であった。

(田中加奈子)