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2000年5月号

SEMINAR
第1回ワシントンセミナー
「競争経済における効率と公正」開催報告

米国大使館東京アメリカンセンター・マンスフィールドセンター・(財)地球産業文化研究所の共催で表記セミナーを開催したのでその概要を報告する。



1.セミナー概要

 3月6日〜3月10日の5日間、ワシントンおよびその近郊で、政府機関(司法省・USTR・FCC・CRS等)・シンクタンク(ブルッキングス・AEI・カーネギー財団等)・民間企業等を訪問してラウンドテーブル形式で議論する、という形式でセミナーを行なった。5日間で18の機関を訪問し、29名の講師と討論の機会を持つことができた。
 参加者は、産業界(5名)・官界(2名)・報道(1名)・シンクタンク(1名)より30歳台を中心に募り、主催者・事務局として東京アメリカンセンター・マンスフィールドセンター・地球産業文化研究所から計5名が同行した。
 講師陣のわかりやすいスピーチと質問への真摯な対応、さまざまなバックグラウンドを持つ参加者の活発な発言と積極的な参加姿勢により、非常に有意義なセミナーを行なうことができた。
 なお、本セミナーは今回が第1回目の開催であり、今後毎年1回開催することを予定している。

2.セミナー主題

 本セミナーの主題は「競争経済における効率と公正」とした。競争促進型システム・規制改革・ベンチャー振興・透明性等について、アメリカ経済を例に討議し、そこに経済力の源泉となる効率性・公平性がどのように実現されているかを研究する。
 また日本と米国が民主主義の価値観・安定的経済成長・自由貿易へのコミットメント(特に東アジア・太平洋地域)の共有を確認し、日米パートナーシップをより強固にするための高度な情報交換をすることも、本セミナーの目的である。
 さらに、産業界・官界・報道・シンクタンクと多彩な出身母体を持つ若手の参加者が親交を深め、人脈を広げることも、本セミナーの目的の一つである。

3.プログラム −ベンチャーへの人材・資金供給−

 アメリカのアントレプレナーやベンチャーキャピタルの実態を知る機会として、全米起業家協会(National Commission on Entrepreneurship, http://www.ncoe.org/)のエリック・ペイジズ博士、全米ベンチャーキャピタル協会 (National Venture Capital Association, http://www.nvca.org/)のポール・ブラ ウネル氏、ジョン・テイラー氏のスピーチを伺うことができた。また実際のベンチャ ー経営者としてヒューマン・ゲノム・サイエンシズ(Human Genome Sciences,http://www.hgsi.com/)のCEOであるウィリアム・ヘーゼルタイン博士、ネットベンチャーのインキュベーション事業を行なっているモリノ・インスティテュート(http://morino.org/)を訪れた。

 アメリカでも今のアントレプレナーたちの親の世代までは、大企業へ就職することが一番良いと思われていた時代だったそうである。しかし今では、大学の研究室の卒業生の中で、最も優秀な人がベンチャー経営者となり、2番目に優秀な人がそのパートナーとなる。3番目が既存のベンチャー企業に就職し、4番目はしょうがなく大企業に就職する、という時代だそうである。

 またアメリカには、既存産業・既存組織におけるトップの人材を新規産業に供給するシステムがある。今回訪問したヒューマン・ゲノム・サイエンシズのヘーゼルタイン博士は過去に7つのベンチャーを立ち上げている。またゲノムベンチャーの最右翼と言われているセレーラの設立者は元NIH(国立保健研究所)の研究者である。「大企業役員」「大学教授」「政府関係者」等のトップレベルの頭脳が新規産業へ移動していく文化がアメリカにはある。

 さらに、アメリカにはベンチャー企業へ積極投資する人たちが大勢いる。エンジェルと言われる金持ちに限らず、一般 人も401Kなどを通じてベンチャー投資を行なう。そして大企業もベンチャー出資を積極的に進めている。10社のうち7社は失敗すると言われるベンチャーへの投資もポートフォリオ(分散投資)の一つという意識で投資し、リスクを恐れない。

 そもそもアメリカ政府にはベンチャー振興のための特別 の政策は存在せず、ベンチャー振興、新規産業への投資は民間マネーで行なわれる。
 そしてこれもよく言われていることだが、貸し付け金ではなく資本としてマネーが供給されるので、失敗しても、アントレプレナー本人には貴重な経験という財産だけが残り、負債は残らない。
 
 「ベンチャー精神の高まり」「トップレベルの人材の流動性」「雇用市場の流動性」「株価の単調上昇」「401K」などが相俟って「新規産業へ人材・労働力・資金を供給する」ための有効なシステムができあがっている。

 今回のセミナーではプラス面ばかりでなくマイナス面も指摘された。
 労働市場の流動性はアメリカ経済成長の一つの要素と言われているが、その流動性の犠牲になっている人々も存在する。アメリカの大企業は業績が良くても解雇をする。大企業を解雇された人の一部はベンチャー企業へ就職するが、そのベンチャー企業の半分以上は失敗する。つまりまた解雇されてしまう。彼等は所得水準も低く、年金・保険の加入率も非常に低い。失敗したベンチャー経営者はまた新しい事業を始めればよいが労働者の方は不安定な生活が待っているのみである。

 またベンチャー成功者の「富の社会還元」への消極性も指摘された。ビル・ゲイツなどはごく一部の例外で、特に若いベンチャー成功者に富を抱え込んでしまう傾向が強いそうである。

4.プログラム −規制緩和−

 「規制緩和が最終的に消費者の利益に結びつく」ということは今回のセミナーの中で繰り返し強調されたことである。問題は、規制緩和が「サービスの質の劣化」「ユニバーサルサービスとの両立」「安全性の劣化」「環境問題」等の弊害を引き起こす可能性があり、いかにしてそれらと両立できる制度を構築できるかである。規制緩和の推進により「効率の良い社会の形成」を追求しつつ、それに伴ない失われがちな「公平性」も保たなければならない。

 規制緩和とは単に政府が何もしないことを意味するわけではない。政府が確固とした理念を持って「制度設計」を行ない、その制度の元に民間が自由に競争することに意味がある。その制度設計の過程では、透明でオープンな環境のもとに行なわれる十分な議論が必要である。パブリック・コメント制度など、政策決定の際の透明性の重視も政府機関等で度々強調された。

 今回のセミナーでは、特にエネルギー業界における規制緩和の問題について聞く機会を多く得た。エンロンのエディス・テリー氏、ブルッキングス研究所のピエトロ・ニボラ博士(http://www.brook.edu/scholars/pnivola.htm)、未来資源研究所(Resources for Future)のティモシー・ブレナン博士(http://www.rff.org/about_rff/web_bios/brennan.htm)、全米公共事業規制委員 協会(National Association of Regulatory Utility Commissioners, http://www.naruc.org/)のチャールズ・グレイ専務理事、上院エネルギー資源委員会スタッフの方々等である。

 議会調査局(CRS)で「我々には失敗する権利がある」という発言があった。この言葉に象徴されるように、「まず規制緩和をやってしまい、問題が発生したらそれを改善する仕組みを作る」というのがアメリカの考え方であり、「規制緩和をやる前に、やった場合の問題点を考える」のが日本であると言える。
 エネルギー業界の規制緩和がまさにこの典型であり、現在アメリカは、規制緩和によって引き起こされた電力業界の問題点を整理し、理解し、対応策を模索している最中である。特に環境問題との両立で、アメリカは非常に苦労している。日本は今から本格的な規制緩和がスタートする局面 にある。日本は、エネルギーセキュリティ等の日本特有の問題も考慮しつつ、アメリカの経験も活かし、規制緩和を推進する必要がある。

 規制緩和に限らず、あらゆる場面で言えることだが、アメリカにはシンクタンクやNPO等の「官」と「民」の間の「公」とでも言うべき層が日々知を蓄積しており、その存在が、競争力があり効率的な社会を形成する上で重要な役割を果 たしていることを実感させられた。

5.それぞれのスピーチと感想

Deregulation in the U.S. Economy: Trends & Transformation
Steven C. Clemons
Vice President
New America Foundation

本セミナーの最初のプログラムとして、規制緩和の問題点を整理していただいた。
規制緩和は、「サービスの質の劣化」「ユニバーサルサービスとの両立」「安全性の劣化」「環境問題」等とのトレードオフとなる。それらとの両立をどうやって保っていくかが重要なポイントである。規制緩和の推進により「効率性」を追求しつつ、それに伴ない失われがちな「公平性」も保たなければならない。例えば、田舎の通 信会社の中にはまともなサービスが提供できずにFCCに罰金を科されている企業もある。また航空業界では客の少ない路線に対する補助金制度がある。これらの罰金または補助金をどういう制度の元に運用していくか、そこに「透明性」が必要とされる。
「まず規制緩和をやってしまい、問題が発生したらそれを改善する仕組みを作る」というのがアメリカの考え方であり、「規制緩和をやる前に、やった場合の問題点を考える」のが日本である。
また、アメリカは州政府の権限が強く、規制緩和の様相も州によってかなり異なることも特徴である。
 

Competition Policy, Application of antitrust law
Kenneth Heyer
Chief
Competition Policy Section, Antitrust Division, Department of Justice

アメリカ司法省の反トラスト部門には50人のPh.Dがいるそうである。
企業合併の際の反トラスト法の適用基準や、他社の競争参入を阻む目的の過度の価格引き下げに対する法の適用基準について、マイクロソフトやアメリカンエアラインの例を交えながら、説明していただいた。当たり前のことだが、市場占有率が高いから違法なわけではない。市場占有率が高いことを利用して、価格支配力を行使することや、顧客に対して他社との取り引きを阻むような圧力をかけることが違法であるということを強調していた。
昨年1年間で約5000件の合併申請があり、実際に違法と判断されたのは76件とのこと。
 

Energy: The Current Battlefield for Deregulation
Pietro S. Nivola
Senior Fellow, Governmental Studies
The Brookings Institution

天然ガス業界、石油業界、電力業界における規制緩和の経緯と問題点について説明していただいた。アメリカは各州政府が原子力発電所の建設を拒んだことや、競争激化の影響で安いエネルギー源による発電に偏りやすいために、石炭火力の割合が高くなっている。またガソリンにかかる税金が他国と比較して著しく低く、一人当たりのガソリン消費も先進国の中で突出しており、アメリカは世界で最も多くのCO2を排出する国となっている。総じてアメリカにおけるエネルギー業界の規制緩和は、価格低下には貢献したが、環境問題との両立という点で大きな問題を引き起こしている。

Implementing Electricity Competition: Policy Problems to Solve
Timothy J. Brennan
Professor
Policy Sciences and Economics
University of Maryland, Baltimore County

送電線の独占・送電手数料の適正価格化・電力需要の平準化・電力供給の信頼性向上・州政府による規制と連邦政府による規制の整合性・環境保護、等を電力業界にの競争促進における問題点としてリストアップし、各々について説明していただいた。
まず規制緩和をやってしまい、そこで起こった問題点について綿密な解析を行ない解決を模索する、というアメリカの姿勢の典型が電力業界である。環境以外の問題は、アメリカ方式に従って後から制度修正することも可能だろうが、環境(CO2排出)については修正不可能な段階に入っていると考えられる。

Financial Services: Competition and Prosperity
James Glassman
DeWitt Wallace-Reader's Digest Fellow
American Enterprise Institute for Public Policy Research

昨年9月に「Dow 36000」という本を出版しており、現時点でのダウ平均の理論的水準は36000ドルである、としている。典型的ニューエコノミー信奉者。過去のトレンド・生産性の向上・テクノロジーの進歩・規制緩和の進展、等からその背景の説明をいただいた。
ダウ平均は日経平均(225社)と異なり、たった30社の株価で指標を算出する。いかなる時代においても業績の良い30社だけを常に選ぶようにすれば、消費者心理に常に好景観を与え続ける指標にできる。いっそのこと日経平均も30社にしてしまえば、景気低迷時に心理的ブレーキがかかるのを抑えることを期待できる。もちろん今のアメリカのように、景気過熱時にはアクセルをふかし過ぎる要因にもなってしまうが、トータルではメリットの方が大きいのではなかろうか。
36000ドルの真偽はともかく、そんなことを思った。

Gene Industry up-to-date
William Haseltine
CEO
Human Genome Sciences

元ハーバード大学の教授で、今の会社が7つめのベンチャー設立という方。カリスマ性があり、アメリカのベンチャー魂を体現しているような人であった。
ワシントン近郊におけるゲノムビジネスの興隆、ゲノムビジネスの実態・見通 し、アメリカでなぜベンチャーが盛んなのか、等についてご説明いただいた。
スピーチをしていただいた部屋の壁には、人の遺伝子の塩基配列についての特許取得を示すプレートが数十枚飾られていた。「この塩基配列を使えば、何々の特効薬を作れる可能性がある」という類いの特許で、実際に開発された薬に対する特許ではない。
つい最近、英米首脳が単なる塩基配列の特許は無償公開すべきとの声明を出したが、これらの会社は単なる塩基配列情報を大きな製薬会社等に有償で公開することを前提にビジネスモデルを構築している。すでにゲノム解読装置に莫大な投資をしており、単なる呼びかけに応じるとは思われない。実際、世界各国の製薬会社と塩基情報の使用に関する契約をすでに締結しはじめている。インフラとしてのインターネット接続料金を安くするべきというのと全く同じ理由で、塩基配列情報も限りなく安い価格で公開されなければ、ゲノムビジネスがITビジネスと同様に爆発的成長をする可能性が阻害されてしまう懸念がある。

Deregulation in Japan and Trade Negotiation between U.S. and Japan
Barbara Weisel
Director of Japan Affairs
Office of the U.S. Trade Representative 

通信・金融・エネルギー・建築、等の分野での日本での規制緩和促進と日米通 商交渉についてスピーチしていただいた。何より驚くのは、30そこそこ(に見える)の女性がDirector of Japan Affairsという役職についていることである。
「自主規制の要求やアンチダンピングなどを行ないつつ日本に市場開放を要求するのはダブルスタンダードではないか」という質問に対して、ナーバスな回答をしていた。どの国もそれぞれの国状に応じて保護すべき産業はある。日本にもあるし、アメリカにも当然ある。開放するより保護した方が消費者の利益になると判断される場合はそうすべきであろう、という主旨の回答をされていた。またアンチダンピングについてはUSTRの管轄でない、と前置きして、WTOでのアンチダンピングに関する議論を待つと回答された。
日本企業がアンチダンピングはやめてほしいと切に願っているのと同じように、USTRの担当者も同じことを思っている、という少し考えてみれば当たり前の事実にようやく気づいた。

Communications Regulation in the United States
John Berresford
Senior Antitrust Counsel, Industry Analysis Division Common Carrier Bureau
Federal Communications Commission

FCCの政策コンセプトとブロードバンド(インターネット接続)の普及についてご説明いただいた。
放送・通信における規制政策の基本概念は、「低所得層も含めた全ての人が安価でユニバーサルな電話・放送サービスを受けられることを保証しつつ、政府の指導のもと、民間企業がフェアな競争ができるようにすること」である。また有限資源である周波数の公平な割り当ても重要な政策である。そしてFCCの全ての決定は、パブリックコメントなどのオープンなプロセスの中で行なわれなければならず、全ての決定はあまねく公開されなければならない。
FCCは現在ブロードバンドの普及に注目しており、そのために規制緩和と競争・投資の促進を進める。FCCのやるべきことは、周波数の割り当てなどの最小限にとどめ、ケーブルテレビ網・電話線網・衛星網など、様々な技術でブロードバンドが普及することを支援する。その際、地方や低所得層にもサービスが行き渡るよう監視する。
インターネットを普及させるためにFCCは何をしたのかという質問に対して、"Just Do Nothing"と回答したのが印象的であった。

Convergence: Impact on Regulatory Policymaking
Dan Connors
Associate Division Chief
Commercial Wireless Division, Wireless Telecommunications Bureau
Federal Communications Commission

技術の進歩により、インターネットがどんどんブロードバンド化していくと、放送・通 信の垣根が無くなっていく。今まで違う業界ですみわけをしていた電話会社・無線通 信会社・放送会社・ケーブル業者が、電話・ネット接続・コンテンツ配信・放送などの様々なサービスを、垣根を越えて提供できるようになる。つまりブロードバンド化によって業界の統合が起こる。これに伴ない、今までは各業界ごとに決められていた規制を整合性のあるものに変えていかなければならない。

The Emerging Economy
Erik R. Pages
Policy Director
National Commission on Entrepreneurship

アメリカ経済の繁栄、特に新規産業の勃興による発展の理由を5つのポイントに分けて解説していただいた。
・コア事業に専念してコア以外はアウトソーシングする、といったビジネス戦略の変化
・ほんの数年でビジネス環境が大きく変化するダイナミクス
・ベンチャーキャピタル・エンジェルなどの直接資本市場の充実
・ベンチャー精神
・インターネットに代表される新しいテクノロジー

また問題点として、
・アメリカでも一部の地域でしかベンチャーの隆盛が起こっておらず、地域の偏りがある点。
・ベンチャー企業に就職した人の離職率の高さ、年金・健康保険などの加入率の低さ等、生活の安定性の欠落。セーフティネットの不備。
・職業訓練やベンチャー精神を根づかせるための教育。
・ベンチャー成功者たちの富の社会還元の少なさ(ビル・ゲイツなどは一握りの例外でし
 かない)。を挙げた。

労働市場の流動性の高さをアメリカの繁栄の要因にあげつつ、その弊害として、その流動性の犠牲になっている人たちもいることを指摘していることが興味深い。ベンチャー企業10社のうち5,6社は倒産し、成功するのは2社程度というのはよく言われる数字である。つまり大企業から解雇されてベンチャー企業に就職した人のうち、半分は何年も経たないうちにまた解雇されているということである。ベンチャー経営者たちには、失敗という財産が残り、また新しくベンチャーを起こせばいいが、従業員にはまた失業生活が待っているのみである。一部はストックオプションなどで一従業員でありながらにわか長者になる人もいるだろうが、たまたま成功したベンチャーの従業員が億の価値がある株券を持ち、その他大勢は給料の代わりに紙屑の株券をもらっているというのは、やはり富の分配構造としていびつという観は否めない。
また、今でも十分旺盛なベンチャー精神があると思われるのに、まだ教育が必要と考えるというのも面 白い。

Incubation of Netpreneurs
Clair Sassin
Morino Institute

ワシントンD.C.から車で1時間ほどのところにあるネットベンチャーのインキュベーション施設「11600サンライズ」を訪れ、そこでお話を伺った。ここはインターネットを使ったネットビジネスを新しく始めようとする人たち(ネットプレナー)に、そのための環境を提供する施設である。インターネットに高速に接続するLAN回線は当然のこと、フィットネスルーム、バスケットコート、それにチルアウトルームというリフレッシュスペースがあり、ビリヤードやエアホッケーが備え付けてある。またコンシェルジュが母親に誕生日プレゼントを贈るというような日々の雑用を請け負ってくれる。
十数社のネットベンチャーの他、ベンチャーキャピタルやベンチャー銀行も数社入居しており、ネットプレナーたちの便利性を増している。ここはあくまでもインキュベーションを目的としており、実際に事業が順調に立ち上がった後は、手狭な事務所を離れ、より広いスペースを持つ他の施設へ巣立っていく。たいていは2,3年でテナントは入れ替わっていく。
「11600サンライズ」はマリオ・モリノと「う自らがソフトウエアベンチャーで成功した人が、次世代のネットプレナーのために作った施設である。ここにアメリカのマネー循環の好例がある。

(文責 古見孝治)