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2000年7月号

CONFERENCE
第5回アジア石油・ガス会議出席報告


5月29日(月)〜30日(火)、マレーシア・クアラルンプールにて第5回アジア石油・ ガス会議(The 5th Annual Asia Oil & Gas Conference)が開催され、オブザーバーとし て参加したので以下の通り報告する。


<会議の主な内容>

 ペトロナス・マレーシア国営石油会社が主催した第5回アジア石油・ガス会議へは、 約600名が参加した。同会議では、主に石油関連企業、研究機関、エネルギー情報企業等 の有識者が、世界およびアジア地域における石油をはじめとするエネルギー需給動向に関 する講演を行い、日本人講演者としては、アジア太平洋エネルギー研究センター横堀所長 が、「OPECおよび非OPEC国による石油生産のアジア石油市場への影響」を、国際エネルギ ー機関(IEA)増田石油市場・緊急対策時局長が、「2010年までの世界の石油供給見通 し」 についてそれぞれ講演を行った。

1.マハティール・マレーシア首相基調講演

 最近の巨大石油資本の合併(BPとAmoco、ExxonとMobil、TotalとFinaとElf、さらに はBP−AmocoとArco)により石油産業はオリゴポリー(oligopoly:市場の売手寡占)へ と向かおうとしている。各国の国営石油会社にとりもっとも大事な役割は自国の炭化水素 資源の開発を制限し、管理することである。国営石油会社は欧米の巨大石油資本に対抗す るほど大きくなく、今後国営石油会社が単独で生き残ることができるかは不透明である。 生き残れない会社は、将来、石油メジャーに飲み込まれるか、あるいは連携(アライアン ス)を模索することになろう。
  今後、新規油田や、天然ガス田を開発することで、産油国は当面自国需要を賄うことが できる。マレーシアは、現在日量65万バレルだが、自国分を十分にカバーでき、余剰分は 輸出に振り向けている。石油価格が上昇しても下落しても、マレーシア経済において石油 は一部門にすぎないため、マレーシア国内経済へ与える影響は少ない。マレーシアは石油 のみに依存しているわけではなく、最近の主要な収入源は、電気・電子部門とやし油部門 である。
  世界の人口、国民所得が増加するにつれて、常に石油・天然ガスへの需要は存在してお り、拡大傾向にある。しかし、石油と天然ガス価格の高騰によって、途上国でそれらのエ ネルギーを買えない人々は、山林の木を伐採して、燃料にし、地球環境へ負荷を与えてい る。世界のエネルギー資源(化石燃料)が涸渇する時がやがて来る。このため、石油、天 然ガス会社は、将来を見越して積極的に代替エネルギー資源を探すイニシアティブをとる べきであるが、収益面で影響を与えかねない。このため、政府がその活動に介入すること とし、マレーシア政府は石油収入の一部を、代替燃料の研究開発に振り向ける予定である。




2.ロイヤルダッチシェル社のMoody-Stuart会長:
 「アジアのエネルギー市場の成長と成 熟」について


 今後アジア地域でのエネルギー需要が増加するにしたがって環境問題、とりわけ大気汚 染が深刻化する。その対策として、都市部での石炭生焚禁止がある。これによって、家庭 用・産業用ボイラーや火力発電所からの硫黄酸化物、窒素酸化物さらには二酸化炭素の排 出量が削減される効果がある。
  今後使用されるエネルギー源として、石炭からクリーンなエネルギーである、天然ガス への転換が進むものと予想している。

3.韓国Sungsim外国語大学Shin教授:
「韓国エネルギー産業の再構築の見通し」について

 最近の米国エネルギー省の予測によれば、1997年から2020年にかけて、全世界のエネ ルギー消費の伸びは60%になると見込まれ、同期間中のアジア途上国のエネルギー消費伸 び率は2倍以上になると予想されている。韓国も、1999年のエネルギー消費は、1997年か ら1998年の経済危機以前のレベルを超えた。
 一方、先進国のエネルギー消費伸び率の予測では不確実性が高く、その要因の一つとし て、京都議定書に基づいた温暖化防止対策による潜在的な影響がある。
  2020年において、世界のエネルギー消費のうち、89%は化石燃料で占められると予測さ れる。このうち、石油は依然として主要なエネルギー源として利用されるが、天然ガスが 先進国での新規の発電所用燃料として利用が拡大すると見込まれている。

4.米国Emory大学経済学部Chakravorty教授:
「エネルギー構造改革と環境への負荷」について

 発電部門での新たな燃料源として、石油・石炭から天然ガスへ転換し、天然ガス需要が 増加することが予想される。これにともなって、天然ガス市場価格の上昇が見込まれるこ とから、原子力発電は今後ともコスト面での競争力を持つものと予想される。
 炭素税の導入により、発電部門での使用燃料は、石炭から天然ガスへ、または、再生可 能エネルギーや原子力へシフトする。オーストラリア等の天然ガス輸入国は、インドネシ ア等の天然ガス輸出国の国内消費が拡大することにより、天然ガス調達面 で大きな影響を 受ける。
 天然ガス価格は、エネルギー転換にともなった需要量の拡大により価格が上昇し、天然 ガス産出国によるその産出高は2010年までに現在の2倍になるとの予測がある。また、長 期的には、クリーン開発メカニズム(CDM:途上国向けの温室効果ガス排出量 削減プロジェクト)に関わる資金と新規技術の本格的導入により、石油・石炭の需要を削減させる効果 が生じるであろう。

(伊藤裕之)