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2004年 2号

Symposium
第14回GISPRIシンポジウム
「新たな日中経済関係をどう構築するか」開催報告
平成15年度日本自転車振興会補助事業
 2004年2月5日(木)、経団連会館11階国際会議場(東京都千代田区大手町)にて、経済産業省、(社)日本経済団体連合会、(財)日中経済協会の後援を得て、標記シンポジウムを開催した。
 駐日中華人民共和国特命全権大使の武大偉閣下による特別講演のあと、5人ずつの講師によるセッションを2つ行った。以下にその概要を報告する。


1. 特別講演「中国の経済社会の現状と展望」
 (駐日中華人民共和国特命全権大使:武大偉閣下)
【講演要旨】
 1978年の改革開放以来、現代化建設は目覚しい成果を上げ、経済は持続的な成長を続け、社会生産力と総合的国力が向上した。社会主義市場経済体制が初歩的に確立され、多形態の所有制経済が発展、開放型経済が形成されつつある。経済成長の質と収益は著しく向上した。経済成長率9.1%、GDP1.4兆$(約150兆円)(世界第6位)、輸出入総額8,512億$(世界第5位)、外貨準備高4,033億$(世界第2位)、石炭、鉄鋼、カラーテレビ、セメントの生産量は世界一。3大プロジェクト(西部/電力⇒東部へ、西部/天然ガス⇒東部へ、南部/水⇒北部へ)は全面的に展開、順調に推移している。

  人民の生活は衣食問題からゆとりある生活へと飛躍、収入、寿命、教育、物質的、文化的生活が向上し、1人当たりGDPは1,000$を超えた。消費構造は衣食から、住宅や交通条件改善の追及へシフト。高速道路、携帯電話、インターネット、マイカー、マイホーム、海外旅行の伸びが著しい。

  他方、問題点も顕在化しつつある。農民の収入伸びが鈍く雇用圧力が大きい、一部の地域、業種での発展が過熱で地域の発展がアンバランス、資源ネックの矛盾が突出、環境問題などだ。これらの解決には、改革と発展に頼るしかなく、全面的調和のとれる持続可能な発展観を打ち出したところ。政策を安定させ適度に調整し、統一して計画し、各方面に配慮して調和の取れた発展を目指すことが主軸だ。具体的には、都市部と農村部の二元化構造の改善、東部・中部・西部の良い連動、社会の進歩と人間の全面的発展、経済環境と資源環境の調和、国内・国外の2つの資源と市場を生かす、などだ。

  中国共産党第16回大会において、「ゆとりある社会を全面的に建設する雄大な青写真」を策定した。2020年のGDPを2000年の4倍増の4兆$に、1人当たりも3,000$超という目標である。ケ小平理論と3つの代表思想に基づき、経済建設を中心として改革開放を確固不動に推進し、科学的発展観を堅持、社会主義市場経済、社会主義民主政治、社会主義先進文化を発展させ、経済社会と人間の全面的発展を促進する。

  過去25年間の実績から見ても、ゆとりある社会を全面的に築き上げる目標は必ず達成できる。中国の発展は世界の平和と繁栄に寄与し、国際資本のためにも大いに活躍できる新しいプラットホームを提供している。中国の絶え間ない発展が、世界経済を引っ張っていく牽引車の一つになっているという見識は正しい。中国の発展が提供している広い市場と大きなビジネスチャンスは、アジアと世界に発展のチャンスと実際の利益をもたらす。中国はアジアの振興と世界の平和と発展のために新たな貢献をすると十分に信じている。

  日本からの円借款は、中国現代化建設に重要な役割を果たした。昨年の両国の貿易額は1,335億$に達し過去最高。中国にとって日本は11年連続、最大の貿易パートナーだ。中日経済協力と交流がより大きく発展し、両国人民に幸せをもたらすよう心から希望する。


2.


第1セッション 「中国経済の発展と日本及びアジアの将来」
問題提起 関 志雄 (独立行政法人 経済産業研究所 上席研究員)
コーディネーター 福川伸次 ()電通 顧問)
パネリスト 関 志雄 (独立行政法人 経済産業研究所 上席研究員)
      木村福成 (慶應義塾大学 経済学部 教授)
      津上俊哉 (独立行政法人 経済産業研究所 上席研究員)
      原田 泰 (内閣府 経済社会総合研究所 総括政策研究官)
関 志雄 福川伸次 木村福成 津上俊哉 原田 泰

【問題提起(関志雄)】
中国の台頭は日本にとって挑戦というより実はチャンス。中国脅威論から、中国牽引論に変わってきている。日中関係は、競合関係ではなく、補完関係、すなわちWin―Win原理にある。「中国の強い分野においては日本は弱く、逆に弱い分野では日本が強い」という関係が補完関係。対米輸出市場における中国との競合度合いは20%程度。日本の強い分野(R&D、主要部品、流通、ブランド、サービス分野)はビジネスチャンスだ。
日本の自動車産業がなぜ中国へ進出するのか?本来は日本で生産し輸出すればよいのだが、まだ関税25%の壁がある。そのためにも早く日中間でFTAを結ぶべき。空洞化対策にもなるはず。
リスクに関して、一つは為替調整、人民元切り上げ問題。もう一つは景気循環からくるリスク、中国発インフレの可能性、景気過熱問題だ。
外貨準備高が膨張しているが、米国債など買うより、国内経済建設のために使うべき。
中国と競合していない80%の分野は中国からの輸入が安いほうがよく、人民元切り上げは決して朗報ではない。切り上げになって得をするのは競合している20%部分だけだ。
中国のインフレ率がじわじわ上がってきているが(3%)、当局は引き締め政策に転じてきている。今後の中国経済はソフトランディングの可能性が高い。

【関志雄氏の問題提起に対し、3人のパネリストがフリーに発言】

(木村)
〔賃金水準格差による優位性の論点に関して〕立地の優位性は賃金だけではなく、「サービスリンクコスト」(輸送費、電気通信費)や「集積の利益」(ビジネスパートナーの存在有無等)もあることに留意すべき。また、直接投資をする場合、「集積の利益」や「規模の経済性」を考慮しなくてはならない。日本と中国がどういう役割分担をするのか、ということを冷静に考えて立地を考えるべき。
〔対中FTAに関して〕自動車の例は理屈ではその通りだが、そう簡単な問題ではない。単なる関税引き下げ議論ではなく、中国国内の政策環境をどう改善してもらうか、そのためにはどのような内容をFTAに盛り込み、中国にどう働いてもらうかがポイントだ。東アジア全体の経済統合を目指すのは暗黙の了解だが、その中身を主体的に考えるのが日本の役割。韓国、タイ、フィリピン、マレーシアとも交渉が始まったが、どんな内容を盛り込んだらよいビジネス環境ができていくのか、各国の国内政策をどう変えていけるのかが大きなポイント。対韓国、対ASEANとじっくり詰めた内容を雛型にし、次に中国を視野に入れていくべきで拙速は良くない。メキシコを含めると対象は5つだが、このうち2〜3は実質年内合意できよう。中国も早ければ2〜3年の後に検討すべきタイミングになろう。このときに、中国が本当についてこられるかどうかという点も議論すべき。

(津上)
補完関係が実感される時代になった。対中輸出額、GDPを見ても大きな伸びだ。日本はいずれ中国にGDPで追い抜かれるだろう。
成長する中国のリスクとして、「地域格差」、「貧富の格差」があるが、彼らもその是正にきちんと対応しており心配はなさそう。
今後の中国の成否を左右する問題として、ひとつに「人口移動」がある。農民と都市という戸籍の二元制度を一元化した。億単位の人間が都市へ流入し労働力確保の点では良いが、他方、環境問題、就業・失業問題、社会環境等、大きなインパクトが及ぶことになり、うまく対処できるかどうか。
もうひとつは「資源、エネルギー、水というような制約」がどういうことになるのか。鉄鉱石の価格高騰にも見られるように、中国要因による値上がりが今後、内外にどう影響を及ぼすのか。ひょっとすると、南北経済問題の解消に少しは役立つかもしれない。
人民元問題に関し、関氏は政治と経済は違うのかもとおっしゃったが、これはむしろ自然なことだ。どこにも勝ち組、負け組が出てくるわけで、日の当たらない損害を被る人をどうしていくのか、これはFTAの大きな問題、根本問題かもしれない。

(原田)
日本と中国はWin―Winの関係にある、競争関係ではなく補完関係にあることは、まさにその通りだと思う。しかも、補完関係が一挙に競争関係に変わるというような大きなことが起きることは余りないのではないか。
GDP1.4兆$の約1/3に相当する4,000億$の外貨準備は大きすぎる。日本の円切り上げとなったオイルショック前の状況に酷似。しかもこの膨大な外貨準備を1〜2%程度の安い金利で米国に貸しているということは、9%の高成長を続けている中国にとっては大損。国内に投資すればもっと高い成長が得られるはず。
中国は日本のように円切り上げで失敗することはないと思いたい。中国はソフトランディングするようにうまくやるだろうが、日本の過去の失敗事例を提供して、よく勉強してもらうべき。

(福川)
日中関係がWin―Win関係にあることは4人とも異存がないようだ。今後の中国経済を展望するポイントとして3点、「景気過熱問題」、「人民元問題」、「FTA問題」に焦点を絞って討論したい。

【討論】

1.景気過熱問題

(木村)
  物価指数、マネーサプライ等の指標だけをもって論じられないが、決して過熱とはいえない。

(津上)
  昨年末まではやや過熱だったが、現実引き締め政策が出てきている。9.1%の成長率も実態はもっと高いのではないか。従って引き締める必要はある。

(原田)
  雇用問題、すなわち中国国内の地域間の人口移動に問題がある。また色々な資源がボトルネックになって混乱することがある。

(関)
  人民元切り上げが過熱対策になりうる。銀行の不良債権比率を下げるために貸し出しを増やし、不動産などに流れていることが心配だ。景気の牽引役は投資だが、消費にシフトさせる必要がある。国有企業の民営化による富の偏在を反映して、高額商品だけはよく売れているという歪んだ消費構造となっている。


2.人民元切り上げ問題

(木村)
  切り上がったとしても国際収支に対するインパクトは小さいのではないか。中国の輸出パターンを見ても、繊維、衣料から機械類へシフトしているが、そういったものはドルにFIXしているので輸出競争力に跳ね返るわけではない。よく検証する必要あり。

(原田)
  切り上げになってもあまり経常収支対策にならないのではないか。外貨準備をリターンの低い投資にではなく、国内に投資すべきだ。

(津上)
  実物経済と金融・通貨は表裏一体の関係。通貨問題は、実物経済の一体化の流れに即して地域での一体性、連動性の中で考えるべき。

(関)
  長期的にはアジアにおいて単一通貨も考えられるが、現在各国間の発展段階や産業構造の間には格差が大きく、地域全体が最適通貨圏の条件を満たしていないことは明らかである。短期的には管理変動制、BBC方式(バンド、バスケット、クローリング)がいいのではないか。人民元は今15〜20%くらい割安だろうから、数年間に少しずつ上げていくのがいい。いずれ資本の自由化も考えなければならないが、急ぐ必要はない。


3.FTA問題

(木村)
順序について
  メキシコとはもう既に最終段階にきており突破できよう。
  フィリピン、マレーシアは、2つくらいを年内〜年初に実質合意できればいいのではないか。
  韓国は、なかなか難しい状況、ゆっくり話しながら来年一杯かけて中身を詰めていく状況。
  いずれ東アジア全体をどうしようか、ASEAN全体ともやる、やらない、ということになり、当然中国も視野に入ってくる。しかし、日中は少なくともここ1〜2年にはそのような状況にはならないだろう。
内容について
  関税撤廃は必須。途上国は輸入代替型で産業を育成しなければならず、国境をまたぐ形で効率化が必要。自動車、家電、石油化学、鉄鋼など。
  方、東アジア地域は既に国際的な生産流通ネットワークが形成されておリ輸出志向型になっているので、関税撤廃だけでは不十分。貿易投資ファシリテーション(含む投資ルール)、知的所有権、スタンダード等の制度づくり、紛争解決の手続き(特に民間企業と国家間の細かい問題)、経済協力等も盛り込むべき。
  中国とは10年くらいかけて農業と関税引き下げをやるということか。更に一歩進んだ様々な内容、項目は多々あり、中国国内の政策環境が良くなるようなものをFTAに盛り込んでいくのがいい。

(原田)
農業問題について
  農業保護はどこの国でもやっていること。「所得補償で保護する」ということで打開していくのがいいのではないか。
  政治的なリーダーシップで、最初に何か基本方針を打ち出した方が、後々進めやすいし印象もよくなるのではないか。

(津上)
  日中でのFTA考える時に関税は確かにメインストリームだが、実は関税の重要性は20年前に比べかなり落ちてきた。今の時代、関税だけに目を向けるのは間違い。例えば「人の移動」の分野を何とかできないか。ビザ政策を思い切って変えるとか。
  また、「キャピタルフローの問題」も貿易に比べるとまだ制約が多い。例えば、日本の年金資金を中国で運用しリターンを上げることにも取り組むべき。
  中国から何かメリットを得ようというのではなく、日本が自らメリットを取りに行く努力、姿勢が足りないのではないか。例えば、中国の観光客をもっと日本に来てもらうような努力をすべき。取れるメリットを必死になって取って埋め合わせをしていかないと、総体として帳尻は赤になってしまう。


【会場Q&A】
Q-1: (谷口所長/早稲田大学現代中国総合研究所)
中国も日本も若い学生の理解が足りないと思うがどうしたらいいか。また、日本・ASEAN特別首脳会議でも、日本政府はASEANに対する呼びかけはするものの、中国、韓国を無視。中国はASEANと勝手にやっている。こういうことでよいのか?

A:
 
(関) 中国人留学生をもっと大事にすべきではないか。日本の外交政策の失敗だ。日本企業に就職も出来ず、欧米企業に就職している。これでは優秀な人材は集まらない。NEC政策(Nippon Educated Chinese)、日本で教育を受けた中国人をいかに活用するかが、今後の日本企業の対中進出の重要なテーマだ。

(木村)

コミュニケーション不足が問題なのではないか。これは日中も日韓も同じこと。色々なレベルでコミュニケーションを密にすることが大事。中/ASEANも日/ASEANは内容的にもかなり違うし、両国ともお互いやるべきことは認識しているはず、楽観している。

Q-2:

(大川顧問/東レ()
人民元とFTA問題は非常に関係している。元が15〜20%低く抑えられている中で、FTAの目差す貿易の自由化だけが先行するというのは問題があるのではないか。分業体制、補完関係にあって、通貨問題を議論せずに進めていってよいものか?

A:
 
(木村) 深く連関しているが、技術的に分けてやることは可能。人民元よりも資本移動の方が本当は問題がある。資本移動に制約があって貿易の自由化だけやるのはテクニカルには可能だが、確かに問題があるかもしれない。

(関)

2段階で考えていいのでは。日本の時もそうだったが、ニクソンショックをきっかけに変動為替制に移行したが、資本の自由化は少し遅れた。皆さんは中国での利潤の送金問題が気になるのだろうが,これは資本取引ではなく経常取引だ。IMF8条国、WTOにも加盟しており、相当自由に、むしろ優遇されているという面でそう苦情はないはず。

(木村)

米国/チリ、米国/シンガポールのFTAでは、資本規制を基本的にしてはいけないことになっている。日本が作ろうとしているFTAには、恐らくそのようなものを入れようという話はないと理解。


3. 第2セッション 「対中進出の新たなビジネスモデル」
問題提起 服部健治 (愛知大学 現代中国学部 教授)
コーディネーター 後藤康浩 (日本経済新聞社 論説委員)
パネリスト 茅田泰三 (コマツ 執行役員 建機マーケティング本部海外営業本部長)
      金 堅敏 ()富士通総研 経済研究所 主任研究員)
      服部健治 (愛知大学 現代中国学部 教授)
      安見義矩 (ユニカ() 代表取締役社長)
服部健治 後藤康浩 茅田泰三 金 堅敏 安見義矩

【問題提起(服部健治)】
マクロと実務の間を埋めていくのが経営の視点、現場で頑張っている日系企業の人たちの気持ちを代弁したい。
日本企業の対中ビジネスの問題点として3点、現場型の発信が無い(現地、現場、現物が大事)、長期的戦略が無い、自企業の優位・劣位を認識しながら中国に取り組む姿勢に欠ける。
現在、市場としての中国が台頭しているが、まだ企業の国際競争力(産業競争力、輸出競争力、技術、ブランド)が不足。中国が発展するための柱は、所有権、財産権を認める前提での企業の育成、自立。日中経済関係は、「安定」から「競争と協調の時代」に入った。また、官から民への意識変革の中で対応を考える必要あり。
中国市場規模の拡大、オープン化の中でチャンスはたくさんあるが、企業にとっての課題は内販権、販売権、特に貿易権の確立だ。他方、リスクもあるが、それは統制経済から市場経済へ、クローズ社会から開放社会へという体制変換の過程の中で生まれてくる。
「4つの不」(不合理、不公平、不誠実、不愉快)や反日感情がある中で、対中投資戦略の大きな柱は『現地化』。具体的には、中国人幹部の養成、技術移転問題(二流技術ではダメ)、資金調達(情報収集が大事)、販売(階層分化鮮明〜富裕層をターゲット、地域特化・限定販売)。
もうひとつ大事なのは『現地法人の権限強化』。日本の本社との関係をハッキリすべき。中小企業分野では、アウトソーシング、異業種連合も要研究。
時間軸の中で見ると、「戦術的には重視し、戦略的には軽視する」(毛沢東)ように、当面は人、物、金、情報等、あらゆるものをもっと一生懸命研究、重視し中国に投資すべき。そして長期的戦略は軽視、楽観視してもよいのではないか。
場所的な見方をすれば、高いレベルとしては日中が東アジア経済共同体の中心を担っていくべき。また低いレベルとしては、「商売第一、金儲け第一、友好第二」の気持ちで、中国に対しては動態的、立体的、重層的な視点で、等身大の姿勢で見ていくべき。
自分たち自身の主体、企業の主体を媒介にしながら、中国市場に取り組むことが重要。


【討論】

1.中国市場について

(金)
中国の購買力の源泉は、付加価値ベースで蓄積された富が均衡的に分配されず、地域的、人的、職業的に不均衡になっていることによる。(富裕層と貧富層に分化)
消費構造が高度化されてきており、あらゆる分野で市場としては益々拡大していく。

(服部)
2008年北京五輪、2010年上海万博以降も勢いは衰えても成長は続くだろう。大事なのは今あるチャンスをどう掴むか、経営者の姿勢が問われている。

2.会社紹介、現況について

(茅田)
建機市場は拡大の一途だが、事業拡大のキーワードは「スピード」と「品質」。
中国での売上は全社の6%程度、海外分野での中国比率は10%未満。中国市場の伸び率は60〜70%の勢い。
日本のショベルは世界的に優位な商品、技術であり、日本製中古も中国が吸収。市場、生産、中古においても日中は補完関係にある。

(安見)
業容はコンクリートドリル(孔をあける刃物)の製造、業界は成熟ないし縮小傾向。企業の成長ためには海外しかないと結論。競争優位の条件である「高品質」「低価格」を武器に中国進出。進出した10年前は「安く」だったが、今は「効率性」と「生産性」を問われている。
「中国マーケットで勝って初めて他のマーケットでも勝てる」という考え方
中国での売上は全社の5%程度。中国で生産したものが、日本を通じ欧州、米国、日本で販売される。中国市場の伸びは70%

3.品質問題について

(金)
日本の製品、技術レベルは高いがそれだけでは売れないこともある(日本製家電、携帯電話)。中国の市場、消費者のニーズに合った製品開発、技術開発と市場育成がチャンスにつながる。

(服部)
今は、昔のように品質の低いもの、安いものは売れず、高品質のものを求めている。そういう意味では、中国市場では、消費と供給の両分野において二極化が始まっている。つまり、「高くて良いもの」と「安くてそれなりのもの」という二極分化が始まっており、今後はどちらの分野に軸を置いて13億人の市場を攻めるか、分散と集中、選択が求められる。

4.生産・販売リスクとその対応について

(茅田)
生産については、内販問題に比べるとそれほど苦労はしていない。
模倣品については、技術協力をしている以上その危険性は十分にあるが、中身までは真似できない。
販売リスクは、「代金回収」の一言に尽きる。現金回収ではなく「割賦販売」方式。銀行ローンシステムという安全な体制ができており、IDカード、戸籍謄本、仕事内容の3点の情報、証明があれば商売が成立する。顧客情報、信用情報が整備され、透明化、公開化されることを期待。
今まではお客様にコマツを選んでいただくということでやってきたが、これからは我々がお客様を選ぶことが大事になってくる。
債権回収で大事なことは現場管理。顧客の動き、ビヘイビア等はもちろん、我々のスタッフ、マネジャーや代理店、ビジネスパートナー等の動き、全て現場の問題。そういった意味で、リスク管理イコール現場管理ということ。

(安見)
生産に関しては、品質管理という観点から、現場のマネジメントが大事。日本人でもうまくいかない場合もあり、「現地マネジャーの育成」と「従業員の育成」が一番大きな問題。
模倣品については、既にユーザー側が求めるものが違う、すなわち、「いいもの」と「安ければよい」という風に分かれてきているので、仕方のない問題。
販売に関しては代金回収が最大の問題。現金回収を前提としているが少しずつ掛売りにシフト。

(服部)
一般的、普遍的に言って、リスクへの対応で大事なことは、全てをオープンにしていくこと。もう一つは、行政機関に対しては、脅しの精神、脅迫ではなくて圧力をかけるということが大事。

(金)
リスク問題は、日本市場とのリスク比較ではなく、競争相手と同じリスクに直面しているかどうか。
代金回収も技術流出も同じで、価値あるものは自分でマネジメントすることが重要。
技術流出での問題はジョブホッピー。日本企業が中国市場で中国人、日本人自体をどうやってマネジメントするか。何が技術で、何を守らなければならないかが管理できているか。
現地化、リスクヘッジとリスクマネジメント、モニタリングという体制、制度、手段を整備する必要あり。

5.アライアンスについて

(服部)
一般的、普遍的には言えないが、中国を見ていく場合に留意すべきことは、発展途上国であるということ、共産党一党独裁であるということ。こういう条件のもとで、市場を育てていくという側面と、不合理な側面に対応していかなければならない。
特に問題なのが内販問題だが、生産活動以上に中国企業と組む必要あり。相手企業をよく見極めなければならないが、今や、中国企業も我々日本企業を見ている。

(金)
中国で成功する秘訣は3つ。中国市場を良く見て対応できること(市場形成に敏感に反応、対応)、消費者ニーズに合った技術を持つこと(カタログ販売ではなく消費者需要に合致した技術開発)、マネジメント(現地化が基本)。

(安見)
現地社長には徹底した「経営の教育」をスパルタで叩き込み、社員全体には「志」を持たせた。
アライアンスに関しては、中小企業ということから、異業種が一つの会社になって中国へ進出。ユニカが代表企業(現地名:日質)として運営、各会社は"事業部"として組織、共通部分は共通コストとして処理しコスト引き下げ、効率的運営とリスクヘッジを図った。

(茅田)
現地トップは中国人、20年前に北京で入社以後ずっと育成してきた。大事なのは本人もそうだが、彼についてくる人がいるということ、彼を見て彼をフォローするために、いい意味で現地の中国人が頑張るということ。
中国進出当初はアライアンスを組むような状況ではなかったが、今は山東省の大学と組んだりしていろいろなことはやっている。
経営の基本は、中国の様々な資源(人、金、ノウハウ等々)を最大活用し尽くすこと。中国の工場といえども、グローバル競争に勝つためには何でもやらせるということ。


【会場Q&A】
Q: (嶋野主任/岡三経済研究所・経済調査部)
人民元切り上げになった場合の影響、対策は?

A:
(安見)
輸入部分が多いので、切り上げになればプラスだ。日本からの投資につては、価値が上がるのでこれもプラスになる。

(茅田)
朴訥に為替予約をしている。もう一つの側面でみると、日本からの部品輸出分はコストアップになるが、価値が上がる分とどう相殺できるか?


【最後に一言】

(服部)
自分の企業を媒介にした、主体を媒介にした形で見ていくとうことが大事。
自分のことは棚に上げて、中国(企業)について、あれこれ批判する前に、自分の問題として捉え取り組んでいく姿勢が大事。

(金)
現地化が最重要。現地化とは、中国人を使うことではなく、現地市場に精通し、販売能力保持している人であればいい。中国人である必要はない。現地市場主導で市場を開拓する。そいうい意味では、ガバナンスだ。日本本社が中国子会社をどうガバナンスするか。現地の総経理がいかにやる気を出すか、今の評価制度は問題あり。中国市場とコミットしインセンティブメカニズムを与える。日本人でも十分対応可能。

(文責:松本邦夫)