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19986月号

環境技術移転国際会議


 今年2月24日(火)にホテル・ニューオータニにおいて、標記会議(主催:新エネルギー・産業技術総合開発機構、後援:通 商産業省)が開催され、当研究所も本会議の開催に協力した。本会議は、国連気候変動枠組条約の第3回締約国会議(地球温暖化防止京都会議)において京都議定書が採択されたことを受けて、具体的な温室効果 ガス排出量削減の上で重要な方策の一つである「環境技術移転」がテーマであった。

 主催者あいさつの後、通 商産業省環境立地局 並木局長から地球温暖化防止京都会議の結果について報告があった。その後、午前にセッション1「技術移転推進の緊急的課題」と題し、技術移転の一般 論について議論した。午後からは、セッション1の議論を受けて、京都議定書で新たに規定された、ある種の技術移転メカニズムといえる「クリーン開発メカニズム(CDM)」について、そのあり方、期待、可能性等について意見交換を行った。このCDMは、先進国と発展途上国が共同で温室効果 ガス排出削減のプロジェクトを行うもので、費用効果の高い手段として期待されている。

 今回、今年11月にブエノス・アイレスで開催される第4回締約国会議に向けて、活発な議論がなされるであろうCDMに関するセッションについて報告する。


「クリーン開発メカニズム ( CDM ) のあり方」

(議長:通産省大臣官房審議官 石海行雄)

1. プレゼンテーション
Dr. PERSHING(米国:国務省)
1. 削減クレジットによって義務の一部の遵守を図れるとあるが、「一部」とは何か。
2. すべての温室効果ガス、すべての部門、発生源と同様に吸収源も含まれるのか。 3. エグゼクティブ・ボードの構成はどうなるのか、何をするのか。
4. 排出削減を認定するとは何をするのか、誰が認定に関わるのか。
5. 認定されたプロジェクト活動がなかった場合に比べた「追加性」とは何か。
6. どこから資金供与されるのか、誰が援助を申請できるのか。
7. プロジェクトからの収入の一部で支援する脆弱な途上国とはどこか。
8. どのように国際的なプロセスの中で民間部門を誘導し、民間企業はどの程度干渉を受けるのか。コストをどのように見積もり、そのコストをどのように賄うのか。
9. プロジェクトを今開始すれば、2000年から最初のバジェット・ピリオドの当初までの間の削減を遵守達成に活用することができるのか。

2. コメント
(1) Dr. NEWCOMBE(米国:世界銀行)
(2) Dr. MUNASINGHE(スリランカ:コロンボ大学)
(3) Dr. JUNG(韓国:韓国エネルギー経済研究所)
(4) Dr. RAMAKRISHNA (米国:ウッズホール研究センター)
(5) Dr. FORSYTH(英国:王立国際問題研究所)

3. パネル・ディスカッション
細谷(東京電力 理事)
ZHONG(中国:外務省)
山口(慶応大学 教授)
KOKEEV(ロシア:外務省)
FARAGO(ハンガリー:環境・地域政策省)
CHOW(マレーシア:気象庁)

4. 質疑応答

〈質問1〉
排出権取引や共同実施でもそうだが、附属書?諸国がCDMによってもっぱら排出削減を図ろうとした場合、非付属書I諸国から公平性の問題が出てくるであろう。一方、技術移転の観点から、こういうメカニズムを可能な限り早く開始することが重要。非附属書?諸国は、公平性の問題と技術移転のより一層の推進とのバランスをどう図るべきか。

RAMAKRISHNA
議定書に参加した者にとって、先進国が責務を達成するためにCDMを使う部分は小さく、補完的な部分であることは明らか。どの先進国においても、締約国指導者や権限の分配された公的機関がCDM下のこれらのプログラムによって、すべてのコミットメントを実行することを認められていないと考えている。

〈質問2
どこでどのようなプロジェクトをすれば、どのぐらい費用がかかるのかという分析が必要と思うが、比較的費用効果 性が高い地域にCDMのプロジェクトが集中し、公平性が失われてしまうのではないか。

NEWCOMBE
2億4500万ドルの民間の資本が現在、先進国から発展途上国に流れており、その多くは12カ国に集中し、それ以外で便益を享受するのはわずか。同じようなことがCDMでも起こり、かなりの経済力がある、あるいは当初に実施ところが有利になり、他は取り残されてその便益を享受できないことが予想される。世銀や他の多国間銀行・機関の役割は、参加できるようにすること、このメカニズムによる技術移転という利点を得ることができるようにすること。

PERSHING
現在の民間部門からの資本の流れは、非常に不均衡な形で少数の大国に分配されている。一方、共同実施活動プロジェクトの配分では、むしろ小さな国が支配的と言える。プロジェクトに関係している国が多少のリスクを負うが、便益として技術が直ちに移行される。
Jung博士が提案した公開入札では、すべての国のすべての企業が市場へアクセスできプロセスに入札できるが、一方ただ乗りの懸念がある。専門知識を開発しプロジェクトを開発しようとする企業が優位 にならず、活動すべてがオープン・システムにさらされスタートアップをした後に競争入札になると、少数の国だけが新しいプロジェクトを始め、企業は二次市場に入ってきて既存のプロジェクトを買収するようになり、民間部門の役割は制約される。

JUNG
国際的な入札システムを提案した理由は、情報の不均衡から国によって不利な立場になることから。フィジビリティ・スタディなどに投資する必要があるが、その結果 を売ることによってコストを回収できる仕組みがある。透明性やコスト効果 を保障する方法として国際入札制度を思いついたが、これしかないのではない。

MUNASINGHE
最初に仕事をする会社が入札システムで不利になることへの対応は、多くのメカニズムで取られている。例えば世界銀行は10〜15%のアドバンテージを国際的な競争入札時にローカルな会社に与えている。民間が投資の機会を模索するなら、カントリー・リスクを認識することを避けることはできない。しかし金融的なインターメディアリーによって保障されている場合、ハイリスクと考えられている国のリスクもそれほど高くなく、それぞれの国が独自にプロジェクトをする場合に比べて、投資の分配がもっと公平性になる。発展途上国は減少・緩和の機会を一つの資産として扱うことができるというアイディアがある。資産として使う、保持して将来価値が高くなれば売却もできるが、リスクもある。機会を全部売ってしまい、緩和努力をしなければいけない時、コストの高いものしか残っていない状況があり得る。Newcombe博士が提案したメカニズムを使うと、将来の機会の価値についての不確実性が減る。将来価値のある資産を今手放す、失うでもなく、このメカニズムは双方のリスクを平衡にする上で役立つ。

5. まとめ