地球環境
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国連気候変動枠組条約第8回締約国会議ハイライト

2002年10月23日 水曜日


UNFCCC締約国会議第8回会合(COP-8)及びCOPの実施に関する補助機関会合(SBI)及び科学的及び技術的助言に関する補助機関会合(SBSTA)第17回会合が、10月23日水曜日、インド、ニューデリーで開会された。COPプレナリーでは開会の辞があり、組織上の問題が取り上げられた。SBSTAはその最初のミーティングにおいて組織上の問題と方法論上の問題――方法論に関する作業のレビュー、議定書5条(方法論上の問題)、7条(情報の連絡)、8条(情報のレビュー)にもとづくガイドライン、附属書I締約国による温室効果ガス目録の報告及びレビューに関するガイドライン、4条6におけるクロアチアの特別な状況(市場経済移行国に対する柔軟性)、技術移転――について取り上げた。SBIは非附属書I締約国の国別報告に関わる4つの問題――ガイドラインの改善、専門化諮問グループ(CGE)の作業、初回国別報告の第4回統合編纂、資金的・技術的支援の提供――について検討した。5・7・8条とCGEについて協議すべく、コンタクト・グループが招集された。

COPプレナリー

開会セッション:Mohamed Elyazghi COP-7議長(モロッコ)がCOP-8の開会を宣言し、プロセスは実施に向けて動き出したと、マラケシュ・アコードへの注目を呼びかけた。

COPは、COP-8議長としてインドの環境森林大臣であるT.R.Baalu氏を拍手でもって選出した。Baalu COP-8議長は参加者を歓迎し、気候変化の影響は既に感知されるようになってきていると語った。同議長は実施について強調し、また気候変化に最も脆弱な人々と適応の必要性についても強調した。気候変化と持続可能な開発について取り上げたコンセンサス・ベースの「デリー宣言」はCOP-8の重要な成果となるであろうと同議長は語った。

Joke Waller-Hunter UNFCCC事務局長は、WSSDでなされた貧困と環境の関連付けについて強調した。同事務局長は、締約国間の情報交換促進について、事務局が排出量や政策措置に関する信頼できるデータベースを提供することでそれを行うと説明した。

組織上の問題:事務局は、185カ国と1地域機関がUNFCCCを批准しており、9月19日にアフガニスタンが批准文書を預けたと述べた。暫定議題(FCCC/CP/2002/1 Add.1 and Add.2)については、G-77/中国がクリーンなエネルギーの輸出に関わる議定書7条4(登録)にもとづく割当量計算方法の決定についてのカナダ提案を排除するよう主張した。EUは、この問題はSBIで取り上げられると語った。EUは、議定書2条3(政策措置の悪影響)の実施に関する話し合いを議題に含めるようにというサウジアラビアの要望に反対した。サウジアラビアは、この件はBAPA以来の未解決事項であると述べ、COP/MOP-1用の決定草案を作成するよう主張した。カナダは、そのクリーンなエネルギーに関する提案を、議定書の将来の成功に向けての優先課題であると強調した。議題はこれらの件を含めて採択され、コミットメントの適宜性に関する第2次レビューについての件は保留された。

Baalu議長は、議長以外の役員の選出について引き続き協議が行われると述べた。同議長は、気候変化と持続可能な開発のテーマについて、10月30日と31日に、3回連続の円卓会議の形でハイレベル・セグメントが行われると語った。

G-77/中国は附属書I締約国から提供される資金レベルの低さに失望を示し、これまでの行動は象徴的なものにすぎなかったと訴えた。アンブレラ・グループ代表のオーストラリアから支持され、同代表は持続可能な開発と気候変化の関連付けの重要性を強調した。共通だが差異のある責任の原則を強調して、開発途上国の生活の質が向上しているため気候制度ではエネルギー需要の増加を考慮していくべきだと中国が語った。アフリカ・グループを代表してジンバブウェが、適応プロジェクトに対する支援の拡大を求めた。

SBSTA

開会セッション:SBSTAのHallador Thorgeirsson議長(アイスランド)がセッションを開会した。SBSTA副議長が辞任したことに触れ、同議長はGRULACから交代指名が行われると予想されると語った。Tatyana Osokova(ウズベキスタン)がラポルタールを務める。SBSTAは、暫定議題(FCCC/SBSTA/2002/7)を採択した。

方法論上の問題:UNFCCC及び議定書にもとづく方法論に関わる作業のレビュー:事務局は、この新しい議題項目に関する報告書を提議し、温室効果ガス目録、吸収源による排出量および除去量、政策措置、緩和・適応技術、気候変化の影響・脆弱性・適応に関わる5つの優先事項について強調した。

EU、ノルウェイ、サウジアラビア、ニュージーランドはこの件をSBSTA-17より後に検討することを支持した。インドは、開発途上国のキャパシティを強化する最近のワークショップにスポットを当てた。アメリカは、事務局が初動作業でその権限を越えようとしていることについて警鐘を鳴らした。

議定書5・7・8条にもとづくガイドライン:議定書7条にもとづき求められる情報の作成と8条にもとづくレビューに関するガイドライン、そして5条2(調整)に関する良好手法ガイダンスに関しては、レビュー中の秘匿データ取り扱いに関する選択肢、専門家レビュー・チームに対する訓練とキャパシティ・ビルディング、国家登録簿・CDM登録簿・取引ログ間のデータ交換に関する技術基準、割当量に関する情報の報告及びレビュー、国家登録簿など処理すべき未決事項にThorgeirsson議長がスポットを当てた。EUは主席執筆者に対する業務委託事項と専門家訓練に関するオプションの点で進展があったことを歓迎した。同代表は、5条2にもとづく調整計算についてケース・スタディを展開していく提案を支持した。アメリカは、秘匿データの取り扱いに関するオプションの重要性を強調し、目録データの透明性を奨励した。サウジアラビアは、レビュー専門家の訓練には開発途上国の専門家も含めるべきであると語った。Thogeirsson議長は、Helen Plume氏(ニュージーランド)とFestus Leboyera氏(南アフリカ)が議長を務めるコンタクト・グループを招集した。

7条4にもとづく登録に関する技術基準については、Murray Ward氏(ニュージーランド)が、2002年10月19−20日にニューデリーで行われた会合間協議の結果について報告を行った。同氏は、共通基準枠組の必要性、技術的専門家の関与の必要性、詳細な登録簿設計に関する今後の焦点、UNFCCC事務局との継続的な協力に関する合意について概説した。Thorgeirsson議長はWard氏に対し、さらに協議を行っていくよう呼びかけた。

温室効果ガス目録の報告及びレビューに関するガイドライン:
事務局は、1999年から2000年分の附属書I締約国による最新の国別温室効果ガス目録データについて報告を行った。同氏は、附属書I締約国40カ国のうち39カ国の温室効果ガス排出量・除去量データが入手可能であると述べた。

UNFCCC4条6にもとづくクロアチアの特別な状況:
クロアチアは新しいテクニカル・ペーパーを提議した。ユーゴスラビアはクロアチアの1990年ベースライン提案を支持できないとしてEUの反対にあった。Thorgeirsson議長は、非公式コンタクト・グループを招集するようJim Penman氏(イギリス)にも求めた。

技術移転:Thorgeirsson議長は、技術移転に関する専門家グループ(EGTT)の年次進捗報告と、決定4/CP.7にもとづく行動の実施に関する報告書に焦点を当てた。同議長はまた、EGTTの新しい作業プログラムがSBSTA-16報告書に添付されると語った。Jukka Uosukainen EGTT議長(フィンランド)は、COP-8に先立ち行われた同グループの会合について締約国に簡単に説明を行った。同議長は、話し合いの中心は技術ニーズの評価、技術情報の共有、キャパシティ・ビルディング、支援的環境、資金援助であったと述べた。同議長は、新たに選出されたWilliam Bonsu EGTT議長(ガーナ)とWilliam Bradley副議長(アメリカ)を歓迎した。ベルギーは、2003年に行われる支援的環境に関するEGTTワークショップを支持した。G-77/中国は、開発途上国に対する技術移転が効果的ではなかったと語った。同代表は、気候技術イニシアティブのような新規のイニシアティブを歓迎し、緩和と適応の双方に対する支援を促した。インドは、ピースミール・アプローチは不十分であることを強調し、資源へのアクセス、制度的キャパシティ・ビルディング、産業界の参加についての検討を支持した。

SBI

開会セッション:
Raul Estrada-Oyuela SBI議長(アルゼンチン)はSBI-17第1回ミーティングを行い、議題が採択された。

非附属書I国国別報告:ガイドライン改善:事務局は、非附属書I締約国の国別報告と締約国提出物の編集に関する改善版ガイドライン案を提議した。GEFは初回国別報告に対する資金供与に関する概要を示し、137カ国が8000万米ドル、つまり気候変動フォーカル・エリアにおける総資金の8%を受け取っていると述べた。GEFは、現地の排出係数の開発用、また脆弱性及び適応評価に関するガイドライン案で非常に多額の資金供与が求められることに懸念を示し、それがなければ資金供与の要請は現在のレベルをわずかに上回るだけであると語った。

EUは、LDCの国家適応行動プログラムを国別報告の中で検討していくべきだと述べた。中央アフリカ共和国は、バングラデシュ及びエリトリアと共に、LDCの国別報告作成の難しさを強調し、SBSTAに資金援助について取り上げるよう求めた。インドは、改善版ガイドラインはUNFCCCの報告要件を超えるものであってはならないと述べ、タイとイランの支持を得た。カナダはEUと共に、需要主導型資金供与の必要性を強調した。ツバルは、適応資金と国別報告作成が結び付けられてしまうことの悪影響が考えられることに注意を促した。日本は、議長テキストで緩和と適応の報告要件のバランスを取るようにすることを求めた。

CGE:事務局は締約国の提出物を提議した。Mahendra Kumar CGE議長(フィジー)はCGEの最終報告書を発表し、CGEのプロセスが情報共有を通してキャパシティ・ビルディングにおける重要な役割を果たしており、技術的問題及び制約の評価についても重要な役割を果たしていることを強調した。CGEは、追加的資金的及び技術的資源を動員すべきこと、政策決定者に関係のあるタイムスケールへの影響を評価する方法及びツールをIPCCが開発すべきことなど、いくつかの提言を行った。Estrada SBI議長は、Jose Romeo氏(スイス)が議長を務めるコンタクト・グループが同議題案件を検討すると述べた。

編纂及び統合:非附属書I国による初回国別報告の第4回編纂及び統合に関する検討については、SBI-18で取り上げられる報告書を事務局が作成するとEstrada議長が語った。

附属書I締約国による国別報告:事務局は第3回国別報告のレビューに関する状況報告書を提議した。締約国は、第4回国別報告の提出候補日をはじめとして話し合いを行うとEstrada議長が語った。

コンタクト・グループ

5・7・8条:Helen Plume氏とFestus Luboyera氏の招集するコンタクト・グループが、午後会合を行った。G-77/中国が、関連の文書を検討するためにもっと時間が欲しいと求めた。代表団は、メカニズム使用の適格性回復のための即席レビュー手順のタイミングについて話し合いを行った。7・8条にもとづくガイドラインの懸案部分については、EUが技術基準及び報告とレビュー・テキストにおける技術的問題や食い違いを防止・解決することに関するペーパーを回覧した。代表団は、議定書5条2にもとづくケース・スタディの提案を支持した。事務局はレビュー・チームの専門家訓練の問題に目を向け、試験的トレーニング・プログラムを行う計画にスポットを当てた。秘匿データの扱いについては、代表団は暫定的な意見を交換し、本件をSBSTA-18に申し送ることを決定した。

CGE:締約国は、初回国別報告に対するGEFのサポートと、改善版ガイドライン案の資金的意義について、夜遅くまで話し合った。

会場外では

「気候変動プロセスは草案作成段階から実行段階へと移行している」と退任、着任、双方のCOP議長が強調する中、Vigyan Bhawanのホールの静けさはそのような動きがどこか他所のことであるという事であることを裏付けているかのようであった。多くの会議参加者達が、今回のCOPは補助機関会合と同じくらい地味なものであるようだと言っている。しかし、普段はCOPに来ることのない多数の南側NGOに会えて嬉しいと語るオブザーバーもいた。

本日の注目事項

SBSTA:SBSTAは午前10時からホール5で会合を行う。午後3時からはメイン・プレナリー・ホールで引き続き作業が行われる。

SBI:SBIは午前10時からメイン・プレナリー・ホールで、午後3時からホール5で、午後8時からメイン・プレナリー・ホールで会合を行う。

5・7・8条:コンタクト・グループは午後3時からホール4で会合を行う。