地球環境
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国連気候変動枠組条約第8回締約国会議ハイライト

2002年10月24日 木曜日


UNFCCC第8回締約国会議会合(COP-8)代表はSBIで3セッション、SBSTAで2セッションの会合を行った。SBIでは、附属書I国国別報告、資金メカニズム、キャパシティ・ビルディング、中央アジア、コーカサス、アルバニア、モルドバ共和国グループ(CACAM)からのUNFCCCにおける彼らの立場に関する要望、管理上・資金上の問題、土地利用に関するクロアチアの提案、土地利用変化及び林業(LULUCF)について取り上げられた。SBSTAでは、方法論上の問題、ハイドロフルオロカーボン(HFC)及びパーフルオロカーボン(PFC)関連の問題、研究及び系統的観測(R&SO)、IPCC第3次評価報告書(TAR)、政策措置(P&Ms)における「良好手法」について検討された。

P&Ms、R&SO、専門家諮問グループ(CGE)、CDMにおける植林・再植林活動に関するコンタクト・グループも夕刻に会合を行い、非公式コンタクト・グループも会合を行った。

SBSTA

方法論上の問題:共同実施活動:事務局は統合報告書を提出し、新規5件のAIJプロジェクトの提出によりプロジェクト総数が157件となったと述べた。

CDMにおけるLULUCF:FAOは、森林関連の定義を標準化するのではなく、新しい炭素関連用語の枠組みを作ることを目指した最近の森林関係用語ワークショップについて報告を行った。マレーシアはCDMプロジェクトの環境的健全性の確保を強調し、ブラジルは「共通用語」の開発を支持した。アメリカとEUは、コロンビアの「トンー年計算方法」を支持した。EUはベースラインを1989年から動かすと言うカナダのSBSTA-16提案に反対し、マラケシュ・アコードに示された定義への支持を主張した。コロンビアは、1989年ベースラインではプロジェクトが妨げられると語った。日本は、CDMにおける吸収源に関する規則は必要以上に制約的なものであってはならないと述べ、定義及び方法についてはCOP-9でパッケージとして合意することを提案した。セネガルはアフリカ・グループを代表して、定義及び方法は柔軟かつ現地の環境的な背景に適用できるものなくてはならないと語った。同代表は、貧困対策と砂漠化の関連付けについて強調した。ツバルはAOSISを代表して、社会的及び環境的なプロジェクトの影響評価が必要であると強調した。Thorgeirsson議長は、Thelma Krug氏(ブラジル)とKarsten Sach(ドイツ)のもとでコンタクト・グループを招集すると語った。

ブラジル提案の科学的及び方法論に関する側面:事務局は最近行われた専門家会議に焦点を当てた。ブラジルは、気候変化への寄与を評価する際の原因及び結果の特定について強調した。また同国は本件に関してSBSTAの権限をあらためることを提案し、サウジアラビアの反対を受け、メキシコ及びEUから支持された。アメリカ、カナダ、オーストラリアは、特定に関する研究に厳密さが欠けていることに懸念を示した。Murray Ward氏(ニュージーランド)及びGylvan Meria Filho 氏(ブラジル)により協議が行われることになる。

HFC及びPFCに関する問題:オゾン層を保護する取り組みと地球の気候システムの関係性について、IPCCと及びモントリオール議定書技術経済評価パネル(TEAP)は、オゾン破壊物質の代替物質関連の問題について締約国を支援するための手法と技術に関する特別報告書の作成について報告を行った。多くの締約国が、COP-11までに一本の総合報告書を完成させることを支持した。オーストラリアは、今後の作業は政策的にニュートラルなものであるべきであり、規定的なものであってはならないと強調した。Richard Bradley氏(アメリカ)が、SBSTA結論草案とCOP決定草案について協議を執り行うことになる。

研究及び系統的観測:Thorgeirsson議長は、TARで行われた研究上の提言に関してIPCCと国際的な研究機関代表との実質的な対話が10月28日月曜日のサイド・イベントで行われると語った。SBSTAでは、世界気候研究プログラム、International Geosphere-Biosphere Programme, International Human Dimensions Programme, 世界気候観測システム(GCOS)による発表と研究に関する最新情報が聞かれた。締約国は優先事項に関して意見を交換し、影響・脆弱性・適応、適応能力と適応オプション、リスク評価及びリスク管理、気候変化という枠内での資源管理、不確実性への対処法、安定化の経路に関し意見がまとまったとThorgeirsson議長が語った。系統的観測に関し、同議長はGCOSへの寄付金に対する支援について語った。同議長はSue Barrell 氏(オーストラリア)とS.K.Srivastav氏(インド)によってコンタクト・グループが招集されると述べた。

IPCC TAR:複数の締約国がTARに盛り込まれた情報の使い方を探っていくことを支持した。EUは温室効果ガス排出量安定化に関する方法論上の問題についての議題項目を提案し、アメリカとG-77/中国代表のマレーシアに反対された。Thorgeirsson議長は、自らが結論を作成すると述べた。

P&Ms:Thorgeirsson議長は会合間協議について報告を行い、情報交換のためにインターネット・ベースのアプローチを強化すること、そしてP&Msに関する自己評価の開発及び共有についてさらに作業を進めることが次のステップであるという合意について語った。Peer Stiansen氏(ノルウェイ)とSuk-Hoon Woo氏(韓国)の共同議長によるコンタクト・グループが招集された。

SBI

附属書I国国別報告: EUはSBSTAに対し、P&Msに関する報告などについて検討するよう求め、第4回国別報告は実証可能な進展についての報告プロセスと合わせて2006年1月4日を提出日とすることを提案した。カナダはガイドラインに大幅な改定を加えるのは時期尚早であると語り、アメリカの支持を得た。インドは附属書I締約国についての報告プロセスを強化するよう強調した。Estrada議長は、代表団らとの協議をもとにSBIに対する提言を作成すると語った。

資金メカニズム:GEFは第3回資金補充に関する合意と新しい気候変動基金のための管理上及び運営上手順の承認について報告を行った。事務局は、資金メカニズムの見直しに関する報告書を提議し、意思決定の透明性、資金の適宜性・予想可能性・払い出し、開発途上国に対する資金の額、GEFプロジェクトの持続可能性について強調した。複数の締約国がGEFプロジェクト・サイクルの合理化と、特別気候変動基金及びLDC基金の運営について強調した。

G-77/中国を代表してイランが、GEF基金の融資条件について懸念を表明した。ツバルとエリトリアは、資金メカニズムと実施機関とのコミュニケーション・プロセスに問題があると述べた。ケニアは適応プロジェクトと気候政策及び戦略の開発に対する支援拡大を求めた。カナダは、GEFの適応戦略を称えた。バングラデシュは資金の地域配分が均等でないことに懸念を表明した。Estrada議長は、方法についてGEFに対するCOPのガイダンスとGEFの決定に不一致が生じる可能性について警告を発した。

GEFは、LDC基金の運営に関する作業が行われていると述べた。同代表は、COPからそのような指示があればGEFは影響及び適応活動に関するさらに詳細なガイダンスを取り入れる用意があると語った。同代表は、プロジェクトが複数の条約に対応するのであれば資金上の制約が緩和される可能性があると語った。GEFの3つの実施機関の一つである世銀は、作業効率が改善していることを代表者らに伝え、非効率の原因となりそうなものにいくつかスポットを当て、また管理費が比較的少ないことに触れた。Estrada議長は、資金メカニズムの見直しについてテキストを作成すると語った。

UNFCCCのもとでの資金供与に関し、GEFはその現在の運営手順がCOPから追加のガイダンスが無い限り特別気候変動基金にも適用できると語った。同代表は、同ファンドの融資元を特定することの重要性を強調した。Estrada議長は事務局に対し、SBIによる検討に供すべくガイドラインを作成するよう求めた。資金メカニズムの運営機関に対する追加的なガイダンスについては、ウガンダが国別フォーカル・ポイントと技術移転に対するキャパシティ・ビルディングを求め、ガーナ、インド、サウジアラビア、バングラデシュの支持を得た。Estrada議長は事務局に対し、SBIの検討に供すべく決定草案を作成するよう求めた。

CACAM:Estrada議長はCACAMグループの国々からの提案に対して意見がまとまらないことに言及したが、これらの国々がUNFCCC決定で規定される資金源を得ることができるようにすべきであるということには締約国の合意があると語った。ウズベキスタンがCACAMグループを代表して、「開発途上国及びその他の非附属書I国」という定義を提案した。カナダはEUと共に、CACAMグループが技術移転に関する専門家グループの代表権を得るには本定義に対するこのような調整案が必要であろうと述べ、インドの反対を受けた。

管理上・資金上の問題:事務局は、管理上及び資金上の問題に関するその報告書を提議した。カナダは締約国が上納金を早く納めるように促し、スイスとブルガリアの支持を得た。同代表は事務局に対し、マラケシュ・アコード実施関連の活動に対する予算請求を提出するよう求めた。Estrada議長が本件に関する結論草案を作成する。

その他の案件:クロアチアは同国の森林キャップに関する提案に触れ、本件をSBSTA交渉の結果が出るまで先送りすることを提案した。カナダはクロアチア提案を支持してEUの反対を受けたが、森林キャップに関する評価についてさらに情報を求めた。

キャパシティ・ビルディング:CG-11を代表してブルガリアが、市場経済移行国のための今後の枠組みを開発すべくさらに協議を行うことを求めた。タンザニアはG-77/中国を代表して、COP-7決定がGEFと先進国のパートナーによって実施されて来なかったことに懸念を表明した。話し合いは夜まで続けられた。

コンタクト・グループ

P&Ms:Stiansen共同議長は今後の活動案について意見を求めた。複数の開発途上締約国が開発途上国のP&Msに関する自主情報交換に反対し、悪影響について現在入手できる情報が足りないことについて懸念を示した。締約国は、評価方法についてさらに作業が必要であることに合意した。

CGE:Jose Romero議長のもと、本グループは非附属書I締約国からの国別報告作成に関するガイドライン改善について話し合った。締約国は協議のたたき台としてG-77/中国が作成したテキストを使用することに合意した。Estrada SBI議長は、GEFによる追加資金に関してCOPの意向のガイドラインの範囲内で明確な目安を定める必要があることを強調した。締約国は、ガイドラインの目的でどの条文を考慮に入れるかについて話し合った。

R&SO:Barrell 及びSrivastav共同議長が話し合いを取り仕切り、系統的観測システムの改善を達成するための資金の重要性を中心に話し合いが行われた。優先性の高いニーズに対するGCOS管理の基金を求めるオーストラリア提案について、観測システムの適宜性に関して近々公表される報告書と合わせてさらに話し合いを進めていくことに、複数の締約国が支持を示した。両共同議長が金曜日の話し合いのために結論草案を提供する。

CDMにおけるLULUCF:
Krug及びSach両共同議長が、CDMにおける植林・再植林活動に関する定義と方法について手続き上の話し合いを取り仕切り、代表者らは技術的問題に焦点を当てることに合意した。定義について総意が得られないことについて懸念を示す締約国もあった。

目録ガイドラインに関する方法論的作業の見直し:
Harald Dovland氏(ノルウェイ)が議長を務める方法論上の見直しに関する非公式コンタクト・グループは、未決案件と結論草案について合意した。

会場外では

木曜日、デリーを覆う重く垂れ込めたスモッグが晴れるにつれ、代表者らは多くのプレナリー・セッションやコンタクト・グループで自らの意見を積極的に語るようになった。しかし、デリー宣言の中身がどうなるかについては、相変わらず雲に隠れて見えないと懸念を表明するオブザーバーも数多い。

本日の注目事項

SBSTA:SBSTAは午前10時からホール5で会合を行い、関連の国際機関との協力、6条(教育・訓練・啓蒙)、クリーンな、あるいは低温室効果ガス排出型エネルギー関連の問題、議定書2条3(P&Msの悪影響)の実施関連の問題について検討を行う。

SBI:SBIは午前10時からメイン・プレナリー・ホールで会合を行い、悪影響、LDC、政府間会合のアレンジについて取り上げる。

COPプレナリー:COPは午後3時からメイン・プレナリー・ホールで会合を行い、WSSDのフォローアップとCDM理事会報告書について検討する。その後プレナリーでは、非公式形態でデリー宣言に関する意見交換と内容の準備が行われる。

CGE:本コンタクト・グループは午後5時からホールBで会合を行い、非附属書I国の国別報告に関する改善版ガイドラインについての協議を引き続き行う。

6条:本コンタクト・グループは、午後6時からホール2で会合を行う。

CDMにおけるLULUCF:本コンタクト・グループは午後8時からホール4で会合を行う。