地球環境
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国連気候変動枠組条約第9回締約国会議

2003年12月6−8日




12月6日土曜日と12月8日月曜日、COP-9締約国は、いくつかのコンタクトグループで会合し、審議を継続した。多数の非公式折衝も行われた。土曜日、出席者は、キャパシティビルシング(能力向上)、技術移転、2004-5年度プログラム予算、LULUCFに関する良い実践方法ガイダンス、研究と体系的観測(R&SO)、非付属書I 国別報告書、特別気候変動基金(SCCF)、CDMでの吸収量について検討した。

月曜日、締約国は、R&SO、LULUCFに関する良い実践方法ガイダンス、決定書5/CP.7 (悪影響に関するUNFCCC4.8条と4.9条の実施)の実施、非付属書I 国別報告書、手法問題、2004-5年度プログラム予算について議論した。

SBIコンタクトグループ

キャパシティビルシング(能力向上):
土曜日、締約国は、COP決定書案を含む決論書議長草案の改訂版について議論した。出席者は、残された括弧書きの文章を取り上げたが、決定書2/CP.7(途上国キャパシティビルシング(能力向上))の実施に関する意見および経験の交換を容易にするワークショップを開催するかどうかで、合意できなかった。G-77/中国は、ワークショップの開催を支持したが、EUと日本は反対した。非公式折衝のための休憩後、出席者は、締約国と合意を得るための非公式折衝を行い、括弧書きを除いた文章をSBIに送るというDechen Tsering議長の提案に同意した。

2004-5年度プログラム予算:土曜日、John Ashe議長は、COP決定書草案を提出した。南アフリカは、CDMの速やかな開始を容易にするための措置が、任意拠出の資金でまかなわれることへの懸念を表明した。同代表は、一定部分は基幹予算の資金を受け、残りは補助的な信託基金から支出されるとする脚注をつけるよう求めた。ノルウェーは、9%の予算増額を支持し、日本はゼロ成長予算支持、および基幹予算から補助的な信託基金に暫定割当額を移動するとの立場を再確認した。EUとニュージーランドは、議定書の開発活動は基幹予算に残されるべきであると述べた。議定書とUNFCCCで別々の規模と予算とするとの米国案に対して、Ashe議長は、議定書締約国が資金を出すアプローチを策定し、2004年1月から開始するよう提案した。

月曜日の夜、Ashe議長は、COP決定書草案の改訂版を配布した。審議は夜も続けられ、締約国は、6%の予算増額、および議定書の開発活動を基幹予算の中に保持することで合意した。

非付属書I 国別報告書:土曜日、締約国は議長の改訂した決論書草案およびCOP決定書草案を検討した。GEFおよびその実施機関との経験に関する意見提出に資金および技術的な支援を提供することについて、EUはそのような提出を規則正しく行うことに疑問を呈した。締約国は、GEFに対する追加ガイダンスの議題項目に基づく総括決定書の中での検討を目的に送る文章を、取り上げ、パラグラフに関する非公式折衝を行い、意見を事務局に提出することで、合意した。第二回国別報告書、および当てはまる場合には第三回国別報告書を提出するタイミングについて、米国とサンタルチアは、「資金源の入手可能性」の意味を問いただした。G-77/中国は、国別報告書の作成は継続するプロセスであるが、提出の頻度は「ノンイシュー(議題ではない)」だと指摘した。Sok Appadu議長は、決定書草案作成のため、締約国の意見を、月曜日の議論に向け提出するよう求めた。

月曜日、G-77/中国は、国別報告書の提出が、UNFCCCの実施をタイムリーに評価するための十分な情報の獲得を確実にするものであることを認めた文章の削除を提案した。EUは、国別報告書がCOPによるUNFCCCの実施についての調査を助けるとの文章を提案した。G-77/中国はこれに反対し、同グループ内部でこの問題について折衝すると述べた。米国は、非付属書I締約国は国別温室効果ガス目録を2年ごとに提出するべきであり、LDCsは国別報告書とともに目録を提出するべきであるとの追加文章を提案した。

SCCF:土曜日、共同議長は、COP決定書草案の改訂版を提出した。G-77/中国は、予備的な発言として、この文章では、特に予測可能性および資金の新規で追加的な特質に関する要素が盛り込まれておらず、適応に関係する技術移転への言及が省かれていることへの懸念を取り上げた。EUとカナダは、この文章が交渉での良いたたき台になると指摘し、改訂された文章には、いくつかの要素が含まれていないと述べた。Rawleston Moore共同議長は、その後非公式折衝のため、このコンタクトグループを中断した。

月曜日、引き続き非公式折衝での議論が行われた。締約国は、SCCF原則および適応プロジェクトの定義を扱った実効パラグラフに焦点を当てた。実効パラグラフの中で千年紀開発目標(MDGs)への言及を入れるとの途上国グループによる提案は、そのような言及は序文でのみ取り上げるべきだと主張する途上国により反対された。出席者は、非付属書I国別報告書を、適応および技術移転の優先性を定義する基礎とするとの途上国提案で合意できなかった。

決定書5/CP.7の実施:月曜日、G-77/中国、オーストラリア、米国、EUは、共同議長によるCOP決定書草案についての意見を表明し、G-77/中国は、追加分が必要であったことを指摘、米国は、これ以上この文章を拡大しないよう求めた。締約国は、序文パラグラフについて議論し、決定書 5/CP.7の文章を入れるかどうかで論議した。EUは、持続可能な発展の要求達成に言及する文章を提案した。米国とカナダは、決定書5/CP.7の特定の要素を強調する必要はないと述べ、G-77/中国はこれに反対した。その後、 出席者は、決定書5/CP.7実施の進展において、その適格性の評価方法を取り上げた。オーストラリアは、5/CP.7実施での「顕著な」進展を歓迎するよう提案したが、G-77/中国はこれに反対した。締約国は、決定書5/CP.7の条項を支援するため実施される活動に関する提出の特質とタイミングについて議論した。G-77/中国は、提出文書には、気候変化の悪影響から生じる、開発途上締約国の国別ニーズおよび特殊事情に合わせた支援プログラムに関する情報が含まれるべきであると提案した。締約国は、保険についての見解の取り扱い方についても議論した。EUは米国の支持を得て、保険とリスク評価を検討し、保険に関する作業プログラムへの言及を除くよう提案した。夕方、出席者は、非公式折衝で決定書草案での残ったパラグラフについて議論した。

SBSTAコンタクトグループ

技術移転:
土曜日、締約国は共同議長の決論書草案を検討した。ガーナとタイは、国際機関やその他の機関からの支援に関する文章の変更を提案した。米国は、EGTTの作業プログラム実施のため「必要となる可能性がある」資金源を考える必要性を指摘する文章を提案し、タイとガーナは、EGTTがより多くの資源を「必要とする」と述べる文章を支持した。カナダは、資金的なニーズへの予断に懸念を表明した。中国とマレーシアは、資源配分とEGTTへの支援要請のパラグラフを合わせるよう提案した。G-77/中国は、途上国へ技術を移転するための先進国の「押しボタン要素」強化、技術移転の評価、環境上優れた技術の共同研究に関する文章を提案した。EUは、国別報告書の中で技術移転に関係するキャパシティビルシング(能力向上)活動について報告することに関し、文章を提案した。審議は、非公式の議論で続けられた。

LULUCFに関する良い実践方法ガイダンス:土曜日、出席者は改正された決論書草案およびCOP決定書草案について議論した。ツバルは、IPCCの良い実践方法ガイダンス(GPG)を十分検討する時間もなしに推奨することへの懸念を持ち出した。EUはこれに反対し、日本、ニュージーランド、オーストラリア、カナダ、ロシア連邦とともに、実施に間に合わせるよう国別目録を作成するため、UNFCCCと議定書の両方で、GPGを採用するよう促した。

出席者は、炭素貯留量での直接の人為的な変化を、間接的な変化および自然の影響から抽出することについて、改訂された文章の議論を行った。G-77/中国は、抽出に関するIPCC報告書について指摘する際には、IPCCのSBSTA向けステートメントに言及するよう提案した。米国、スイス、ニュージーランドは、この提案に反対した。LULUCF活動の計算を取り上げる必要性に関し、カナダは、IPCC報告書への言及を提案し、ニュージーランド、オーストラリアおよび日本はこれを支持した。 G-77/中国は、これに反対し、自然の影響による貯留量の変化に関する決定書11/CP.7(LULUCF)に含まれたCOP/MOP決定書草案の文章に言及するよう提案した。締約国の提出について、EUとオーストラリアは、抽出よりも LULUCFに関係する問題について提出を招請するよう提案し、ニュージーランドとツバルはこれに反対した。

月曜日、Margaret Mukahanana-Sangarwe共同議長は、締約国が、IPCC GPGをUNFCCCに基づく報告に対し推奨することで合意し、また議定書に基づく報告要項はCOP-10までに決定書を作成するべく、SBSTA-20でさらに検討することで合意したと、発表した。要素抽出に関し、締約国は、COPの招請でIPCCがSBSTAに提出したIPCC報告書に注目することで合意した。LULUCF活動の計算に関し、締約国は、COP/ MOP 決定書の中で言及されている「問題を検討するための目的」、そして抽出の実用手法に関する議論に注目した。締約国の提出分について、出席者は、締約国に対し、LULUCFに関係するそのほかの問題について、意見を提示するよう求めることで合意した。

締約国は、GPGおよび収穫木材製品に関する決論書および決定書草案を、改訂されたとおりで承認した。

R&SO:土曜日、Sue Barrell共同議長は、非公式折衝について報告し、GEFに対する追加ガイダンス提供に関して多様な意見があったと指摘した。同共同議長は、SBSTA-17の決論書を想起し、 SBIに対して、地球気候観測システムに関する地域行動計画で示された優先ニーズに対処するため適切な配慮を提供する目的でGEFへの追加ガイダンスを検討するよう求める、文章の妥協案を提案した。締約国は、GEFが観測活動を検討するのはどの基金によるものとするかで議論し、「資金メカニズム(複数)」、「資金メカニズム(単数)」および「SCCF」に対するSBIのガイダンスへの言及について論議した。ノルウェーは、これがSBIの決定事項であることを強調した上で、オーストラリア、カナダ、EUとともに、資金オプション検討での問題に適切な考察を加えるようSBIに求めるとするニュージーランドの提案を支持した。G-77/中国は、この提案に異議を唱えた。

月曜日、締約国は、SBIに対し、GEFに対するSBIの追加ガイダンスに含まれる資金オプションを検討する際には、地球気候観測システムに関する地域行動計画で明らかにされた優先的なニーズに対処するため、適切な考察を行うよう、求めることで合意した。出席者は、決論書草案とCOP決定書草案を承認した。

CDMでの吸収量:土曜日、Thelma Krug共同議長は、COP決定書草案と付属書の改訂版を提出した。この文章は、マイナスのリーケージだけを認め、一時的なCERsと長期のCERsの両方のオプションを含め、更新可能および固定のクレジット期間というオプションを取り入れ、小規模プロジェクトの定義を提供し、その規則はCOP-10で決定されるものとし、森林、新規植林、再植林に関する合意された定義を保持し、付属書ではなく決定書の文章の中で、第一約束期間への言及を行い、各国の国内法に基づき、遺伝子操作生物および外来種の規制を行い、プロジェクト設計書類に社会経済および環境の基準を組み入れ、IPCC GPGへの一般的な言及を含める。月曜日、非公式折衝が昼夜継続された。

手法問題:月曜日、出席者は、共同議長の改訂決定書草案を検討した。サウジアラビアとG-77/中国は、背景となる情報および将来の手法問題作業に関するパラグラフをIPCC TARの議論が終了するまで括弧書きにしておくべきだと述べた。締約国は、データインターフェース・スコーピングフェーズに関する文章に多少の改訂を加えた上で合意した。また締約国は、手法作業の状況、関連組織との調整、手法の開発と普及に関係するキャパシティビルシング(能力向上)の文章を削除することで合意した。締約国は、国内温室効果ガス目録作成のための国内システム実施に関する情報交換、および排出抑制上の締約国の貢献度を決定するための提案で共通の理解を深める情報交換について、規定をはずすかどうかで論議した。

廊下にて

週末にかけて、何人かのオブザーバーは、SCCF交渉での付属書Iおよび非付属書I締約国間の意見の食い違い、そしてMDGsや経済多角化への言及での意見の不一致表面化を指摘した。両サイドとも「受け入れるかそれともやめるか」とのアプローチであることは明らかで、これはCOP-9でのこの基金の運用化を危うくする可能性がある。

もう一点、CDMでの吸収量に関する議論は、先週進展が見られたようだったが、突如として、小規模プロジェクトの規模に関するいつもどおりの中断に追い込まれた。

今日の注目点

SBSTA:SBSTAプレナリーは、決論書草案採択のため、午後3時、および午後8時にも会合する。

SBI:SBIプレナリーは、決論書草案採択のためSBSTA,閉会後に会合し、午後11時と午前2時にも会合する。

コンタクトグループ:コンタクトグループでは、手法問題での作業、非付属書I 国別報告書、CDMでの吸収量、SCCF、決定書5/CP.7の実施が取り上げられる。