地球環境
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国連気候変動枠組条約第9回締約国会議

2003年12月11日木曜日




木曜日、第二回および第三回目のラウンドテーブル会合が行われた。閣僚と参加者代表は「技術利用、技術開発・移転を含む技術」および「科学、情報、政策、資金面を含む、気候変動合意に記されている約束と目的を満たすための国、地域、国際的レベルでの進捗の評価」について話し合った。COP-9のPersanyi議長に代わり行われた特別気候変動基金(SCCF)に関する折衝は1日中続けられた。

ハイレベルセグメント

ラウンドテーブルU 「技術利用、技術開発・移転を含む技術」

COP-9議長のPersanyi氏は第二回ラウンドテーブルを開会した。Paula Dobrianskyグローバルアフェア次官(米国)とMohammed Valli Moosa環境観光大臣(南アフリカ)が共同議長を務めた。 Dobriansky共同議長は途上国での技術入手を促進すること、および民間部門をクリーン技術の発展に利用することに関して疑問を投げかけた。Moosa共同議長は、既に取られた行動に焦点を当てるべきだと強調した。同共同長は現存技術の目録作成を提案し、民間部門を関与させないでこの件を話し合うことの効用に疑問を投げかけた。

ラウンドテーブル第一部では、締約国は、持続可能な開発における技術革新、緩和と適応のための技術開発と普及を促進することについて話し合った。アイルランドはEUに変わって、経済成長と排出を切り離すことの重要性を強調し、再生可能なエネルギーは優先事項であると述べた。同国は他の政府にEU排出取引スキームと似たような手法を採用するよう呼びかけ、技術移転は南南および南北ベースで行うことも可能であると指摘した。ブルンジは先進国によるデータアクセスに関して懸念を示し、貧しい国には現地の気候影響を予測する能力が欠けていることに留意した。アイスランドはビジョン、指導力、パートナーシップ、そして産業界の参加を呼びかけた。ドイツは将来のクリーン技術を開発するために必要なインフラ基盤を構築するに当たって、現存のクリーン技術の重要性を強調した。サウジアラビアは、オマーンと共に、化石燃料利用からの排出を相殺するための選択肢として炭素隔離に注目した。インドは、技術移転を求めた結果、唯一達成できた結果はTT:CLEARしかないことに懸念を示した。同国は、技術移転は産業的配慮に限定されるべきではなく、むしろ政策枠組みが必要であると述べた。ツバルは、適切な技術を強調し、ルワンダは、援助国は技術移転の際に貧困削減の必要性に対処しなければならないと述べた。先住民の組織は、参加の拡大を呼びかけ、行動を起こす際には先住民の事前のインフォームドコンセントを保証することを求めた。

スリナムは、持続可能な開発技術の移転、キャパシティービルディングの必要性を強調し、被援助国のニーズを満たすべきだとした。ネパールとカナダは、幅広い技術を利用することを提唱した。スウェーデンは、政策立案者は地域レベルでの技術採用のための公平性の問題とモダリティーを重要視するべきだと述べた。ペルーは、有効な国際的、国内プログラムおよびインフラ基盤の必要性に留意した。パナマは、「大気をクリーンにする」ための技術を開発する必要性を強調し、スロベニアは、気候変動を緩和するための新技術の開発を要請した。チャドは、途上国に移転された技術のリストを求めた。スペインは、持続可能な開発を進めるプロジェクトに民間部門が投資しやすくするための制度的枠組みの策定を要求した。

会合の第二部では、締約国は、開発援助、研究、技術開発協力、パートナーシップ、キャパシティービルディング、資金、可能な環境について話し合った。マラウィは、技術移転や貧困削減を含め、約束は具体的な行動に移されるべきだと述べた。韓国は、Environmental Integrity Groupに代わって、公的資金による技術と民間部門への支援の重要性を強調した。キューバは、技術移転の際には、経済社会面に配慮する必要があると強調した。クウェートは、二酸化炭素を捕獲する技術の開発は価値のあることだと強調した。セネガルは、民間部門の関与の必要性を強調した。ベルギーは、end-of-pipeの解決ではなく、クリーンなエネルギーと排出量削減に注力する必要性を強調した。このベルギーの発言に対し、サブじアラビアは、UNFCCCのねらいは石油依存削減することではないと述べた。英国は、低炭素技術開発、現存技術を即利用すること、クリーン開発軌道の必要性を強調した。G-77/中国は、地域レベルでのキャパシティービルディングを促進するために、非附属書T締約国における技術移転と研究への効果的支援を呼びかけた。マダガスカルは、附属書T締約国に義務をまっとうするよう要請した。ウクライナは、EITは最新技術と再生可能なエネルギーを利用することで排出量を削減できた述べた。

ラウンドテーブル第3部では、締約国は、民間部門の関与、市場メカニズム、公共部門と民間部門のパートナーシップについて話し合った。イタリアは、世界のエネルギー需要に関するデータを提出するとともに、途上国における電力生産は最大の課題であり、再生可能なエネルギーの普及の機会でもあると結論付けた。マレーシアは、税金のインセンティブの重要性に留意した。経済産業組織は、政府に可能な枠組みを与えるよう要請し、非商業的投資は長期的約束のために必要であると述べた。米国は公共と民間のパートナーシップを強調し、炭素隔離、水素、原子力エネルギーにおける国家計画に留意した。ガーナは、技術移転はノウハウと人材開発を含まなくてはならないと述べた。議定書が唯一の実行可能な選択肢であることに留意し、日本は、全ての国に適用する共通ルールの策定を強調した。炭素隔離に関するコメントをMoosa共同議長が求めたのに対し、ノルウェーは、大陸棚に炭素を再投入することに成功したことを強調した。チリは、特に運輸部門におけるよりクリーンなエネルギーを保証することにおいて、市場の条件が果たす役割を強調した。ガンビアは、適切な技術、キャパシティービルディング、充実した国際協力の必要性を強調した。モザンビークは、民間部門が限定されているLDCには、技術移転プロセスに参加するためのキャパシティービルディングが必要であると述べた。

Dobriansky共同議長は、同コメントのレビューを行い、持続可能な開発、適応、公共・民間部門の役割、新および現存技術の役割に注目した。Moosa共同議長は、将来の技術への関心、先端技術開発の必要性、今の現存の技術を最大限活用させることを確認した。

ラウンドテーブルV 「国、地域、国際レベルでの進捗評価」: 最終ラウンドテーブルのテーマは、「科学、情報、政策、資金面を含む、気候変動合意に記されている約束と目的を満たすための国、地域、国際的レベルでの進捗の評価」で、共同議長は、Fernando Tudela Abad環境天然資源水産事務局主席補佐官(メキシコ)およびJurgen Trittin環境自然保全原子力安全の大臣(ドイツ)であった。Tudela Abad共同議長は、CDMは、議定書発効の遅れ、限定的な市場、「壊滅的な」取引コストから生じる課題に直面していると述べた。Trittin共同議長は、UNFCCCは全ての締約国に気候変動に立ち向かうよう義務付けていると述べ、気候変動との戦いや悪影響に対処することにおいて先進国が発揮した指導力の度合いに疑問を投げかけた。

ラウンドテーブル第一部にて、締約国は地域および国の気候変動措置から学んだ教訓について話し合った。チェコは、明確なルールに基づいて協力を行うべきだと述べた。タンザニアはLDCにおける適応措置に対する支援は道徳的条件であると述べた。欧州委員会は、効果的な気候変動措置には政治的意思が必要であると述べ、現存技術を利用して低いコストで排出量削減は可能であると強調した。イエメンは、気候変動に対処すべく必要な行動を取ることには気の進まない附属書T締約国に対して懸念を示した。オランダは、ロシア連邦の批准無しの状況で、引き続き議定書の義務を実施すると述べた。カザフスタンは、議定書の批准のための手順を作成中であると述べた。イランは、経済の多様化のメリットおよび締約国の共通だが差異ある責任を強調した。ギリシャは、健全な気候変動政策のための科学的データの重要性を強調した。コスタリカは、将来の世代は議定書が批准されたかどうかに基づいて現在の世代を裁くことになるだろうと述べた。イエメン、コスタリカ、ペルー、フィリピンは、批准をしていない締約国に批准を要請した。アゼルバイジャンは、技術移転および炭素隔離プロジェクトの必要性を強調した。トルコは、UNFCCCへの加盟を発表した。

ラウンドテーブル第二部では、締約国は、地域および国際的な気候変動措置の実施から学んだ教訓について話した。ノルウェーは、経済金融界にて炭素が抑制された世界に向かう動きが出てきている認識が広まっている様子を話した。コロンビアと他国は、CDMに関わる経験を共有した。モルジブとモーリシャスは、SIDSの脆弱性を強調し、適応ニーズを満たすための技術移転を求めた。米国は、国際協力には様々な形態がある言い、国際的技術協力の役割に注目した。地域的協力に関しては、スウェーデンが、EU排出取引スキームの価値を強調した。バングラディシュは、地域的キャパシティービルディングの活動の必要性を強調した。ナミビアは、SCCFを運用可能にし、LDCの基盤に関わるUNFCCCがらみの作業で発生する継続的支出を正当化しなければならないと述べた。ナイジェリアは、SCCFの交渉は前COP会合で達成された合意を再開したと述べた。

ラウンドテーブル第3部では、締約国は、進捗の評価および今後の行動のための実際的措置に関して話し合い、特に気候変動への行動を促進するための協力と部門横断的パートナーシップに注目した。フィリピンは、現在の交渉のペースは「ひどく不十分」であると述べた。G-77/中国は、先進国に温暖化効果ガス排出削減約束を満たし、悪影響を制限するよう要請した。ロシア連邦は、CDM、JIの運用、現存の議定書手順の簡素化に関して明確な手順を要請した。ブラジルは、議定書の実施における進捗は発効が不明確であることによって妨害されていると述べた。ツバルは、これまでの進捗は気候変動の深刻さを反映していないと指摘し、真の行動が必要であると強調した。韓国は、経済成長を温暖化効果ガス排出から切り離すためには最新技術が必要であると強調した。ブータンは、大半のLDCにとってLDC基金は手の届かない存在であると懸念を示した。オマーンは、他の国々と共に、附属書T締約国が途上国への技術的資金的援助を拡大するよう要請した。豪州は、議定書の目標を達成すべく懸命な努力すると述べた。キリバスは、脆弱な国が気候変動の悪影響に対応するための資金入手を保証する枠組みを求めた。キューバは、技術と知識を入手することの重要性を指摘した。ポーランドは、緩和と適応措置のバランスを取る必要性を強調した。

結論として、Trittin共同議長は、今世紀、地球気温上昇を摂氏2度以下に制限するために締約国間で協調して取り組むことを強調した。TudelaAbad共同議長は、多くの途上国がUNFCCCの義務を超えてしまったと述べ、唯一の選択肢は「火を消す」ことであると述べた。

終わりに、Persanyi議長は、アルゼンチンがCOP-10の開催国に名乗り出ていることに留意し、一部の締約国がCOP-10の日程変更を提案していると述べた。同共同議長は、金曜日のビューロー会合とCOPプレナリーの前にこの件を相談するよう締約国に要求した。

廊下で

COP-9はあと一日で終了するが、一部のオブザーバは、地域グループ間の交渉の立場における亀裂が大きくなっていることと、グループ内の調整およびコンセンサス形成にかかった時間に関して意見を述べた。ある参加者は、もしブループが交渉の立場に合意できない場合は、資金に関して未解決な決定を取り扱う最終COPプレナリーでコンセンサスを取れる可能性が危険にさらされるかもしれないと注意を促した。Persanyi議長によるコンセンサス形成の取り組みにもかかわらず、SCCFの交渉は、木曜日の夜遅くまで続き、意見の不一致や固定化した立場が目立った。LDC基金に関してPersanyi議長は、金曜日のLDC閣僚会合で予測される「激しい緊張」に心の準備をするとともに、NAPAの実施のために必要な措置に関する優柔不断さと惰性に対してLDCと一部の先進国との間で怒りが高まっておりその解決に努めなくてはならない、とあるオブザーバは示唆した。

もう一点注目すべきこととして、環境NGOが議定書の誕生パーティーを主催したが、一部のオブザーバは、議定書120の締約国が「議定書の友人」の会に集まってくれないのではと気をもんでいた。絶好の機会の「部外者」にはなりたくないロシアのプーチン大統領はこうしたチャンスを逃したくはないだろう、と示唆する者もいた。

今日の注目点

COPプレナリー:
 COPプレナリーは午前10時に会合が予定されている。作業を最終化し、決定書採択のため午後3時にも会合が開かれる予定である。