地球環境
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COP9最終速報

2003年12月8日(月)〜12日(金),イタリア ミラノ

2003年12月16日
地球環境対策部
矢尾板泰久  蛭田伊吹


吸収源CDMについて

 COP9までに採択されるか否か予断を許さない状態だった吸収源CDMの定義とルールが12日のCOP9全体会合で採択された。12月8日以降、コンタクトグループ会合は一回行われ、最終的に採択されたルールと殆ど同じドラフトが「共同議長のノン・ペーパー」として提示された。コンタクトグループ会合の中でKrug共同議長(ブラジル)は、微妙なバランスの上で成り立っているドラフトであることを強調し、内容について議論を再開しないように念を押した。それに対しアルゼンチン、カナダ、スイス、EU、ペルー、ブラジル等多くの国は、決してドラフトに満足しているわけではないことを強調した上で合意した。又、COP決定案の中に、GMO(Genetically Modified Organisms;遺伝子組み換え生物)及び外来種の扱いについて、そのような植林活動をCDMとして認めるか否かはホスト国が決定し、そのようなプロジェクトから発行されたクレジットの利用は各付属書I国が決定する、と書かれていることに対し、オーストラリアはホスト国の主権でありCOP決定の中に特記するべきではないことを述べ、USに賛同を受けた。しかしその件については特に文書自体を変更することはなく、共同議長のドラフトがそのまま合意された。

 9日のSBSTA全体会合では、Krug共同議長からドラフトが提示され、各国から様々な思い入れが述べられたがドラフトは変更されることなく採択され、COP9へ送られた。意見としては、オーストラリアからコンタクトグループの際と同じようにGMO及び外来種に関する意見が述べられた。しかし、もともとGMOや外来種を吸収源CDMとして認めるべきではないという案を出していたノルウェーからは、もっと厳しい内容にすべきという意見が出された。その他、カナダからは民間セクターの参加を促進すること等が述べられた。

 COP9全体会合でも吸収源CDMのルールに対してペルーから若干意見が述べられたが、何も変更されることなく採択された。ルールの内容については、小規模吸収源CDMについて、10,000tCO2/年以下ではなく8,000tCO2/年以下に変更されている点を除き中間速報(http://www.gispri.or.jp/kankyo/unfccc/COP9tyuukanhoukoku.html)と同様である。小規模吸収源CDMのルールについては今回詳細を決定していないため、各国は2004年2月28日までに事務局に小規模吸収源CDMのルール、及びその実施を促進するための方法について意見を提出することとなっている。事務局は提出された意見を下元に技術報告書を作成し、SBSTA20ではその資料を元に議論が行われる。小規模吸収源CDMのルールは、COP10で採択する予定。


IPCCTARについて

 IPCCの第3次評価報告書(TAR)をUNFCCCの活動の中で利用し、各国の気候変化に対する理解を深めると共に、各国の持つノウハウを共有する方法を検討している当アジェンダの結論案及びCOP決定案は、6日以降コンタクトグループ会合が開催されないまま迎えたSBSTA全体会合で発表された。

 結論案には、1)SBSTA20にて、先に決定した2つのアジェンダ(「気候変動の影響、脆弱性、及び適応措置の科学的、技術的、社会経済的な側面について」、「緩和措置の科学的、技術的、社会経済的な側面について」)の下、特に「持続可能な発展」、「(気候変化に適用する、または気候変化を緩和する)機会と解決法」、「(気候変化に対する)脆弱性とリスク」という3つのテーマに沿って議論を開始すること、2)以上の3つのテーマについて各国政府が2004年3月15日までに事務局に意見を提出すること、3)SBSTA20にて2つのアジェンダの下でそれぞれワークショップを開催し上記テーマについて議論すること、及び4)SBSTA20にて次の活動ステップについて合意すること、の4点が書かれている。

 またCOP決定案には、SBSTA20で2つのアジェンダの下、各国の経験や情報を共有することに焦点をおいて活動を開始すること、及びCOP11にてこの事項について報告することの2点のみが主に書かれている。この案自体に具体的な内容は何もないが、決定案を作成することそのものに強硬に反対していたG77+Chinaに配慮した結果と思われる。

 以上は、既にインフォーマルコンサルテーションで地域グループ間の調整が十分になされていたためか各国からクレームが出ることもなく採択された。ただしロシアからは、TARにはすべての締約国に当てはまる気候変動の化学的根拠が示されていることが強調され、SBSTA19報告書に記録しておくように求められた。COP決定案は、12日のCOP全体会合でも特に問題なく採択された。


閣僚級会合

 COP9閣僚級会合は、交渉ではなく政治レベルでの自由な議論を促進することを目的とした。各国の政府はデリーの時のような南北での対立構造は避け、将来に向けた考え方の信頼を築きたいという認識で一致した。

(1

)第一セッションのテーマは「気候変化・適応・緩和・持続可能な開発」であった。

日本の小池百合子環境大臣が共同議長の一人となった。小池環境大臣は「京都議定書の一日も早い発効が重要である。もはや議論している場合ではなく、地球規模の参加による行動を取るべきだ」と表明した。初めに締約国は貧困撲滅・経済成長・食料安全保障を議論した。G77+Chinaを代表してモロッコは先進国が、発展途上国の国家の懸念や状況を無視するなら適応も緩和措置も成功しないと述べた。イタリアはEUを代表して温室効果ガス排出削減に関し先進国はより努力するべきであり、開発途上国も、その目標に向けたステップを踏むべきだと述べた。次に、締約国は脆弱性、気候関連災害、影響と適応を議論した。中国は、先進国が排出緩和で先頭に立つなら、開発途上国も貢献出来ると述べた。オーストラリアは、原子力によって温暖化を押さえるのはオプションとして認めるべきではないと指摘した。最後に、締約国は国の発展のための適応と緩和について議論した。フランスは、今世紀が気候変化に対する我々の無責任さが自らを苦しめた世紀として記録されるか、温暖化の抑制と人類の成熟の世紀として記録されるかは我々自身に掛かっていることを強調した。デンマークは、再生可能エネルギーの増加を強調した。サウジアラビアは、緩和と適応措置が開発途上国による新たな約束に結びつくものであってはならないと述べた。

(2

)第二セッションのテーマは「技術。技術使用と発展、技術の伝達」であった。

締約国は、まず持続可能な開発における技術革新、緩和と適応のための技術開発と普及を促進することについて、次に、締約国は開発援助、研究、技術開発協力、パートナーシップ、キャパシティービルディング、資金、可能な環境について、最後に、締約国は、民間部門の関与、市場メカニズム、公共部門と民間部門のパートナーシップについて話し合った。サウジアラビアはオマーンとともに化石燃料利用からの排出を相殺するための選択肢として炭素隔離の重要性を述べた。イギリスは、現存技術の普及に力を注ぐべきだと述べた。イタリアは、世界のエネルギー需要に関するデータを提出するとともに、途上国における電力生産は最大の課題であり、再生可能なエネルギーの普及の機会でもあると結論付けた。

(3

)第三のセッションのテーマは「科学、情報、政策、資金面を含む、気候変動合意に記されている約束と目的を満たすための国、地域、国際的レベルでの進捗の評価」であり、締約国は地域および国の気候変動措置から学んだ教訓について話し合った。次に、締約国は、地域および国際的な気候変動措置の実施から学んだ教訓について話し合った。最後に、締約国は、進捗の評価および今後の行動のための実際的措置に関して話し合い、特に気候変動への行動を促進するための協力と部門横断的パートナーシップに注目した。


特別気候変動基金(SCCF)

 途上国の支援を進めるための特別気候変動基金についてのガイドラインは採択されたが、経済の悪影響に対する補償の扱いについてはCOP10に持ち越しとなった。


2004年度−2005年度の予算について

 日本は名目ゼロ成長予算を支持したが、EUは9%増を支持、G77+Chinaは9%の予算増に賛成し、主要予算に京都議定書の開発活動を含めることを支持していた。議論の結果、6%増との結果になり、US$約3480万となった。その内、京都議定書関連としてUS$約545万の予算を計上することになった。


サウジアラビア提案について

 SBSTA16から議論されている内容で、京都議定書2条3項の「先進国は気候変動に対応する政策及び措置の国際貿易に対する悪影響を考慮する」ということに対してサウジアラビアはCOP9の暫定議案にし、条約4条8項9項の下だけでなく、京都議定書の下でもこの件に関する考慮をハイライトするよう提案した経緯がある。今回も、サウジアラビアは実施を進めるように促したが、SBSTA19でも、関係者間で議論が行われたが、合意には至らず、SBSTA20へ持ち越しとなった。


カナダ提案について

 第一約束期間において温室効ガス低排出エネルギーの輸出により得られるクレジットを年間7,000万CO2トンまで認めるように求めた提案(カナダ提案)にSBSTAは第16回会合で留意した。第17回および第18回会合でかかる問題を検討したが合意に至らなかった。カナダは長期的な視点で今後も専門家による協議を実施するよう求めていた。カナダ提案にロシアは賛成したが、EU・G77+Chinaや他の国々の反対により今回も合意に至らなかった。SBSTA20での継続課題となった。


COP10について

 COP10の開催場所はアルゼンチンのブエノスアイレス、期間は2004年11月29日から12月10日まで開催することをCOPで採択した。

以 上