地球環境
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SB16 (SBSTA16)中間速報

 マラケシュ合意を経てたどり着いたSBSTA16は、「交渉」より「実施」により重点をおいて議論を進めることになるという議長の言葉で開会され、新しい事務局長としてオランダのJoke Waller-Hunter氏が着任したこと、一番最近批准した日本を含め、74カ国が京都議定書を批准し、附属書I国の総排出量は90年レベルの35.8%に達したことが発表された。日本は、京都議定書を発効させるべく共通のルールを作成し、他国の参加も促したいとコメントした。ロシアは、今年中に京都議定書の国内検討を完了させられるようにしたいと述べた。
 アジェンダは提案された議題に加え、10(c)に議定書2.3条(悪影響)についての問題を付け加えるようサウジアラビアより要請があったが、EUや日本、オーストラリアは、2.3条はConventionの4.8条と4.9条と非常に相似していることから付け足す必要はないと意見した。それに対し、サウジアラビアはConventionと京都議定書は、切り離して考えるべきであると指摘し、G77+Chinaが賛成した。また、10(b)のカナダ案に関してG77+Chinaが、アジェンダでは「提案」となっているが既にワークショップが行われたことから、「報告」という言葉に変更したらどうか、と指摘したのに対し、カナダは「提案」という言葉をそのまま使用するよう主張した。結局SBSTAは、10(b)と10(c)に関して一時保留とすることにした上でアジェンダを採択した。保留された議題は、議長により来週までに結果が報告されることとなった。
 5日〜7日の全体会合にてSBSTAの議題は一通り意見交換され、必要に応じてコンタクト・グループが設置され、そこでより深く議論されることとなった。コンタクト・グループによる決定案は、6月13日(木)の全体会合で発表されることとなる。


主なトピック


IPCC TARについて
 4月に就任したパチャウリ議長より、第3次評価報告書(TAR)に関するワークショップ、及び第4次評価報告書の報告があった。ワークショップでは、TARに含まれている情報を十分に活用出来るSBSTAなどに相応しいトピックとは何かを模索し、不確実性の低減、研究と観測への資金援助、影響と適応のコスト分析、技術開発への投資、措置の持続可能な発展への効果などが挙げられた。各国からは、TARを広く知らしめること、特に途上国からの専門家の参加を増やすこと、科学的な不確実性(危険な人為的干渉レベル)の更なる研究などの必要性が主張された。特にノルウェーからは、2012年以降の排出目標を更に厳しくする検討を始める意見が出され、中国やサウジアラビアからは、歴史的責任や平等性についてTARの研究は不十分である点が指摘された。この議題について更に議論を進め、どうTARをSBSTAにおいて役立てていくかについて検討するコンタクト・グループが設置された。
 TARのコンタクト・グループのタスクは、TARをどうやってSBSTAのこれからの作業に役立てていくかについて議論し、結論案とCOP8の決議となりうる案を作成することである。会合ではまず、全体会合で意見が出された地域的な影響と適応、不確実性、観測、第6条、更なる研究などについて議論され、脆弱な地域への資金援助や更なる研究や、科学を意志決定に適用すること、適応だけではなく緩和に関しても十分に考慮すること、不確実な点のみではなく確実な点にも注目することなどの必要性が確認された。第2回会合では、共同議長による結論案のドラフトが配布された。ドラフトには、通常の議題の下でTARを更に考慮していくことや、主な不確実性や研究の優先順位、他の国際研究プログラムとの協力、途上国における研究能力を高める重要性などが記載された。多くの国は、議論の方向性を見つけるという点においてこのドラフトを歓迎したが、G77+Chinaは、ドラフトが作成されるには早すぎると意見した。また、資金援助や京都議定書を実施した場合の影響評価、スピルオーバー効果、途上国・貧困へ非対称的に圧し掛かる気候変動の悪影響への対応策などについても言及された。第3回では、前回の議論を更に進め、特に京都議定書の実施に対する評価は、実際に発効されないことには効果を評価できない点や、既に存在する文献が無ければIPCCは評価することが出来ない点が指摘された。また、マレーシアなどは、IPCC以外の文献も広く利用することも提案した。それに加え、中国は、途上国で行われた研究結果を国際的なジャーナルに発表することが出来ない点などを強調し、日本は緩和策の重要性を強調した。全体を通して議論は途上国の問題に集中しており、TARを利用して多くの資金を誘導したい途上国の思惑が現れていたように思われる。


手法に関する事項
(a)付属書I国によるGHGインベントリの報告・レビューガイドラインについて
 専門家会合を経てCRF(Common Reporting Format)を含む新しい報告・レビューガイドラインのドラフトが作成されたことに関して事務局から報告があり、CRFを通してのガイドラインの改善、ドラフトの目的の明確化、レビュープロセスのタイミングと期間の検討の必要性を強調した。EUは、試験期間が終了したら更に人材が必要なることを指摘した。ガイドラインの合意に向けて議論を深めSBSTAで検討する結論案とCOP8の決議となりうる案を作成するためにブラジルとノルウェーの共同議長の下でコンタクト・グループを設置し検討することが決定した。

(b) 議定書5条、7条、8条の下でのガイドライン
 他の決議と首尾一貫性を保つためにCOP7では5・7・8のガイドラインの一部が完成されなかったため、SBSTA16にて残された部分について検討することになった。
(i) グッドプラクティスガイダンスと議定書5.2条における「調整」について
 アテネで行われたワークショップについて「調整」を例外として扱い、手続きは簡易なものにするべきである、という参加者たちの意見が報告された。実際のインベントリデータを利用した「調整」を評価する第2回目のワークショップを2003年上旬に行うべきだという意見も出された。「調整」についての議論は、ニュージーランドと南アフリカの共同議長によるコンタクト・グループで続けることとなった。

(ii)議定書7条で求められている情報の準備、及び8条で求められているレビューのガイドラインについて
 京都メカニズムを利用する資格の回復に関するレビュー方法に対し、EUは、通常のレビュープロセスと報告方法、また遵守手続きと一致させなければならないとコメントした。この議題に対してより議論を深め、結論案とCOP8の決議となりうる案を作成するために(i)と同じコンタクト・グループの下で検討されることとなった。

(iii) 議定書7.4条における登録簿の規格に関して
 ニュージーランド代表が6/2-3に行われたコンサルテーションについて、現状では多くの国の登録簿はまだ作成し始めたばかりであるが、データ交換がスムーズに出来るような登録簿を2005年までに作成することや、登録簿の規格をデータ交換に関連する分野に適用させるべきであることなどが報告された。規格のドラフト・ペーパーはSB17までに作成される。この議題に関してはニュージーランドが再び非公式折衝をすることとなった。


LULUCFグッドプラクティスガイダンス等の作成について
 IPCCタスクフォースの平石共同議長より、LULUCFに関する作業プログラム(task 1,2,&3)について報告された。またFAOより、統一された林業関連の定義を国際的に使用するための専門家会合の報告があり、交渉やプロセスを円滑にし、結果的に報告の重荷を減らすような定義の重要性、既存の定義を承認・採択する必要性、議定書3.3条、3.4条との整合性、定義の一部が土地利用や森林の形態に合わないという4点が指摘された。この議題に関してSBSTA議長が関係国と協議の上、結論案を作成することとなった。


LULUCFについて:議定書12条の下における植林と再植林活動の定義と方法

非永続性、追加性、リーケージ、不確実性、生物多様性やエコシステムなど社会経済・環境への影響なども考慮した上で、第1約束期間におけるCDMに植林・再植林活動を含めるための定義と様式をCOP9で採択するために、SBSTA16にて委任事項とアジェンダを完成させることとなった。EUは、シンクCDMから得られるCERsと通常のCDMから得られるCERsとを見分けられるような方法が必要だと指摘し、日本やカナダは、プロジェクトを実施するにあたってホスト国の状況や自然・社会状況を考慮することの必要性を述べた。ウガンダとノルウェーはアグロフォレストリーを含めることを強調した。この議題に対して、委任事項とアジェンダを完成させ、SBSTAで検討する結論案を作成するためにコンタクト・グループが設置された。
 LULUCF/CDMのコンタクト・グループは、オリヴェイトで行われたワークショップで作成した文書をベースに議論を始めた。カナダや日本、ウルグアイ、コスタリカは、各国が議論した結果として出来上がったこの文書をそのまま利用することを主張したが、中国、マレーシア、ブラジルなどは、ワークショップに参加できなかったなどの理由もあり、すべて見直すことを主張した。結局文書は段落毎にすべて見直され、意見提出の期限や「方法」と「方法に関する事項」などの言葉を調整して6月8日の夜に改訂版が完成された。また、第1約束期間における植林と再植林活動の定義として、G77+Chinaは、Dec11/CP7のAnnexで採択された定義と同じにし、「追加性」「リーケージ」「不確実性」などの定義は、必要に応じて改訂すること、「非永続性」などUNFCCCで正式に定義されていない言葉は、第1約束期間の植林・再植林用に定義付けるという案を提出した。それに対しカナダは、「植林」と「森林」の定義に関してはCMP1のドラフト決議のAnnexとして採択された定義と同じにし、「再植林」に関しては、1989年以降に森林でない土地に制限するのではなく、1999年12月31日以降にすること、また森林の最小土地面積などは非附属書I国が決定するという案を提出した。日本はカナダに賛成したが、G77+Chinaとの間で合意が得られず、結局結論案には、「SBSTAはCDMの第1約束期間に含める植林と再植林の定義と方法に関して議論を始めた。同事項に関しては、SBSTA17にて引き続き議論される。」と記載されるに留まり、コンタクト・グループ会合は完了した。

以 上

(文責:蛭田 伊吹)