地球環境
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CDM理事会 第12回会合 主要事項報告
(2003年11月27日/28日  イタリア/ミラノ)


地球環境対策部 篠田健一


1. OE(Operational Entity)の信任(accreditation)について
  現在19社がDOEの申請をCDM理事会に行っているが、今回もDOEとしてCOPに推薦された社はない。DOEへの審査が最も進んでいるのは、JQA、DNV、トーマツ等4社[1]のAE(候補:applicant entities)で、現在indicative letter[2]が発行された段階である。ウィットネッシングは4社、オンサイト審査は6社が完了した段階である。

2. 新方法論について(Methodologies for baseline and monitoring plans)
  新方法論としてMethパネルから推薦された3つの方法論の全てがCDM理事会で承認された。
 
(1) 3つの新方法論について
 
i ) NM0001 rev (Vale do Rosario Bagasse Cogeneration)ホスト国:ブラジル
(validator:TUVsudD)(Accreditation:scope1:energy industries)
販売電力を穀物等の殻(バガス)を燃料とするコージェネレーションで置き換え、最初の7年はコンバインドマージン、あとはビルトマージンで計算する案件である。注目点は、CDM理事会では一般的に、must run、low cost の電源についてはベースラインから除外して考えるべきであるとしつつも、ブラジルにおいては供給電力の8割がそういったmust run等の電気(水力)という特殊事情があり、ベースラインに含めて考えるべきであるとした点である。
CDM理事会はMethパネルに対しこの新方法論を適用するにあたりもっと方法論を一般化(generalize)[3]できるかどうか第13回会合でrecommendationを出すよう求めた。
ii) NM0021 (CERUPT Methodology for Landfill Gas Recovery) ホスト国:ブラジル
(validator:PwC)(Accreditation:scope13:waste handling and disposal)
オランダのCERUPT案件のメタン(埋立地からのランドフィルガス)回収プロジェクトが提案している方法論で、今まで大気に放出されていたメタンを回収することで電力・熱を得られることから、ベースラインは回収前のメタン放出量であり、プロジェクト活動による回収量が排出削減量となる。この方法論は、第11回CDM理事会でNM0005rev(NovaGerar landfill Gas to Energy Project)として承認されたのと同様の方法論であることから、この2つの方法論をより一般的に適用できるように(generalize)メタンガス回収プロジェクトの内容に応じ、各ステップでのケース分けに対応できるシナリオ作りが必要ではないかとの指摘が岡松氏からあった。
iii) NM0023 (El Hydro-electric Project) ホスト国:メキシコ
(Accreditation:scope1:energy industries)
  小規模ダムによる30MWの水力発電による置換電力を、コンバインドマージン(ビルトマージン50%、オペレーショナルマージン50%)で計算する。
(2) 理事会は、Methパネルに対して新方法論の推薦及び承認済み方法論のリフォーマットを行う際に、以下の点を考慮するよう求めている。
 
a) 承認された方法論が他のメタンガスプロジェクトにも適用できるかに関してよりきっちり調べること
b) 送電網に電力を供給するプロジェクトに関する法方論で、オペレーショナルマージンやビルトマージン・コンバインドマージンといった異なる方法論からある方法論を選び出すための基準を提供する必要があること
(3) 小規模CDMに関する簡易の様式及び手順(simplified modalities and procedures) について、Methパネルからの付録B(appendix B)の改訂に関する提案をもとに修正することに合意した。

3. CDM登録簿(CDM registry)について
事務局にて登録簿の開発に関する調査を一層進めることが合意された。特に、一般から寄せられた登録簿ソフトウエア[4]を使えるかどうかがポイントとなる。コストパフォーマンスを考慮したためとみられる。第14回会合で進捗報告を行う予定。
なお、この報告ではメンテナンスやラインセンスコストも含めた必要となる費用全体や、ユーザーにとって登録簿が使いやすいこと(user-friendliness)、トランザクションログや国別登録簿とのインターフェイス、開発のスケジュール(時間配分)、公募を通じて得られた他のソフトウエア等について言及される予定。
CERを受け取ることになる付属書I国の国別登録簿の運用ができていない場合、できるまで仮口座(temporary account)をCDM登録簿に含むことが合意された。CERがCDM登録簿の保留口座(pending account)に発行された際、それを投資国として受け取り、自国の国別登録簿に移転するためである。
非附属書I国やその国のプロジェクト参加者が、CDM登録簿の中の口座から附属書I国の国別登録簿にCERを移転できるのかについては、もう少し検討を加えることになった。
会合報告書には掲載されていないが、理事会で紹介した今後の課題 (further issues) が、理事会の認識として興味深かったので紹介する。(1)は上記の通り、国別登録簿ができるまでの仮措置として認めるというのが結論である。(2)は結論保留である。
(1) 附属書I国とその企業等は、CDM登録簿に保有口座(holding account)をもてるのか
(2) 非附属書I国とその企業等は、CERをCDM登録簿上の口座から国別登録簿に移転できるのか
(3) CDM登録簿内での、口座間での移転はできるのか
(4) CDM登録簿にあるCERは、次の約束期間に持ち越し(carry over)できるのか

4.その他
  (1) 次回(第13回会合)は、2004年3月1日、2日に開催される予定。
  (2) 次回も、今回と同様のスタイルでの開催の予定(50名の傍聴者が入るスペースで行う)。CDM理事会の運営・公開については、アメリカが傍聴の拡大等透明性の向上を主張しているが、それへの対応は見送られた模様。
なお、次回会合への傍聴申込は、2004年2月9日の17:00までに事務局に登録すること。(※登録希望をcdm-info@unfccc.intに送信。)

※ 詳細については、CDM理事会HPを参照のこと。
http://cdm.unfccc.int/EB/Meetings/index.html

以上



[1] @)Japan Quality Assurance Organization, A) Det Norske Veritas Certification Ltd., B)TUV Suddeutschland Bau und Betrieb GmbH, W)Tohmatsu Evaluation and Certification Organization
[2] デスクレビュー及びオンサイト審査での要求を満たしたとCDM−AP(accreditation panel)が判断したAEにCDM−APから発行される。今回の4社には2003年12月1日付けで発行される。
[3] 他のバイオマスコージェネレーションプロジェクト(メタン発生のないもの)や、原子力やバイオマスが支配的な電力送電網等の考慮に関連がありうる
[4] CDM登録簿の公募(public call for input)には9月末までに17件の応募があり、うち2件が無償(no-cost basis)の登録簿ソフトだった。