地球環境
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第16回CDM理事会会合 結果概要
2004年10月21−22日 ドイツ・ボン

2004年11月2日
文責:蛭田 伊吹


1) CDM-APの進捗
  Marina Shvangiradze氏(CDM-AP副議長)から口頭で説明あり。
  次回のCDM-AP会合(日程不明)にて、CDMEB15後に行われたジョイントワークショップの結果を検討し、CDMEB17までに理事会に提言を行うこととなった。

2) 方法論に関する進捗
  Jean-Jacques Becker氏(Methパネル議長)から検討した新方法論の説明等が行われ、理事会は以下の新方法論の取扱いについて合意した:
  承認:NM0034-rev2 Granja Becker GHG Mitigation Project(スコープ13及び15)
  再フォーマット版はAM0016 GHG Mitigation from improved Animal Waste Management Systems in confined animal feeding operations(Annex 4参照)。
  理事会メンバーからは、他の同様の承認済み方法論と統合することが提案されたが、モニタリングの方法論がかなり異なること等から、さしずめ個別の方法論として利用することとなった。
  見直し:NM0031-rev, NM0041, NM0042, NM0047, NM0048
  2004年12月1日までに再提出すればMethパネル第14回会合(2005年1月26-28日)にて再検討される予定。(理事会メンバーからは特に意見なし)
  不承認:NM0030-rev→統合された方法論(ACM0002)で既にカバーされていることから、個別に承認する必要がないということで不承認となった。(どちらにしてもNM0030-revの追加性に関する部分は認められないとのこと。)しかし、今後も修正版が出てくる可能性はある。
  追加性を証明するツールについては、CDMEB16 Annex 1(追加性を証明するツールに関するパブコメ集)及びそれを元に作成したツール案が理事会で説明され、その後ドラフティングチームで詳細な詰めが行われた。検討の結果、"Tool for the demonstration and assessment of additionality”(Annex 1参照)が合意された。
  承認済みの方法論(AM)の見直し手順については、Borsting CDMEB副議長によってコンサルテーションが行われたものの合意には至らず、CDMEB17にて議論を続けることとなった。(Methパネルの原案はCDMEB16検討事項Annex 2参照。)
  理事会メンバーからは、新方法論の検討とほぼ同じ手順に則るようにし、改定案が理事会に承認されたのち、1ヶ月時間をおいてから発効させるようにする提案があった。その場合、改訂版が発効する前は、オリジナルの方法論で登録を済ませることとなる。しかし、他のメンバーからは、もし見直しを要請したのが理事会メンバーの場合オリジナルの方法論のまま登録手続きを進めることは考え難いといった意見が述べられた。
  見直しを行う人員と必要日数としては、専門家最大2名で2日間ということにし、状況によってある程度柔軟に対応できることとなった様子。
  小規模CDMのM&P Appendix Bは、原文のAnnex 2のように改訂されることが合意された。なお、II.Fの追加はFAOの提案によるもの。(FAOはバイオマスの利用についても提案を行っているが、吸収源CDMの分野であるためそちらで検討するほうが妥当と判断した。現在のところ吸収源CDM分野における議論がまだそれほど進んでいないため、まだ検討されていない。)
  ベースラインシナリオを作成する際に関連してくる国家・セクターにおける政策の考慮方法及び投資バリアについては、政策を以下の4タイプに分けることに合意し、Eタイプの考慮方法を提示した。Lタイプの取扱いについては、今後更にMethパネルで検討する(Annex 3参照→以下概要参照)。
  AM0001の利用が保留になっていることについては、Becker Methパネル議長から、パブコメが募集されたこと、検討する2人の専門家を指定したこと、次回(EB17)までに分析結果および提言が提出される予定であることが報告された。現時点では、まだMethパネルの中でも深く議論されているわけではない。
  その他
  Methパネルメンバーの交替:Arturo Villavicencio氏→Daniel Perczyk氏
  ジョイントワークショップの結果を受けて、EB17までにMethパネルとしての提言を提出する。
  承認される方法論の合理的な適用条件についてMethパネルで検討する。

3) 吸収源CDMのルールについて
  吸収源CDMの新方法論を提出する際の手続きのパラ4が修正されVersion2となった。
http://cdm.unfccc.int/Reference/Procedures/AR_PNM_proced_ver02.pdf
  ARWGは、既にあるPDDの使い勝手についてプロジェクト参加者のコメントを検討することとなった。

4) 小規模CDMについて
  小規模CDMの方法論及びプロジェクトカテゴリーについて見直しを行うワーキンググループ(SSC-WG)のメンバーには、Methパネル代表としてFelix Dayo氏が選定された。また、SSC-WGのショートリストから、Gilberto Bandeira de Melo氏(Federal University of Minas Gerais(UFMG) Department of Sanitary and Environmental Engineering (DESA))、Binu Parthan氏(IT Power India)、及び山田和人氏(パシフィックコンサルタンツ株式会社)が選定された。その他のメンバーはEB17にて決定する予定。

5) CDMプロジェクト活動の登録について
  登録申請中にレビューを要請する手続き(M&Pパラ41)の詳細な説明について合意された(Annex 5、概要参照)。
  承認レター(letter of approval)及び許可レター(letter of authorization)で網羅されるべき内容については、Annex 6の通り合意された(概要参照)。
  登録申請が既に行われている3件のプロジェクトについては、その要請が留意されのみで結論は出ていない。(PDD等はすべてCDMウェブサイトに公開されている。)、なお、プロジェクト登録番号0001「HFC23の熱酸化によってGHG排出量を削減するプロジェクト」(インド・グジャラット)」については、さっそく見直し要求が提出された。理事会メンバーから提出された見直し要請書3通(無記名)は10月29日にCDMウェブサイトに掲載されている(http://cdm.unfccc.int/Projects/review.html)。要請の主な理由は以下の通り。なお、登録番号0001が見直しされるかどうかはEB17にて検討される予定。
  京都議定書が発効していない現在、「京都議定書の締約国」は法的な意味で存在しない。しかし、CDMは京都議定書の締約国によってのみ実施できるという規定がある。従って、どの国もまだ参加規定に当てはまっているとはいえない。
  プロジェクトに関係している締約国のすべてから参加許可書(authorization letter)が提出されていない。また、インドのホスト国承認書は特定の条件下において承認しているが、それは十分な承認書とはいえない。従って、それをチェックせずプロジェクトを有効としてしまったのはDOEの判断ミスと言える。
  インドのホスト国承認書に含まれている内容は、登録プロセスの範囲外のもの(CDMM&Pの要件ではなく、国と参加者の個別契約または国の規制で対応しなければいけない問題)も含んでいる。理事会はこれら条件と登録との関係について明確にしなければならない。
  Validation reportの中で、DOEは、プロジェクト参加者が提出した報告書が規定及び方法論に従って記述されているかについて確認する責任のみを持ち、報告書が現実を反映しているかどうかについては責任を持たないと述べているが、それはDOEとしての責任を果しているとは言えない。
  HCFC-22は「GHGではない」とあるが、京都の6ガスに入っていないだけでGHGである。また6ガス以外のGHGについて、UNFCCC及び京都議定書は「遵守には関係ない」とし、その他の場合(削減プロジェクト等)はすべてのGHGを考慮しなくてはいけない、と解釈できる。従って、HCFC-22の放出をリーケージとしてカウントしないのは間違っている。 等

6) その他
  CDM登録簿について
  進捗について事務局及び登録簿のデベロッパー(Perrin Quarles Associates Inc.:USAヴァージニア州、1979年設立。USAのSO2及びNOx取引システムの登録簿も開発しており、EUETSの取引ログの評価(peer review)も欧州委員会のために行っている。)からはプレゼンテーションが行われた。
  登録簿の完成時期及びそれまでのスケジュールは以下の通り。
FIRST PHASE
Demo phase 1 prototype
EB16
Draft technical specifications 11月初旬
Deployment, testing, handover 11月22日
Demo Phase 1 registry EB17(12月1−3日)
SECOND PHASE
Extra reporting functions 2005年1月
Final technical specifications 2月
Additional modules 3,4,5月
Demo phase 2 registry EB (4/5月)
Final documentation (セキュリティ, ユーザーサポート,メンテナンス,アップグレード等) 6月
Deployment, testing, handover, training(管理者等) 6−7月
Initialization of communications with the International Transaction Log 6−7月
  EB17の日程
  2004年12月1−3日、ブエノスアイレス・アルゼンチン
  傍聴登録の締め切り:11月10日17:00 GMT CDM理事会事務局まで連絡のこと。
  EB18の日程は、2005年2月23−25日に決定。
  パブコメの内容とは異なるが適切な意見書が次の会合の2週間前までにCDM理事会によって受け取られた場合は、次の会合まで待ってそこで初めて検討することとする。なお、2週間を切っている場合は、次々会合まで検討を先送りすることとする。

Annex 3概要
ベースラインシナリオを確定する際の国家・作業部門における政策・規制の扱い  
タイプ 政策の内容 ベースラインシナリオに反映すべきか?
(MethP12の結果)
ベースラインシナリオに反映すべきか?
(EB16の結果)
Type E+ 市場を歪ませ、エネルギー集約型技術・燃料の利用を優位にする、国家・産業部門における既存の政策又は規制。 有効化審査の段階で導入されているか、クレジット期間中に導入される場合、考慮しても良い。 京都議定書の採択以前に導入された政策に限って考慮しても良い。採択後に導入された政策の場合は、その政策が導入されてない仮定的状況をベースラインとする。
Type E- よりGHG排出量の少ない技術の採用を優位にする既存の国家・産業部門における政策又は規制。 プロジェクトにGHG排出量の少ない技術の採用をさせ易くするため、有効化審査の段階で、非附属書I国の国家機関が政策・措置を導入した場合、ベースラインはCDM及びその政策又は規制が導入されていない状況を指す。[マラケシュ合意][京都議定書]の採択後に導入された政策、又はプロジェクトが有効化審査に申請された時以降の政策に限って適用する。 マラケシュ合意の採択後に導入された政策は、ベースラインに考慮しない。(つまり、その政策が導入されていない仮定的状況をベースラインとする。)
Type L- 負の環境外部性の低減、及び/又は、省エネを促進するために地方自治体又は国家機関が採択した産業部門における義務的規制で、それが付随的にGHGの削減にも貢献するもの。 (今後検討予定) (今後検討予定)
Type L+ 負の環境外部性の低減を促進するために地方自治体又は国家機関が採択した産業部門における義務的規制で、それが付随的にGHG排出量の少ない技術の採用・普及を阻害するもの。 (今後検討予定) (今後検討予定)

Annex 5概要 CDMプロジェクトの見直し手続きの説明(登録以前) 
  主に見直し手続きにかかるスケジュールについて詳細な説明が追加されている。Annex 5にあるボックス内が追加説明箇所。詳しくは原文を参照。
  追加説明されている主な事項は以下の通り:
  見直し要請は、事務局が受け取り次第理事会に提出される。なお、見直し要請は極秘で扱われる。
  最初の見直しが次回の理事会会合で検討される場合は、プロジェクト関係者は2週間まで傍聴申し込みが可能。それ以降の会合の場合は通常の3週間締め切りを守ること。
  登録申請の一環として、CDM理事会及び事務局とのコミュニケーション手段と一人のコンタクトパーソンを記述しプロジェクト関係者全員が署名をした文書を提出しなければならない。以後すべての情報はコンタクトパーソンに連絡される。
  提出された見直し要請は公開されるが提出者の名前は極秘のまま。
  主なスケジュールとしては以下の通り。(会合が開催されるタイミングは例。)
会合 CDM理事会(EB) 見直しチーム(RT) プロジェクト参加者/DOE
0 CDMEB X 見直しするかどうかについて検討→見直しをする場合はRTの構成及び見直しのスコープを決定。プロジェクト参加者及びDOEに連絡。    
1     を受けて1週間以内)詳細な説明要請をDOE及びプロジェクト参加者に提出  
2        
3       (を受けて2週間以内)説明文を事務局を通してRTに提出
4   (会合の2週間前)会合に提出する提言を理事会メンバーに回覧    
5        
6 CDMEB X+1 提言を検討→必要ならば修正要請    
7        
       
17        
18       を受けて12週間以内)事務局に修正版を提出
19        
20   (会合の2週間前)修正版回覧    
21        
22 CDMEBX+3 修正版を検討→登録or拒否    

Annex 6概要 承認文書に書き込むべき要素についての説明 
  提案されたCDMプロジェクトに関係する締約国のDNAは以下のことを書き込んだ承認書を提出する:
  その国が京都議定書を批准していること
  CDMプロジェクト活動への自主的参加を承認すること
  (ホスト国の場合)提案されたCDMプロジェクトが持続的な発展に貢献すること
  承認書はプロジェクト毎に提出する。
  承認書は、DNAの許可(DNA’s authorization→ある主体を特定のCDMプロジェクトの提案者として、そのプロジェクトへ参加させることを許すこと)というプロセスに相当するため、グロッサリーにあるgeneral authorizationは削除。(「authorization」の定義は修正される。)これにより、M&Pのパラ33、40(a)及び(f)についてはすべてカバーされている。
  多国間ファンドの場合は、投資者の属する締約国すべてのDNAから承認書を提出してもらう必要はない。しかし、承認を提出しない締約国は、プロジェクトに関係している締約国としての権利や特権を放棄することになる可能性がある。なお、投資者の属する締約国は、一通の承認書でひとつ以上のプロジェクトに承認を出すことが出来るが、その場合はプロジェクトのリストを明確に示さなければならない。


詳細については、CDM理事会HPを参照のこと。
  http://cdm.unfccc.int/EB/Meetings
以上