地球環境
メニューに戻る

Vol. 12 No. 234

国連気候変動枠組条約第20回補助機関会合


2004年6月16日水曜日




第20回補助機関会合(SB-20)は、6月10日水曜日、ドイツのボンにて開催された。科学的・技術的助言に関する補助機関(SBSTA)および実施に関する補助機関(SBI)は、午前中に開会セッションを開催、それぞれの議題書を採択、多数の問題を取り上げた。締約国は、午後のSBIとSBSTAの会合でも、討議を継続した。

SBSTA

開会セッション:SBSTA議長Abdullatif Benrageb(リビア)がSBSTA-20を開会した。UNFCCCエグゼクティブセクレタリーのJoke Waller-Hunterは、トルコを189番目のUNFCCC加盟締約国として歓迎した。その後、参加者は議題書を採択した。

手法問題:LULUCF向け優れた実践方法ガイダンス(GPG):オーストラリアは、LULUCF活動の計算に関して一貫性を確保するため、期限をつけない政策審議を提案した。ブラジルは、審議に要素抽出を含めるよう促し、米国は、この問題で、さらなる提案に関わることを嫌った。カナダとEUは、SBSTA-20では、GPGと、議定書に規定する報告のための共通報告様式の表に関する合意が優先すると述べた。EUは、現行のIPCCの表と報告提案との一致を主張した。日本は、伐採木材製品による貢献を強調し、ベリーズはAOSISに代わって、除去よりも排出量に焦点を当てるよう促した。Benrageb議長は、William Kojo Agyemang-Bonsu (ガーナ)とAudun Rosland (ノルウェー)が、この問題に関するコンタクトグループの共同議長を務めると述べた。

CDM規定小規模新規植林及び再植林(A&R):EUは、小規模A&Rに対する簡素化規則手続きは、各地方の参加を容易にし、取引コストを削減する方法であると述べた。ペルーは、南米締約国数カ国とともに、CO2がトン当たり6米ドルであれば、小規模A&Rプロジェクトは、取引コストの高さからして、CDMの恩恵に浴しないと、述べた。ボリビアは、そのようなプロジェクトこそ、各地方および原住民が、「前向きな」気候行動に参加する道であると述べ、プロジェクトを進めるための革新的な手続きをとるよう促した。

中国は、COP-9で合意された定義に立ち戻らないよう、締約国に提案し、ブラジルとマレーシアもこれを支持した。バングラデシュは、規則手続きは、途上国の現在の能力や専門知識にあったものとするべきだと述べた。ツバルは、ブラジルとともに、CDMプロジェクトが政府開発援助の支援を受けず、追加的なものでなければならないと述べた。Benrageb議長は、Thelma Krug(ブラジル)がこの問題のコンタクトグループ議長を務めると述べた。

温室効果ガス目録:IPCC目録タスクフォース議長団は、温室効果ガス目録のためのIPCC 2006年度ガイドライン取りまとめの進展状況を報告した。ケニアは、付属書I諸国には「積極的な緩和」が求められることを強調した。ノルウェーは、温室効果ガス目録レビュープロセスが、全ての加盟国を利するキャパシティビルディング(能力向上)活動であると、述べた。Benrageb議長は、Helen Plume(ニュージーランド)とBranca Americano (ブラジル)が、この問題に関し非公式折衝を行うと述べた。

議定書7条と8条:EUは、温室効果ガス目録の年次レビューを行う専門家レビューチームが、締約国の機密事項とみなされるものを含める全ての必要な情報にアクセスできることの重要性を、指摘した。米国は、機密情報保護の重要性を強調した。Benrageb議長は、この問題が温室効果ガス目録に関する非公式折衝で取り上げられると述べた。

議定書7.4条規定の登録簿システム:Benrageb議長は、Murray Ward(ニュージーランド)に対し、この問題に関する非公式折衝を行うよう要請した。

技術移転:技術移転に関する専門家グループ(EGTT)議長のMargaret Martin(カナダ)は、SB-20に先立ち開催されたEGTT第5回会合について報告した。

G-77/中国は、技術的必要性評価で明らかとなったニーズに対処するための資金源を明確にするよう、SBSTAに呼びかけた。EUと日本は、民間部門の参加の重要性を強調した。ガーナはアフリカグループを代表し、先進締約国に資金援助や技術援助を行うよう要請した。ベリーズはAOSISを代表し、適応に関係する技術移転の必要性を強調した。Benrageb議長は、Andrej Kranjc(スロベニア)とKishan Kumarsingh(トリニダードトバゴ)が、この問題に関するコンタクトグループの共同議長を務めると述べた。

政策措置:EUは、さらなる政策措置実施の機会を歓迎した。 Benrageb議長は、コンタクトグループを設置し、折衝後に共同議長を発表すると述べた。

R&SO:地球気候観測システム事務局は、関連業務に関し報告した。日本は、2004年4月、東京で開催された第二回地球観測サミットに関して報告を行った。アフリカグループは、気候観測の向上に利用可能な資金の不足を指摘した。中国は、データ交換の強化を促した。WMOは、気候観測所の数の増加に関する、業務について報告した。Benrageb議長は、Stefan Rosner(ドイツ)とSok Appadu (モーリシャス)がこの問題に関するコンタクトグループの共同議長を務めると述べた。

国際機関との協力:IPCCは、その業務に関する最新情報を出席者に提供した。UNCCDは、2004年4月、イタリアのビテルボで開催された森林と森林生態系に関するワークショップについて報告した。ラムサール条約は、最近開催されたJoint Liaison Group (共同連絡グループ、JLG)会合に招待されなかったことへの遺憾の意を表した。FAOは、気候変化問題でより積極的な役割を果たすと述べた。The INTERNATIONAL STRATEGY FOR DISASTER REDUCTION(災害削減に関する国際戦略)は、災害の削減が、気候変化に関連性を持ち続けていると述べた。

スイスは、CBD専門家のCDM EBへの参加を、どうやって達成できるか問いかけ、ラムサール条約のJLGでの常任オブザーバーの地位延長を提案した。パラウは、ラムサール条約をJLGの正規メンバーとすることの利点を指摘した。同代表は、GEFが、締約国に対し、気候変化以外の注目分野から適応資金を獲得するよう、勧めていることへの懸念を表明した。米国、カナダ、オーストラリアは、各国窓口の連携を強調した。Benrageb議長は、Outi Berghall(フィンランド)とMarcela Main(チリ)がこの問題に関する非公式折衝を進めるとのべた。

SBI

開会セッション:SBI議長のDaniela Stoycheva(ブルガリア)は、SBI-20を開会した。カタールはG-77/中国を代表し、次回セッション前に議定書が発行する可能性から、COP/MOP-1への準備を検討するよう、SBI-20に求めた。ツバルはAOSISに代わり、UNFCCと、小島嶼途上国の持続可能な開発に関するバルバドス行動計画の10年後レビューとの連携を強調した。EUは、ロシアのVladimir Putin(プーチン)大統領が、最近議定書を支持する声明を行ったことを歓迎した。

その後、締約国は、G-77/中国が修正したSBI議定書を採択した。G-77/中国は、共通だが差異のある責任の原則を強調した。アフリカグループは、適応向け資金増加の必要性を強調した。役員の選出に関し、Stoycheva議長は、Fadel Lari(クウェート) が、引き続きSBI副議長を務め、Gonzalo Menendez(パナマ)が、報告者を務めると述べた。

非附属書I 国別報告書:第二回報告書の提出、そして当てはまる場合には第三回報告書の提出
:いくつかの途上国が、報告の頻度は資金援助や技術援助の利用可能性に依存することを強調した。米国は、途上国の場合は4年ごとに国別報告書を提出し、2年ごとに温室効果ガス目録を提出するべきであり、一方LDCsは、5年ごとに報告書を提出するべきであると述べた。サモアは、国別報告書とNAPAプロセスで作業の重複を避けることの重要性を強調し、またバルバドスとともに、自分たちの第一回国別報告書で提案されたプロジェクトのどれも資金を得ていないことを指摘した。Stoycheva議長は、Sok Appadu(モーリシャス)がこの問題に関するコンタクトグループの議長を務めると述べた。

非附属書I 国別報告書に関する専門家諮問グループ(CGE)の作業
:: CGE議長のBrian Challenger(アンティグアバーブーダ)は、2004年5月のCGE会議報告書を提出した。同議長は、CGEが、主題別の実践教育ワークショップに重きを置いていることを述べた。スイスは、特に参加国と協議して固有の問題や目的を明確にするならば、これらワークショップの効果を改善できると述べた。Stoycheva議長は、この問題に関する結論書草案を作成すると述べた。

資金援助、技術援助の提供
:EUは、GEFによる第一回国別報告書作成支援に関し、GEFが情報を提供したことを歓迎し、以後の国別報告書についても、SBIがGEFに情報を求めるよう提案した。Stoycheva議長は、この問題に関する結論書草案を作成すると述べた。

資金メカニズム:決定書5/CP.8 (資金メカニズムの検討)実施に関係する問題
:AOSISは、他とともに、最近のGEFカウンシルでの展開が、GEFに指針を与えるというCOPの役割を損なっていると、警告した。アルゼンチンは、次のGEF資金補填について議論する前に、UNFCCCの下での資金ニーズ評価を加速して進めることの重要性を強調した。スイスは、次のGEF補填交渉に間に合うように評価を行うことはできないと述べた。Stoycheva議長は、Andrea Alban(コロンビア)とSarah Hendry(英国)に対し、この問題での非公式折衝を行うよう求めた。

管理上および資金上の問題:2004-5年度の予算実績
:事務局は、UNFCCC基本予算と信託基金に対する資金拠出状況書を提出した。Stoycheva議長は、この問題に関する結論書草案を作成すると述べた。

UNFCCCプロセス参加への資金支援
:事務局は、資金拠出が未納となっている締約国からの参加に資金援助を行わないことの影響に関し書類を提出した。SIDSの数カ国は、SIDS代表団中の二名の出席者に資金援助を行うよう要請した。アルゼンチンとコロンビアは、途上国からの拠出金未納、支払いの意思がない証拠と解釈するべきではないと述べた。

本部契約書の実施
:ドイツは、ボンを本部とする条約事務局向けの国連用地創設について、進展状況を出席者に報告した。

附属書I国別報告書
:EUは、附属書Iのレビューの大半が完了し、UNFCCCのホームページに掲載されたことに、満足の意を表した。SBIはこの問題に留意した。

UNFCCC6条
:Fatou Ndeye Gaye(ガンビア)は、2004年1月に開催された6条に関するアフリカ地域ワークショップの成果を評した。ウズベキスタンは、6条に関する地域間協力の重要性と、情報センターの必要性を強調した。ウルグアイとセントルチアは、他の地域でのワークショップ開催を奨励した。EUは、6条の活動に対する35,000ユーロの拠出を発表した。Stoycheva議長は、Markus Nauser(スイス)がコンタクトグループの議長を務め、この問題に関する結論書草案を作成し、本来、セッション前イベントとして計画されていた情報センターをさらに発展させるため、インプットを検討すると述べた。

キャパシティビルディング(能力向上)
:ツバルは、気候変化に関して、政府閣僚を含めた社会のあらゆる分野での教育の必要性を強調した。EUと日本は、キャパシティビルディング(能力向上)に国として取り組む手法を強調した。タンザニアはG-77/中国を代表し、まだ組織的なキャパシティビルディング(能力向上)の取り組みがなされていないと述べた。Stoycheva議長は、Dechen Tsering(ブータン)が、この問題に関するコンタクトグループの議長を務めると述べた。

4.8条と4.9条の実施:決定書5/CP.7(4.8条と4.9条の実施)に規定する活動の実施における進展
;ツバルは、決定書実施での進展状況検証を提案した。米国は、決定書5/CP.7が画期的なものであることを強調し、決定書実施の成功に関し見解が分かれていることを指摘して、共通点を探るよう促した。サウジアラビアは、決定書実施が進展していないことへの懸念を表明した。EUは、進展を再調査し、更なる進展に必要な重要分野を定めて、COP-10で交渉し、決定するよう提案した。Stoycheva議長は、Mohamed Mahmoud Ould El Ghaouth(モーリタニア)とPaul Watkinson(フランス)がこの問題に関するコンタクトグループの共同議長を務めると述べた。

LDCs関連問題
:LDC専門家グループ(LEG)議長のLa’avasa Malua (サモア)は、2004年3月のLEG会議に関し、報告した。スイスは、LEGの作業と他のUNFCCCプロセスとの関連性を指摘した。同代表は、CGEとの協力を奨励し、作業の重複に警告した。ガンビアは、次のLEG会議開催を申し出た。ウガンダは、LEGの重要性を強調した。Stoycheva議長は、この問題に関する結論書草案を作成すると述べた。

廊下にて


第一日目の会議場廊下は平静であったが、プレナリー会場では、以前からの対立が再燃した。SBIでの非附属書I国別報告書に関する議論は、少なくとも一人の代表におなじみの感覚を呼び起こし、またSBSTAでの交渉が森林と土地利用という以前と同じ問題で停滞するのではないかとの懸念が表明された。と同時に、オブザーバーは、資金メカニズムに関して出てきた議論が、どういう形や形式となるか不確実だと表明した。
今日の予定
SBI:SBIは、プレナリーIで午前10時から会合、政府間会議の調整、事務局の機能と運営に関する継続調査、そのほかの問題を取り上げる。

SBSTA:: SBSTAは、 プレナリーIIで午前10時から会合、国際航空輸送や海上輸送からの排出量、そのほかの問題を取り上げる。

コンタクトグループ:各コンタクトグループは、A&Rプロジェクト活動、技術移転、LULUCF GPGs、決定書5/CP.7の実施について、会合する。