地球環境
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Vol. 12 No. 235

国連気候変動枠組条約第20回補助機関会合


2004年6月17日木曜日




第20回補助機関会合(SB-20)は、午前中に科学的・技術的助言に関する補助機関(SBSTA)および実施に関する補助機関(SBI)の討議を、午後にはコンタクトグループの討議を継続した。SBSTAは国際航空や海上輸送で使用される化石燃料による排出問題や、より安全で温室効果ガスの排出量の少ないエネルギーに関する問題、政策措置(P&M)の悪影響に対する議定書2条と3条の実施に関連した問題を取り上げた。SBIは、COP10やUNFCCCプロセスへの効果的な参加を含む政府間会合のための取り決めや事務局の機能や運用面の見直し継続について取り組んだ。

SBSTAコンタクトグループは技術移転、CDM規定小規模新規植林及び再植林(A&R)、およびLULUCF向け優れた実践方法ガイダンス(GPG)について討議した。

SBSTA

Benrageb SBSTA議長 (リビア) はP&Mに関するコンタクトグループ共同議長としての素晴らしき就任についての思い出を語りながら、Andersen Turesson(スウェーデン)ならびに南アフリカ代表がP&Mに関するコンタクトグループの共同議長を務めることになると語った。

手法問題:海上輸送で使用される化石燃料による排出:
国際民間航空機関(ICAO)は航空環境保護に関する第6次会合について報告した。中国はICAOおよび国際海事機関(IMO)に対して、附属書T締約国と附属書T非締約国との間の差別化された義務について認識するよう求めた。日本、スイス、カナダ、EU、および米国はUNFCC、IPCC、ICAO、IMO間の協力の重要性を強調した。EUは温室効果ガス排出量の予測値が改善されうることを観察した。スイスは排出量予測のためのソフト開発の長期化および高額化に対して警告した。バハマはAOSISを代表して、中国とともに、報告手法の改善を強調した。ケニヤは一貫した手法、インベントリーおよび排出割り当ての開発を支持した。エジプトは航空および海上輸送による排出がオゾン層枯渇に寄与しており、国別インベントリーの中に含めるべきであると指摘した。ツバルおよびケニヤは、カナダに反対されながらも、SBSTAはこの件についてガイダンスをさらに広げるべきであると述べた。Benrageb議長はGreg Terrill(オーストラリア)が非公式協議のファシリテーターを務めると述べた。

その他の問題:より安全で、少ない温室効果ガスを排出するエネルギーに関連する諸問題:
EU、G77/中国およびツバルの反対にあったが、UNFCCCや議定書の目標を達成するため、貿易やよりクリーンなエネルギーの役割に取り組むべきであるというカナダ提案に留意するよう示唆した。この問題は、Benrageb議長が進行役となる非公式協議で扱われるだろう。

議定書2条、3条:
EUはこの件に関しては議定書3条14項(悪影響)に関するCOP/MOP決議草案の採択の前に討議すべきではないと述べた。日本は議題として取り上げられているその他の問題の討議を続けることを希望した。Benrageb議長は非公式協議を行うと述べた。

SBI

政府間会合のための取り決め:COP10:
サウジアラビアは、G-77/中国を代表し、UNFCCC 4.2(a)、(b)条をCOP-10で提起されたアジェンダの中の約束の妥当性の第2回レビューに含めることについて疑議を唱え、米国も支持した。EUとノルウェーはレビューに含める案を支持した。

米国、大韓民国、オーストラリア、ノルウェーは、若干の修正はあるものの、COP-10ハイレベルセグメント(HLS)に提起された諸テーマを大筋で支持した。オマーン、ベネズエラはエネルギーと気候変動に関するテーマを含めることに反対した。COP-10第2週にHLSを開催することに締約国数カ国が賛成した。ロシア、ブルキナファソは幅広い参加を認めるようなHLS体制を迫った。締約国はUNFCCCの第10回開催を効果的に記念するため、声明文、ラウンドテーブル、パネルディスカッションなどを含むHLSの様々なフォーマットについて討議した。モーリシャスはLDCやSIDSの代表団が参加できるよう、潤沢な資金提供を希望した。

次回会期と政府間プロセスの組織:
米国、大韓民国は気候交渉のための作業の多年度プログラムを支持し、COP会議が開催までの期限を延長するよう要請した。ノルウェー、モーリシャスの支持を受け、米国はCOP-10において気候プロセスのための可能なフォーマットを討議するためのワークショップ開催を提案した。EUは気候プロセスの作業合理化努力を歓迎したが、日本やロシアと同様、COPが毎年開催されることを支持した。

COP/MOP-1のための取り決め:
事務局長は特に、COP-10がCOP/MOP-1となるよう、2004年9月7日までに批准に必要な文書を寄託する必要があると言及した。サウジアラビアは、未決事項に交渉の優先順位をおくべきだと主張した。EUは、COP/MOP-1のための取り決めに関する決定書17/CP.9は十分であり、今回、何ら調整を行う必要は無いと述べた。

UNFCCCプロセスにおける効果的な参加:
オブサーバーの受入れ手続き、NGO参加のオプション、原住民と気候変動に関する開放型の特別ワーキンググループを設置するため、原住民問題に関する国連常設フォーラムからの要請への対応などについて締約国がコメントした。米国の代表がCDM EBの会期中に物理的な所在を求めたが、この要望はUNFCCCプロセスにおける効果的な参加に関する文書の中に反映されていなかったと米国は述べた。サウジアラビアは、この文書はNGOではなく締約国の効果的な参加について考慮すべきものであり、G-77/中国に代わって、附属書T非締約国にとって会合参加の資金が不足していることを強調した。EUとカナダはNGOおよび原住民の参加を歓迎した。

原住民問題に関する国連常設フォーラムは気候変動への取り組みにおける原住民の果たす役割を強調するとともに、UNFCCCの会合への参加に意欲を表明した。ツバルは特別ワーキンググループ設立を検討することに賛成し、事務局内で原住民にとっての中心テーマを特定することを提案した。企業および産業NGOは後援団体の増加、複数のステークホルダーの話し合いや、特定の一後援団体向けのフォーラム設立に対して注意を促した。Climate Action Networkは南のNGOに対する支援を要請した。Indigenous Peoples Organizationsは、常設フォーラムがSBIやSBSTAに対して勧告できる立場を得られるよう提案した。後援団体の会員資格については、米国がResearch and Independent NGOs(RINGOs)の会員基準に対する懸念を表明した。これに対して、RINGOsは会員基準とは単に会員とその他の後援団体との区別の明確化を目的としているにすぎないと述べた。

Stoycheva議長は、政府間会合の取り決めについてはKarsten Sach(ドイツ)が議長を務めるコンタクトグループの会合を召集すると述べた。

事務局の機能に関する継続レビュー:
インドはG-77/中国を代表し、UNFCCC事務局においてバランスのとれた地域代表制、文書作成の中立性、ならびに先進国/途上国の問題に対する資源分配の衡平性を要求した。EUとカナダは事務局の機能については満足の意を表した。

G-77/中国を支持して、サウジアラビアは事務局に対してUNFCCCを代表して声明を行う際は慎重を期して、締約国すべての意見が反映されるよう保証してほしいと述べた。これを受けて、事務局長は、事務局が透明性と代表の平等性に取り組んでいることを強調した上で、事務局の機能に対するフィードバックに歓迎の意を示した。

Stoycheva議長はこの件について非公式会議を行うと述べた。

コンタクトグループ

CDM規定小規模A&Rプロジェクト:
このコンタクトグループはThelma Krug(ブラジル)が議長を務めた。Krug議長は、簡素化規則手続きに関するテクニカルペーパーにおける草案テキストを基に討議することを提案した。ブラジルはG-77/中国に代わって地域協議のための時間をとることを求めた。締約国は、バンドリング、リーケージ、追加性、環境および社会へのインパクト、低所得地域の定義、およびモニタリングなどの問題を取り上げた。

バンドリングに関しては、EUおよび数カ国の締約国は、モダリティー簡素化に乗じて、大規模プロジェクトが小さなプロジェクトへと分割されてしまうことに警戒感を示した。ボリビアはバンドリングを支持し、この件を扱う技術文書の整備を求めた。ツバルはベースラインの矛盾点を回避するため、バンドル化されたプロジェクトは類似しているべきだと述べた。

リーケージに関しては、日本が、カナダ、インドとともに、プロジェクト規模の小ささを考慮すれば、モニタリングコストの問題や主たる影響はなさそうだという観測を理由にリーケージ免除を支持したが、ツバル、ブラジルおよびEUは反対した。EUは、リーケージの要因となる追加除去の特別割合というオプションを提案した。

付加性に関しては、ツバルなどの国々が追加性を把握することの重要性を強調し、ブラジルは附属書T締約国においてプロジェクトとは排出量を示唆するものであると喚起した。途上国の低所得地域間で持続可能な森林管理や土地管理を行うにはインセンティブが現在欠如しており、これが付加性の十分な証左であると、ボリビア、ブルキナファソ、カナダは提起した。

環境および社会へのインパクトに関しては、主催国政府の要請に応じて影響評価を行うべきであると主張した。カナダは影響評価における地域の参加を提案し、ボリビアも支持した。低所得地域の定義をどうするかという問題については、中国および締約国数カ国は、ホスト国が決断すべきであると述べた。

その後、代表団は小規模プロジェクトのモニタリングにおけるGPGの活用について討議した。ブラジルとブルキナファソはプロジェクトの参加者がモニタリングのガイドライン選択について決定すべきであると述べた。一方、EU、スイス、チリは一般的なプロジェクトのモニタリングについては効率的かつ透明性ある基準であるとしてGPGを支持した。

LULUCF向けGPG:
Audun Rosland(ノルウェー)およびWilliam Kojo Agymang-Bonsu (ガーナ)が本コンタクトグループの共同議長を務めた。代表団は議定書のもとでのLULUCF活動報告についてプレゼンテーションを聞き、IPCC GPG専門家との質疑応答を行った。

その後、締約国はLULUCF共通報告様式(CRF)草案の問題を扱った。EUは、CRF草案は国別インベントリーの要件に関するガイダンスを含めるべきだと述べた。カナダは、CRFの表をテストするための試用期間を設けることを提案し、スウェーデンもこれを支持した。

代表団はその後、2004年8月にノルウェー、リレハンメルにて開催予定の伐採木材製品に関するワークショップの参照範囲および参照項目について討議した。

技術移転:
Kishan Kumarsingh(トリニダードトバゴ) とAndrej Kranjc(スロベニア)がこの問題に関するコンタクトグループの議長を務めた。多数の締約国は、EGTT第5回会合の報告が議論の良いたたき台となると述べた。オーストラリアと日本は、緩和重視の必要性を強く主張した。スイス、日本、米国、ならびにガーナは、G-77/中国を代表して、その他のプロセスとの相乗効果を求めた。スイスは、需要主導型の技術移転を強調したが、韓国がこれに反対を唱えた。G-77/中国は、技術ニーズに関する評価報告をまとめ、評価結果を導入する途上国の締約国を支援するために、追加的な地域的ワークショップを開催することを提唱するとともに、2004年9月に開催予定の「技術開発と技術移転のための革新的な資金調達に関するワークショップ」で特に融資すべき活動を特定すべきだと述べた。また、EGTTが公有財産である、内発的技術開発や技術移転に取り組み、2005年のワークプログラムにおける「プッシュ要因」の実効性を再考するよう提案した。EUは、EGTTの2005年度のワークプログラムがSBSTA-21で討議されるべきだと述べたが、ガーナが反対を唱えた。

米国は、締約国に対しTT:Clearへの技術ニーズアセスメントの結果を通知することを奨励した。ガーナは知的所有権による障壁を打破するためには先進国と途上国間の共同パートナーシップが不可欠であると述べ、日本はこれを支持した。ガーナはすべてのEGTT会合がSBSTAやCOPのセッションと連動して行われているわけではないと示唆した。G-77/中国は、G-77/中国がCOP決定書の草案を作成することを提案したが、米国と日本はこれに反対した。Kumarshingh共同議長はこの件について非公式折衝を行うと述べた。

廊下にて


交渉がコンタクトグループによるA&R、GPG、技術移転の討議へと移ったため、2日目の代表団はリラックスムードであった。全般的に、最も論議を呼ぶような問題や政治論儀はブエノスアイレスへ持ち越しとなる模様だ。その他、会員基準や午前中のSBI本会議におけるRINGOsの構成について質問があったことは予想していなかったとオブザーバーはコメントしていた。
今日の予定
コンタクトグループ:UNFCCC第6条(教育、訓練、社会認識)に関するコンタクトグループは、午前10時からRegerにて会合。政府間会議の調整に関するコンタクトグループは、午前11時半よりMannにて会合。キャパシティー・ビルディングに関するコンタクトグループは午後3時よりLisztにて会合。技術移転に関するコンタクトグループは午後6時よりHaydnにて会合。決定書5/CP.7実施に関するコンタクトグループ(悪影響に関するUNFCCC4条8項の実施について)は午後8時から10時までHaydnにて会合。 LULUCF GPGに関するコンタクトグループは午後8時から10時までRegerにて会合予定。

SBSTA会期中のワークショップ:
同ワークショップは、午前10時から午後6時までプレナリーIIにて、気候変動の影響、脆弱性、および適応についての問題を取り上げる。