地球環境
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Vol. 12 No. 236

国連気候変動枠組条約第20回補助機関会合


2004年6月18日金曜日




金曜日、SB-20の参加者は、多数のコンタクトグループおよびSBSTAのセッション中ワークショップで会合した。コンタクトグループでは、UNFCCC6条(教育、訓練、啓発)、政府間協議の調整、キャパシティビルディング(能力向上)、決定書5/CP.7(悪影響に関するUNFCCC4.8条と4.9条の実施)の実施、技術移転、LULUCFでの優れた実践方法ガイダンス(GPG)を取り上げた。セッション中ワークショップでは、気候変化の影響、脆弱性、適応の科学的、技術的、社会経済的側面に関するプレゼンテーションを聴講した。

SBIコンタクトグループ

UNFCCC 6条: このコンタクトグループの議長は、Markus Nauser (スイス)で、締約国に対し、6条活動の情報センターの詳細につき、事務局に指針を提供するよう勧めた。事務局は、情報センターの小規模モデルを含めた、UNFCCCの情報ネットワークホームページ(http://test.unfccc.int/)を提示した。その後締約国は、情報センターが対象とするアクセス者、第一期の作業での焦点分野、このサイトでの情報提供と維持を行う窓口について議論した。G-77/中国は、国としてホームページを持たない締約国への支援の必要性を強調した。EUとナンビアは、第一期の作業は締約国を対象とするものでなければならないと指摘した。いくつかの締約国が、情報の供給および維持に関して、地域でのそして小地域での窓口を支持した。米国は、こういった役割を果たすのに、既存組織を活用するよう勧めた。

政府間会合の調整:このコンタクトグループは、Karsten Sach (ドイツ)が議長を務めた。出席者は、UNFCCC4.2条(a)項および(b)項規定の約束の適切性に関する第二回レビューを含めることについて、それぞれの見解は良く知られていることから、Sach議長が、事務局に対し、6月17日木曜日のSBIプレナリーでの議論を、G-77/中国提案の注釈をつけて記録するよう求めることで、合意した。COP-10に向けての調整に関し、参加者は、ハイレベルセグメントの時期や、構成、主題の可能性について議論した。アルゼンチンとスイスは、閣僚や参加者をひきつけるような主題とするべきだと述べた。締約国は、エネルギーと気候変化に関して提案された主題について、議論し、サウジアラビアは、何であれ一つのエネルギー部門に絞ることに反対して、注意を促した。

政府間プロセスの企画について、参加者は、提案されたワークショップの時期について議論、いくつかの締約国がそのようなワークショップの重要性を強調した。EUと日本は、UNFCCCプロセスへの有効参加について、NGOsや原住民の参加を促進するべく事務局がリストしたオプションに関しての意見を、表明した。Sach議長は、CDM EBでのオブザーバーという立場の問題が、現行のCOP決定書(CDM EBに関する決定書21/CP.8)の規制を受けていると述べた。

キャパシティビルディング(能力向上):
このコンタクトグループは、Dechen Tsering(ブータン)が議長を務め、結論書草案で考えられる要素をリストアップしたが、これは、次回コンタクトグループ会合前に出席者に提供される。同議長は、出席者に対し、COP決定書での要素に関し提案を行うよう求めた。議論は、特に他のリオ会議条約との相乗作用、キャパシティビルディング(能力向上)プロジェクト向けの指標を含めた、キャパシティビルディング(能力向上)の範囲と効果性に関する技術報告書の要素、気候変化への対処に必要な能力に関する国別能力自己評価の関連性に、集中した。

IMPLEMENTATION OF DECISION 決定書5/CP.7の実施:
このコンタクトグループは、Paul Watkinson(フランス)とMohamed Mahmoud Ould El Ghaouth(モーリタニア)が共同議長を務めた。Watkinson共同議長は、SBI-19から持ち越された交渉文書が議論のたたき台となると述べた。ケニアはG-77/中国を代表し、小項目の下でこの文書の再編集を図るよう提案し、変更や追加の案を含めた文書を配布した。EUと米国を含めたいくつかの締約国は、この文書を再編集するとの提案を支持し、また米国も提案書を配布した。

参加者は、括弧を取り外すための作業を行い、変更や追加点について、特に次のものを提示した:気候変化の悪影響とそれへの対応策から生じる開発途上締約国特有のニーズや状況に合わせた活動に関して提出された文書の統合文書、保険やリスク回避措置に関しての意見提示、地域ワークショップ;技術資源、資本資源の活用。Watkinson共同議長は、参加者に対し、次のコンタクトグループ会合までに新規提案について検討し、協議するよう招請した。

SBSTAコンタクトグループ


技術移転:このコンタクトグループでは、結論書草案を取り上げた。TT:CLEAR調査結果に関する文章について、EUは、日本やカナダとともに、個別の結果に言及することへの反対を表明し、代わりに、調査への一般的な言及とするよう提案した。ガーナはG-77/中国を代表し、非付属書I諸国におけるインターネットサイトの利用が軽微なことを反映させる原文表現の保持を求め、ウガンダはこれを支持した。中国は、結論書草案でサイト利用の数値に言及することを提案し、G-77/中国はこれを支持した。米国は、非付属書I諸国ではサイトの利用が少ないことへの懸念を含めて、調査と、そのフィードバッグや提案の有用さ指摘するよう提案し、EUとカナダはこれを支持したが、G-77/中国は反対した。この条文に関する議論は、中断された。革新的な資金調達に関するワークショップについての文書に関し、タイは、ワークショップで、UNFCCC4.5条(技術移転)規定の資金メカニズムに関する具体的な提案提示をするよう呼びかけることを、提案し、G-77/中国はこれを支持したが、米国、EU、カナダ、スイス、日本はこれに反対した。米国、カナダ、スイスは、提案された文書表現が限定的だと述べた。Andrej Kranjc共同議長は、関心ある締約国が、この問題で非公式に協議するよう招請した。

LULUCF GPG:森林劣化や非植生化、そのほかの植生タイプに関係する定義と手法問題について、オーストラリアその他は、第二期約束に関する幅広い協議の中でこの問題を取り上げることを支持した。ツバルはブラジルとともに、この問題での現行協議継続を提案した。オーストラリアは、要素抽出に関する文章を配布し、LULUCF問題には幅広いアプローチを行うべく、前向きな協議をするよう呼びかけた。米国、カナダ、日本、ニュージーランドは、このような総合的なアプローチを支持した。EU、ツバル、ブラジルは、焦点を絞ったアプローチを希望し、COP-10後に技術ワークショップを開催して、締約国からの提出文書を検討するとともに、可能なら、非植生化や劣化を扱うことを提案した。William Kojo Agymang-Bonsu共同議長は、新しい文章案を作成すると述べた。また締約国は、伐採木材製品に関する結論書草案についても議論した。

SBSTAセッション中ワークショップ

SBSTAのBenrageb議長がこのワークショップの議長を務めた。

セッション1:気候変化リスクはどうすれば評価できるか?:
ポーランド科学アカデミーのZbigniew Kundzewiczは、この主題を紹介するにあたり、気候変化に対する脆弱性、リスク、適応の定義づけを行った。同氏は、気温上昇の加速と、その結果としておこる集約的な悪影響を指摘した。

オーストラリア連邦科学産業研究機関、大気研究のRoger Jonesは、適応のニーズを知るためのリスク評価の適切性について述べ、各種活動の適応ポテンシャルに関する、焦点を絞った評価を呼びかけた。

International Institute for Applied System Analysis(システム応用分析国際機関)のMahendra Shahは、農業における気候変化の影響についてプレゼンテーションを行った。同氏は、南部アフリカでの深刻な影響を強調し、諸国間の影響の不均衡に注目するよう求めた。

中国の科学技術省Xuedu Luは、中国における気候変化の影響研究手法について、プレゼンテーションを行った。同氏は、モデルや手法から生じる不確実性をいくつか指摘し、途上国での評価ツールの研究開発を促進するよう、SBSTAに呼びかけた。

気候影響研究のポツダム研究所Dagmar Schroterは、気候変化に対するヨーロッパの脆弱性評価手法について、報告し、2050年までにヨーロッパでの気候変化の全般影響が悪影響となることを指摘した。同氏は、科学と政策での協議の重要性を強調した。

続いて行われた議論で、出席者は、特に、時空間規模や、科学発展の本質的な部分としての不確実性、SIDSでの保険メカニズムの欠如、リスク感覚といった問題を取り上げた。

セッション2:気候変化リスクはどう受け止められているか?:
自然資源カナダのDonald Lemmenは、リスク感覚も、適応能力もまちまちであると述べた。同氏は、リスク意識の向上には、地方や地域レベルでの現在の気候に対する脆弱性、そして政策決定者の参画が、肝心であると指摘した。

フィリピン大気・地球物理・天文学サービス局のLourdes Tibigは、フィリピンにとり主要なリスクとなるのは、洪水、台風、高波、モンスーンの降雨、旱魃であると述べた。同氏は、農業、食料、健康部門、沿岸資源、水資源での気候変化のリスクの概要を説明した。

モザンビークのEduardo Mondlane大学のAntonio Quefaceは、台風や洪水と旱魃に対するモザンビークの脆弱性について説明し、それが、同国の地理的位置や、極端な現象予測能力が限定されていること、自然災害への適応能力が削減されていること、そして気候の多様性が大きいことで、さらに悪化すると述べた。

ツバルはこの議論の中で、リスク保険専門家グループが、UNFCCCプロセスを進められるかどうか質問した。また同氏は、どうやれば、リスク評価モデルを地方レベルでも意味のあるものにできるか、問うた。Lemmenは、もっとも脆弱な地域に焦点を絞るよう提案した。ニウエは、どうすれば回復力を高められるか質問した。Lemmenは、回復力構築プロセスから学べることがあるだろうと回答した。

セッション3:適応と持続可能な開発:
英国の環境と開発国際研究所のSaleemul Huqは、適応計画を既存の知識に基づくものとすべきであると述べ、この点に関して、開発コミュニティーの重要性を強調した。

経済協力開発機構のShardul Agrawalaは、適応が、必ずしも開発プロセスとの相乗作用をもたらすものではないと述べたが、適応プロセスは多様な部門ですでに行われているとも指摘した。同氏は、過去の計画実施の追跡結果が芳しくない場合には、新しい計画を効果的に実施することはできないことを、強調した。

エジプトのアレキサンドリア大学のMohamed El-Raeyは、エジプトでの適応措置について述べた。同氏は、予想した上での特定の適応が重要であると強調した。

米国の国際開発庁のKo Barretは、プロジェクトに気候関連のリスクを組み入れようとの同庁の努力について説明した。同氏は、目的は、適応への配慮を組み入れるなら、長期的なプロジェクトの柔軟性が確保されることについて、プロジェクトマネージャー間での意識啓発であることを、指摘した。

議論の中で、サウジアラビアは、対応措置への適応を取り上げるよう促した。ツバルは、組織能力の欠如が、適応計画の実施に影響する可能性があると述べた。ウガンダは、プロジェクトは資金調達に依存するものであることを想起し、多くの国が、現在、資金の欠如により適応を行えないでいることを指摘した。Huqは、早期に、この問題での進展を明らかにするべきであると述べた。CLIMATE ACTION NETWORKは、適応に関する新規で追加的な基金を呼びかけ、利害関係者、組織、プロセス間での適応に関する相乗作用を指摘した。

セッション4:解決策と機会:
ナイジェリア、ジョス大学のAnthony Nyong は、ナイジェリアの半乾燥地帯にある農村世帯における旱魃への適応について、プレゼンテーションを行った。同氏は、適応措置を成功させるには、現地の利害関係者の意見に配慮する必要があると述べた。

スーダンの環境と資源の上級カウンシルのNagmeldin Elhassanは、スーダンでの適応に関する教訓を提供した。同氏は、脆弱性を削減するには、適応のキャパシティビルディング(能力向上)に向けた行動と、対応能力強化が、必要であることを強調した。

バングラデシュの水と環境に関するUnnayan Parishad CentreのAhsan Ahmedは、バングラデシュでの適応で得られた教訓について述べた。同氏は、プロジェクトにおいては次のことを目指さなければいけないことを、強調した:現地コミュニティーが自分たちの脆弱性の原因を明らかにするよう、勧める;現地の解決策について現場レベルでの議論を含める;統治システムのさまざまなレベルに対する干渉を行う;そして長期的な解決策を目指す。

スイスのIntercooperationのCarmenza Robledoは、回復力増強の手法として、現地社会による自然資源管理について述べた。同氏は、12のIntercooperationのコミュニティ・イニシアティブの調査について説明し、適応能力の強化には、国レベル、そして国レベルに準じるレベルでの組織枠組みの策定、および現地レベルでの手法が必要であると結論付けた。

MeteoフランスのSerge Plantonは、フランスでの2003年の熱波への適応について述べた。同氏は、熱波への適応には、異なるレベルでの意思決定と全国的な協調努力の組み合わせが求められることを強調した。

議論の中で、キューバは、予報によって熱波の影響を予防できたかどうか質問した。Plantonは、組織間での連絡が欠けていたと説明した。The INTERNATIONAL STRATEGY FOR DISASTER REDUCTION(防災の国際戦略)は、適応と災害管理の間の類似点を比較した。

結論:Benrageb議長は、ワークショップの結論を、6月21日月曜日のSBSTAに提出すると述べた。

廊下にて

政府間会議の調整に関するコンタクトグループへのハイレベルな参加と、ハイレベルセグメントの方式に関する熱の入った議論は、UNFCCCの10周年にあたり主だった各国元首や閣僚をひきつけることに、各国政府が重きを置いているとの観測に結びついた。一方、幾人かの参加者は、適応に関するセッション中ワークショップの成功に言及した。
今日の予定
コンタクトグループ:非付属書I国別報告書に関するコンタクトグループは、午前10時にHaydnで会合。キャパシティビルディング(能力向上)に関するコンタクトグループは、Lisztで午前11時半に会合。決定書5/CP.7の実施に関するコンタクトグループは午後三時にHaydnで会合する。

SBSTAのセッション中ワークショップ:
本ワークショップは、午前10時から午後6時までプレナリーIIで会合し、気候変化緩和に関係する脆弱性、リスク、持続可能な開発、機会、そして解決策について考察する。