地球環境
メニューに戻る

Vol. 12 No. 237

国連気候変動枠組条約第20回補助機関会合


2004年6月19日土曜日




土曜日、SB-20での審議が継続され、締約国は、コンタクトグループおよびSBSTAのセッション中ワークショップで会合した。コンタクトグループは、非附属書I国別報告書、キャパシティビルディング(能力向上)、決定書5/CP.7(悪影響に関するUNFCCC4.8条と4.9条の実施)の実施を討議した。緩和の科学的、技術的、社会経済的側面に関するSBSTAのセッション中ワークショップでは、気候変化緩和と他の政策および開発目標との完成、緩和の事例研究、気候緩和と新技術について、プレゼンテーションが行われた。

コンタクトグループ

非附属書I国別報告書:
このコンタクトグループは、Sok Appadu (モーリシャス)を議長としており、締約国は、非附属書I 国別報告書の第二次提出分に関する文書草案を検討するよう求められた。米国は、温室効果ガス目録が、もっと頻繁な形で、自主的に提出されるべきであると述べ、運用手続きに関する文書案を提出した。ブラジルは、G-77/中国を代表し、温室効果ガス目録への言及に反対し、途上国の技術能力や資金能力の不足から、報告の頻度について懸念を投げかけた。オーストラリアは、カナダとEUの支持を受け、目録が頻繁に提出されるなら、国別報告書の質の向上が図れると述べた。EUは、資金に関するGEFでの新しい円滑化された手続きが、国別報告書の作成と提出を助けるのではなかと述べた。Appadu議長は、締約国に対し、文書についてさらに意見を提出するよう求めた。

キャパシティビルディング(能力向上):
参加者は、Dechen Tsering議長の提案する結論書草案について議論し、事務局の作成したキャパシティビルディング(能力向上)に関する文書に留意した文章で合意した。G-77/中国を代表してタンザニア、EITを代表してルーマニア、そして米国は、文書に含まれる情報が不完全であり、さらに総合的な検討にむけ作業が必要であると述べ、EUと日本はこれに反対したオーストラリアは、ニュージーランドの支持を受け、レビューでのギャップを明確化するための本質的な議論を歓迎した。会議は、非公式での議論に移った。

決定書5/CP.7の実施:
締約国は、COP決定書草案に関する審議を継続した。参加者は、モデル化活動の状況に関するワークショップの成果と、その成果に基づく行動について、検討するかどうか、どうやって検討するか、そしていつ検討するか、代替文書案に関する議論を行った。サウジアラビアは、経済多角化の概念におけるモデル化の議論を支持した。その後締約国は、対応策の影響に関する文章、そして経済多角化の対処、促進に関する文章について、オプションを議論した。また、参加者は、決定書草案の題目や小題目を含めることについても討議した。

参加者は、前の文章について意見の一致をみることができなかった。G-77/中国、米国、EU、AOSIS、そしてそのほかの国から提出されるものに基づいた新しい交渉文章が、作成されることになった。

SBSTAセッション中ワークショップ

セッション1:気候変化の緩和と、他の政策および開発目標との関係:
インドSenergyGlobal社のAjay Mathurが、途上国でのエネルギー部門の開発と気候緩和について、プレゼンテーションを行い、将来に向けた社会構造基盤が構築されるにつれ、現在、効率化技術導入の可能性があることを指摘した。同氏は、家庭でのエネルギー利用と、経済的産業上のエネルギー利用を区別するよう求めた。同氏は、国際協力によって、どのようにして、技術普及に関わるリスクを軽減し、エネルギー効率への需要を作り出し、エネルギー源単位を下げるか、考えるよう求めた。

米国のForest Trends(森林動向)のSara Scherrは、LULUCFを、持続可能な農村開発のための道具であると位置づけ、気候変化を千年紀開発目標に組み込むよう呼びかけた。同代表は、pro-poor initiatives(貧困者に目を向けたイニシアティブ)に関する知識が十分にあること、そして森林での積極的な炭素プロジェクトを確保するため現在行われているスキームについて指摘し、CDM LULUCF活動の範囲拡大と、交渉に農村地域開発組織を関わらせるよう呼びかけた。

中国エネルギー(能源)研究所のYang Hongweiは、中国でのエネルギー開発についてプレゼンテーションを行い、主に産業の発展により刺激される社会経済開発が、中国ではもっとも優先されると述べた。同氏は、中国での一人当たりエネルギー消費量の低さを強調し、エネルギー混合比の最適化とエネルギー効率の向上での大きな前進を指摘した。

欧州委員会のエネルギーおよび運輸担当責任者であるChristobal Burgosは、排出量の緩和を目的とするEUの活動について述べた。同代表は、欧州の地域外エネルギー資源依存度が、2030年までに50%から70%に増加するとの予測を指摘し、特に次のことに関する政策に焦点を当てた:2010年までに再生可能エネルギーの割合を倍増;明確な法的枠組みの確立;より効率的な機能実績を実施;エネルギーベースの多角化;研究と投資の促進。同代表は、地球規模でのエネルギー協力改善に向けたEUの役割を強調し、投資促進のためのインセンティブとして、クリーンなエネルギーに対する域内最大規模の市場開発という約束を指摘した。

カナダのAgriculture and Agri-Food(農業、農業食料)のBob MacGregorは、農業における気候変化政策、およびカナダでの水平的な政策統合努力について、プレゼンテーションを行った。同氏は、議定書目標達成における農業の役割を指摘し、緩和の持続可能な開発への組み入れを協調し、カナダは、吸収量強化管理手法を活用していると述べた。

議論の中で、フランスは、中国とインドでの運輸部門の発展について質問した。Mathurは、運輸関連の排出量が増える一方で、新しい移動技術が途上国に移転され、公的運輸機関から私的運輸機関への転換が取り上げられていると述べた。カナダは、気候変化を開発に組み込む上での主な障壁について質問した。パネリストは、農村開発の優先度が低いこと、情報面でのギャップそしてパイロットプロジェクトが不十分なことを指摘した。Mathurは、再生可能エネルギーへのインセンティブに関するドイツの質問に答えて、利用者のニーズに技術を適応させることを強調した。Mathurは、農村部電化への有効な手段に関するオーストリアの質問に対し、太陽光の屋根パネルシステムを指摘、Hongweiは、小規模水力発電を指摘した。

セッショ2:緩和の事例研究:
ケニアのアフリカエネルギー政策研究ネットワーク、Stephen Karakeziは、緩和の事例研究として、アフリカでの再生可能エネルギーイニシアティブについて、プレゼンテーションを行った。同氏は、石油危機や高い失業率から、アフリカでの再生可能エネルギーについて、地球規模で関心が再認識されていることを指摘した。同氏は、気候政策の有効なオプションとして、地熱発電やコジェネを検討するよう、政策立案者に求めた。

コロンビアの国際熱帯農業センターMarco Antonio Rondonは、中南米における温室効果ガス緩和の機会を紹介し、サバンナでの農業や家畜の管理、アマゾン流域での劣化した土地の回復、そしてサトウキビ収穫でのグリーン化をあげた。同氏は、サバンナに牧草地帯を入れることで、正味の排出源ではなく、正味の吸収源に変換したと述べた。同氏は、そのような実施が、生物多様性や地方および地球規模での化学物質循環に与える、悪影響についても指摘した。同氏は、そのほかの温室効果ガス緩和機会として、牛の食餌改善や、非耕作農法の拡大、水田での水の管理改善が含まれると述べた。

ロシア連邦エネルギー効率センターのIgor Bashmakovは、ロシアのエネルギー部門にとっての議定書の約束の意義を取り上げた。同氏は、計画通りGDP伸び率を倍増させるには、エネルギー効率改善を生むような積極的なエネルギー政策が必要であることを強調、改善の余地がある分野として、地域暖房システムに注目した。同氏は、議定書の批准は、ロシア連邦をエネルギー非効率から引っ張りあげるものであり、新しいエネルギー資源の開発機会も提供すると述べた。

タイのKing Mongkut工科大学のSirintornthep Towprayoonは、水田での温室効果ガス緩和オプションについて述べた。同氏は、水の管理や肥料の扱いを含め、さまざまな農耕手法を試した実験について説明した。同氏は、その結果が、管理と地球温暖化ポテンシャル、そして市場価格との間の複雑な関係を示したことを指摘した。同氏は、米作には緩和オプションの可能性があるが、その実施は慎重にするべきであり、社会経済への影響も考慮するべきであると結論づけた。

セッション3:気候緩和と新技術:
:CLIMATE MITIGATION AND NEW TECHNOLOGIES: 米国カーネギー・メロン大学のEdward Rubinsは、気候緩和のための技術革新と、政府政策との関係について述べた。同氏は、各種オプションや手法の組み合わせを助けるような政策とするべきであると指摘し、教育や訓練への政府援助の重要性に注目した。同氏は、政策が、短期的な政治圧力で影響されてはならないとし、技術革新における環境政策の重要性を強調した。

ドイツ、ボン大学の開発研究センターBettina Hedden-Dunkhorstは、農業における技術革新を通した気候変化緩和ポテンシャルについて、プレゼンテーションを行った。同氏は、環境サービスに対する報酬支払いと市場機会を通しての農村部貧困削減対策、所有権のための法的手段、メディアの支援による情報と教育、政策策定や地方分権化への参加を通した部門間の連携と政策協調、そして目的化した資金提供を、呼びかけた。

ペルーの中間技術開発グループ(Intermediate Technology Development Group:ITDG)のTeodoro Sanchez-Camposは、ペルーでの遠隔農村地域における再生可能エネルギー促進について、プレゼンテーションを行った。同氏は、水力、太陽電池、風力といった小規模なエネルギー資源が、遠隔地で脆弱な社会の生活に貢献できると説明した。同氏は、クリーンなエネルギーに対する障壁には、入手可能な技術や資金メカニズム、能力、法的枠組みの不足が含まれることを指摘した。同氏は、地域の人的資源を活用するなら、プロジェクトの運営や管理コストを5分の1削減すると述べた。同氏は、管理や運営に現地の人間が直接関与することは、持続可能性を増すことに注目し、プロジェクトは、地方でのキャパシティビルディング(能力向上)にも役立つと述べた。同氏は、代替エネルギー技術促進における政府の役割を強調し、小規模CDMに対し、簡素化した柔軟な規則を考えるよう、政策立案者に求めた。

日本のシャープ株式会社富田孝司は、太陽電池システムの温室効果ガス排出量削減への貢献について発言した。同氏は、特に、太陽電池システム促進における、研究者の訓練、協力、研究開発、助成金、フィードイン関税の重要性を強調した。同氏は、2030年までに、太陽電池システムで発電される年間発電量が、300GWに上るだろうと推測した。同氏は、家庭や灌漑における発電での太陽電池技術の利用可能性を指摘した。

ニュージーランド森林農業省のGerald Rysは、ニュージーランドでの牧畜業における二酸化炭素以外の緩和についてプレゼンテーションを行った。同氏は、羊や牛からのメタンおよび亜酸化窒素の排出量削減措置をいくつか指摘、たとえば、交配や、栄養改善、ワクチン接種、土壌の嫌気状態回避などが指摘された。同氏は、一連の措置のパッケージが必要であると結論付け、全ての温室効果ガスについて考えることの必要性を強調し、持続可能な農業と緩和との関係を強調した。

議論において、オーストリアは、政策が、有効なインセンティブを提供するにはいたっていないことへの懸念を表明した。Rubinsは、有効なインセンティブは、政策設計や規制が、機会を作り出すかどうかにかかると説明した。米国は、Sanchez-Camposに対して、ITDGが、どうやって利害関係者を動員しているか、質問した。Sanchez-Camposは、地域社会を最初から参加させるなら、熱意を持ってくれるが、政府の関与を図ることは、大きな挑戦であると述べた。フランスは、有効な市場改革とは、卸売業者や製造業者が動かすものだと述べた。Rubinsは、この点での効率基準の役割に注目した。デンマークは、技術応用の社会的な側面を強調し、プロジェクトパートナー間での協力の重要性に注目した。フランスは、市場インセンティブや政府による干渉での時間枠組について、技術革新の進展は、規制より先に明らかとなることを指摘した。これに応じて、Rubinsは、拡大サービス拡大の価値についてコメントした。日本は、石油危機やそのほかの経済状況および社会状況が、技術革新へのインセンティブになると指摘した。

結論:Benrageb議長が、セッションを閉会し、6月21日月曜日のSBSTAでは、口頭での報告が行われると指摘した。

廊下にて

SB-20の第1週では、交渉を蒸し返す動きがいくつか見られた一方、議定書の発効待ちの感もあった。ある場合には、参加者は、コンタクトグループで自分たちの見解を繰り返すよりも、前から良く知られた立場に立ち戻る方を選択した。別な場合では、出席者は、UNFCCC規定の条文の再交渉という事態を、それが条文になっていると指摘される前に、かろうじて回避した。出席者が、「オランダで膠着状態に陥った」問題を取り上げる必要について意見を述べる一方、オブザーバーの中には、プロセス活性化のため、創造力を発揮するよう呼びかけるものもあった。
今日の予定
SBSTA:SBSTAは、プレナリーIで午前10時から会合の予定、気候変化の影響の科学的、技術的、社会経済的側面、脆弱性、適応、さらには、緩和(適応と緩和)の科学的、技術的、社会経済的側面を。取り上げる。

コンタクトグループ:UNFCCC6条のグループは、Lenneで午前10時から会合する。政府間会議は、午前11時半から. Schumannで会合、政策措置のグループはLisztで午後3時から、非附属書I 国別報告書のグループはHaydnで午後3時から、キャパシティビルディング(能力向上)はLisztで午後5時から、技術移転はHaydnで午後5時から、適応と緩和のグループはSchumannで午後7時から、小規模新規植林および再植林グループはプレナリーIIで午後9時から会合する。