地球環境
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Vol. 12 No. 238
2004年6月22日火曜日

国連気候変動枠組条約第20回補助機関会合


2004年6月21日月曜日




SB-20の参加者は、月曜日に協議を再開、SBSTAプレナリー、いくつものコンタクトグループ、二つのSBSTAイベントで会合した。プレナリーで、参加者は、気候変化の影響、脆弱性、適応の科学的、技術的、社会経済的側面に関するセッション中ワークショップと、緩和(適応と緩和)の科学的、技術的、社会経済的側面に関するセッション中ワークショップの二つにおいて議論を行った。SBIのコンタクトグループでは、UNFCCC6条(教育、訓練、啓発)、政府間会合の調整、非附属書I国別報告書、キャパシティビルディング(能力向上)について協議を行った。SBSTAのコンタクトグループでは、政策措置(P&Ms)、技術移転、適応と緩和、CDM規定小規模新規植林および再植林(A&R)プロジェクト活動を取り上げた。

二つのSBSTAイベントでは、IPCC第三次評価報告書(TAR)の提案に対応する情報と研究イニシアティブ、および締約国の歴史的な排出量が気温上昇に与えた影響に応じて、各締約国の排出削減目標を差異化するとのブラジル提案における科学的側面と手法上の側面について議論した。

SBSTAプレナリー

Benrageb議長は、Tony Surridge(南アフリカ)が、Anders Turesson(スウェーデン)とともに政策措置に関するコンタクトグループの共同議長を務めると述べた。

適応と緩和:Benrageb議長が、適応と緩和に関するセッション中ワークショップについて報告した。南アフリカはアフリカグループを代表して、適応と緩和でコンタクトグループを分けるよう呼びかけ、G-77/中国、AOSIS、ロシア連邦はこれを支持した。日本、オーストラリア、カナダ、米国、EUは、一つのコンタクトグループとすることを支持した。オーストラリアは、いくつかの締約国とともに、将来でもセッション中ワークショップをと提案した。

ロシア連邦は、地域レベルで緩和を取り上げることを主張した。多くの締約国が、地域規模のモデル化が重要であることを強調し、持続可能な開発政策と適応措置を統合することの重要性を指摘した。米国は、革新的な技術に力点をおいた。ペルーは、短期のニーズを気候変化の長期的な影響とは切り離すことを提案した。モーリシャスは、脆弱な締約国の適応能力強化を主張した。サウジアラビアは、対応措置の影響を取り上げるよう呼びかけた。

The INTERNATIONAL ALLIANCE OF TRIBAL PEOPLES OF THE TROPICAL FORESTS(熱帯林部族の国際同盟)は、適応戦略を策定する際には、原住民の持つ懸念や、権利、知識に配慮する必要があることを強調した。The WORLD AGROFORESTRY CENTER(世界農林業センター)は、議論を技術的な面より広げるよう呼びかけた。Benrageb議長は、David Warrilow (英国)とKok Seng Yap (マレーシア)を共同議長とするコンタクトグループを作り、それぞれの問題について別々な結論書草案とするよう、提案した。

SBIコンタクトグループ

UNFCCC 6条:Markus Nauser議長は、情報センターの可能な契約相手に対する委託条件に何を含めるかに関し、締約国が事務局に提出した意見や指針をまとめたペーパーから議論を開始した。G-77/中国は、期限や資金源を明確にするとの条件を呼びかけ、情報センターの開発にあたり民間部門の参加を招請するよう提案した。Nauser 議長は、活動への資金手当の問題が未解決なところから、スケジュールの設定には慎重を期すよう促した。G-77/中国は、初期の課題としてコストの明確化を提案し、活動に対し持続的な資金の流れを確保することの重要性を強調した。EUは、どれも選ばれることにはならない可能性があるが、入札を進めるよう提案し、ニュージーランドとG-77/中国は、これを支持した。

政府間会合の調整:Karsten Sach議長は、5つの議題小項目に関する結論書草案を提出した。COP-10での調整について、EU、カナダ、そのほかは、ハイレベルセグメントでの議論に関する主題は提案どおりということを支持した。サウジアラビアは、その他の国とともに、エネルギーに関する議論を廃するよう提案したが、ノルウェー、AOSIS、ブルキナファソ、南アフリカは反対した。米国は、構成要素選択の手法再検討を呼びかけ、G-77/中国はこれを支持したが、EUは反対した。UNFCCCプロセスへの有効参加問題に関し、米国は、参加には物理的にそこにいることが含まれることを明言する文章にするよう呼びかけ、問題のSBI-22での再検討を提案したが、EUはこれに反対した。ノルウェーは、プロセスに関係する全ての会合に全ての締約国が物理的に存在することを確保することの資金面の影響を指摘した。参加者は、原住民の参加に関する文章提案について、意見を交換した。一部の締約国は、原住民の参加の機会探求を支持したが、他のものは、各国代表団に入れることで十分であるとの感触であった。

非附属書I国別報告書:Sok Appadu議長は、参加者に対し、非附属書I国別報告書の提出に関する米国とEUの提案について議論するよう求めた。締約国に対し2年毎に温室効果ガスインベントリーの提出を求めるとの米国案に関し、ブラジルはG-77/中国を代表し、他の国とともに、この提案が追加コストを課することへの懸念を表明した。

EUはその提案の中で、約5年周期での提出を提案しており、提出の継続に力点を置いた。G-77/中国は、この提案を考慮することに同意したが、この提案では、資金配分の遅れが考慮されていない点を強調した。締約国は、特にGEF資金ガイドラインについて、そして一つの国別報告書作成の作業をする一方で次の国別報告書を作成する場合の資金提供のタイミングについて議論した。

キャパシティビルディング(能力向上):参加者は、結論書草案に関する交渉を継続し、途上国でのキャパシティビルディング(能力向上)活動の効果と範囲に関するレビューを完了するための技術会議についての言及にコメントした。日本は、そのような会議からのインプットを条件としてレビューを完了するとの言及に反対し、EUは、レビュー完了には、さらなる作業が必要だということに賛成した。同代表は、COP-10でのラウンドテーブル協議を提案した。締約国はさまざまなオプションを検討したが、文章は、括弧書きのまま残された。また参加者は、EITs.によるキャパシティビルディング(能力向上)活動の効果について、その情報の提供締切日に関し議論した。

SBSTAコンタクトグループ

P&MS:
サウジアラビアは、附属書I諸国による排出削減と情報交換、そして政策措置のものも含めた悪影響を最小限にすることの、重要性を説いた。EUは、決定書13/CP.7 (政策措置P&Ms)の選択引用を回避し、全体的な理解を確保するよう、促した。締約国は、COP-9のノンペーパーの最新版を、サウジアラビアの提案する修正を加えた上で、議論のたたき台として利用することで合資した。サウジアラビアはG-77/中国を代表し、結論書草案は、全ての条項で合意に達するまでは、承認されたと考えられるべきではないと述べた。LDCsは、G-77/中国が政策措置において共通の立場を持っていないと述べた。サウジアラビアは、情報交換に関する状況報告書への言及をはずし、他の議題において行われている、そして国際機関や政府間組織で行われている関連活動を考える上での、事務局の役割に関する文章の削除を提案した。

技術移転:締約国は引き続き、新しい結論書草案について議論した。参加者は、追加ワークショップや、技術ニーズの評価に関する国内データベース設置への言及を議論した。Kishan Kumarsingh共同議長は、EU、米国、中国、日本、その他関心ある締約国で非公式に協議するよう要請した。

EGTTの2005年作業プログラムでの検討項目に関し、ガーナは、EGTTが、附属書I諸国と非附属書I諸国間での共同研究プログラムを特定し、評価し、優先させることの重要性を強調した。締約国は、EGTTには、活動の優先順位をつける権限がどれだけあるかについて審議し、EGTTに対し、可能な共同研究プログラムを特定するよう要請するとのカナダ案で合意した。

その後、締約国は、TT:CLEAR調査に言及する文章の代案、そしてCOP-10での決定書の可能性に向け、技術移転枠組の実施強化に関する提出期限について議論した。

適応と緩和:締約国は、将来のワークショップや活動の方式および中身について議論した。適応に関し、中国は、セッション前ワークショップで集まる可能性を指摘した。ニュージーランドはガンビアとともに、これは一部の締約国の参加を妨げる可能性があると指摘した。EUとカナダは、書面による報告書を呼びかけた。米国は、議論にもっと時間を割くよう提案した。中国は、行動計画の策定を提案し、インドはこれを支持した。EU、米国、カナダは、議題の焦点を絞るよう呼びかけ、ホームページのサイト開設を提案した。

EUは、検討されるべき問題について、締約国の文書提出を提案し、インドがこれを支持した。カナダは、適応能力と地方の状況の理解を強調した。ブラジルは、自然科学と社会科学の統合を力説した。ガンビアは、適応手法の総合評価を支持した。日本は、情報交換に重きをおいた。サウジアラビアは、持続可能な開発努力と経済多様化の統合に注目した。

緩和に関してスイスは、専門家ワークショップで集まることを希望した。ウガンダは、作業プログラムの策定を提案した。日本、カナダ、EUは、セッション中ワークショップを希望した。日本は、情報共有を進めることを呼びかけ、米国、カナダとともに、技術について議論するよう提案した。サウジアラビアは、情報交換が、UNFCCC4条(約束)に基づいて行われるべきであると述べた。米国は、カナダとともに、「両者勝ち」の機会を探るよう提案した。ウガンダは、チリとともに、行動計画の策定を提案した。カナダは、技術研究開発を促進するための、実施障壁や障壁、インセンティブ、オプションを考えることの重要性を説いた。ペルーは、ワークショップ期間中に小グループで作業を行うよう提案した。

CDM規定小規模A&Rプロジェクト:締約国は、非公式なグループからの報告を聞き、ノンペーパーについて検討した。参加者は、プロジェクト設計書類の中に、環境と社会経済の影響評価を含め、「規模に適した」との括弧書き文章をつけることで合意した。ベースラインについて、締約国は、ベースラインの炭素貯蔵量を、クレジット期間中を通して一定と想定することで合意し、CDM EBが現実の除去正味量をモニタリングする簡素化手法を開発すると決定した。モニタリングについて、ブルキナファソ、ボリビア、その他は、現地の参加者の参画に特に言及するよう呼びかけた。

SBSTAイベント

IPCC TARに対する対応研究:このイベントは、オランダ、アムステルダム大学のPier Vellingaを議長とするもので、IPCCのJean Palutikofが、TARで明らかにされた影響に関する研究ニーズを、第四次評価報告書でどう取り上げるか、説明した。IPCCのOgunlade Davidsonは、TARで明らかとなった緩和に関する研究ニーズを紹介した。欧州委員会のAnver Ghaziは、研究および技術開発のための第五次枠組プログラムおよびその他のイニシアティブの下で行われた気候変化研究について紹介した。

欧州共同体のFrank McGovernは、EU加盟国での気候変化研究イニシアティブについてプレゼンテーションを行った。日本の地球フロンティア研究システムのコンドウ・ヒロキは、気候変化予測シナリオを含めたいくつかの気候モデルを示唆した。

中国気象局のQuinchen Chaoは、国内の気候変化計画と研究活動を紹介した。WMOの世界気候研究プログラム(WCRP)のGilles Sommeriaは、地球観測システムとモデル化に関するWCRPの作業について報告した。International Human Dimensions ProgrammeのBarbara Gobelは、人間を分析の中心に据えるよう促した。国連大学の環境と人間の安全研究所(UNU-EHS)のJanos Bogardiは、最近設立されたUNU-EHSについて述べた。UNEPのJohn Christensenは、キャパシティビルディング(能力向上)と、応用研究促進におけるUNEPの役割に焦点を当てた。

議論の中で、出席者は、UNFCCCのニーズに合わせた研究の適切性を検討し、各研究機関の作業の協調をはかり、自然科学と社会科学の間のギャップに対処する必要性を取り上げた。

ブラジル案:Murray Ward(ニュージーランド)がこのイベントの議長を務めた。ドイツのEcoFysのNiklas Hohneが、気候変化に対する寄与のモデル化および評価(MATCH)についてプレゼンテーションを行い、MATCHには、英国とブラジルがイニシアティブをとったアドホックグループが含まれていることを指摘した。中国気象局のXiaosu Daiは、MATCHプロセスの状況について話し、指導的な専門家の参加、共同研究努力、そして同僚のレビューを受けての発表など、このプロセスの長所について述べた。Hohneは、累積排出量寄与度の計算に用いられたモデル、およびこれらに対応して用いられた指標について、その概要を紹介した。オランダの厚生・環境国立研究所のMichel den Elzenは、ブラジル案に規定する政策オプションを、時間枠の観点から論じた。同氏は、この研究で、政策関連および科学的な選択によるさまざまな影響を評価したと述べた。Ward議長は、他の科学グループでもブラジル案について検討を行っていることを、出席者に告げた。

廊下にて

前の週では、明らかにモメンタムが欠けていたが、会議の最終週ではコンタクトグループのスケジュールが集中し、参加者は、Maritim内を駆けずり回るだけでも疲労困憊してしまうところから始まった。オブザーバーの中には、議論の多くで少なくとも進展に向けた土台作りが出てきたとの感じを持つものもあり、適応と緩和、そして国別報告書に関するコンタクトグループでは、重要な下地つくりが行われた。一方、吸収量の計算に関する各国の交渉上の立場での溝が、残りの会期で深まるのではと懸念するものもいた。

今日の予定
SBSTAコンタクトグループ:LULUCFでの優れた実践方法ガイダンスに関しては、Regerで午前10時に、研究と体系観測については、Mannで午前11時半から、技術移転のは、Regerで午後3時から、CDM規定小規模A&Rは、Regerで午後5時から、P&Msは、Lisztで午後7時から、適応に関するコンタクトグループは、Haydnで午後5時から、緩和に関するグループは、Regerで午後9時から会合。

SBIコンタクトグループ::キャパシティビルディング(能力向上)は、Lisztで午前10時、UNFCCC6条のは、Lenneで午前11時半、非附属書I国別報告書は、Schumannで午後3時から、決定書5/CP.7(悪影響に関するUNFCCC4.8条と4.9条の実施)はHaydnで午後8時から会合。