地球環境
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Vol. 12 No. 249
2004年12月6日、月曜日

第10回国連気候変動枠組条約締約国会議

2004年12月6-17日



国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の第10回締約国会議(COP-10)、およびCOPの実施に関する補助機関(SBI)と科学的・技術的助言に関する補助機関(SBSTA)の第21回セッションは、本日、アルゼンチン、ブエノスアイレス、La Rural Exhibition Center(農村部展示センター)で開催される。

COP-10では5千名ほどの出席者が会合すると見られる。ロシア連邦がUNFCCCの京都議定書を2004年11月18日に批准したことで、締約国は、いまや、2005年2月16日でのこの手法の発効を見込めることとなった。このためCOP-10は、議定書が法的拘束力を有する前の最後の締約国の集まりである。

参加者は、COP-10で、気候変動特別基金(SCCF)や地球環境ファシリティー(GEF)へのガイダンスを含めたUNFCCCの資金メカニズムの問題を取り上げる。土地利用、土地利用の変化、森林(LULUCF)のための優れた実践方法ガイダンスに関する追加審議も予想される。他の問題で、SBSTAで取り上げられるものには下記が含まれる:クリーン開発メカニズム(CDM)の規定での小規模新規植林および再植林プロジェクト活動;技術移転;温室効果ガス・インベントリーと予測、そしてインベントリーの報告およびレビューに関する問題;政策措置での「優れた実践手法」。SBIでは各種議題の中で次のものも取り上げる:キャパシティビルディング(能力向上);附属書Iおよび非附属書I締約国からの国別報告書;UNFCCC6条(教育、訓練、啓発);管理上および資金上の問題;UNFCCC4.8条(悪影響)および4.9条(最後進国)の実施。

COP-10では、3回のセッション中ワークショップが行われる予定である。12月8日、水曜日に予定される最初のワークショップでは適応を取り上げる。気候変化 緩和に関する第二回のワークショップは、12月9日、木曜日に開催される。最後のワークショップは12月11日土曜日に開催され、政府間プロセスの組織について協議する。SBI-21とSBSTA-21は、12月14日火曜日に、作業の結論を出すことが見込まれる。

12月15-17日に予定されるCOPのハイレベルセグメントでは、閣僚や代表団の長などが、4つのパネル、「10年たっての条約:達成事項と将来の挑戦事項」、「気候変化の影響、適応措置、持続可能な開発」、「技術と気候変化」、「気候変化の緩和:政策とその影響」で議論するため会合する。

UNFCCCと京都議定書の簡単な歴史

気候変化は、持続可能な開発にとり最も深刻な脅威の一つであると考えられ、人間の健康、食料の安全保障、経済活動、自然資源そして物理的な社会構造基盤への悪影響を伴う。地球の気候は自然にも変動するが、人為的に作られた温室効果ガスの濃度が地球の大気中で上昇していることが気候の変化に結びついている点で、科学者たちの意見は一致している。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、気候変化の影響効果はすでに観測されており、予防的かつ速やかな行動が必要であると科学者は考えている。

気候変化に対する国際政治の対応は、1992年のUNFCCCの採択から始まった。UNFCCCは、気候システムへの「危険な人為的干渉」を回避するため、温室効果ガスの大気濃度安定化を目指す行動の枠組みを設置する。管理されるガスには、メタン、亜酸化窒素、そして特に二酸化炭素が含まれる。UNFCCCは1994年3月21日に発効し、現在189の締約国を有する。

京都議定書:1997年12月、参加者は日本の京都でのCOP-3で会合し、先進国と市場経済への移行途上の国が、排出削減数量目標の達成を約束するUNFCCCの議定書で合意した。UNFCCCでは附属書I締約国として知られるこれらの国々は、2008年から2012年(第一約束期間)の間に6つの温室効果ガスの全体排出量を1990年の水準から少なくとも5%削減し、国により異なる特定目標を有することで合意した。また議定書は、附属書I締約国が自国の目標を費用効果性の高い形で達成するのを支援するため、3つの柔軟性メカニズムを設定する:排出量取引システム;附属書I締約国同士の排出削減プロジェクトである共同実施(JI);そして非附属書I(開発途上国)締約国でのプロジェクト実施を認めるCDMである。

その後の会議で、締約国は、各国がどのように排出量を削減するか、また排出削減をどのように測定し評価するかを決める規則や運用規則の詳細の大半について交渉を行った。これまでのところ、129の締約国がこの議定書を批准しており、これには、1990年の附属書I締約国排出量の61.6% に相当する36の附属書I締約国が含まれており、議定書の発効基準を満たしている。

ブエノスアイレス行動計画:1998年11月、締約国はブエノスアイレスでのCOP-4で会合し、ブエノスアイレス行動計画(BAPA)として知られる一連の決定書について合意した。BAPAは、議定書の運用規則詳細と、UNFCCCの実施強化に関し合意に達する期限をCOP-6とした。特に取り上げられるべき問題としては、メカニズム関係規則、締約国の遵守評価体制、各国の排出量と排出削減量の計算手法、各国の炭素吸収へのクレジット規則があった。UNFCCCの問題で解決が求められるものには、キャパシティビルディング(能力向上)の問題、技術の開発と移転、気候変化の悪影響や、気候変化と戦うため先進工業国がとる行動に対して、特に脆弱な国への援助が含まれる。

COP-6パートIとII:COP-6パートIは、2000年11月13-25日、オランダのヘーグで開催された。BAPAに関する議論で、交渉担当者は、一連の題目、特に資金問題やメカニズムの利用、遵守、LULUCFに関する問題で合意に達することができなかった。11月25日、土曜日の午後、参加者は、COP-6を中断し、2001年に交渉を再開することで合意した。締約国は、2001年7月16-27日、ドイツ、ボンでのCOP-6パートIIで再度会合した。長時間の折衝の末、閣僚たちは、遵守に関するセクションを改訂した上で、政治的な決定書を採択することで合意した。この政治的決定書―「ボン合意」−は、COPの決定により運用化される必要があった。これらの決定書は、「パッケージ」で考えられたが、メカニズム、遵守、LULUCFに関して合意に達しなかったことから、全ての決定書草案が、COP-7に回された。

COP-7:参加者は2001年10月29日から11月10日、モロッコのマラケシュでのCOP-7で、「ボン合意」の議論を継続した。長い交渉の後、LULUCF、メカニズム、遵守、議定書5条(手法問題)、7条(情報の連絡)、8条(情報の検討)、持続可能な開発に関する世界サミット(WSSD)へのインプットに関するパッケージ取引が提案された。それに続く広範な交渉で、参加者は合意に至り、「マラケシュ合意」が採択された。

COP-8:COP-8の参加者は、2002年10月23日から11月1日に、インドのニューデリーで会合した。COP-8の最終日、参加者は、気候変化と持続可能な開発に関するデリー宣言を採択した。この宣言は、開発と貧困撲滅が途上国にとり他より優先する問題であることを再確認し、締約国の共通するが差異のある責任を認め、UNFCCCの約束実施における国内開発優先と状況を認めた。また締約国は、議定書での組織上、手続き上の問題を考察し、CDM理事会(EB)の規則や手続きを含めたいくつかの決定書を採択した。

COP-9:締約国は、2003年12月1-12日、イタリア、ミラノのCOP-9で会合した。締約国は、第一約束期間でのCDMの規定での新規植林および再植林活動の規則や手続きに関し合意して、BAPAでの最後の保留項目が最終決定された。SCCFや最後進国の(LDC)基金運用に関する交渉は、難航が明らかとなり、LDC基金での長時間の議論は、COPの閉会を延期した。LULUCFでの優れた実践方法ガイダンスに関する交渉も、長時間にわたり、結論は出ないままであった。

SB-20: SBIとSBSTAの第20回セッションは、2004年6月16-25日、ボンで会合した。SBSTA-20では、他の議題とともに、小規模な新規植林、再植林CDMプロジェクトや、LULUCFに関する優れた実践方法ガイダンスが検討された。SBI-20は、UNFCCCの資金メカニズムや政府間会合の手配を取り上げた。これらの問題に関する議論は、ブエノスアイレスでのSBIおよびSBSTAの第21回セッションでも継続される見込みである。2回のセッション中ワークショップが開催されたが、一つは、適応に関するもの、もう一つは緩和に関するものであった。

セッション間での焦点

SB-20以後、いくつかのUNFCCCワークショップや関連イベントが行われた。

伐採木材製品に関するワークショップ:
このワークショップは、2004年8月30日から9月1日、ノルウェーのリレハンメルで会合した。ワークショップの目的は、伐採木材製品(HWP)に関する問題の理解を深めることであった。出席者は、HWPの定義や推定、報告、計算の範囲に関する多様な問題を議論した。ワークショップの報告書は、SBSTA-21で提出されることになる。

排出予測に関するワークショップ:
この排出予測に関するワークショップは、2004年9月6-8日、ボンで開催され、附属書I の第四次国別報告書の作成支援を目的とした。このワークショップでは、排出量予測手法の普及や、モデルや感度分析でのモデルの主要なパラメーター、手法や想定、指標が網羅された。ワークショップ報告書は、SBSTA-21に提出される。

技術移転に関するワークショップ:
このワークショップは、技術の開発や移転への資金提供での革新的なオプションに関するものであり、2004年9月27-29日、カナダのモントリオールで開催された。このワークショップは、UNFCCC規定の技術移転に向けた革新的な資金調達について理解を含めることを目的とした。このワークショップは、出席者が、技術移転への資金調達におけるすぐれた実践方法の経験や情報を共有し、この問題での革新的な考えの橋渡し役をし、また存在する可能性がある全ての相違を縮める機会を提供した。ワークショップでの議論や成果は、SBSTA-21で取り上げられることになる。

附属I第四次国別報告書の作成に関するワークショップ:
このワークショップは、2004年9月30日から10月1日、アイルランドのダブリンで開催された。ワークショップの目的は、2006年1月1日を期限とする附属書I締約国の第四次国別報告書の期限内提出を容易にし、国別報告書に含まれる情報の比較可能性や透明性について、技術専門家間での意見交換を奨励することであった。ワークショップの報告書は、SBI-21で披露される。

IPCC-22:
IPCCの第22回セッションは、2004年11月9-11日、ニューデリーで開催された。この会議は、2007年に発表されるはずのIPCC第四次評価報告書(AR4)に関する審議継続の機会を提供した。出席者は、特に、AR4 統合報告書の発表時期、範囲、長さ、内容に関して議論し、その作成プロセスを承認した。参加者は、5頁の政策立案者向けサマリーを付けた30頁の統合報告書を、2007年10月後半のIPCCで承認されるべく作成することで合意した。このセッションでは、IPCCのアウトリーチの議論も行われ、特別報告書や、AR4を、可能な限り広範な読者に届けるのを確保する必要が指摘された。

追加イベント:
SB-20以後、UNFCCC組織下の各機関による多くの会議が行われており、これには、COP-10直前の会議も含まれる。LDC専門家グループは、9月24-25日、ガンビアのバンジュールで会合した。中南米・カリブ海地域での国内温室効果ガス・インベントリーに関する実践訓練ワークショップは、10月25-29日、パナマのパナマシティーで開催された。CDM EBは、9月と10月、ボンでのそれぞれ第15回および第16回のセッションで会合し、また12月2-3日、ブエノスアイレスで第17回セッションが開催された。11月18日、最初のCDMプロジェクトの登録が行われた。このプロジェクトは、ブラジル、リオデジャネイロ州での屋外投棄場所からのメタンの排出量削減を目的とするものである。COP-10直前に会合したこの他のグループとしては、12月2-4日に会合した技術移転に関する専門家グループ、12月2-3日に会合した非附属書I国別報告書に関する専門家諮問グループがある。

NEDOからの委託によりGISPRI仮訳