地球環境
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Vol. 12 No. 258
2004年12月16日、木曜日

第10回国連気候変動枠組条約締約国会議

2004年12月15日 水曜日



12月15日水曜日午前中、COP-10のハイレベルセグメントが開始された。参加者は、国連機関、特定機関、各地域グループのステートメントを聞いた。午後には、第一回のハイレベル・パネルディスカッション「UNFCCCから10年、実績と将来のチャレンジ」が開催された。他の政府間会議に関連するUNFCCCの意見交換についてのコンタクトグループ会合も行われた。

ハイレベルセグメント

開会:
COP-10議長のGonzalez Garciaは、参加者に対し、気候変動問題の規模の大きさを想起し、COP-10で期待される成果を挙げるべく努力を倍加するよう、促した。同議長は、共通するが差異のある責任の原則の下、各閣僚が、気候変動との戦いの世界的な努力において、行動を起こすものと確信していると表明した。

UNFCCC事務局長のJoke Waller-Hunterは、UNFCCCが1994年に発効して以後の実績に焦点を当てた。同局長は、努力にも関わらず、CO2の濃度は増加率が上昇しており、気候変動の影響もすでに現れていると指摘した。同局長は、次のステップを計画する必要性を強調した。

Klaus Topferは国連事務総長のKofi Annanに代わり、2013年以後を考え、低炭素エネルギー源、温室効果ガス排出が低い技術、再生可能エネルギーを促進して、長期的なチャレンジに対応するよう促した。同氏は、緩和がなければ、適応は、克服しがたいほどの課題になることを強調した。

アルゼンチン大統領のNestor Kirchnerは、気候変動が貧困を増加させているとし、最も貧しく、最も脆弱な国は、気候変動の原因には一番貢献していないにもかかわらず、最も大きな犠牲をはらうことになると指摘した。同大統領は、途上国が対外債務のコストを負担している一方、富裕な諸国は、気候変動に関する約束を守れないでおり、自分たちの「環境上の債務」を精算していないことを強調した。また同大統領は、途上国には倫理的な意見を持つ権利があり、先進国での排出量が増加するにつれ、途上国の市民が、生存に苦労する場合が多いとも述べた。

国連機関および特定機関のステートメント:
WMO事務局長の Michel Jarraudは、気候変動プロセスに関する同機関の貢献について紹介し、気候観測、モニタリング、早期警戒活動の価値を強調した。

UNEP専務理事のKlaus Topferは、ミレニアム宣言の実施に関する進展状況について2005年でレビューがあることを指摘し、脆弱な諸国への気候変動の影響を強調し、持続可能な開発の促進や、消費および生産パターンの転換におけるUNEPの役割について説明した。

IPCC議長のRajendra Pachauriは、IPCCの第四次評価報告書(AR4)の統合報告書が2007年10月には利用可能になると発言し、COP-13を3-4週間遅らせて、締約国がAR4をレビューできる時間を与えるよう提案した。

UNDPの理事補佐のZepherin Diabreは、議定書の発効は、より温室効果ガス集約型でない社会へと向かう道筋の重要な第一歩であることを強調した。同氏は、気候関連のリスクが、大幅に管理され、削減されない限り、ミレニアム開発目標の達成は不可能であると指摘した。

FAO副総裁のDavid Harcharikは、何億もの人々が飢えに苦しんでいることを指摘し、世界の食料安全保障における気候変動の影響に注意を向けるよう促した。同氏は、化石燃料や森林破壊による排出を削減するため、努力を増すよう国際社会に呼びかけ、脆弱な社会が対応できるのを助ける必要があることを強調した。

GEFのCEO兼議長のLeonard Goodは、UNFCCCの実績を賞賛し、適応に対応する必要性を強調した。同氏は、GEFの気候関連の作業に注意を向けるよう促し、GEFの資金補填の交渉が2005年に始まることを指摘した。

世界銀行副頭取のIan Johnsonは、人為的な気候変動により、長期的な経済展望も、そして貧困者が貧困から抜け出る能力も損なわれていると述べた。同氏は、途上国および先進国の両方で、主要な温室効果ガス排出者からの排出量を公平な形で制限する必要性を取り上げ、適応の重要性を強調した。

国連訓練および研究機関の専務理事であるMarcel Boisardは、特に後発開発途上国(LDCs)でのキャパシティビルディングの必要性に対処するための緊急な措置を呼びかけた。

国連砂漠化防止条約(UNCCD)の副専務理事Gregoire de Kalbermattenは、UNCCD、UNFCCC、そして生物多様性条約の間でのシナジーを強化する努力には、作業プログラムや、諮問機関、そして3つの条約実施のための国レベルでのシナジーワークショップが含まれると述べた。

地域グループからのステートメント:
環境インテグリティー・グループ(Environmental Integrity Group)を代表して韓国は、途上国と先進国がそれぞれの能力の範囲内で努力し、気候変動に対応する新しいそして柔軟性のあるメカニズムを探求するよう促した。

中央アメリカ諸国を代表してエルサルバドルは、この地域の脆弱性に焦点を当て、最近深刻な天候現象に苦しめられていることを指摘した。同代表は、生態系の壊れやすさや社会的なもろさが、持続可能な開発における問題となっているとして、気候変動への適応や貧困撲滅、持続可能な開発のための資金が利用可能となるよう希望した。

タンザニアはLDCsを代表して、LDCsは、国内適応行動プログラムの実施に向けた資金調達という未解決の問題を解決する必要があると述べた。

ケニアは、アフリカグループを代表して、適応の緊急性に焦点を当て、気候変動特別基金を運用可能とすることの必要性を強調した。

オランダはEUを代表して、この10年間と、議定書の発効で、気候変動に関する国際的な行動の増加に向けた基礎ができたと述べた。同代表は、EUが、独自の排出量取引スキームをすぐにも開始する予定であると説明し、批准していない先進国も、第一約束期間中に同等の緩和努力を行うよう促した。

パネル1 - 「UNFCCCのこの10年:実績と将来のチャレンジ」:
ハイレベル・パネルディスカッションは、チリの住宅都市開発省大臣のSonia Tschorne Beresteskyが進行役を務めた。パネリストによるプレゼンテーションの後、議事は締約国からのコメントに移った。

パネルのステートメント:
中国の国家開発改革委員会の副大臣であるJiang Liuは、COP-10は交渉から実施と具体的な行動のための規則策定へと移る機会を提供すると述べた。同大臣は、持続可能な開発には、緩和と適応の両方での進展と、技術移転のための革新的な戦略が求められると述べた。同大臣は、交渉は共通するが差異のある責任の原則にそって行われるべきであることを強調した。

インドの環境・森林省大臣であるA. Rajaは、先進国での排出量の増加に関して懸念を表明し、途上国が持続可能な開発と貧困撲滅を達成するには、温室効果ガス排出量が増加すると述べた。同大臣は、将来の行動に向けた提案には、UNFCCCでの締約国の分類において新しいものを含めるべきでないと述べた。

日本の小池百合子環境大臣は、日本が、気候変動政策プログラムのレビューを現在行っていると述べた。同大臣は、経済成長を維持する一方で、日本の削減目標を達成するには、エネルギー部門での追加的政策措置が求められることを強調した。小池氏は、また日本がアジア太平洋地域で行っている将来の気候問題に関するセミナーについても言及した。

キリバスの環境・土壌・農業大臣のMartin Puta Tofingaは、小島嶼開発途上国(SIDS)が気候変動の影響に最も脆弱な諸国の中に入ることを指摘し、まだ議定書を批准していない締約国に対し、批准するよう促した。同大臣は、市民社会からのインプットも引き入れて、これから進む道についての開かれた、率直な議論を支持した。

ロシア連邦水気象環境の長であるAlexander Bedritzkyは、締約国が多くの課題に直面しており、これには温室効果ガス排出量の定量的削減実施をどう効果的に計測するかが含まれるとし、5年間という期間は、排出量の動向をモニタリングするには短すぎると述べた。Bedritzkyは、自主的な約束を支持し、気候変動の課題に対応するための集団行動の必要性を強調した。

オランダの住宅・空間計画・環境省長官のPieter van Geelは、気候変動が世界で最も深刻な脅威であると発言し、地球の気温の上昇を産業革命前のレベルから摂氏2度の範囲で抑えるよう呼びかけ、この目標は、将来の国際努力の指針とするべきであることを強調した。同長官は、行動を遅らせるなら適応がさらに難しくなることを指摘した上で、将来の約束の検討を開始するよう各国に呼びかけた。

米国の地球問題担当副長官のPaula Dobrianskyは、UNFCCCに対する同国のコミットメントを強調し、多国間での科学的、技術的イニシアティブを通すものを含めた、気候変動と戦う努力に、焦点を当てた。同副長官は、経済成長と環境の保護は、両立されるべきであることを強調した。

議論:
カタールは、途上国の緊急なニーズは、キャパシティビルディング、技術移転、資金支援に関するものを含めた附属書I締約国による約束の全面的な実施で、満たされるべきであると述べた。ドイツは、摂氏2度以上の気温上昇を防ぐには、排出量を2050年までに半減させる必要があること、そして2020年まででの排出量削減という中期的な拘束力のある目標を議論するべきであることを強調した。同代表は、米国に対し、そのUNFCCCでのコミットメントどおり、排出量を1990年レベルまで削減するよう促し、途上国でのGDP成長と温室効果ガス排出量増加のデカップリング(乖離)が達成されるべきであると述べた。ルクセンブルグは、惑星の未来がかかっていることを指摘した上で、20年間のうちに世界の排出量の伸びを止める必要性があることを強調した。ブラジルは、将来の行動についての議論と2012年でのマンデートの交渉を行うことを支持する一方、先進国と途上国の歴史的な責任を尊重するとした。アイルランド、フランス、スウェーデン、ミクロネシアは、気候変動プロセスの将来に関する速やかで、総合的かつオープンな協議を支持した。パキスタンは、同国が近く議定書を批准すると発表し、非締約国の参加と、後日の加盟を可能と認める、十分に柔軟で開かれた体制構造を維持するよう提案した。カナダは、多国間行動の重要性を強調した。

ベニンは、LDCsでの適応や、持続可能な開発、貧困撲滅の重要性を強調した。フィリピンは、資源のタイムリーで定常的な供給と、技術移転やキャパシティビルディングのシステム強化を促した。スウェーデンは、目標やスケジュールが重要であり、経済成長と両立可能であると述べた。ネパールは、エネルギー効率化で経済成長を加速することを目指し、クリーンな開発のための投資呼び込みを望んだ。バングラデシュは、先進国に対し、温室効果ガス排出量削減の行動をとり、海水面上昇に脆弱なものを支援するよう促した。ベルギーは、気候変動の速度に懸念を表明し、緊急で集団的な行動がとられない場合に起きる社会的そして経済的影響結果に注意を促した。

バルバドスは、参加者に対しUNFCCC4.8条(悪影響)を念頭に、SIDSに支援を行うよう求めた。ミクロネシアは、SIDSでの緊急な適応ニーズと産油国のそれとは「混同」されるべきでないことを強調した。トリニダードトバゴは、ドミニカ共和国とともに、ハリケーンの強度増加を指摘した。ナミビアは、干ばつと砂漠化の繰り返しで、同国が、気候変動に脆弱になっていると述べ、全てのUNFCCC締約国に対し、それぞれの義務を果たすよう促した。

COPコンタクトグループ


他の政府間会議に関連するUNFCCC活動についての意見交換 :
このコンタクトグループは、Jose Romero(スイス)を議長とした。参加者は、関連する政府間プロセスへのインプットの可能性について議論した。米国は、結論書では、意見交換があったことだけを述べるべきできだとし、小島嶼国連盟(AOSIS)はこれに反対した、さらに米国は、サウジアラビアやインドとともに、事務局による報告書作成は、締約国での共通認識がある活動だけとするべきだと述べた。EUは、次のように述べたが、サウジアラビアはこれに反対した:COP-11は、問題のイベントの成果に関して最新情報のものにするべきである;COPは、持続可能な開発委員会でのエネルギーや気候変動に関する議論に対する資源提供機関として示されるべきである;結論書は、EUのプレナリーでの介在を反映させるその他文書(miscellaneous document)に言及するべきである。AOSISは、EUの支持を得て、プレナリーでの締約国の意見を含めた文書草案を提案したが、米国、日本、サウジアラビアはこれに反対した。米国、サウジアラビア、インドは、プロセスが始まる前にその成果について交渉することに反対し、警告した。

休憩に続いて、参加者は、Romero議長の作成した新しい文書案を検討するため、再度会合した。AOSISは、新しい文書案には、自分たちのグループの提出文書に表明された意見のどれもが入っていないことに失望を表明した。サウジアラビアは、他の政府間会合に関連するUNFCCCの活動に関し意見交換が行われたとだけ説明し、事務局にこれらの活動に関する報告を求めるとする文書しか受け入れられないと述べた。Romero議長は、新しい文書を作成し議論することになると述べた。

廊下にて


COP-10での交渉は、将来の約束に関する条項を取り上げるのに苦労しているが、ハイレベル・ステートメントでは、各国政府が、次期約束期間と将来の行動について実際に真剣に考えていることを実証している。オブザーバーは、この日は静かなように見えたが、熱気にあふれる「議長の友人」グループは、La Ruralの階上の個室で括弧書きのついた決定書草案について、練り上げた。このグループは、異議が唱えられている将来行動に関するセミナーについても議論しており、金曜日に、COPでの「パッケージ」取引を提案してくることが期待されている。

NEDOからの委託によりGISPRI仮訳