地球環境
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Vol. 12 No. 262
2005年5月19日、木曜日

国連気候変動枠組条約第22回補助機関会合

2005年5月19-27日



国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の補助機関会合第22回会合(SB-22)は、2005年5月19-27日、ドイツ、ボンのマリティム・ホテルで開催される。SB-22は、2005年2月に京都議定書が発効して最初の補助機関会合である。

実施に関する補助機関(SBI)では、今年後半のUNFCCC第11回会合、および第1回京都議定書締約国会合についての調整を行う。また、SBIは、2006-2007年のプログラム予算、気候変動特別基金、および後発開発途上国と国別報告書に関する問題など、さまざまな運営上および資金上の問題も取り上げる。

科学的・技術的助言に関する補助機関(SBSTA)は、緩和、脆弱性、適応に関する、気候変動の科学的、技術的、社会経済的側面を取り上げる。また、手法問題、技術の開発と移転、附属書I締約国間の政策措置、UNFCCCに関する研究上の必要性、関連する国際機関との協力、議定書2.3条(政策措置の悪影響)の実施といった諸問題も取り上げる。

補助機関の公式会合に加えて、広範な気候変動の話題に関し、多数のサイドイベントが、予定されている。


UNFCCCと京都議定書の簡単な歴史

気候変動は、持続可能な開発に対する最も深刻な脅威の一つであり、人の健康や、食料の安全保障、経済活動、天然資源、物理的な社会構造基盤や環境に、悪影響を及ぼすと考えられている。地球の気候は、自然にも変動するが、人為的に発生する温室効果ガスの地球大気中の濃度上昇が、気候の変動に結びつくという点で、科学者の意見は、一致している。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、気候変動の影響は既に観測されており、科学的な知見からも、速やかな予防行動の必要性が示されている。

国際政治における気候変動への対応は、1992年、UNFCCCの採択から始まった。UNFCCCは、気候系への「危険な人為的干渉」を避けるため、温室効果ガス大気濃度の安定化を図る行動枠組を策定した。制御の対象となるガスには、メタン、亜酸化窒素、そして特に二酸化炭素が含まれる。UNFCCCは、1994年3月21日に発効し、現在189の締約国を有する。UNFCCCの締約国は、通常、一年に一回の締約国会議(COP)で会合するとともに、一年に二回、UNFCCC補助機関の会合を開く。

京都議定書:1997年12月、日本の京都でのCOP-3の出席者は、先進国および市場経済への移行国(EITs)が一定量の排出削減目標達成を約束する、UNFCCCの議定書で合意に達した。UNFCCCでは附属書I締約国と呼ばれるこれら先進国および経済移行国は、6つの温室効果ガスの総排出量を、2008-2012年(第一約束期間)に1990年比5.2%削減し、各国がそれぞれ異なる削減目標をもつことで合意した。また議定書では、附属書I締約国が費用対効果の高い形で国別目標を達成できるよう、3つの柔軟性メカニズムを設定した:排出量取引システム、附属書I締約国間での排出削減プロジェクトの共同実施(JI)、そして非附属書 I 締約国で実施されるプロジェクトも認めるクリーンな開発メカニズム(CDM)である。COP-3の後、締約国は、各国が排出量をどう削減するか、また排出削減量をどう計測し、評価するかを定める規則や運用規則に関する交渉を開始した。これまでのところ、150の締約国が同議定書を批准しており、この中には、1990年の附属書I締約国における温室効果ガス排出量の61.6%に相当する37の附属書I締約国が含まれており、これで同議定書の発効要件が満たされ、同議定書は2005年2月16日に発効した。

ブエノスアイレス行動計画:ブエノスアイレス行動計画(BAPA)は、1998年、COP-4で交渉されたもので、議定書の各条項の遂行プロセスを設定した。BAPAでは、議定書の運用規則およびUNFCCCの実施強化に関する合意の最終期限をCOP-6とした。特に取り上げるべき議定書上の問題としては、柔軟性メカニズム関連の規則、締約国の遵守評価体制、国別の排出量および排出削減量の計算方法、そして各国の炭素吸収量に対するクレジットについての規則が含まれる。UNFCCCの問題で、解決が求められるものには、能力開発(キャパシティ・ビルディング)の問題、技術の開発と移転、気候変動の悪影響を特に受けやすい開発途上国への援助、または先進工業国が気候変動に対抗してとる行動の悪影響を特に受けやすい開発途上国への援助が含まれる。

COP-4でのBAPA合意に続く会合では、作業計画の多様な要素で合意するための努力が払われた。2000年11月、締約国は、オランダ、ハーグのCOP-6で会合し、交渉を完結するべく努力したが、成功しなかった。COP-6は、2001年7月まで中断され、同月、ドイツのボンで再度交渉が開始された。出席者は、延期された議論を再開し、結局、ボン合意と呼ばれる政治的決断を採択することで合意した。しかし、この政治的決断は、柔軟性メカニズムや遵守、土地利用・土地利用の変化および森林(LULUCF)など特定の問題に関するCOP決定書のパッケージにより、始めて運用可能となる。出席者は、全ての決定書の文章で最終決定を行うことができず、決定書草案を、COP-7での最終決定にまわすことで合意した。

マラケシュ・アコード:出席者は、2001年10月/11月のCOP-7でも、ボン合意に関する議論を継続した。広範な交渉が続けられた後、マラケシュ・アコードが採択され、これが以後の交渉の基礎をなした。マラケシュ・アコードは、京都議定書およびUNFCCCに関する決定の基本要素を規定するものであり、これらの要素には次のものが含まれる:柔軟性メカニズムとLULUCF、遵守規則、温室効果ガスの排出および除去に関する情報の連絡とレビュー、さらには開発途上国への支援に関する問題が、この後者の問題には、能力開発、技術移転、気候変動への悪影響に対する対応、および後発開発途上国(LDC)基金、気候変動特別基金(SCCF)、適応基金という、3つの基金設立の問題が含まれる。

COP-8およびCOP-9:出席者は、2002年10月/11月にCOP-8で、2003年12月にはCOP-9で会合し、マラケシュ・アコード実施のための決定書について交渉を行った。締約国は、他の合意とともに、次の項目に関して合意した:CDM理事会(EB)の規則および手続き、CDMを監督する指定運営機関、CDM新規植林および再植林(A&R)活動の方法と手続き。また締約国は、 IPCCの第三次評価報告書での発見事項をUNFCCCでの作業に統合する方法を議論し、適応と緩和という二つの議題について合意した。

SB-20:2004年6月、出席者は、ボンで、SBIおよびSBSTAの第20回セッションを行った。SBSTA-20は、各種議題の中でも、小規模A&R CDMプロジェクト活動およびLULUCFに関する良好な実践行動ガイダンス(グッドプラクティスガイダンス)について検討し、適応に関するものおよび緩和に関するものという2回のセッション中ワークショップを開催した。SBI-20は、UNFCCCの資金供与制度および政府間会合に関する調整を議論した。

COP-10:COP-10は、2004年12月6-18日、アルゼンチンのブエノスアイレスで開催された。この会合では、2013年以後の期間における気候変動との闘いについて、約束をどう結ぶか、長時間の交渉が行われた。京都議定書は、締約国が2005年までに2013年以後について検討を始めるよう求めている。出席者は、結局、2005年5月、SB-22の前に政府専門家のセミナーを開催することで合意した。しかし、セミナーに委託された要件は、2013年以後や新しい約束に言及しておらず、むしろ、「下記の事項に関する非公式な情報交換を進める」ことが、セミナーの目的であるとしている:「(a) 締約国が、有効かつ適切な気候変動対応措置の策定を継続できるよう支援する、緩和関係行動および適応関係行動、(b) 国連気候変動枠組条約および京都議定書に規定する各国の既存の約束実行を支援するため、各国政府が採用する政策措置。」

出席者は、適応に関する政策パッケージでも合意した、この政策パッケージは、適応と対応措置に関するブエノスアイレス行動計画と称され、気候変動の悪影響に対する適応措置の実施推進を支援するとともに、国際社会が気候変動に対応してとる措置により影響を受ける国々に対する経済多角化の提案にも触れる。

締約国は、これに加えて、多数の決定書および結論書を取り上げ、採択しており、これらの決定書および結論書には、次の項目に関するものが含まれる:技術移転、土地利用の変化および森林、 UNFCCCの資金供与制度、および教育・訓練・啓発。一部の問題は未解決であり、2005年に再度取り上げる。これら未解決の問題には次の項目に関する交渉が含まれる:LDC基金、SCCF、開発途上国(非附属書I締約国)の国別報告書、および議定書2.3条(政策措置の悪影響)。


セッション間でのハイライト

防災に関する世界会議:防災に関する世界会議は2005年1月18-22日、日本の神戸で開催された。交渉担当者は、各国および共同体の災害に対する回復力を築くための10年計画について合意し、将来の災害リスク軽減を目的として、2004年12月インド洋津波に関する声明を採択した。

温室効果ガス安定化に関する国際シンポジウム:このシンポジウムは、2005年2月1-3日、英国のエグゼターで開催され、気候変動の長期的な影響、安定化目標の目的適合性、そのような目標を達成するための技術オプションに関する科学的な理解の推進と科学的な議論の奨励を、探求した。

第3回地球観測サミット:このサミットは、2005年2月16日、ベルギーのブリュッセルで開催され、各国政府は、世界地球観測体系システム(GEOSS)を開発する10ヵ年実施計画に、支援を表明した。また出席者は、GEOSSの範囲内で、津波や複合災害警報システムを支援するとのコミュニケを採択した。

G8環境および開発担当閣僚会議:G8諸国の環境および開発担当大臣による閣僚会議は、2005年3月17-18日、英国のダービシャーで開催された。各閣僚は、アフリカが、気候変動問題の影響を特に受けやすいことに留意し、影響を受けやすい国の適応支援の行動を、早急に起こす必要があることで意見の一致をみた。またアフリカの貧困層に対し、信頼できしかも入手可能なエネルギーサービスへのアクセスを増やす必要があることを確認した。

UNFCCC会議:COP-10以後、いくつかのUNFCCCイベントが行われており、これには次のものが含まれる:教育、訓練、啓発に関する中南米およびカリブ海諸国の地域ワークショップ(ウルグアィ、モンテビデオで、2005年3月30日から4月1日)、国別システムに関するワークショップ(ドイツ、ボン、2005年4月11-12日)、非附属書I締約国の国別報告書に関する専門家諮問グループ会議(モザンビーク、マプト、2005年4月14-15日)、そして2回のCDM理事会会合(ボンで、2005年2月23-25日、および5月11-13日)。また、ボンでは、SB-22の前にいくつかのプレセッション会議が開催されており、これには次のものが含まれる:技術移転の専門家グループ会議(2005年5月12-14日)、LDC基金に関する非公式折衝(2005年5月13-14日)、登録簿システムに関する協議(13-14 May 2005年5月13-14日)。これらの会議に関する詳細情報は、下記を参照:
http://unfccc.int/meetings/unfccc_calendar/items/2655.php?year=2005.

政府専門家のセミナー:政府専門家のセミナーも、SB-22に先立ち、2005年5月16-17日にボンで開催された。このセミナーの開催は、締約国がCOP-10で決定したものである。このセミナーでは、緩和と適応に関する行動について、情報が交換され、これにより、各締約国が有効な気候変動対応策の策定を継続できるよう支援し、UNFCCCおよび議定書に規定する既存の約束の実施を支援する政策措置についても情報交換が行われた。このセミナーに関するEarth Negotiations Bulletinの報告書は、下記にアクセスのこと:
http://www.iisd.ca/climate/sb22.


NEDOからの委託によりGISPRI仮訳