地球環境
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Vol. 12 No. 264
2005年5月23日、月曜日

国連気候変動枠組条約第22回補助機関会合

2005年5月20日(金)



実施に関する補助機関 (SBI) は金曜日の午前に第22回会合を開始し、議題と作業組織に関して検討しながら、非附属書I国国別報告書や政府間会合に関する議題を取り上げた。 午後からのSBIでは、事務、予算、資金問題や、資金メカニズム、UNFCCC 4条8項・ 4条9項(悪影響)、その他の事項が取り上げられた。 条約に関する研究ニーズ、CDMやその他の環境条約、LULUCF調整手法、技術移転、及びHFCやPFC関連の問題等についてSBSTAコンタクトグループ及び非公式会合が開催された。


SBI

セッション開会: SBI議長のThomas Becker (デンマーク) が開会した。UNFCCC事務局長のJoke Waller-Hunterは「SBI 22は政府間プロセスの改善、COP-11やCOP/MOP-1に向けた調整、資金問題などCOP-10で審議未了となっていた様々な問題やその他の事項を完結する機会である」と述べた。

組織事項: 参加者は、サウジアラビアが提案したUNFCCC4条8項・4条9項の履行(FCCC/SBI/2005/1/Add.2)に関する追加や、G-77/中国が提案したキャパシティビルディング(能力開発)の議題を中心に、暫定議題 (FCCC/SBI/2005/1 and Add.1) について詳細に議論した。

EU、セントラルグループ、及び環境十全グループは、修正なしで議題を支持した。一方、アフリカグループやAOSIS(小島嶼国連合)はキャパシティビルディング(能力開発)に関する事項の追加を支持した。アンブレラ・グループはサウジアラビア提案に反対し、キャパシティビルディング提案のさらなる情報を求めた。サウジアラビア、ナイジェリア、オマーン、エジプト、アルジェリア、カタール、パキスタン、クウェート、及びアラブ首長国連邦は、追加を支持した。

最初の暫定議題に基づいて作業することで参加者が合意し、協議が行われた。協議後にBecker議長は、締約国に対して提案された追加事項については棚上げにして暫定議題(補遺)を採択するよう求めたが合意が得られず、本件は未決となった。

非附属書I国国別報告書: 第2回、必要に応じて、第3回国別報告書の提出: 事務局は、SBI 21及びCOP-10会期中の非附属書I締約国の国別報告書作成期限に関する交渉で結論が出なかったため、SBI 22へ文書草案 (FCCC/SBI/2004/L.27) が付託されたことを説明した。この問題についてEUはCOP-10で顕著な進歩があったと言及し、アメリカとともに、文書草案の採択を勧めた。G-77/中国はさらに非公式協議を行うことを提案した。Soobaraj Nayroo Sok Appadu (モーリシャス) とAnders Turreson (スウェーデン) が非公式協議を招集した。

非附属書I国別報告書に関する専門家諮問グループ(CGE)の作業: CGE議長のEmily Ojoo-Massawa (ケニア)はCGEの活動について報告した。(FCCC/SBI/2005/7) また、インベントリについて中南米、カリブ海諸国やアジア向けに開催したトレーニングワークショップやアフリカ向けに行った脆弱性評価のトレーニングワークショップについて説明した。韓国は2005年9月26日−30日に緩和評価に関するCGEワークショップを主催する計画を説明した。アメリカはCGE向けに資金援助を供与するよう締約国に呼びかけた。スイスは、締約国がCGEワークショップで得た知識の活用をサポートする上で、事務局、UNDP及びUNEPに期待される役割について言及した。また、作業重複の回避や次の2カ年に開催予定の第4回CGE会合向け予算枠の復活、及び他の援助国による国別報告書支援計画のサポートを求めた。

第1回国別報告書の編纂と統合: この件(FCCC/SBI/2005/INF.2 及びFCCC/SBI/2004/L.23)に関するGEF向けガイダンスについて、SBI 21 とCOP-10の議論で結論に達しなかったことに事務局が言及した。締約国は非公式協議の開催に合意した。

資金・技術支援の供与: 事務局は本件 (FCCC/SBI/2005/INF.1 and INF.3)について簡潔に説明した。議長は、関心ある締約国と協議の上で結論書草案が作成されると述べた。

政府間会合の調整: COP-11 と COP/MOP I: COP事務局長 Richard Kinleyはモントリオールで開催されるCOP-11 及び COP/MOP-I の準備について参加者に概要を伝えた。(FCCC/SBI/2005/4 and Corr.1) オーストラリアはCOP-11 でUNFCCC4条8項・4条9項に関する議題事項が必要かどうか疑問を投げかけた。サウジアラビアは現在の議題草案で満足していた。ケニア、AOSIS、タンザニアなどは査証の件で懸念を表明した。

今後の会期日程: Richard Kinleyは、IPCC第4次評価報告書完成直後の開催を避けるため、COP-13を3、4週間延期したいというIPCCの要請について言及した。EUはこの要請を支持したが、アメリカはその必要性について異議を唱えた。

政府間プロセスの組織: Richard Kinleyは、政府間プロセスの組織改善策に関して最近開催されたワークショップについて言及した。(FCCC/SBI/2005/2) 会期中の会合における作業負荷の多さについて、数カ国がコメントした。スイスは、透明性の見地から、会期中に二国間協議を開催するという提案に異議を唱え、この議題に関する問題の“クラスタ化”を支持した。

条約プロセスのオブザーバー組織: Richard Kinleyは、市民社会の参画に関して国連で進行中の作業について述べた。アメリカは、市民社会の参画に関する国連事務総長の報告書が今なお検討中であると言及した。EUは、この分野においてUNFCCCの実践状況はバランスが取れており、透明性があると示唆した。この件を2007年か2008年に取り上げるよう提案する締約国も数カ国あった。Karsten Sach (ドイツ) がこの議題事項の下にある全ての問題を扱うコンタクトグループの議長を務める。

事務・資金的事項: 2004-2005年度(2カ年)予算収支: 事務局は、事務局の財政状況(FCCC/SBI/2005/INF.4)を提示し、資金不足を強調した。議長は非公式に協議し、結論書を作成する。

2006-2007年(2カ年)事業予算: ドル安による下落分の調整のため、ユーロ建て予算を組むという事務局案をEUが支持し、アメリカと日本がこれに反対した。John Ashe (アンティグア・バーブーダ) がコンタクトグループの議長を務める。

資金手続きに関するUNFCCC 7項(c) の履行 (参加のための財政支援): 締約国がコア予算拠出分担金を未払いとした場合、事務局はUNFCCCプロセス参加費として当該締約国向けに提供された信託基金の財政支援を保留にしていたが、SBI 19の要請を受け、この慣行が中止されたことを事務局が想起した。また、SBI 19は事務局に財政的な影響を見直すよう求めた。また、拠出国が基金からの支払いに関して同様の状況があると紹介した。非公式折衝の後、結論書草案が作成される。

本部協定の履行: ドイツとJoke Waller-Hunterは、本部協定及び京都議定書まで拡大して本部協定の対象に含める取組みの進捗状況について報告を行った。本件の結論書草案が作成される。

事務局の活動に関する内部審査(レビュー): Joke Waller-Hunterは、事務の活動に関する内部審査の中間結果を報告した。(FCCC/SBI/2005/6) その中で締約国のニーズを満たす資金源の不足について触れ、締約国のガイダンスを募った。 Harald Dovland (ノルウェー) がコンタクトグループの議長を務める。

その他の問題:クロアチア基準年の排出水準: Becker議長は、この問題が過去数年間に議題として上がっていたことに言及し、本会合での解決を希望した。EUは、1990年を基準年とするクロアチア提案を支持したが、 ボスニア・ヘルツェゴビナ、及びセルビア・モンテネグロは留保を表明した。Jim Penman (イギリス)が非公式協議の議長を務める。

気候に中立的なUNFCCCの会合: アメリカ、及びサウジアラビアは、UNFCCC会議からの温室効果ガス排出量オフセット提案(FCCC/SBI/2005/9)に反対した。ミクロネシア、及びトリニダード・トバゴが、この発議を支持し、カナダはCOP-11とCOP/MOP-1が炭素中立的になるだろうと述べた。Becker議長は結論書草案を作成すると述べた。

資金メカニズム: 特別気候変動基金 (SCCF): SCCF (FCCC/SBI/2004/L.25)について、アルゼンチン、 サウジアラビア、南アフリカなどはCOP-10で未決となったことに失望の意を表した。EUはSCCFに対する支援や適応と技術移転に資金拠出することを言及した。 バングラデシュは、後発開発途上国(LDCs)は適応のためにSCCFにアクセスできるようにするべきだと述べた。Emily Ojoo-Massawa と Jozef Buys (ベルギー) がコンタクトグループの共同議長を務める。

UNFCCC 4条8項 ・ 4条9項 (悪影響): 後発開発途上国(LDCs): 後発開発途上国について、 Paul Desanker (マラウィ) は、国家適応行動計画(NAPAs)の作業とLDCsの国別報告書との関連について言及しながら、2005年4月に開催されたLDC専門家グループ会合について参加者に概要を説明した。また、会期前に様々な締約国と政府間組織 (IGO) の代表が集まって行われた討議について、Ricardo Moita (ポルトガル) とRichard Muyungi (タンザニア)による説明があった。多数の締約国がLDC基金の運営に合意し、実施に向かって前進する必要があると指摘した。いくつかの後発開発途上国がNAPAsの仕上げ段階にあると報告した。Bubu Pateh Jallow (ガンビア)とRicardo Moita がコンタクトグループの議長を務め、結論書草案と決定書草案を作成する。


コンタクトグループ

条約に関する研究ニーズ: 参加者は独立した科学団体としてのIPCCの重要性を強く主張する一方で、科学分野の優先順位が政府の研究要請によって異なっており、この研究におけるギャップを埋めるメカニズムが必要であると強調した。中国と日本は、自然科学だけでなく、社会科学が重要であると強調した。アメリカは研究の優先順位についてコンセンサスを得るのは困難であると述べ、EUが研究ニーズの概括とりまとめを提案した。ベリーズは、G-77/中国の立場から、そうしたメカニズムは各国の貢献を得るべきだと述べた。Maria Paz Cigaran (ペルー)とSergio Castellari (イタリア) が会議を招集し、結論書草案と決定書を作成する。

CDMとその他の環境条約: 議長 Georg Borsting (ノルウェー)は、SBSTAで挙げられた様々な発言を想起し、予想に反してHCFC-22工場新設のインセンティブが生じた現状に取り組む必要があるという点で幅広い合意があったことを明らかにした。中国はモントリオール議定書と京都議定書との連携を支持したが、それが個々の条約履行に影響するようなことがあってはならないと述べた。ブラジルの反対を受け、中国はSBSTAが技術的なガイダンスよりも一般的なガイダンスを提供するべきだと述べた。

EUは、ブラジルとともに、CDM以外の問題を処理すべきだと提案した。締約国は、締約国からの提出に基づき、事務局がCDM理事会とともにオプション・ペーパーを作成するよう要請することで合意した。引き続き、非公式協議が開催される。

LULUCFの調整: Newton Paciornik共同議長 (ブラジル)は、“conservativeness factor” tableについて検討した非公式なグループ会合について報告した。参加者は、LULUCF活動から生じる除去量の過大評価に絡む調整などをはじめとする、COP-11・COP/MOP-1 決定書草案 (FCCC/SBSTA/2005/2)付録にある文章について討議した。草案メンバーが非公式協議を続行する。

技術移転: 結論書草案とEGTTの委任事項のために主要な交渉団が執筆した寄稿内容について、非公式協議の中で参加者による意見交換が行われた。参加者の多くが、公的所有及びパブリックドメインの技術に関する問題を重点的に取り上げた。共同議長William Kojo Agyemang-Bonsu (ガーナ) とHolger Liptow (ドイツ)が文書をとりまとめ、非公式協議を継続する。

オゾン層の保護と気候変化 - HFCsとPFCs:
Darren Goetze議長 (カナダ) は、IPCCとTechnology and Economic Assessment Panel (技術経済評価パネル 略称:TEAP)の共同報告書に対するコメントを募った。オーストラリア、日本、及びアメリカは報告書を称賛した。イギリスは、EUの立場から、専門家会合もしくはワークショップなどによるフォローアップが必要であると提案した。アメリカを中心に、報告書は国々が行動を起こすための健全な土台となると主張し、これを拒否した。さらにアメリカは提出プロセスについての提案に異議を唱えた。Goetze議長が土曜の午前中に結論書草案を準備する。


廊下にて

金曜日に様々な会合で取扱われた問題があまりにも多かったため、廊下で繰り広げられた話題も多岐にわたった。資金調達について議論する参加者もあれば、技術移転について話し合うグループや、今度の国別温室効果ガス・インベントリに関するIPCC ガイドラインを賞賛する参加者など様々だった。SBIの議題−まだ採択が終わっていないが−の難しさにもかかわらず、全体的にかなり積極的なムードが続いていたとのコメントもあった。

参加者の注目を集めた問題として、事務局予算案がある。夕方のプレゼンテーションが行われた「ハイドンの間」は満員となり、ユーロ建て予算修正による変動為替レート対策が与える今後の影響に出席者の関心が集中した。 また、会議業務を対象とする予備費措置を中止し、今後の資金調達を国連総会に頼るという事務局の決定が物議をかもしていた。


NEDOからの委託によりGISPRI仮訳