地球環境
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Vol. 12 No. 285
2005年12月3日土曜日

COP11及びCOP/MOP1ハイライト

2005年12月2日 金曜日



金曜日、各国政府代表は、資金メカニズム、技術移転、適応、緩和、LDCs、CDM理事会の報告、他の環境条約に対するCDMの影響、京都議定書の国際取引ログ、遵守、研究及び系統的観測、附属書I国別報告書、二酸化炭素回収・貯留に関するIPCC特別報告書など、数多くの問題に関するコンタクトグループ及び非公式協議で会合した。


コンタクトグループ及び非公式協議


適応:各国政府代表は、共同議長作成の適応に関するSBSTA作業計画の附属書草案の検討を進め、同計画の中の特定の活動について議論した。多くの締約国が、もっと焦点を絞ったアプローチの必要性を強調し、外部の専門家や利用者の参加を求め、長期協力を進めるよう主張した。G-77/中国及び他の諸国は、緊急性のあるニーズにも対応可能な2-トラックアプローチを提案し、専門家グループの設置、ボトムアップアプローチ、一部の期限短縮を求めた。カナダは、適応計画・開発のための分析ツールや、適応オプションの評価に関する技術報告書を要求するよう提案した。EUは、適応事例データベースをインターネットに載せるよう提案し、米国は、各部門の専門家の参加を求めるよう提案した。オーストラリアは、現在進行中の調整作業を促進するには、複数回以上のワークショップが必要であると指摘し、他の多くの国の支持を得た。非公式協議は一日中続いた。

附属書I国別報告書:各国政府代表は、共同議長提出のCOP及びCOP/MOP決定書草案を検討し、両方とも改定版とすることで合意した。事務局が編集をし直し、合意されたテキストを土曜日朝に配布する。

CDM理事会報告書:締約国は、非公式に会合し、共同議長による決定書草案に関する検討作業を行った。先進国のうち数カ国は、2013年以降のCDMの継続性に関するパラグラフの削除を提案し、この問題は議定書3条9項に関するコンタクトグループで取り上げられるべきだと述べた。途上国は、この問題の重要性を強調した。

途上国は、2005年12月31日までにCDMプロジェクトのプロセスサイクルに入るプロジェクトに対する、遡ってのクレジット発行について、表現方法を提案した。議論では、CDMの下での二酸化炭素回収・貯留について、そして地方、国内、地域での政策基準やプログラムをCDMプロジェクト活動とみなせるかどうかについて、締約国間での意見の食い違いが表面化した。先進国のグループは、理事会の役割と効率に関していくつかのパラグラフを追加するよう提案したが、ある途上国は、この提案に反対し、理事会の機能はマラケシュ合意で合意されていることを強調した。また、締約国は、新しい追加性実証案に関するパラグラフについて議論し、さまざまな提案が出された。

遵守:各国政府代表は、アフリカグループの提出した決定書草案を検討するため、非公式に会合した。この草案には、決定書24/CP.7に含まれるとおりの遵守手順採択に関する一つの運用パラグラフが含まれ、さらに議定書の改正をCOP/MOP2までに終了するべくプロセスを開始し、法的な拘束力のある結果を持つ遵守システムにするとの別なパラグラフも含まれる。ある先進国は、二番目のパラグラフの代案として、別な決定書草案を提出し、改正の必要性を検討するプロセスの開始を提案した。土曜日も、Harald Dovland(ノルウェー)及びMamadou Honadia(ブルキナファソ)が共同議長を務める非公式協議が続けられる。

教育、訓練、啓発(UNFCCC6条):このコンタクトグループは、金曜日の午前中遅くに再度会合し、D’Auvergne議長作成のSBI結論書草案の改定案について議論した。各国政府代表は、議論を終了し、いくつかの変更を行った上で、そのテキストを承認した。変更点には、SIDSに関して近々行われる予定のワークショップを、特に6条に関するものにしなければならないと明記する、EU提案の表現挿入が含まれる。加えて、ナミビアは、6条に関する新規国内窓口および既存の窓口を強化するよう、各組織および各締約国に勧めるとのテキストを追加した。

資金メカニズム:このコンタクトグループは、一日中会合し、非公式協議も多数回行い、特別気候変動基金(SCCF)、決定書5/CP.8、GEFの報告、適応基金、その他の問題が取り上げられた。

SCCF:各国政府代表は、共同議長の決定書草案を検討したが、SCCFの優先分野、及びそのような優先分野でのSCCF実施状況に関するCOPレビューのタイミングについて、その文章表現での合意に達することができなかった。非公式協議後、締約国は、このテキスト草案を、G-77/中国およびEUの提案をつけて、SBI議長及び/またはCOP議長に送ることで合意した。

決定書5/CP.8の実施:各国政府代表は、途上国の条約上の約束達成に必要な投資に関連する、国際基金及び多国間金融機関での経験を報告する報告書に謝意を表し、途上国による約束遵守を支援するために必要とされる資金についての報告と評価は、COP 12で報告されるべき資金メカニズムの第三次レビューにインプットすると記載した、SBI決定書草案を承認した。

その他の問題:また各国政府代表は、RAFについてGEFからさらなる情報を求め、事務局には、RAFがCOP-GEF覚書(MOU)に則っているかどうか検証と報告を行うよう求める、G-77/中国の提案に関し、暫定的な議論に入った。米国は、GEFにはすでにガイダンスが提供されているとして、この提案は不必要だと述べ、EU及びその他の国は、RAFとMOUの合致への言及に反対を唱えた。共同議長が非公式に協議する。

GEFからCOPへの報告:各国政府代表は、共同議長の決定書草案を検討した。ミクロネシアは、AOSISの立場で発言し、GEF報告の中身に関し締約国から出された懸念に言及する場合、公平に扱う必要があると指摘し、G-77/中国その他の国の支持を得た。締約国は、このテキストを短縮する必要があることで合意した。この問題は、土曜日に再度議論される。

適応基金:EU及びG-77/中国が、それぞれ決定書草案を提出した。EUは、追加コストの算定で、共同出資に対しスライド制を用いるよう主張した。G-77/中国は、COP-MOP及び条約の資金メカニズム運用機関との間でMOUが必要であると指摘し、「増分コスト」など「適格性基準に関する有償の運用政策(onerous operational policies on eligibility criteria)」を回避する必要性があると指摘した。G-77/中国は、自分たちの提案を交渉のたたき台とするべきだと述べたが、EUは、共同議長が両方の提案をベースに草案を作成するべきだと述べ、ノルウェーとスイスもこれを支持した。二つの文書の統合文書は、土曜日の会議までに作成される。しかし、共同議長は、締約国の方で、まずどのように進めるかを議論する必要があるとし、この文書が交渉のたたき台となるとは限らないことを指摘した。

国際取引ログ:Ward議長は、前回のコンタクトグループ会合以降に開催された非公式の議論について報告した。同議長は、草案に規定する活動の期限に関し、締約国から質問があったことを指摘した。事務局は、国際取引ログ実施に向けた活動スケジュールについて、各国政府代表に概要を説明した。Ward議長は、改定テキスト草案を配布したが、この草案は、京都メカニズムにとっての国際取引ログの重要性を指摘し、事務局に対して、2007年4月までにこのログと各国の登録簿システムの接続を成功させるとの観点から、2006年にはこのログを実施するよう求めている。各国政府代表は、いくつかの問題について明確化を求めた。改定版のテキストは、土曜日午後までに作成される。

二酸化炭素回収・貯留に関するIPCC特別報告書:各国政府代表は、午前中、共同議長のテキスト草案を検討するため、非公式に会合した。議論の中心となったのは、報告書を「歓迎する」かそれとも報告書に「留意する」か、二酸化炭素回収・貯留システム及びその構成部分の成熟度、そしてワークショップを締約国などの会合期間中のものとするか、会合と会合の間のものとするか、その主な目的は何かを含めたワークショップの組織である。このコンタクトグループは午後に会合し、報告書の普及に関するパラグラフについて合意した。議論は深夜11時55分まで続けられたが、合意には達しなかった。このコンタクトグループは、土曜日に会議を再開する。

LDCS:このコンタクトグループは、後発発展途上国専門家グループ(LEG)のマンデートに関する決定書草案の改定案を検討するため会合した。SBIで検討されるべき作業計画を作成するようLEGに要請するパラグラフに、議論が集中した。サモアは、LDCsの立場で発言し、SBIへの言及を削除するよう提案し、他国もこれを支持したが、オーストラリアは、決定書の含意を明確にし、SBIでLEGの詳細なニーズを検討する必要があることを強調し、EUの支持を得た。非公式協議の後、締約国は、SBIへの言及を含めるとの新しい文案で、意見の一致をみた、またこのテキストをCOPでの採択にかけると決定した。

方法論問題:
他の環境条約に対するCDMの影響:Borsting議長は、HFC-23の破壊でのCERs獲得を目指すHCFC-22施設を設置する影響についてのCOP/MOP決定書草案を提出した。中国とカナダは、HCFC-22施設の新設が負の影響を与える可能性に関するテキストに反対を表明し、中国は、そのような断言の一部について、その科学的根拠に疑念を示した。中国は、HCFC-22の需要が増加していると指摘した上で、HFC-23を破壊するインセンティブの必要性を強調した。カナダは、HCFC-22の原料としての利用は、モントリオール議定書で規制されていないことを強調し、そこを区別するよう求め、日本もこれを支持した。ブラジルは、HCFC-22の生産増加をリーケージとして扱うよう提案した。Borsting議長が非公式に協議する。

緩和:各国政府代表は、テキストをパラグラフごとに検討し、緩和の実践方法と技術に関するワークショップを扱った文章表現、ワークショップの技術報告書やワークショップ報告書、そしてこの議題項目での次のステップに焦点を当てた。ワークショップの方式に関し、米国は、非公式のワークショップを会合期間中に開催するよう提案した。オーストラリア、カナダ、ノルウェーは、4つのワークショップ開催を提案した。G-77/中国は、事務局の技術報告書を要求することに懸念を表明した。これらの問題では合意に達しなかった。議論は、非公式に続けられる。

研究と系統的観測:各国政府代表は、午前中と午後、非公式に会合し、パラグラフごとの議論の後、このテキストを承認した。締約国は、地上観測、海上観測、地球観測グループ(GEO)とGCOSとの協力、国内窓口、キャパシティビルディングについて議論した。コンタクトグループはこの合意を文書化するため会合する。

技術移転:参加者は、テキスト草案をパラグラフごとに議論した。EGTTの2006年度作業プログラムに関し、各国政府代表は、技術に関するパラグラフを除いたテキストの全文について、指名や特別作業会合に関する文章表現を含めて合意した。また各国政府代表は、実施枠組に関するテキスト草案についても議論した。午後も非公式な議論が続けられたが、進展は限られていたと報じられている。


廊下にて
金曜日夕方の話題は、COP議長のDionが、主な交渉グループそれぞれの代表とハイレベル会議を開いたことに集中した。どうやらDion議長は、条約における将来シナリオを検討するとのアプローチについて、ノンペーパーを提示したようである。この方法は、議定書3条9項規定の将来の約束をどう扱うかとは別で、かなりの議論をよぶ可能性が高い。これに対する当面の反応はまちまちで、熱意を示すところもあれば、抑えた反応をするところもあった。ある政府代表は、「これは、この会議にとり、大きな成果になる可能性があるが、複雑な作業になるのではないか」との観測を述べた。

一方、コンタクトグループでの議論は、それほどセンセーショナルではなかった。UNFCCC6条、LDC専門家グループ、附属書I国別報告書などの問題では合意に達したものあったが、他の多くのグループでは、成果を出そうとの努力もあまり実らなかった。金曜日夜の時点では、資金問題、遵守、緩和、他の環境条約に対するCDMの影響に関して動きがなかったことに懸念を表明する参加者もいた。「これが陸上のレースなら、今日は、カタツムリにも負けるよ」とはある政府代表の言である。しかし、交渉のベテランは、会議ではいつも今頃が一番進展の遅さを感じるときだと指摘した。

これからの作業量の多さを認識してか、土曜日のプログラムでは、夕方まで会議が予定されている。ある参加者は、「おかげで、NGOのパーティーだとか、モントリオールカナディアンズのアイスホッケーの試合に行こうという週末の計画が台無しになる人もいるのでは」と冗談を言った。



NEDOからの委託によりGISPRI仮訳