地球環境
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国連気候変動枠組条約第18回補助機関会合(SB18)ハイライト


2003年6月11日 水曜日



水曜日、UNFCCC SB-18の出席者は、いくつかのコンタクトグループおよび非公式グループでの会合を続けた。締約国は、議定書5条(手法上の問題)、7条(情報の連絡)、8条(情報の検討)、吸収源CDM、政策措置(P&Ms)での「良好な実践方法」、能力向上、気候変動特別基金(SCCF)、2004-2005年の2年間プログラム予算、UNFCCC 4.8条と4.9条(悪影響)を議論した。また、IPCC TARを含むいくつかの問題について、一日中、非公式折衝がもたれた。

SBSTAコンタクトグループ

議定書 5条、7条、8条:出席者は、決論書草案および決定書の改訂版を検討した。8条の実施に関する問題について、締約国は、多少編集上の修正を行ない、筆頭レビュワーの資格に関する附属書での筆頭レビュワーに望まれる語学能力について、括弧書きのパラグラフを追加した上で、COPおよびCOP/MOP決定書草案について合意した。中国および日本は、6月12日木曜日のSBSTA プレナリー前に結論を出すべく、この問題を非公式に議論することで合意した。

また、締約国は共同議長による決論書草案、および5.2条(調整)に基づく調整の手法に関する技術ガイダンスについてのCOPおよびCOP/MOP決定書案でも意見の一致を見た。その後、このコンタクトグループは、付属書I 温室効果ガス目録の報告およびレビューに関係する手法上の問題についての決論書共同議長案を承認した。

目録の技術レビューに関するCOP決定書案について、出席者は、機密情報の扱いにおける実施規定の附属書に関し、長時間の議論を行なった。中国は、利害の対立の可能性について公表するよう専門家に呼びかける附属書中の文章は、専門レビュワーに新たな負担を課するものであるとして、削除するよう提案し、米国、カナダ、日本、ロシア連邦、EUはこれに反対した。協議の上、出席者は、決定書草案が、専門家レビューサービスに関する協定の基礎を、附属書に記載する要素、そして協定違反の結果への配慮から生じる追加要素を基礎とするという条件を持つよう修正することで合意した。その後、締約国は、決定書草案で合意した。

吸収源CDM:ニュージーランドは、新規植林および再植林(A&R)プロジェクトでの規則および手続きに関する取り決めについて、各締約国提出分を組み合わせた文書を提出した。ボリビアは、どの炭素貯留分(pools)をA&Rプロジェクトに入れるか、決定するのはCOP よりも各国であるべきだと述べ、また決定書草案でgeo-referencing(地球への言及)を含めることが重要であるとも述べた。またボリビアは、締約国が、議定書の附属書Aに記載する排出源・吸収源や部門に含まれていないものも計算に入れるよう希望する可能性があり、このため記載分の再考を希望する可能性があると指摘した。EUは、炭素貯留量の取引や一部の排出源を計算に入れるため、組み合わせ手法を希望すると述べた。AOSISは、人為的な排出除去をどう定義するかについての文章があいまいであると述べた。コロンビアは、炭素収容力を計算に入れるのは「プロジェクトの限界の中」とするべきだと示唆した。中国は、同国が、プロジェクトでのベースラインのタイミングや実際の排出に関する技術情報を理解するだけの能力を必要としていると指摘した。また、同代表は、炭素収容力ゼロの問題を扱う方法が必要であるとし、ベースラインの概念簡素化を提案した。EUとAOSISは、計算方法に関連するプロジェクトの限界と、純粋に地理的な特性のプロジェクトの限界とを区別するよう、提案されている「プロジェクトの限界」の定義を改訂するべきであると述べた。チリは、LULUCF CDMプロジェクトに一つ以上の活動を含めるべきであると指摘した。

プロジェクトのモニタリングについて、ボリビアは、リーケッジをどう推算し制御するのか問いかけ、ウルグアイは、マイナスのリーケッジを最小限にする必要性があると指摘した。その後、締約国は、第一約束期間での吸収源CDMに関する定義と規則についての文章の付録を検討した。EU、ノルウェー、スイスは、CDMプロジェクトの環境上および社会経済的な影響に関する付録Eの草案を提出し、これが非公式折衝に続いて作成されたものであり、各国によるCDMプロジェクトの準備に助力することを目指すものだと述べた。カナダは、ニュージーランド、日本、セネガルと共に、各締約国に対し環境上の影響を分析する際にはいくつかの問題を検討するよう求めている文章について、懸念を表明した。これからの作業について、共同議長のKarsten Sachは、締約国が非公式のセッション間折衝を行うよう要請し、COP-9前に作業を完了するよう、セッション前折衝の開催を提案した。

IPCC TAR:午後の非公式折衝後、締約国は、夕方にも非公式に会合し、共同議長による決論書草案の改訂版を検討した。この決論書草案では、SBSTA が、適応のそして緩和の科学的、技術的、社会経済的側面を常時考察するための新しい議題項目二つを策定する、としている。また、草案は、SBSTAが、SBSTA-16報告書に記載されたクロスカッティングイシューの科学的、技術的、社会経済的側面を、持続可能な開発という概念の中で、探求するとも指摘している。

政策措置:締約国は、共同議長による決論書草案をパラグラフごとに議論した。EUと日本は、対応措置の悪影響を最小限にする方法について情報交換を呼びかけた文章の削除という、これまでの要請を再度提示したが、G-77/中国はこれに反対した。討議に続いて、EUは、この文章を決定書13/CP.7(P&Ms)への一般的な言及に代えるよう提案した。G-77/中国は、この文章を再度入れ、決定書13/CP.7からの特定パラグラフの文章で囲むことを提案したが、EUと米国はこれに反対した。非公式な協議のあと、共同議長のGreg Terrillは、決定書13/CP.7実施の引き続いての重要性を指摘し、SBSTA-19でこの議題項目を再検討することで合意する、との新しい結論を提案した。締約国は決論書草案で合意した。

SBIコンタクトグループ

能力向上:このグループは、午前中に行われた非公式折衝に続いて、レビューでの総合委託条件に関する保留文章を検討し、合意するため、短時間会合した。その後、締約国は、議長の提案する決論書草案を含めた文書全体について合意した。

プログラム予算:このコンタクトグループの出席者は、UNFCCCの会議サービスに付随する事柄に関し、また議長による決論書草案改訂に関し、意見交換を行なった。G-77/中国は、UNFCCCの会議サービスに国連の通常予算から資金を提供するとの最近の国連総会(UNGA)決議が、2006年まで適用されるものかどうか質問した。日本は、新しいUNGAの評価目安が適用されるべきであると述べた。ホンジュラスは、中米諸国にとり、適応の方が緩和よりも懸念されていることを強調した上で、CDM活動への資金予算額についての同国の懸念を指摘した。その後、締約国は、決論書草案に示された6つのオプションに関して討議し、どれも取り除くことができなかった。UNFCCCエグゼキュティブセクレタリーは、既存の資金では2004年2月までの活動しか支援できないことを指摘した。

気候変動特別基金:G-77/中国は、共同議長の決論書草案に対する同グループからの修正案を提出し、同グループの最大の関心事は、COP-9でSCCFに関する決定がなされるかどうかであると、言明した。同代表は、G-77/中国の文章が交渉のたたき台となるべきであると述べ、EUとカナダはこれに反対した。共同議長のRawleston Mooreは、この問題での非公式折衝のため会議を中断した。会議が再開されたところで、共同議長のMooreは、付録を決論書草案から外し、G-77/中国の文章をMISC文書の一つとして載せることになると述べた。

その後、出席者は、決論書草案に記載されたSCCF活動の優先度について議論した。カナダは、EU、ノルウェー、日本とともに、SCCF が適応活動と緩和活動を援助するよう提案したが、G-77/中国はこれに反対した。アルゼンチンは、適応プロジェクトが地球全体の利益になり、SCCFの下で最高の優先度を持たせるべきであると述べ、G-77/中国および他の諸国はこれを支持した。ガーナは、SCCFが、LDCsとはされていない非付属書I締約国にも資源を提供し、適応計画や戦略を準備できるようにさせるべきであると提案した。また、同代表は、パイロット活動やデモンストレーション活動を含めた小規模プロジェクトのSCCFへのアクセスを早めるべきであると提案した。ガーナの提案に対し、ウガンダとカナダは、こういった要素が運用上のガイダンスを提供すると述べ、決論書草案に含めるべきだと述べた。アルゼンチンは、SCCFを、GEFの気候変動注目分野やLDC基金そして二国間、多国間の資金源から資金提供を受けるものを補足するような資金供与活動にも用いるよう提案したが、EUその他の諸国はこれに反対した。出席者は、SBIからGEFに対し、UNFCCCの下での基金に対する補足性についてGEFの見解を提出するよう呼びかけるとのEU案で、カナダとノルウェーが支持する提案について意見の一致を見なかった。出席者は、SCCFについて、SBI-19までにさらなる見解の提出を求め、セッション間での非公式折衝を呼びかける文章を削除することで合意した。

UNFCCC 4.8条と4.9条:このグループは、共同議長による決論書草案で、G-77/中国やEUの提案を含めるよう改訂されたものについて引き続き検討するため、会合した。出席者は、決論書草案でのオプションやその挿入場所について議論した。

G-77/中国は、気候変動やその対応措置の悪影響から生じる開発途上国固有のニーズや懸念、およびその対処に必要とされる支援に関する情報について、統合報告書を作成するよう事務局に要請する新しいパラグラフを提案した。オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、米国は、決定書5/CP.7(4.8条と4.9条)の実施に関係する活動を記載し、これまでの進展を反映させるような別な文章を提案した。G-77/中国は、この文章を無関係の提案だとし、代案をなさないと述べた。

モデル化ワークショップの成果に関して、AOSISは、SBSTAに対し、開発途上国専門家の能力向上への支援改善とこれら専門家のモデル化プロセスへの参加を増やす必要性を指摘するよう、要請するパラグラフを提案した。 G-77/中国は、ワークショップの成果に関係する行動で、SBIやSBSTAに提案できるものに関する文章に対する支持を保持した。EUは、SBI-18でワークショップの成果を検討したと指摘する文章を希望した。G-77/中国は、報告書がSBI-18での検討に利用できなかったと言明し、保険およびリスク評価に関するワークショップや、関係する行動の結果に関する文章を提案したが、EUと米国はこれに反対した。

保険とリスク評価のワークショップについて、AOSISは、COPでの決定書決議を目的としたCOPでの検討のため、ワークショップの成果に関する締約国のさらなる見解を求めるよう、SBIに呼びかける文章を提案した。米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドは、見解提出要請を支持する一方、SBがCOPの決議結果に予断を与えることがあってはならないと述べた。

事務局が文章を改訂できるだけの休憩時間の後、出席者は、いくつかのオプションの削除について合意することができなかった。EU、米国、オーストラリア、AOSISは、合意がないことへの失望感を表明し、一定の合意があるパラグラフを決論書草案に含めるとの提案をした。G-77/中国は、結論部分で合意がなかったことを述べるか、括弧書きつきの文章をSBI-19に送る方を望んだ。出席者との短時間の折衝後、共同議長のRobert Masonは、一部の文章について、努力し合意しようとの意思はあるが、木曜日まで折衝が継続されると報告した。

会場外にて

一部の出席者は、水曜日の議論が、特に事務局提案の予算に関してあまり進んでいないことを懸念し、現在の決定書草案の文章には6つのオプションが含まれていると指摘した。あるオブザーバーは、予算交渉が「実行性」ではなく「原則」についてのものとなっているようだと述べた。また、同オブザーバーは、会議サービスに関するUNGA決議が、UNFCCCの運営サービスに国連の通常予算からの資金を提供するくらいのものであろうと指摘した。
今日の注目点
SBSTAプレナリー:SBSTAは、手法上の問題、技術開発と技術移転、研究と体系的観測、関連する国際機関との協力に関して、結論書を検討し、採択するため、午後3時にプレナリーで会合する。

コンタクトグループ:コンタクトグループは、吸収源CDM、プログラム予算、SCCF、4.8条と4.9条、IPCC TARを検討するため、開催される。時間と場所については、掲示スクリーンを確認のこと。