地球環境
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国連気候変動枠組条約第18回補助機関会合(SB18)ハイライト


2003年6月6日 金曜日



第18回UNFCCC補助機関会合(SB-18)代表者らは午前中SBI会合を、午後はSBSTA会合を行った。SBIでは、運営及び資金的問題、政府間会合の手配、非附属書I締約国の資金問題が検討された。SBSTAでは、政策措置(P&Ms)における「良好手法」、技術開発及び技術移転、研究及び組織的観測(R&SO)について取り上げられた。コンタクト・グループは、IPCC第三次評価報告書(TAR)、CDMにおける吸収源、政府間会合の手配、R&SOについて検討すべく会合を行った。

SBI

組織上の問題:Stoycheva議長は、非附属書I国の国別報告に関する件は他の議題のもとで検討することに締約国が合意したと述べ、SBIは修正なしで本議題を採択した。

運営及び資金上の問題:締約国は2004年―2005年のプログラムと予算に関する残りの説明を聞いた。日本は、会議の資金は国連の通常予算から拠出されるべきだと述べた。EUは、予算が今後もっと予測可能で持続可能なものとされるべきであると述べ、議定書関連活動とUNFCCC関連活動で予算が区別されていることに驚きの意を表した。オーストラリアは予算における優先性を明らかにする必要があると強調し、ブラジル、中国、EU、日本、ノルウェイ、ロシアと共に、予算の伸びが大きすぎると述べた。ロシアは予算を増やさないようにしたいとしたが、インフレのため予算増加を受け入れるとし、議定書批准によって同国への予算に対する資金拠出にどのような影響が出てくるのかを明確にしてほしいと要請した。

政府間会合の手配:事務局は、作業プログラム用にとして一つはCOP-9の、そして議定書発効の暁にはCOP-9と併せて招集されるCOP/MOP-1のためにもう一つ、二つのシナリオがあることを強調した。

COPの作業の組織に関しては、アメリカが他の国々と共に、閣僚級の円卓会議を招集することを支持した。オーストラリアは、COP-9は気候変化と持続可能な開発に関するデリー宣言にもとづいたものとすべきであると述べた。ノルウェイとブルキナファソは、各会合の終わりにハイレベルの閣僚級セグメントを設けることを支持したが、アメリカ、ブラジル、サウジアラビアは、会合のはじめに行うことを支持した。複数の代表者が、UNFCCCと議定書に関する作業を分ける必要性を強調した。アメリカは、オーストラリア、スロヴェニア、ノルウェイ、カナダと共に複数年の作業プログラムに関して検討することと、各会合の議題を整理することを支持した。効果的な参加については、アメリカがCDM理事会によるオブザーバーの参加規則実施のやり方に異論を唱えた。G-77/中国は、サウジアラビア、ブルキナファソ、EUと共に開発途上国からの代表者参加に対して資金供与を増加させるよう求めた。数名の代表者が、全ての機関、専門家グループ、ワークショップにおいて幅広くバランスの取れた参加形態とできるようシステマティックなアプローチを取ることを呼びかけた。Stoycheva議長は、Karsten Sach氏(ドイツ)が議長をつとめるコンタクトグループが本件に関してさらなる話し合いを進めると述べた。

非附属書I国の資金的問題:AOSISとG-77/中国は、適応活動支援のための特別気候変動基金の必要性を強調した。同代表は、活動に明確な優先順位をつけることで透明性が高まり資金供与の手順の迅速化されると語った。カナダは、このことによりドナーの信頼が高まると付け加えた。EU、AOSIS、ガーナは、既存の基金では支援に適格とされない国々にとっては特に、特別気候変動基金が重要であると強調した。サウジアラビアは、特別気候変動基金は開発途上国における経済多様化活動に資金供与すべきだと述べた。Stoycheva議長は、LDC基金を含め、本件について取り上げるべくコンタクトグループを招集することを提案した。タンザニアはLDCを代表して、LDC基金と関連の問題を検討するために別のコンタクトグループを招集する方が良いとした。短い協議の後、議長は特別気候変動基金に関するコンタクトグループと平行してLDC基金に関する非公式協議を行うと発表した。

SBSTA

政策措置:Thorgeirsson議長は、決定13/CP.7(P&Ms)の実施には、情報交換のためのウェブ・ベースのアプローチを強化することと、P&Msの開発及び評価のためのさらなる方法論的作業に取り組むことという二つの経路がありうるということを想起した。国別状況についての話では、数名の代表が、P&Msの効果に焦点を当てるうえで情報交換は貴重であったとのべた。情報の共有による恩恵の享受に非附属書I締約国を誘い入れることに加えて、スイスがオーストラリアとカナダと共に、P&Msを恒久的議題とすることを支持した。サウジアラビアは、話し合いは附属書I締約国に限定すべきだと述べた。EUは追加のワークショップとウェブ・ベースのツールを要求した。日本はオーストラリアと共に、P&Msは自己評価されるべきだと述べた。Thorgeirsson議長は、本件に関する協議においてGregg Terril氏(オーストラリア)とRichard Muyungi氏(タンザニア)が共同議長をつとめ、SBSTAの結論とCOP決定の草案を作成すると述べた。

技術移転:William Agyemang-Bonsu氏(ガーナ)は、技術移転に関する専門家グループ(EGTT)の作業について報告を行った。代表者らはEGTTによる前進を讃え、技術移転のための支援的環境を作り出す上で幅広い利害関係者の参加と透明性、EGTTと技術評価による成果を実施するための具体的活動、技術開発という広義の問題に対する注目が必要であると強調した。Terry Carrington氏(イギリス)とKishon Kumar Singh氏(トリニダド・トバゴ)が共同議長をつとめるコンタクトグループが非公式協議を行い、結論草案を作成することになるであろう。

研究及び組織的観測:Thorgeirsson議長は、地球気候観測システム(GCOS)第二次適宜性報告書について検討を行うR&SOの会合前イベントについて紹介した。GCOSの事務局は、気候観測システム・データ・成果物の基準向上、UNFCCCのニーズに関わる成果物の入手、能力向上、自主出資基金設置による開発途上国の観測システム向上が必要であるなど、同道告書の主な提言について概説した。カナダは、EUとG-77/中国と共に、政府はUNFCCCの観測上のニーズに対して応えなければならないと述べた。G-77/中国は、中国、ウルグアイ、ウガンダと共に、開発途上国はR&SOのための資金援助を必要としていると述べた。Thorgeirsson議長は、Stefan Rosner氏(ドイツ)とS.N.Sok Appadu氏(モーリシャス)が共同議長をつとめるコンタクトグループで本件に関する審議を引き続き行うと述べた。

コンタクトグループ

IPCC TAR:David Warrilow氏(イギリス)とWalid Al-Malik氏(UAE)が共同議長をつとめるコンタクトグループでは、同コンタクトグループがTARの検討プロセスとTARの内容のどちらに集中すべきかどうかについて締約国が話し合いを行った。中国は、適応及び緩和の科学的・技術的・社会経済的側面に焦点を当てることを提案して、EUとG-77/中国の支持を得た。Warrilow共同議長は参加者達が詳細な技術的議論を行う用意が十分にできていないかもしれないということについて注意を呼びかけた。カナダは詳細な技術的事項に集中することに異議を唱えた。サモアとアメリカは、適応に対する総合的アプローチの必要性を強調した。サウジアラビアは、UNFCCC4条8及び4条9(悪影響)の枠組みの中で適応を取り上げるべきだと述べた。

CDMにおける吸収源:Thelma Krug共同議長は非恒久性の問題について対処するための保険単位・一時単位アプローチ案に対し注目を呼びかけた。ブラジルは、その一時単位アプローチにはCDM理事会が一時単位発行を監督することが必要であると述べた。カナダは、その保険アプローチに関する質問に答え、「保険加入者が差し替え義務についてデフォルトを起こした場合、附属書I締約国保有の「旗(フラッグ)つき認証排出削減単位」に差し替えられること」を求めた新テキストを提案した。AOSISは、話し合われているこの方法は第一約束期間にのみ適用されるべきということを代表者らに想起させ、EUと共に単独の保険アプローチは支持しないと述べた。EUは、保険はクレジット期間後たった10年間で期限切れとなってしまいうるので、カナダの保険証書アプローチでは非恒久性に十分には対処できないと述べた。Krug共同議長は、非恒久性に関する非公式草案作成グループが招集されると述べた。

政府間会合の手配:Karsten Sach議長は、同コンタクトグループの話し合いでは、「COP/MOP-1の準備」、「COP-9、今後の会合期間、UNFCCCプロセスにおける効果的な参加」という二つの問題に焦点を当てていくと述べた。

COP/MOP-1の準備については、ノルウェイがUNFCCCと議定書の法的区別は尊重するが、できるかぎり統合をはかっていくことが望ましいと述べた。アメリカは、議定書メンバーではないUNFCCC締約国の権利に影響が出るので、UNFCCCと議定書の問題を一緒にしないアプローチが必要であると強調した。G-77/中国は、法的にも手続き的にも、UNFCCCと議定書を独立した別個の機関として維持していくことの重要性を強調した。サウジアラビアはアメリカと共に、UNFCCC問題は議定書問題に優先すべきであると語った。

二つ目の案件については、Sach議長が、同コンタクトグループは補助機関会合議長に対し議題整理の提案と複数年作業プログラムに関して締約国と協議する権限を与えることを検討すべきであると述べた。サウジアラビアは、これらの案件をCOP-9後に取り上げることを提案し、ブラジル、スロヴェニア、ノルウェイの支持を得た。

研究及び組織的観測:Stefan Rosner共同議長は、共同議長の結論草案を提議した。締約国は、ドメイン・ベースのネットワーク不備に対処するための優先的行動、グローバルな地上・海洋・大気のネットワークの実施と対象範囲、衛星データの入手可能性、データ移転の向上に関するWMOへの情報要請、脆弱な地域における特別なネットワークの必要性といった問題を話し合った。結論草案では、特にGCOSの運営委員会報告書を参照して、第二次適宜性報告書で提起された行動の優先性についてGCOS事務局に意見を提出するよう締約国は求められている。締約国は、気候に関する地球観測システムについての決定草案の検討も行った。

会場外では:廊下では

木曜日になってようやく作動し始めた会議場のエアコン同様、参加者は「2003年を適応の年に」というG-77/中国の呼びかけに注目して、適応に関する話し合いを開始した。対応策に対する適応についての話し合いによって、気候変化への適応に対する具体的行動が足を引っ張られ続けることになるのではという懸念を表す参加者も若干名存在する。

また、木曜日にはUNFCCCと議定書の法的区別やCOP及びCOP/MOPを支えるSBI及びSBSTAの役割に関する厄介な話し合いも行われた。ある代表者は、一方は「分離主義者」、もう一方は「過激な統合主義者」から成る二つのグループが出来上がっていると語った。
今日の注目点
SBSTA:SBSTAは、10時に本会議を行い、関連の国際機関との協力、クリーンで低温室効果ガス排出型のエネルギーに関する問題、議定書2条3(政策措置の悪影響)の実施に関する問題、その他の案件について取り上げる。

SBI:
SBIは、午後4時に本会議を行い、非附属書I国の資金的問題、非附属書I国国別報告作成のためのガイドライン使用、キャパシティ・ビルディング、UNFCCC6条(教育・訓練・啓蒙)、附属書I国国別報告、中央アジア及びコーカサス、アルバニア、モルドバ共和国グループ(CACAM)からのUNFCCCにおける彼らのステータスに関する要請について取り上げる。代表者らは、クロアチアからのLULUCF提案とUNFCCC4条6(市場経済移行国の特別な状況)におけるクロアチアの特別な状況についても話し合う。

非公式グループ:コンタクトグループは、UNFCCC4条8及び4条9(悪影響)の実施、議定書5条(方法論上の問題)7条(情報の連絡)、8条(情報のレビュー)、に関する問題、IPCC TAR、研究及び組織的観測、政策措置に関して会合を行う。グループは2004-2005年予算案についても会合を行う。