地球環境
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国連気候変動枠組条約第18回補助機関会合(SB18)速報


− 前半6月4日(水)〜6月7日(土) −
地球環境対策部
蛭田 伊吹
高橋 浩之


 6月4日(水)から国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の事務局があるドイツのボンにおいて、標記会合が始まった。従来は会場外に仮設テント内にあった参加登録窓口が会場となるマリティムホテル内に収められたほか、サイドイベント会場も2つに縮小、全体会合が行なわれる会議場のオブザーバー席の人影もまばらで、会合3日目には代表団用のフロアをオブザーバーにも開放するなど、従来の会合に比べて今回の会合は一層静かな滑り出しであった。しかしながら、SBSTA第1回会合でWaller-Hunter事務局長が、今回の会合では議定書実施のための議論と並行して、将来の枠組に関するサイドイベントが複数開催されることに言及し「興味深い分岐点である」と表現したとおり、5,7,8条ガイドライン・吸収源CDMなど残された議定書運用ルール策定作業の他、2004−05年次の予算、途上国資金援助などCOP9決議に向けた重要な議論も含まれており、第一週目から遅くまで議論が行なわれていた。以下にSB18の第一週における主な話題を概説する。

 尚、SB18直前の5月30日にガーナが京都議定書を批准したのに続き、SBSTA全体会合においてスイスが批准に関する国内手続きが完了したことを表明し、京都議定書批准国数は111ヶ国、批准した附属書T締約国の1990年二酸化炭素排出量は全体の44.2%に達している。議定書発効の鍵を握るロシアは、批准についての前向きに検討していることを表明し、途上国にももっと京都議定書を批准するように勧めた。しかし、実際はまだレビューの途中であり、更に京都議定書実施の長期的展望について研究する必要があることを述べた。

※ SB18の検討事項については下記を参照

SB18の検討事項(http://www.gispri.or.jp/kankyo/unfccc/pdf/SB18zantei.PDF)

1 SBSTA18

 前述したWaller-Hunter事務局長の挨拶に続き、SBSTA第1回全体会合(議長Thogensson氏;アイスランド)では、G77中国を代表してモロッコが、資金メカニズムの実施、京都議定書の発効を求めるとともに「2003年は適応の年」とすることを強調し、気候変動による影響及びその対応措置による悪影響に脆弱な国に対する支援を促進することを呼びかけた。一方、EU議長国であるギリシャは、EUが直前のEU/ロシアサミットで批准の働きかけをしたこと、EUは温室効果ガス排出量を1990年水準に安定化するとともに京都目標に向けて、排出量取引制度や再生可能エネルギー目標などを含めた気候変動プログラム見直しを進めていることを表明した。SBSTAは第1回全体会合でagendaを事務局案通り採択した後、6日までに4回の全体会合において各議題に関する意見交換を行なうとともに、いくつかの議題はさらに小規模のコンタクトグループ、非公式グループ(いずれも公開討議)、及び非公式折衝で結論書及びCOP9決議案についての議論が続けられることになった。これらの議論の結果は、12日以降のSBSTA全体会合において合意に向けて再度協議されることになる。以下に今回のSBSTAで注目されている議論の動向を概説する。

1.1 UNFCCCにおけるTARの取り扱いについて −議題3(a)(b)−

 SBSTA18では、SBSTA16時に定期的に議論する予備的な領域として特定したA.「研究及び組織的観測」B.「気候変動における影響・脆弱性・適応の科学的、技術的および社会経済的側面」C.「緩和の科学的、技術的および社会経済的側面」のうち、B.及びC.に関する事項を中心に議論が進められている。SBSTA全体会合では、まず事務局がUNFCCCにおけるTARに関する議論の背景を説明し、B.及びC.について各国意見を募りそれらの意見を編纂したワーキングペーパーを作成したことを報告した。事務局の説明に対し、G77+Chinaは科学研究団体の重要性を確認した上で技術移転を含む途上国におけるキャパシティビルディングの必要性を指摘した。又、特に中国はIPCCの結論に合意できない点があるとしてIPCCの情報は細心の注意を払って利用すべきであると述べた。TARを他の検討事項においても考慮すべきかどうかについては、スイスが賛成したのに対し、その他の殆どの国はTARを独立したアジェンダの中のみで議論することを支持した。日本は、温暖化問題に対する世界全体の取り組みの重要性を述べ、条約を達成するための実践的なアプローチ、長期的観点から見た適応及び緩和、及び「適応と緩和」と持続可能な発展との関係の3点について独立したアジェンダで検討すべきであると述べた。その他、モーリシャスはAOSISの立場から、TARが完成してから既に2年経過しているのにもかかわらずその結論をまだUNFCCCに活用することが出来ていないことに懸念を示した。EUは、第4次評価報告書(AR4)に対する見解、加えて欲しい視点等をIPCCへインプットする作業も必要であることを述べた。SBSTA議長は以上の議論から、David Warrilow氏(イギリス)及びWalid Al-Malik氏(UAE)を共同議長にコンタクトグループを設置し、6月13日までにどのようなトピックを、何時、どのように議論していくか、又、影響・脆弱性・適応等に関する方法論的側面を本議題項目あるいは議題項目4(a)「条約及び京都議定書における方法論的作業のレビュー」のどちらにおいて議論するべきかについても議論し、結論案を作成するよう要請した。

 第1回目のコンタクトグループ会合では、当事項に対する大まかな意見を募り、G77+Chinaからは再度UNFCCCがIPCCの情報をすべて取り入れるのではなく、十分に検討してから取り入れる必要がある点と、既にSBSTA16の際に決定された項目のみについて検討したい旨が述べられ、EUから賛同を得ていた。又、SBSTA18ではUNFCCCの活動にTARを実際に照らし合わせていくといった実践的作業ではなく、何をどのように照らし合わせるかという「プロセス」についてのみ議論することを主張しオーストラリア等に賛同を得ていた。途上国が特に重視する適応については、Warrilow共同議長より適応がすべての問題を解決するわけではないことが再確認されたが、米国及び途上国からは更にSBSTAで取り上げることについて検討する必要性が主張された。又、サウジからはUNFCCC4.8条及び4.9条の中で適応について検討すべきであると述べられた。

 以上の議論を元に共同議長は、第2回目の会合で結論案及びCOP9に提出する決議案を提示したがG77+China等が事前に検討する時間がなかったことから議論は行われず、第3回目に持ち越された。結論案には、主に1)事務局にSBSTA19までに各国意見を考慮した作業プログラム案を作成要請する点、2)検討するトピックの特定(適応・緩和それぞれの科学的・技術的・社会経済的観点からの影響について、及び緩和・適応の統合アプローチについて)、及び3)IPCC及び知見を持つ専門家を招待してQ&AサイドイベントをSBSTA19で開催する点について記述されている。しかし、第3回目の会合ではG77+China等からほぼすべての項目に対して異議が申し立てられた。

 今後、更に共同議長により結論案及び決議案が改訂され再びコンタクトグループで議論される予定である。

1.2 吸収源CDM −議題4(d)−

 SBSTA18では、ロシアの批准の見通しが未だ不透明でありCOP9までの京都議定書の発効の望みが薄くなったため、SBSTA19に完成予定の吸収源CDMのルール作りに注目が集まっている。初日のSBSTA全体会合では、以前から吸収源CDMのコンタクトグループ及びワークショップ等の共同議長を務めているThelma Krug氏(ブラジル)から2月にイグアス(ブラジル)で開催されたワークショップの内容を含む吸収源CDMに関する議論の進捗状況が説明され、UNFCCC事務局が各国の意見を元にCDMの手法及び手順(M&P)の附属書としての統合テキストが作成されたことが発表された(詳細はGISPRI概要報告書を参照、統合テキストはFCCC/SBSTA/2003/4)。イグアス・ワークショップからSB18までの間には19件意見書が提出されており、それらはFCCC/SBSTA/2003/Misc.5にまとめられている。今後は交渉テキスト草案を作成するため、1)使用する用語の決定、2)オプションのスリム化及び推敲を行うこととしている。SBSTA18における議論は統合テキストを中心に行われる予定である。

 Krug共同議長の発表に対し、スイス等からはCBD等他の多国間環境条約との協力を主張し賛同を得ていた。その他各国から吸収源CDMの取り扱いについて意見が出された。SBSTA議長は、従来どおりKrug氏及びKarten Sach氏(ドイツ)の共同議長の下コンタクトグループを設置し、6月11日までに結論案の作成を要請した。

 コンタクトグループは、6月7日までに3回開催され、第1回セッションでは、今後の議論の進め方として、コンタクトグループの他にドラフティンググループという実際に吸収源CDMの統合文書を修正していくセッションを持つことが発表された。これらグループ・セッションでの作業はどれも一般に公開されているが、特にドラフティングに関しては少人数で集中的に行いたい旨が伝えられた。議論は1)吸収源CDMから発効されるCERや森林、"carbon reversal"、生物多様性等用語の定義、2)非永続性、3)ベースライン、追加性、リーケージ、4)モニタリング、verification、承認、5)環境的及び社会経済的影響、6)その他(クレジットが発効される期間等)について行われ、COP/MOP、CDM理事会、DOE(指定運営機関)の役割等も検討する予定である。共同議長が示した議論の方向性に対し各国は概ね賛成し、ブラジルはベースライン・追加生・リーケージの問題は切り離して議論することが出来ない議題だと主張し、EUやボリビアから賛同された。

 第2回目のコンタクトグループでは、特に非永続性に関して議論が行われた。オプションの中心となっているのは、もともとコロンビアが提案し、後にEUが発展させたtemporary CER(tCER)とカナダが提案している保険つきCER(iCER)の2つであり、どちらもそれぞれ問題があることは全体としても認識されているが、どちらか一つに絞るのも十分でないとEUやツバルから意見が出た。iCERに関しては、カナダが1)保険会社の信任をnational insurance regulatorに任せる、2)吸収源が消滅した場合は120日間以内に保険会社が補償する、3)保険会社が補償できない場合は、そのtCERを保有している締約国が替わりのものに置き換えるという新しい提案を提出してきたが、national insurance regulatorに関してはマレーシア等が懸念を表明した。又、全体的にも保険をCERに附帯するだけでは非永続性の問題は究極的には解決できないという意見が多かった。カナダ自身も提案について更なる推敲が必要なことを認め各国の意見を募っていた。

 今後、ドラフティンググループ等を通してオプションをなるべくスリム化するよう議論が進められていく予定である。

1.3 条約及び京都議定書における方法論的作業のレビュー −議題4(a)−

 SBSTA18前に寄せられた各国の意見においても重要性が指摘されている「改訂1996年IPCCグッドプラクティスガイドライン」の改訂作業の進捗状況について、IPCC・TFI議長の平石氏からについての報告が行なわれた後、今後、改善していくべき方法論について各国が意見を表明した。戦略的アプローチについては、EUが短期/中期/長期に分けること、温室効果ガスインベントリー、PAMsのグッドプラクティスの共有、排出量の予測に関する作業を改善していくことを求めた。日本は、データは十分にあるもののそのアクセスをさらに容易にすることを求めた。米国は情報交換とその方法論の改善を求めると同時にすべてを統一の方法で実施することに対する懸念を表明した。一方、サウジアラビアは気候変動に対する対応措置がどのように悪影響を及ぼしているかを特定するガイドラインの必要性を指摘し、G77中国は途上国に対する適応にもっと注意を向けるように呼びかけた。各国の意見の後、SBSTA議長は、「方法論の作業の改善」「情報のニーズへの対応」はUNFCCC事務局では引き受けきれないので様々な国際機関の貢献が必要であり、今後どのように、まただれが実施していくのかを特定していくことを求めた。この議題についてはDovland氏(ノルウェー)のもとで非公式折衝を行ない結論書が作成される。

1.4 京都議定書5,7,8条関連事項 −議題4(b)(c)−

【議定書7条4項−登録簿関連】

 6月2日に開催された会合間折衝において、「機能的仕様」草案及び各附属書T国の国別登録簿開発上京に関する意見交換が実施されたことが報告された。本件については、Ward氏(NZ)による非公式折衝が行なわれる。

【議定書5,7,8条関連事項】

 5条2項「調整」におけるガイドライン策定、及び専門家審査チーム(ERT)の訓練プログラムの改善に関するワークショップ開催結果が報告されたほか、8条「審査」における秘匿情報の取り扱い、附属書T国の温室効果ガスインベントリー技術的審査方法について各国が意見を述べた。本件については、コンタクトグループ(Pulume氏;NZ、Paciornik氏;ブラジルが共同議長)で検討されることになった。

1.5 附属書T締約国における政策措置(PAMs)−議題6、9(a)(b)−

【PAMsのグッドプラクティス】

 第3回全体会合において、事務局からPAMsに関してアップデートされた情報について報告が行なわれた。SBSTA議長は、今後重点を置く作業として「情報交換の改善」「評価の方法論の改善」の選択肢を提示し、各国の意見を求めた。主な意見は下記の通り。

サウジアラビア(G77中国);緩和措置に関するPAMsの議論は先進国に限定すべき。対応措置による悪影響に関するワークショップ開催やその定量化作業が進展していないのは遺憾。悪影響の評価をせずにPAMsの議論は出来ない。またコンタクトグループにするか非公式折衝にするかという議長判断の規準の明確化を求めた。アジェンダを衡平に取り扱う様に強く要求。

スイス;PAMsに対して先進国はもっと注意を払うべき。情報の交換が重要。方法論はまだ時期尚早。

日本;ウェブベースの情報交換を支持。PAMsは自己評価に基づくべき(豪州が支持)。

米国;PAMsに関する情報交換は価値がある。持続可能な開発に貢献するPAMsが重要。この問題に関する議題の重複に注意を払う必要がある。

ギリシャ(EU);税、規制、排出量取引などPAMsの「グッドプラクティス」の頒布、情報交換が重要。

本件については、今回の会合でSBSTA17では合意できなかった今後の作業について「明確なガイダンス」(SBSTA議長)を策定することも目指して、Muyangi氏(タンザニア)とTerrill氏(豪州)の議長によるコンタクトグループで検討されることになった。

【クリーンなエネルギー輸出に関するカナダ提案】

 カナダがSBSTA17時とは異なる決議案(FCCC/SBSTA/2003/Misc.7)を提出した。決議案には、クリーンなエネルギー輸出について研究を要請する旨が含まれているが、必ずしも第一約束期間にこだわらず第二約束期間以降の検討課題として取り扱うように要請している。当案に対しロシアは支持しを示し、ロシアがWTOに加盟した暁にはその立場からもカナダ案を支援することを表明した。しかし、他の締約国の賛同は得られなかった。

【議定書2条3項の実施】

 附属書T国による気候変動対応措置に伴う経済社会的な悪影響の最小化に関しては、G77中国がSBSTAで定期的に検討すること、SBSTA19前にワークショップを行こと、並びに途上国が悪影響に対してどのような対処を行えばよいのか、及びスピルオーバー効果の特定についてCOP9で決議案を作成し、COP/MOP1で採択するという3点を提案した。サウジアラビアの当案に対しEU、カナダは京都議定書2条3項の元でこの議論を行う必要はないとして反対した。

上記2件は、SBSTA議長が非公式折衝を行ない、全体会合に結果を報告することになった。

1.6 国際航空・海上交通での燃料使用による排出量 −議題4(f)−

 国際民間航空機関(ICAO)および国際海事機関(IMO)からそれぞれの温室効果ガス排出量算定保々に関する検討情況報告が行なわれた。いくつかの国が航空輸送による排出量増加を懸念するとともに、その削減方法としてICAOは排出量取引などの市場メカニズムの必要性に言及し、日本は2005年までにセクターによる自主行動を策定することを求めた。また、米国同時テロやSARSの影響によって2002−2003の航空輸送による排出量が減少傾向になっていることを指摘した。多くの国が排出量算定にかかる方法論の改善を支持し、本件はTerrill氏(オーストラリア)による非公式折衝が実施されることとなった。

1.7 その他

 上記以外の議題については、「技術開発と移転(議題5)」はCarrington氏(英国)・Kumarsingh氏(トリニダード・トバコ)による非公式折衝、「研究と組織的観測(議題7)」はAppadu氏(モーリシャス)とRoester氏(ドイツ)によるコンタクトグループでそれぞれ検討が行なわれ全体会合で報告が行なわれる。また、「関連する国際組織との連携(議題8)」はSBSTA議長が結論案を用意する。

2 SBI18

 COP8でEstrada氏(アルゼンチン)が議長を退いたのを受けて、SBI18では6月4日の第1回全体会合でStoyceva氏(ブルガリア)が議長に指名した。SBIでは、第1回会合において非附属書T締約国の国別報告書に関する議案の取り扱いを巡って早速各国の意見が対立し、議案全体の採択を延期するなど若干議事に混乱が見られた。その後、第2回会合において暫定議案から変更無く採択された後、6日夜までにまでに3回の全体会合を開催して各議題に関する意見交換を行なうとともに、SBSTA同様12日以降の全体会合における結論書及びCOP9決議案の合意に向けて、さらに小規模のコンタクトグループ、非公式グループ、及び非公式折衝で議論が続けられることになった。以下に今回のSBIで注目されている議論の動向を概説する。

2.1 UNFCCC・京都議定書実施に関するプログラム予算(2004-2005)−議題10 (b)−

 UNFCCCの活動に関する2004年−05年の2年にわたるプログラム予算は、12月のCOP9で採択されることになっているが、その議論のキックオフとして4日のSBI全体会合でWaller-Hunter事務局長よりプログラム予算事務局長案(FCCC/SBI/2003/5及び同Add.1)の説明が実施された。翌日の第2回SBI全体会合では、2002−03期から約30%増加する予算案に対して、日本をはじめ先進国・途上国ともに多くの国が増大に懸念を示した。なかでも、ロシア代表団は京都議定書批准にあたってロシア政府の関心が「京都議定書実施にかかるコスト」であることを明言し、予算増大に対して強い懸念を表明した。その後、事務局と各国によるQAセッションが実施された後、本件はAshe氏(アンティグア・バーブーダ)の議長による非公式グループで議論を継続することとなった。6日の第一回非公式グループでは、米国がUNFCCCと議定書の予算区別の明確化を求める一方、EU・ノルウェーは一本化を支持した。コンタクトグループでは、事務局より議定書に関するさらに詳細な予算内訳が説明されるとともに、UNFCCC及び議定書に関する予算の区別について3種類の共同議長案について議論が行なわれる。

2.2 政府間会合の調整 −議題9(a)(b)(c)(d)−

【COP9での閣僚会合のテーマ】

 COP9の閣僚会合の検討テーマとして、米国、サウジアラビアは「技術開発」が挙げた他、両国を含めいくつかの国が「地球観測システム(GCOS)」を支持した。閣僚会合のテーマについては、全体会合での各国意見に留意し事務局がホスト国や締約国と協議して決定することとなった。

【COPおよびCOP/MOP開催方法】

 いくつかの国がCOP/MOPとなった後のスケジュール及び会合の増加に懸念を表明し、UNFCCC及び議定書の会合の議題を整理するなど会合の効率的な運営を求めた。事務局や補助機関は最大限共有化し効率的に開催することを求める国がある一方で、米国はCOPとCOP/MOPを「法的にも手続き的にも区別」することを要求した。COP開催頻度を1年より長くするという事務局のオプションに対して米国をはじめいくつかの国が興味を示したが、途上国は先進国の約束実施状況を確認するために従来通り毎年実施することを支持した。

【効果的な会合プロセスへの参加】

 米国はCDM理事会参加方法を含め、SBI17で表明した懸念に事務局が十分な回答をしていないことに不満を述べた。また、G77+中国は途上国の会合参加に対する資金支援の必要性に言及し、「参加基金」など対策の具体化を求めた。


 閣僚会合の実施時期、方法を含めたCOP9及びCOP/MOP1のアジェンダ、将来の会合開催方法、会合プロセスへの効果的な参加については、コンタクトグループ(Sach氏;ドイツ)が設けられ議論が行なわれる。

2.3 条約非附属書T締約国の資金問題 −議題4(a)(b)−

【特別気候変動基金】

 COP7で設立が決定された条約に基づく「特別気候変動基金(SCCF)」については、COP8で資金運営機関であるGEFに対する初期ガイダンスを採択したが、COP9直後の運用開始に向けてCOP9で詳細にわたる追加ガイダンスを採択することになっている。5日の全体会合では、各国がSCCFで優先すべき活動について意見を表明し、ジャマイカ(AOSIS)、ナミビア(LDCs)、ナイジェリア(G77中国)は、LDCs基金を含むすでに運用している基金で対象となっていない「適応措置」に対して焦点を当てることを求めた。また、サウジアラビアは気候変動への対応措置による悪影響を最小化する措置に対しても焦点を当てることを求めた。カナダは、SCCFの対象として貧困削減、持続可能な開発、グッドガバナンスに資するもので適応と緩和のバランスが重要であることを指摘した。

 7日に開催された第1回コンタクトグループ(共同議長Moore氏;バルバドス、Rooimans氏;オランダ)では、サウジアラビアを中心にG77+ChinaはSCCFの対象を既存の資金メカニズムの対象となっている緩和措置ではなく、適応措置に焦点をあてることを改めて求める一方、カナダ・EUは優先順位の特定のためには、他の資金との相補性を確保しながらstep by stepアプローチが有効であると提案した。10日に開催される第2回目のコンタクトグループでは、共同議長による結論書草案が提示され、SCCF運営における原則、対象の優先順位の特定、他の資金メカニズムとの相補性の確保、そしてそのための意見提出の必要性について議論されるとともに、米国から指摘されたEGTTやLEGに対する意見提出に関する手続き上の問題についても議論される。

【後発開発途上国問題】

 後発開発途上国専門家グループ(LEG)から活動報告が行なわれた。SBI全体会合ではSCCFと後発開発途上国基金(LDCs基金)を同じコンタクトグループで議論することをSBI議長が提案したが、LDCs代表のタンザニアの提案に基づき、すでに運用中のLDCs基金問題はHonadia(ブルキナファソ)とRomero氏(スイス)のもとで非公式折衝が別途設けられ結論書草案を作成することとなった。

2.4 条約附属書T締約国の国別報告書
 −議題3(a)(b)−

 2001年11月末が提出期限になっていた附属書T国の第3回国別報告書の記載事項をまとめた事務局文書に対して各国が意見を述べた。主な意見は以下の通り。

米国;排出量が増加傾向にある米国・豪州・カナダ・NZは人口も増加していることを指摘。一方、2001−2002における米国の温室効果ガス排出量の減少、intensity向上に言及。また、国別報告書のレビュープロセスにおける追加作業の発生を懸念。

豪州;統合レポートにある2ヶ国は京都議定書の目標を外れていることは誤解を招くことを指摘。豪州は京都議定書を批准しないが政府の方針として京都目標を達成することをコミットメントしている。

カナダ;議定書批准手続きをしてから目標達成のために予算を増大している。

G77中国、AOSIS;13ヶ国しか第3回国別報告書を期限内に提出していないことに懸念。また多くの先進国において1990年以降温室効果ガス排出量が増加しており、また将来の予測でも2020年で10%増、2030年でも30%増と排出量が増加傾向にあることを指摘。現在のPAMsをより強化した取り組みが早急に必要であることを指摘した。


本件については、SBI議長が全体会合の意見を反映させて結論書草案を作成することになった。

2.5 条約4条8項、9項の実施 −議題6(a)(b)−

【マラケシュ合意決議5/CP.7の実施】

気候変動と異常気象における保険・リスクに関するワークショップの開催報告が行なわれたが、この場面でサウジアラビアが4条8項、9項の実施が条約発効から9年経った現在でも進捗が見られないこと、またワークショップの開催にかかる手続きがバランスを欠いてことに強い懸念を表明した。本件については、コンタクトグループ(Lari氏;クウェート、Mason氏;英国が共同議長)で議論されることになった。

2.6 その他

この他の主な議題では、「キャパシティビルディング(議題5)」はTsering氏(ドイツ)によるコンタクトグループで検討されるほか、「条約6条問題(議題7)」では、全体会合において報告が行なわれた欧州地域のワークショップに続き、ボツワナとタイが地域ワークショップを開催することに言及した。本件はSBI議長が結論案を用意する。

以上