地球環境
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国連気候変動枠組条約第18回補助機関会合(SB18)速報


− 後半 6月9日(月)〜13日(金) −
地球環境対策部
蛭田 伊吹
高橋 浩之


  SBSTA(科学的技術的助言のための補助機関)では吸収源CDM、IPCC第3次評価報告書(TAR)の科学的知見の取り扱い、先進国の政策措置(PAMs)、議定書5,7,8条関連事項、SBI(実施のための補助機関)では、2004−2005年度予算案、特別気候変動基金、途上国の悪影響の対応措置に関する条約4条8項、9項の実施といった問題について参加者の注目が集まった。ガイドライン策定作業をほぼ完了した議定書5,7,8条や、80ページに及ぶ統合テキストからある程度議論の土台となる20ページ強の交渉テキストがまとまってきた吸収源CDM等議定書実施に向けて一定の成果を見せた交渉もある一方で、前回の11月のSBSTA17と同様に実質的な進展が見られず「さらに議論を継続する」という結論のみ合意されたPAMsや、最後まで各国の意見の融合が難しかったTAR、プログラム予算、特別気候変動基金、条約4条8、9項等、議論を次回以降の会合に先送りする議題も見られた。

 また、並行して開催されたサイドイベントでは、同時期に開催された第9回CDM理事会におけるベースライン・モニタリング方法論の議論に関連するものや、吸収源CDM、2013年以降の気候変動の枠組に関するテーマが注目を集めた(※)。尚、経済産業省の産業構造審議会環境部会地球環境小委員会が先頃発表した中間とりまとめ(案)「気候変動に関する将来の枠組みの構築に向けた視点と行動」の英語版が各代表団及びサイドイベント会場で配布され、SB本会合での言及は無かったものの、一部のサイドイベントでは「興味深いレポート」であると取り上げられた。

 以下にSBSTA/SBIそれぞれの主要な議題の結果と交渉経過を概説する。

※ サイドイベントの開催内容については下記を参照のこと(英語)。

http://www.iisd.ca/linkages/climate/sb18/enbots/

1 SBSTA18

 6月6日までの4回の全体会合の後、各議題はコンタクトグループ、非公式折衝に議論の場所を移し12日第5回全体会合での決議に向けて議論が行なわれた。特に今回のSBSTAでは、COP9がタイムリミットに設定されている吸収源CDMのルール作りと議定書5,7,8条ガイドライン策定、及び昨年のSBSTA16で議論が開始されて以来、先進国・途上国の意見の収束が見られていないTARの取り扱い、及び先進国の政策措置(PAMs)において集中的に議論が行なわれた。12日の第5回全体会合で各議論の総括が開始され、13日午前中に遅延無くすべての議題の決議が行なわれた。以下のSBSTA18で注目されたTARの取り扱い、及び吸収源CDMに関する議論について概説する。

1.1 UNFCCCにおけるTARの取り扱いについて −議題3(a)(b)−

 UNFCCCにおけるTARの科学的知見の活用に関する議論は9日以降も難航した。9日〜12日の間にコンタクトグループは6回予定されていたが全く合意する兆しが見えず、そのうち3回は非公式折衝に変更された。

 9日に行われたコンタクトグループでは、6日に提示された結論案の改訂版(1次案)が配布され、その議長案を元に更に各国意見を募る形で実施されたが、殆どすべての国からまたもや異議が申し立てられた。特に途上国及び米国は自国に有利な情報をUNFCCCの検討材料に出来るよう目論んでいるため、尚更議論は平行線のままであった。

 まず、SBSTAがこの議題の下で参照するIPCC文書をTARだけではなく特別報告書及び技術報告書に広げたことについて、米国は、TAR以外の文書の種類を記載することで、それらの利用に限られるような印象を与えるため、他の妥当な報告書についても考慮する旨を記載するべきだと述べ、ロシア、NZ、スイス、及びG77+中国等から賛同を得た。しかし、カナダはTARが既に諸々の報告書を評価して作成されたものであることを指摘し反対した。EUはどの報告書を入れたとしても、それらの情報をどのように利用するのかに問題があると述べた。又、以上の文書を利用して事務局に(ゼロ次案にあった「作業プログラム」ではなく)「情報文書(information document)」を用意するように要請している1次案に対して、中国、インド、サウジ等は不要と述べ当事項が含まれているパラグラフを削除するよう求めた。しかし、日本、カナダ及びEUは反対した。次に、適応と緩和について1つのagenda itemのもとで検討するべきか、2つのagenda itemsに分けて検討するべきかという問題に対し、G77+中国は適応と緩和を統合的に検討することを避けたいため、2つに分けて検討することを要請したが、ノルウェーやEU等に反対された。又、適応・緩和に関連する統合事項及び横断的事項についてSBSTAが今後探求(explore)することを記載した1次案に対してもG77+中国から反対意見が述べられたが、ノルウェー及びロシアは賛成し、横断的事項に条約2条の問題も含めることを主張した。日本からはデリでその重要性が認識された「持続的発展」についても取り上げるよう要請された。

 翌10日には2回のコンタクトグループが開催され、1回目はWarrilow共同議長(英国環境・食料・地域省)の采配の下、1次案の検討(続き)及び同共同議長から作業プログラムに入れたい事項を書き込むようにと配られた表について検討が行われた。

 第1に、表を作成することに対し、米国は作業の優先順位(政治的に敏感な事項)が不明確になることを懸念し、それが交渉テキストのベースとなることに反対し、EU及びG77+中国から賛同を得た。NZ及びEUは「何を行うか」よりも長期的な「目的」について議論すべきことを主張した。SBSTA19で作業プログラム及び将来の作業範囲について検討することを要請したパラに関しては、サウジ及び米国が反対したが、カナダは大まかな事項だけでも合意する必要性を述べた。日本は作業プログラムを作成することについて賛成したが、ツバル、AOSIS、ロシア、スイスは「作業プログラム」という言葉に反対し、「将来の作業の要素」と記載するよう主張した。第2に、8月15日までに各国に作業プログラムに含めることが出来る要素(トピックの名前、活動、誰が行うか等)について意見提出を求め、事務局に編纂することを求めている点に対して、NZ、ツバル、モーリシャス及びスイスは、要素に関して意見を集める事に関して賛成したが、実際に作業プログラム自体を作成することは無理だと述べた。中国は2−3ヶ月のうちに意見を提出するのは難しいとして結論は出せないと述べた。又、将来の作業範囲を決定することはトップダウン方式だが作業プログラムはボトムアップ方式であるため、全く異なるプロセスを同時に行おうとしている事に対し懸念を示した。第3に、SBSTA19直前にinter-sessional consultationを開催し、IPCC及び民間関係者と適応、緩和及び横断的事項と統合事項について意見交換することに関して、日本及び米国は賛成したが、G77+中国はそのコンサルテーションの目的が明確でないことに懸念を示し反対した。又、EUは、範囲を限定せずにもっと広い範囲の意見交換にすべきと述べた。最後に、再び適応及び緩和について1つのagenda itemの下で検討するかどうかについて検討され、NZ、ノルウェー、オーストラリア、米国が妥協して2つに分けるという途上国案に賛成した。ただし、統合事項に関してはEU、ノルウェー、及びロシア等がその重要性を指摘し、共同議長もSBSTA16結論でも既にその件について触れられていることを指摘した。しかし、サウジは引き続き統合事項についての検討を反対した。

 10日2回目のコンタクトグループでは、新しい共同議長案(第2次案)が提示され、それを元に議論が進められた。NZからは新しく結論案が提示されたが、それでもなお各国意見がまとまらず同じような議論が続いた。

 以上の議論及びその後の非公式折衝の結果(最終的にはSBSTA議長案が提示された模様。)合意された結論案は、殆ど途上国及び米国の主張を呑んだ形で合意された。つまり、1)SBSTAで検討する文書はTARだけではなく、その他の妥当と思われる情報も含む、2)SBSTA19までに同議題の下で検討を行いSBSTA20 からは適応と脆弱性、及び緩和の科学的、技術的及び社会経済的影響について2のagenda itemsの下でそれぞれ検討する、3)前述のagenda itemsで扱う要素・優先度・範囲について2003年10月30日までに各国は意見を提出し、事務局は意見を編纂した報告書をSBSTA19までに作成する、並びに4)SBSTA19直前にpre-sessional consultationをIPCC及び関係者と行い2つのagenda itemsをどのように検討していくかについて意見交換を行うことが決定された。唯一先進国等の意見が取り入れられたのは、「適応と緩和の両者の観点は条約2条、持続可能な発展に貢献する」と結論案に含まれたことで、2つのagenda itemsを検討する上でそれらのリンクの可能性について「留意」することが合意された。SBSTA全体会合では、ロシアやEU等から不満が述べられたものの、前述のとおり結論案が採択された。次回のSBSTA19では決議案を作成しCOP9での採択を目指すこととなる。

1.2 吸収源CDM −議題4(d)−

 吸収源CDMコンタクトグループは、引き続き9日〜12日にかけて3回開催した。(その間ドラフティンググループは数回非永続性等について検討を行った。)

 9日のコンタクトグループでは、共同議長がまとめた吸収源CDMの手法と手順(ドラフト)の特に「有効化及び登録」について、既に表明されているオプションを更に整理しスリム化すること目的に各国の意見聴衆が行われた。しかし、ボリビアは社会への影響の評価方法を合意することは不可能だとして当問題に関するテキストを削除するように要請する等、多くの国から新たなテキストや考え方を提案する意見が多く述べられた。又、マレーシアからは、現地の利害関係者がプロジェクト設計に関係することについて懸念を表明された。

 11日のコンタクトグループでは、まずProject Boundary、Baseline net removals、Actual net removalsについてニュージーランド、フランス、マレーシア、ブラジル、カナダの共同提案が紹介された。当提案には、それぞれの用語の定義が5つのオプションにまとめられている。(炭素プールに関しては既に合意されている。)オプションの概要は以下のとおり(なお、どのオプションも今後変更される可能性あり。):
Option Project Boundary Baseline net removals Actual net removals
1 A/Rプロジェクトの地理的な輪郭を描く。〔プロジェクトは1つ以上の分離した土地を含んでもよい。〕プロジェクト参加者は、透明で検証可能な情報を元にプロジェクトが特定のプールのストックを低下させないと証明できれば、その特定のプールを含めなくてもよい。 A/Rプロジェクトがない場合に予想される、プロジェクト・バウンダリー内の炭素プールにおける変化の和。プロジェクト参加者は特定のプールが吸収源でないと証明できればそのプールを含めなくてもよい。 A/Rプロジェクトに帰する、プロジェクト・バウンドリー内の炭素プールにおける変化の和。プロジェクト参加者は特定のプールが排出源でないと証明できればそのプールを含めなくてもよい。
2 同Option 1 (プロジェクトがなかった場合予測される、バウンダリー内の炭素プールにおけるストック変化の和)−(プロジェクトがなかった場合予測される、KP Annex AのGHGの排出)。参加者は特定のプールが吸収源でないと証明できればそのプールを含めなくてもよい。 (プロジェクトに帰する、バウンダリー内の炭素プールにおけるストック変化の和)−(プロジェクトに帰する、KP Annex AのGHGの排出)。参加者は特定のプールが排出源でないと証明できればそのプールを含めなくてもよい。
3 Option 1+以下バウンダリーはプロジェクトによって出現する、又は増加されると予測されるKP Annex AのGHG排出源のみを含む。 同Option 2 同Option 2
4 同Option 1 同Option 1 同Option 2
5 同Option 1 Option 1 or 2 Option 1 or 2
 以上の提案に対し、EU等はベースラインと実際のnet removalsの特定プールの除外について、「含む(include)」ではなく「計算する(account)」と変更した方がコンセプト的には明確だという提案をし、NZやツバルは賛成したが、マレーシアやボリビアは、accountという言葉はクレジットに使うべきであるとして反対した。又、日本からは排出源がどのぐらいの期間除外されるのかという質問が出され、NZよりモニタリングレポートによると返答された。ノルウェーからは、ベースラインと実際の炭素プールは対称であるべきと主張された。オプションの内容以外に、Krug共同議長から「新規植林、及び/又は、再植林プロジェクト活動」という言い方は正しいのか(バウンダリーではなく、プロジェクト活動に新規植林と再植林をまとめて実施しても良いのか)という議題が提示されたが、ボリビア、カナダ、マレーシア、チリ等多くの国は「及び/又は」という表記で正しいと述べ、ツバルがそれぞれの定義が明確になってから決定した方が良いと述べた。

 次にモニタリングについても議論が行われ、Krug共同議長からは、リーケージを最小化及びコントロールとするというコンセプトは正しいのかという議題が提示された(吸収源CDM M&Pドラフトには、リーケージを最小化及びコントロールするためにメソッドを提示し、そのモニタリングを行うという記述がある。FCCC/SBSTA/2003/L.13 Annex Para.28)。それに対しチリ及びカナダは懸念を示した。又、Krug共同議長からモニタリングの実施について、COPで採択されたIPCCのLULUCFグッドプラクティス・ガイダンスを「考慮する(taking into account)」又は「従う(in accordance with)」ようにというオプションが併記されている点について、まだ完成していないものに対してこのように参照しても良いのかと議題が提示され、ブラジルは懸念を示した。

 最後にEU、ノルウェー、スイスによって作成されたM&P草案のappendix E(CDMプロジェクトの環境的、社会経済的影響について)が提示され、カナダ、NZ、日本、セネガルから環境影響を評価する際に締約国が提示する必要がある事項について懸念が表明された。Sach共同議長は、吸収源CDM M&PのCOP9での採択を可能にするため、今後COP9までの間に締約国間で頻繁に意見交換をするよう求めた。

 12日に行われた最後のコンタクトグループでは、SBSTA18に提出される結論案が発表された。結論案には、以上の議論から共同議長がまとめた吸収源CDM M&P案(FCCC/SBSTA/2003/L.13のAnnex)を今後の交渉のベースとなるテキストとして扱うこと、及び SBSTA19直前にpre-sessional consultationを行い交渉を進める旨が記述されており、特に大きな問題もなく合意された。(特にセネガルからは吸収源小規模CDMのM&Pについて、CDM理事会にパネルを新規に立ち上げて検討することをCOP9時の決議で要請するよう求めた。しかし、小規模CDMについてはまだ検討中であることからその議論はCOP9に延期された。)又、吸収源CDM M&P(共同議長案)はすべてがまだ変更可能であることが確認され、今後COP9に向けて修正を行うことが確認された。

 SBSTA全体会合では当結論案が問題なく採択された。今後は、SBSTA19での吸収源CDMルールの完成及びCOP9での採択に向けて各国間で活発な議論が行われる予定である。

2 SBI18

 SBIは6月6日までの3回の全体会合での議論に続き、SBSTAがすべての議題の採択を終了した後の13日正午前から各議題の結論を採択するためのSBI第4回全体会合を開催した。この全体会合では、この時点でも非公式協議を実施していた2004−2005年度予算案を除いたすべての議題が順調に採択された。尚、この会合の中で、ハンガリー環境・水大臣のCOP9議長就任要請正式受け入れが発表された(※)。SBI第4回会合は13:00に一度散会した後、予算案の非公式折衝の終了を待って、第5全体会合で予算案の関する決議を行い、夜8時に今回のSBにおけるすべての作業を終了した。以下の主な話題の交渉内容、及び結果を概説する。

※ COP9はイタリア・ミラノで開催されるが議長の担当は東欧諸国から出すことになっていた。

2.1 UNFCCC・京都議定書実施に関する2004-2005年度予算案−議題10 (b)−

 本件は、今回のSBで最も交渉が難航した議題であった。本件の議論のベースは、2004-2005年の予算期間中に京都議定書が発効することを念頭に置いたWaller-Hunter事務局長案に基づくもので、議論の焦点としては、気候変動枠組条約(UNFCCC)の予算案全体の中で、議定書準備及び実施にかかる予算をどのように取り扱うかであった。

 本件は、Ashe氏(アンティグア・バーブーダ国連特使)のもと、6月6日以降5回の非公式グループ(公開)で議論が行なわれたが、最終日の時点でも予算編成・決議方法で6つの選択肢が残されており、12日午前に開催された第5回会合の途中からは合意に向けて非公開で折衝が行なわれた。京都議定書に参加しないことを明確にしている米国は、京都議定書準備・運営費用の明確化を求めるとともに、各国の分担率(indicative scale)や予算案をUNFCCC関連と議定書関連で明確に分けること、議定書準備・実施にかかる費用はCOP/MOP決議事項とすることを要求した。一方、EUはUNFCCCが京都議定書準備・運営を促進するためにも京都議定書が発効していない段階では、UNFCCC予算で京都議定書に関する活動を賄うことを求め、米国と鋭く対立した。議論では、米国が削除を求めた選択肢に対してEUが「唯一妥協する可能性がある選択肢」として、削除を拒否する等、合意点を見つけるのは厳しい作業と思われた。

 最終的にSBI全体会合で合意されたCOP9決議案を含む結論書(FCCC/SBI/2003/L.14)には、2004-2005年度予算案には京都議定書準備にかかる要素が含まれるものの、その承認はCOP/MOPにおける予算関連決議を侵害するものではないことに留意すること、また米国に対しては、京都議定書関連予算を除くUNFCCC関連予算が適応されることとなった。SBI19では事務局長修正予算案に基づく予算総額が議論され、COP9で予算案が決議される。

2.2 政府間会合の調整 −議題9(a)(b)(c)(d)−

 本件についてはSach氏(ドイツ環境・自然保護・原子力安全省)の議長によるコンタクトグループによる協議が実施され、11日にはコンタクトグループで合意された結論書案が公表された。13日の第6回全体会合において、COP9開催方法、COP/MOP1開催方法、将来のセッション期間、会合プロセスへの効果的な参加の4つについての結論書(FCCC/SBI/2003/L.3)と、COP/MOP1開催手配についてのCOP9決議案(FCCC/SBI/2003/L.3/Add.1)を採択した。このSBIの決議事項に沿って、UNFCCC事務局がホスト国及び議長と協議の上、COP9開催方法及び暫定議案を検討する。決議内容は以下の通り。

【COP9開催方法】
閣僚会合はCOP9会期後半の12月10日−11日に「円卓会議方式」で開催することを提言(COP9がCOP/MOP1になった場合は、「各国声明方式」に変更)。
COP9閣僚会合のテーマについては、SBI18における各国の提案リストをUNFCCCビューローに送付することをSBI議長に要請。
UNFCCC事務局長に対して、SBI18における各国のCOP9暫定アジェンダ案に留意することを要請。
【COP/MOP1開催方法】
SBIは、COPとCOP/MOPがそれぞれ議案を持ち、法的に区別されることを認識。
COP及びCOP/MOP双方に関連する議題は並行して実施され、条約/議定書締約国の決議により共同で実施することも出来る(SBI/SBSTAにおいても同様)。
閣僚会合は共同で実施されるが、条約/議定書両方の締約国の発言は一度に限定されるとともに、閣僚会合において決議は行わない。
COP/MOP開催方法に関するCOP/MOP決議案をCOP/MOP1で採択することを提言する決議案を、COP9で作成することを提言する(この提言によるとCOPにおいてオブザーバーとなっている組織はCOP/MOPのオブザーバーとして許可される)。
【将来のセッション期間】
SBIは、会合プロセスがアジェンダ調整の困難に直面していること、また京都議定書発効によってさらに公式/非公式会合のスケジュールがタイトになることに留意し、各国に2003年12月1日までに将来のセッション期間に関する意見の提出を求め、SBI20(2004年6月)において検討する。
【効果的な会合プロセスへの参加】
SBIは、時間差の無い情報提供、及び会合プロセスの透明性向上のためにUNFCCC事務局ウェブサイトの改善に合意するとともに、SBI/SBSTA両議長、各ワークショップ、各専門家グループ等の議長に効果的な参加と透明性の確保を求め、SBI20において事務局から本件について報告を受け、検討する。

2.3 条約非附属書T国の資金問題 −議題4(a)(b)−

【特別気候変動基金(SCCF)】

 特別気候変動基金については、Moore氏(バルバドス開発・環境省)及びRooimans(オランダ外務省)によるコンタクトグループで議論された。コンタクトグループでは、SCCFの対象となる活動の優先順位として、適応措置を最重要課題として位置付けたい途上国(G77+中国)、また、気候変動に対する先進国の緩和措置実施に対する悪影響回避のためにも資金が使用されるべきであるというサウジアラビア、技術移転やキャパシティビルディングの中での緩和措置の重要性にも留意するべきとする先進国の間で意見の対立が見られた。交渉の最終段階でG77+中国が適応活動の重要性を指摘した決議案を提出し議論が混乱したが、最終的にはこの文書は「交渉テキスト」ではなく「情報文書」として今後の交渉に使用されることになり(FCCC/SBI/2002/Misc.1/Add.1)、13日のSBI第4回会合で適応措置の重点が置かれた下記の結論書(FCCC/SBI/2003/L.13)が採択された。
SCCFの対象とすべき活動に関する各国意見は、country-driven、費用効果的、各国の持続可能な開発と貧困撲滅戦略との統合を満たすものであるというものに収束できる。
SBIは、締約国が「気候変動の影響に対する適応措置」が最も優先度が高い活動であると特定したことに留意するとともに、技術移転及びこれに関連するキャパシティビルディングも重要であることに留意する。
COP9でGEFに対するガイダンス決議を採択するために、本件に関してSBI19でさらに議論を継続する。
本件については、COP9以降SCCFの運用を開始するための資金運用ガイドラインを策定するために、SBI19で再度議論が実施される。

【資金的/技術的支援の提供】

 本件については、第3回会合においてGEFより非附属書T国における国別報告書作成に対する資金提供等に関する報告が行なわれた。GEFはこの報告の中で、国別報告書に対する資金提供ガイドラインに関するCOP8決議を歓迎するとともに、このガイドラインがCOP9前に使用可能になることを求めた。

 GEFの報告を留意した下記の結論書(FCCC/SBI/2003/L10)がSBI議長より用意され、第4回会合で採択された。
SBIは、148の非附属書T国のうち102ヶ国が、第1回国別報告書を提出していることを留意するとともに、未提出国に早急に提出するように要請する。
SBIは、UNFCCC事務局に対して、未提出国の準備状況に対する情報、及び国別報告書準備のためにGEFから提供されている資金の詳細を公表することを求める。
SBIは、キャパシティビルディングを含む国別報告書準備にかかる活動への資金提供は「full-costベース」であることを再認識する。
非附属書T国の第2回又は第3回以降の国別報告書提出頻度については、COP9で決定するとのCOP8決議を留意するとともに、本件に関する意見を2003年8月15日までに提出するように各国に求める。

3 COP9にむけて


 SB会場内外で注目を集めていたロシアの批准については、全体会合でロシア代表団が「批准前向き」という従来の回答を繰り返したものの、その時期についての具体的な言及は無かった。一方で、ロシア政府にとって京都議定書実施にかかるコストが懸念材料であることを明らかにされ、サイドイベント等では発表者、及び参加者から「京都議定書が発効しない可能性」を含んだ発言も見られた。今回の会合では京都議定書の発効によりCOP9がCOP/MOP1になる可能性を高く見積もる雰囲気は極めて薄かった。

 一方、京都議定書実施に向けた作業として、5,7,8条(排出量算定の方法論、報告、審査)ガイドライン策定作業がほぼ終了したのに続き、登録簿システムの構築、吸収源CDMの定義と様式についても一定の進展が見られ、この2つの議題はSBSTA19での議論及びCOP9決議のためにCOP9前にpre-sessional consultationが実施される予定である。また、TARにおける適応と緩和に関しても、IPCC専門家と、産業界、地方自治体、NGOといった関係者との情報交換を目的としたpre-sessional consultationも開催される。京都議定書が発効しない状態でCOP9が開催された場合は、吸収源CDMに関する議論が最も注目を集めることになるだろう。

 この他、会合全体では、国際航空・海上交通の使用燃料を含む先進国における温室効果ガス排出増加への途上国が強い懸念を見せるなか、気候変動の悪影響及び気候変動への対応策による悪影響への「適応措置(adaptation)」に重点を置く途上国と、途上国における温室効果ガス排出「緩和措置(mitigation)」の実施を盛り込もうとする先進国との対立によって交渉が頓挫する議題も多く、京都以降の将来の枠組構築に向けた前哨戦が静かに進められている印象を受けた。  

以上

※ COP9決議案等を含むSB18における決議事項については、下記のホームページを参照のこと。

http://maindb.unfccc.int/library/?screen=timeline&FLD1=pd&VAL1=01/01/2003&OPR1=greater

※ ここに紹介していないSB18の結果詳細については、後日掲載するENBSB18サマリー和訳、及びGISPRI参加報告を参照のこと。

http://www.gispri.or.jp/kankyo/unfccc/copinfo.html

ENB SB18サマリー(英語) http://www.iisd.ca/linkages/climate/sb18/