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1998年3月号

COMMITTEE [JAPAN IN ASIA]

「アジアの中の日本を考える」

研究委員会発足


今回、新たに研究事業の一環として、白石隆京都大学東南アジア研究センター教授を委員長とした「アジアの中の日本を考える」研究委員会が発足した。その背景、目的を紹介する。

研究の背景:

 タイの通貨危機から8カ月。アジア不況の影響が日本、そして世界へと広がってきた。日本とアジアは経済関係が密接なだけに、互いが景気の足を引っ張り合う危険性も懸念されている。エマージングエコノミーともてはやされたアジア経済は行財政改革の進展しない日本経済と共に沈んで行くのか。

 しかし、危機感を強めるアジア諸国から正にこの時期にあたって、経済大国日本がアジアにどう関与すべきかに大きな関心が集まっている。"東南アジア諸国にとって、一層の自助努力は不可欠だが、経済困難にある国々の多さからすれば、諸国間の相互経済援助はほとんど不可能だ。台湾は孤立、OECD加盟の韓国、オーストラリアも、債務国であり、現在、アジアでの経済支援で主導的立場に立てるのは唯一、日本だけだ"(97.10.22インターナショナル・ヘラルド・トリビューン)

 日本は97年10月中旬、東南アジア諸国連合(ASEAN)の経済閣僚との会談で、インフラ整備や人材育成などを柱とする経済協力策を提案し、アジアからそれらの提案を"実務的,効率的な日本のイニシアチブといえ、我々はこれを歓迎する"(マレーシア10.19付ニューストレーツ・タイムズ)と好意的に受けとられた。IMFと同調した一時的な金融支援ばかりでなく、アジア諸国の自助努力を高める長期的視点に立つ貢献が、日本に求められている。ここで日本がどういったイニシアティブをとるかは、アジア経済のみならず、世界経済の動向にも大きく影響すると思われる。また、このアジアの経済危機はこれまでの「アジアと日本」の構図から、より親密な「アジアの中の日本」への脱皮をはかるチャンスでもある。

 97年1月に橋本首相は、東南アジア訪問に際してシンガポールで演説を行い、日本%アセアン首脳会談(サミット)の開催、政治的リーダーシップによる日本とアセアンの交流の拡大と深化を訴え、3つの提言(いわゆる「橋本ドクトリン」)を行った。

    1.首脳レベルをはじめ、あらゆるレベルにおける交流の拡大と深化、政治的リーダーシップによる関係の促進、特に日本%アセアン首脳会議の開催。
    2.文化協力の推進。
    3.国際社会が全体として直面する問題についての日本とアセアンの協力、特にテロリズムに対処するための情報、意見交換のネットワークの構築。

 この「橋本ドクトリン」を実現させ、「アジアの中の日本」にむけて、日本とアジア諸国がいかなる共生関係を構築していくべきかを考えることは意義あることと思われる。

研究の目的:

 モノづくりは従来より日本が得意としてきた分野であり、モノづくりを通 してアジアと日本は関係を深めてきた。この分野で日本は「構造的優位」(日本以外の国が行動するとその国の意思に関わらず、それは日本の都合の良い行動となってしまう関係)を示しているといえる。この関係をいかにして維持し、発展させていくべきか。

 このシステムを形成するためには政治的、文化的、社会的な対応が必要であり、グローバリゼーションを唱導するアングロサクソンの新古典派経済学の、市場原理に基づく国際秩序の編成といったイデオロギーはあまり本システム形成には馴染まないと思われる。システムの構成要素である製造技術移転、人材育成と留学生問題、金融、ポリシーネットワーキング等をめぐる討議を通 して、アジア・日本のあるべき共生関係を探る。

委員会メンバー

    委員長 白石 隆         京都大学東南アジア研究センター教授
    委 員  原 洋之介     東京大学東洋文化研究所 教授
    委 員  後藤 俊夫      (財)国民経済研究協会研究企画部長
    委 員  土居 征夫    (社)日・タイ経済協力会 理事長
    委 員  小池 洋次     日本経済新聞社 編集委員兼論説委員
    委 員  菅野 真一郎  日本興業銀行 取締役中国委員会委員長
    委 員  深川 由起子  長銀総合研究所 国際調査部 主任研究員
    委 員  鈴木 崇弘     国際研究奨学財団 企画調整部 部長代行
    委 員  篠原 興 (財) 国際通貨研究所専務理事
    委 員  松島 茂        通産省大臣官房 企画室長