IPCC第3作業部会
              第4回代表執筆者会合出張報告   
               
              
            
             
               南アフリカ共和国ケープタウンにおいて8月21-25日、上記会合が開催された。その会議の概要を報告する。 
              
            
            
              
              
            
             
            
リヨンと会場
              
               IPCC第3次評価報告書(TAR)の緩和策部門担当の第三作業部会(WG3)は、実際の対策を扱うという意味で技術的、社会的だけでなく、政治的色彩
              の濃い部門である。今回の代表執筆者(LA)会合は、第二次原稿(SOD)に対し、5月末から7月末までの査読期間に、専門家および政府からよせられたコメントに対して、どのように対応し、最終ドラフトをどのように作成するかの重要な会合であった。 
              
              
              本会合の特徴
              
               今までのLA会合と大きく異なる点は、政府による査読プロセスが入りコメントが提出されていること、本会合が最後のLA会合であることである。また、5月に、技術移転、排出シナリオ、吸収源の特別
              報告書3つが承認されている。これら報告書に関連する章において、結果
              を反映させることも必要であった。他の重要なインプットとしては、2月のアイゼンナハにおける第3回LA会合に引き続いて行われた部門別
              影響に関する専門家会合(第3、9章関連)、ハバナにおける開発・公平性・持続可能性に関する専門家会合(WG2&3の横断的な課題)、3月のドイツにおける社会的行動に関する専門家会合(第5章関連)、ワシントンにおける副次便益に関する専門家会合(第7、8、9章関連)が本会合より以前に行われたものとして挙げられる。 
              
              
              参加者
              
               WG3のLAとRE(査読編集者)、議長団メンバーの参加があった。日本からは2章LA国環研森田氏、3章LA東農工大柏木教授、RE東大石谷教授、4章LA日本林業協会藤森氏、6章LA慶応大山口教授、7章LA京大松岡教授、8章LA東大山地教授、9章LA東京理科大森教授、10章LA慶応大和気教授、谷口IPCC副議長(第9章のRE兼任)の10人に加え、GISPRI田中が参加した。 
              
              
              各種会合における議論の概要
              
               期間中、大きく分けて、全体会合、CLA(LAを統括)/RE会合、各章のグループ会合が行われた。また、共同議長、事務局、TSU(技術支援ユニット)らによりSPM(政策決定者向け要約)とTS(技術報告書)のコメント検討が行われた。さらにサイドミーティングとして、不確実性についての会合、No-regretに関する会合が開かれた。
              
              全体会合
              
               初日会合に先立ち、Jacobsケープタウン副市長、Mabudafhasi南ア環境観光副大臣(気候変動問題担当)から開会挨拶があった。南アは京都議定書に参加を表明しており、他の社会問題の解決と共に持続可能な発展の実現を目指し、気候変動問題に経済的/社会的政策の面
              から関心が高いことを告げた。DavidsonWG3共同議長が司会となり全体会合が実質的に始まった。内容はコメントの種類と取り扱い、各章からの査読を経て得られた問題点、不確実性の取り扱いを促す説明があった。また、報告書の全体の長さが、同意された制限頁を大幅に超過している(各章とも2−3倍程度)ことが指摘され、削減が促された。 
              
              
               最終日の全体会合においては、Metz共同議長より、会議を通じた重要な問題点が以下のようにいくつか取り上げられた。 
              
              
              ・no-regretについては議論が多いところであったが、第7章を中心に議論がなされ、結局negative 
              costとすることで合意がなされた。
              
              ・ancillary-benefit、co-benefits、side-benefitなどの用語の議論もなされた。これらの用語の用法により読者の混乱を避けるべきである。
              
              ・炭素の漏洩問題はより慎重に扱われるべきである(ベースラインと土地利用の双方に関係が深い)。
              
              ・WG1、2との整合性が指摘された。第10章は適応策と緩和策双方に言及しており、統合報告書ではこの点に言及すべきである。
              
              ・不確実性の議論はTSUのSwart氏が中心になって章間の調整議論を進めた。Watson議長は、WG1、2についてもSchneider/Mossらが提唱する方法(IPCC 
              supporting material,“Cross Cutting Issues Guidance Papers”参照)の適用の困難性があるとコメントした。 
              
              
               また、SPMについては、各章からのSPMに入れるべきメッセージを期間中に集め、SPMのどこに関連するかをまとめた。 
               執筆完成上の技術的な注意点が示された後、今後の進行予定が示されたが、COP6のスケジュールによってはTARの編集予定を見直すが(表現を変えるなど)、基本的に変更しないということであった。 
              
              
               最後に、Watson議長より統合報告書作成について説明があった。20人ほどのコアチームによって主に対応し、各章からLA一人がExtended 
              Writing Teamに入りコアチームの補佐をすること、PRSQの1問につき2ページが充当し、全部で35ページ程度であること、全体会合では、パラグラフ毎の審査を行うことが発表された。 
              
              
              CLA/RE会合
              
               初めに、査読から得られた各章からの重要問題点が出され、次に、各章からのSPMへのメッセージについて議論があった。期間中のCLA会合では特に前者について、各章の対応の進捗が話し合われた。 
              
              
               また、最終日のCLA会合では、森教授による単語の頻度表について、谷口副議長から紹介があった。 
              
              
              各章ごとのグループ会合(LA及びRE)
              
               各章に分かれ、コメントへの対応と文章のリバイズが検討された。取り扱うものは、
              
              ・章に出された専門家/政府査読コメント
              
              ・全体レポートについてのGeneralコメント、LAやTSUから出されたInternalコメント 
              ・SPM、TSへ出されたコメントで、SPM/TS会合の結果、当該章に関連し、その章で処理・検討するべきとされたコメント
              
              ・略語表、Glossaryの内容 であった。REは、この会合において、どのようにコメントを扱っていたか監査し、最終的に報告する。
              
              WG3 Bureau会合
              
               LA会合後、上記会合が開かれた。まず、来年1月27−29日のリマにおける地域的統合モデルに関する専門家会合開催について予算、内容など議論された。開催には好意的であった。 
              
              
               次に、全体会合で報告書を承認後、途上国における報告書の発表をどのように進めていくかの議論があった。予算が限られているため、効率的かつ効果
              的に進めていくことが重要である。ハイレベル会合を各地域でする方法や、少数にまず一地域でガイダンスを行い、本国で説明をしてもらう体制などが提案された。特に後者については、良質の、視覚的に訴える共通
              資料が必要であると示唆された。これら発表用資料も含めて、報告書全てをどのように簡単にWEBからダウンロードできるようにするかは今後も検討が必要である。 
              
              
               GISPRIではIPCCの許可を得、報告書の日本語訳をWEB上にて順次公開する予定である。 
              
              
              今後の第三作業部会に関する予定
              
               本文、SPM及びTSについては、10月20日が最終ドラフトの締め切りである。11月24日に政府に配布され、来年2月5日がSPMについての政府コメントの締め切りとなる。
               その後、2月28日から3月2日までのガーナ、アクラにおけるWG3全体会合においてSPMが審議され、報告書が承認される予定である。
            
 (田中加奈子)
              
              
            
            
            アフリカ大陸最南西端、Cape of Good Hope(喜望峰)である(写
              真左 )。地図帳でしか見たことがなかったので感激・・・したのも束の 
              間、その直後に見たCape Point(写真右)の恐ろしさ、雄大さにさらに 
              大感激。大西洋とインド洋が交わるよい漁場であるが、荒海のため航 海では難所であったとか。