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2000年10月号

STUDY REPORT

「東南アジア諸国の政治経済システムの変化と日本を
含む地域協力の可能性」研究委員会報告書


 東京大学総合文化研究科・山影進教授を委員長に迎えての平成11年 度「東南アジア諸国の政治経済システムの変化と日本を含む地域協力 の可能性」研究委員会は、1年間の活動を終え、このほどその報告書 を完成した。山影委員長はじめ、委員会御参加の委員各位の御尽力に 改めて心よりの感謝の意を表したい。


1.はじめに


 深化・拡大プロセスを辿るASEANへの日本の関わりは、1997年通貨 危機以降、さらにその絆を強めつつあるが、ASEAN諸国と日本の関 係、地域統合体としてのASEANと日本の関係に加え、アジア・大平洋 に拡がる広域的な地域秩序を視野に入れながら、日本がASEANと如何 なる関わりを持つことができるのか? 或いは持つべきなのか? こ れが本委員会、「東南アジア諸国の政治経済システムの変化と日本を 含む地域協力の可能性」研究委員会の問題意識であり主題であった。

 本研究に先立って、平成10年度には「ASEANを中心としたアジアの 政治・社会システムとそれに立脚した地域協力と日本の対応−ナショ ナリズムとグローバリズムの調和−」研究委員会が設けられ、日本に とって一層重要度を増しつつあるASEAN諸国における危機以降の変革 の実態把握とその基礎的分析を中心に、この地域が域内及び域外とど のような協力関係を持とうとしているのかが議論された。東南アジア に関する皮相的な或いは不正確な情報が横溢するなかで、実証データ の把握に徹し、その解析から導かれた論考は今後のASEANの行方を展 望するうえで多大の示唆を与えるとともに、ASEAN研究のひとつのア プローチを提示した。


 1999年、ASEAN各国は経済指標の上では、アジア通貨危機による経 済的ダメージから立ち直り、急速な回復基調にある。一方、インドネ シアに最も象徴的に表れたように、危機は域内各国の政治体制・政策 スタンスの転換・変更を誘引し、或いは余儀なくさせ、各国は新たな 変革への道を模索している。更に、地域統合体としてASEANが今後ど ういう行動原理と理念を再構築するのかという重い課題も課せられて いる。

 平成11年度研究委員会では、山影進委員長、東京大学社会科学研究 所末廣昭教授を中心にASEANの実証的地域研究者と東南アジア政策に 直接携わる行政部門諸氏に参加頂き、域内におけるこうした政治的或 いは経済的変革への葛藤を観察し、ASEAN自身の課題、日本の対 ASEAN戦略と地域構想などを議論、国レベル、ASEANレベル、そして アジア大平洋という広域レベルから、多角的に日本としての関与と協 力の可能性が考察された。

 報告は全3部よりなり、第1部は主題分析に対する基本的スタンス と問題意識が述べられる。第2部ではインドネシア、マレーシア、タ イに焦点を絞り、危機以降の変化が議論されている。第3部では異な る視点からアセアンへの日本の関わりについて考察されている。紙数 の制約から、以下に報告書構成のみ掲げる。

2.目次構成

序   危機の克服と日・ASEAN関係の意味  山影進委員長

第1部 構造変化のゆくえと日本―日本は変化についてゆけるのか?


1.通貨・経済危機と日本の「アジア戦略」の転換 末廣昭委員
2.地域主義と日本の進路 大庭三枝専門委員
3.ASEANテンの成立と新たな課題 山影進委員長
4.経済統合の頓挫 吉野文雄委員

第2部 危機への対応と改革の嵐
 ―日本にとって東南アジアはどう変わったか?


1.経済危機・構造調整・政治体制 山本信人委員
2.通貨危機はインドネシアに何をもちらしたか 佐藤百合委員
3.マレーシアの経済危機と政治変動  ―UMNO・マレー人社会の変質― 鳥居高委員
4.タイの制度改革と日本 東茂樹委員

第3部 日本の構想と現実―日本はどんなビジョンで関わってきたの か?


1.インドシナの「取り込み」―外務省の戦略― 小笠原高雪委員
2.経済的地域主義の諸原理
 ―政策反応関数、享楽的国際化の仮説とカナダ症候群― 洞口治夫委員
3.タイにおける日系自動車メーカーの行動様式 久保文克委員

(文責 委員会事務局 竹林忠夫)