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2001年 4号

REPORT
平成12年度研究委員会報告書



4.平成12年度「グローバル市場競争時代における
教育・人材育成のあり方」研究委員会


(1)概要
 現在、日本の教育制度に関する種々の問題が浮かび上がってきており、「分数ができない大学生」と言われる程、日本の学力レベルは急速に低下してきている。一刻も早く、この学力レベルを回復させなければ、産業・経済総体としての我が国の国際競争力は急速に失われてしまう。

 この様な学力レベルの極端な低下に対する危機感と問題意識の観点から、平成11年度より「グローバル市場競争時代における教育・人材育成のあり方」研究委員会(委員長:西村和雄 京大教授)を発足させ、「学力レベルの著しい低下の問題」や「教育現場の実情」、「各国の教育改革と日本の現状」などに関して、その原因と対策などの調査検討、分析を重ねてきた。本報告書は、平成12年度に行われた本研究委員会での調査検討の結果をまとめたものであり、本報告書がこれからの日本の教育のあり方を考える上での一助となれば幸いである。

 なお、平成12年10月に地球産業文化委員会が発表した「学力の崩壊を食い止めるための教育政策に関する緊急提言書」、および平成13年3月に(財)地球産業文化研究所が主催した「第11回GISPRIシンポジウム:『日本の教育のあり方を考える−学力向上の観点から−』」の内容は、本研究委員会での研究成果が母体となっている。本報告書の巻末には、これらの資料も添付されている。


(2)報告書目次
「はじめに」
・教育改革を考える       (西村和雄 委員長)

1.「学力低下の問題を考える」
・技術立国 風前の灯火      (小久保厚郎 講師)
・日本の科学リテラシー   (浪川幸彦アドバイザー)
・学力調査−理工系大学生
    (戸瀬 信之 委員、西村 和雄 委員長)
・新しい教科書によって見えてきた学力問題
    (岡部 恒治 委員)
・高専の魅力―基礎科目必修の強さ (斎藤 斉 講師)

2.「教育現場の実情」

・学校を『時間』というキーワードで解いてみると
    (有田八州穂 講師)
・良い子の叛乱〜二極化する非行世界の狭間で
    (清永 賢二 講師)
・『セカンドステップ』子どもの健全育成 並びに暴力防止プログラム  (原田いず美 講師)
・ルール学習とその援助について  (宇野 忍 講師)
・基礎学力と生きる力       (陰山 英男 講師)

3.「各国の教育改革と日本の現状」

・日本と逆向きのアメリカの教育改革
    (戸瀬 信之 委員、西村 和雄 委員長)
・文化大革命下の教育―個人的な体験を中心に―
    (呉 念聖 講師)
・少子化の原因としての日本の教育システム
    (池本 美香 講師)
・教材としての入試問題:教育を支える日本の大学入試
    (倉元 直樹 委員)
・教育改革は大学に何をもたらすか (苅谷 剛彦 委員)
・教育の再生を求めて    (上野健爾アドバイザー)

「参考資料」
・資料1 『学力の崩壊を食い止めるための、教育政策に関する緊急提言書』
・資料2 第11回GISPRIシンポジウム:『日本の教育のあり方を考える−学力向上の観点から−』開催報告
(文責 委員会事務局 永田伸二)


5.経済発展と地球温暖化問題の国際合意形成研究委員会

 今後巨大都市化を進展させ急速に発展する途上国は、一次エネルギーの使用量を急激に増加させる可能性がある。また2010年には途上国の温室効果ガスの排出量は先進国を上回ってしまうという予測もある。現在の地球温暖化ガス排出規制の枠組みには先進国のみが入っているが、こうした先進国の中にも途上国の枠組み不参加を理由に枠組みの実効性に疑問を呈する国が現れるなど、途上国参加問題は枠組みそのものの存立にも関わっている重要な問題である。本研究委員会では、以上のような認識のもとに、地球温暖化問題に対する途上国の理解を得るために、我が国を始めとした先進国が行うべき関与、援助等の検討を行い、途上国の枠組み参加の方策をH12年度より2年間に渡り検討するものである。H12年度は計7回の委員会を開催しこのたび研究初年度の報告書を完成させた。紙面の制約の関係上以下報告書の章立てを紹介する。

第1章:地球温暖化防止に向けての途上国の参加問題
    (大塚委員長)
第2章:CDM/ODA/公的資金問題について
    (明日香委員)
第3章:途上国の参加問題(小池委員)
第4章:炭素クレジット価格がJI/CDMプロジェクトに及ぼす影響についての考察
    (三菱総研 須崎彩斗氏)
第5章:気候変動枠組みにおける中国の参加問題
    (周委員)
第6章:CO2の吸収源としての土地利用とシンクの問題構造(藤森委員)
第7章:地球温暖化問題への望ましい対処法―環境経済学の基礎概念を利用して―(松枝委員)
第8章:京都議定書における吸収源の取り扱いーCOP6での交渉と科学的知見―(山形委員)
第9章:大気環境保護の経済誘因(矢口専門委員)

研究委員会メンバー構成(敬称略):
[委員長]大塚啓二郎(政策研究大学院大学教授)[委員]明日香壽川(東北大学東北アジア研究センター助教授)石海行雄((財)地球産業文化研究所参与)小池寛治(政策研究大学院大学教授)周イ生(立命館大学政策科学部助教授)藤森隆郎((社)日本林業技術協会 技術指導役)松枝法道(関西学院大学経済学部専任講師)山形与志樹(国立環境研究所地球環境研究センター研究管理官)[専門委員]矢口優(国際開発高等教育機構(FASID)/政策研究院(GRIPS)大学院共同プログラム研究助手・東京都立大学大学院社会科学研究科経済政策専攻博士課程)[オブザーバー]井上博雄(経済産業省産業技術環境局環境政策課地球環境対策室課長補佐)大竹祐二(国際協力事業団鉱工業開発調査部資源開発調査課課長)大谷豪(東京電力環境部国際協力担当課長)岡崎照夫(新日本製鉄環境部地球環境対策グループマネージャー)岡村繁寛(新エネルギー・産業技術総合開発機構国際協力部部長)工藤拓毅(日本エネルギー経済研究所研究第二部環境グループグループマネージャ)須崎彩斗(三菱総研科学技術研究本部科学技術政策研究部産業環境研究チーム)
(文責 委員会事務局 寺田 隆H13年6月まで、7月より小田原博史)


6.排出削減における会計及び認定問題研究委員会

 地球温暖化防止に対する取り組みは、人類が直面している最大の環境問題の1つとしてだけでなく、ビジネスチャンスとしての側面をも併せ持っている。本年3月、米国ブッシュ政権が京都議定書を拒否するなど、温暖化防止に向けた国際交渉は混迷を極めているが、その一方で、排出権をめぐるビジネスは先進各国において着実に動き出しつつある。わが国においても、外国での温室効果ガス排出削減プロジェクトで発生する排出権の購入を表明した企業も出てきている。このように、国際交渉の行方如何にかかわらず、排出権が“財”として扱われる動きは今後も加速されていくと考えられる。

 しかし、商品として明確な法的準拠を持たない“排出権”をどのように認定し、さらには会計上でどのように取り扱っていくかについては基準がなく、個別の判断に委ねられているのが現状である。

 こういった中、平成12年度に設置された本研究委員会においては、排出枠の企業会計上での取り扱い、特に排出枠の会計上での考え方に焦点をあて、実務面および学問の面からの検討を行った。排出枠の基本的な考え方については、排出枠は金融商品なのか、あるいは、コモディティなのか、といった点が議論の中心となった。また、現物と先物などの派生商品を同じように考えていいのか、という論点も挙げられた。

 なお、本研究委員会は、H12年度の成果を踏まえ、より具体的な排出権関連商品の会計上の取り扱いについて、および、温室効果ガスの削減量の認定および取引そのものの認定といった課題も対象に、平成13年度も引き続き実施されるも検討を行う予定である。従って、本報告書はその中間報告書的な位置付けとなっている。

 なお、本研究委員会は(社)公認会計士協会さまのご協力をいただき、同協会環境会計専門部会より、会計および環境の両分野でご活躍されている公認会計士の方々に委員としてご参加いただいている。


報告書目次

I.背景
 1.排出枠取引の会計問題の必要性
 2.温暖化をめぐる動向(工藤委員)

II.取引制度の現状
 1.現状の排出枠取引の動向−PwCにおける温室効果ガス排出枠取引関連業務について
   (井上委員長)
 2.米国におけるSO2、GHGs取引市場の仕組みおよび取引の実態(浜岡オブザーバー)
 3.東京工業品取引所における取引の実態および排出枠に関する問題意識(小野里委員)

III.温室効果ガス排出枠会計のフレームワークの考え方
 1.本検討におけるアプローチ方法(井上委員長)
 2.フレームワーク(井上委員長)
 3.「排出枠」「排出クレジット」の会計的本質を巡る論点(黒川顧問)

IV.排出枠会計の各論検討

 1.定義(井上委員長)
 2.認識(栗原委員)
 3.測定(井上委員長、川原委員)
 4.会計処理(井上委員長、川原委員、栗原委員、古室委員、村井委員)
 5.会計処理方針、重要事項の開示・報告
   (井上委員長)
 6.第三者評価および検証(井上委員長)
(文責 委員会事務局 纐纈三佳子)


7.委託調査研究「庭園都市国家構想研究委員会」

 21世紀を迎えて、情報技術の革新と新しい価値観の創出によって、世界は、政治・経済・社会を通じて新しいシステムを求め、各国は、新しい国造りを目指している。ところが、日本では、数年に及ぶ不況と金融不安から、社会は停滞感に覆われ、人々は自信喪失に陥っている。今こそ、日本は、恵まれた自然と輝かしい文化を活かし、高度技術と情報システムを活用し、日本人の持つ資質を磨き、都市と庭園の有機的な関連に根ざした、いわば庭園都市国家としての新しいありかたが求められている。そこで、関係方面の英知を結集して、このようなビジョンを策定し、その実現を導く政策手段を構想するため、この研究会を設置した。平成12年度は計7回の委員会(@「明日の東京を語る」青山やすし委員;「ポジテイブプランニング」竹歳誠委員、A「庭園都市の条件」黒川和美委員;「東京における“住むこと”とアイデンティティーの確立」今村治輔委員、B「21世紀の知能都市」西垣通委員;「これからの田舎、そして都市との関係」前田博講師C「やっぱり住んでよかった道後平野を目指して」塩崎恭久委員D「都市計画からまちづくりへ」林芳正委員;「開発と環境保全と土地利用」岩田規久男E「地方分権と都市政策の課題」中川正春F「庭園都市日本構想」まとめ)を開催。最終的にコンパクトシティとグリーンネットワークの実現による「庭園都市日本構想」を提言した。本事業は森ビル株式会社への委託調査研究事業である。

研究会メンバー構成(敬称略):
[学界]伊藤滋(慶應義塾大学教授)、岩田規久男(学習院大学教授)、川勝平太(国際日本文化センター教授)、黒川和美(法政大学教授)、デヴィッド・モリス(オクスフォード大学日本事務所所長)、西垣通(東京大学大学院教授)、渡辺貴介(東京工業大学大学院教授)[民間]今村治輔(清水建設会長)、森稔(森ビル代表取締役社長)[研究機関・ジャーナリストなど]清原政忠(朝日新聞政治部)、清本修身(読売新聞論説副委員長)、照井義則(地球産業文化研究所理事)、藤井宏昭(国際交流基金理事長)、安本皓信(地球産業文化研究所専務理事)[代表世話人]福川伸次(電通総研・研究所長)[世話人]廣瀬勝(森ビル特別顧問)[オブザーバー]:[政界]石原伸晃(自由民主党衆議院議員)、塩崎恭久(自由民主党衆議院議員)中川正春(民主党衆議院議員)、林芳正(自由民主党参議院議員)[行政]青山やすし(東京都副知事)、勝野龍平(経済産業省製造産業局参事官)、竹歳誠(国土交通省総合政策局担当感冒審議官)、平野秀樹(林野庁監査室室長)[学界]山中_子(米国戦略国際問題研究所上席客員研究員、国際連合大学客員教授)[ゲスト]前田博(前田支度事務所代表取締役)
(地球研担当者:寺田 隆)