気候変動枠組条約とは

気候変動枠組条約
-United Nations Framework Convention on Climate Change/UNFCCC-
気候変動に関する国際連合枠組条約和訳

 1988年設立された「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の報告などにより、気候変動に対する国際的な取組みの必要性が認識され、1991年から始まった国際交渉の結果、1992年にブラジル・リオデジャネイロで開催された地球サミット(環境と開発に関する国連会議)において155ケ国が「気候変動に関する国際連合枠組条約」に署名、1994年同条約が発効した(197ケ国・機関が締結)。同条約では、温室効果ガス濃度を、気候システムに対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準で安定化させることを究極の目的とし(注1参照)、「共通だが差異のある責任(Common but Differentiated Responsibility)」等の原則の下で、締約国は条約の附属書Ⅰ締約国、非附属書Ⅰ締約国および附属書Ⅱ締約国(注2参照)の分類に基づき、それぞれの約束(コミットメント)を実施することとされた。

(注1)

条約の目的(第2条): この条約及び締約国会議が採択する関連する法的文書は、この条約の関連規定に従い、気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを究極的な目的とする。そのような水準は、生態系が気候変動に自然に適応し、食糧の生産が脅かされず、かつ、経済開発が持続可能な態様で進行することができるような期間内に達成されるべきである。

(注2)

附属書Ⅰ締約国: 温室効果ガス削減目標に言及のある国(先進国及び市場 経済移行国)
非附属書Ⅰ締約国: 温室効果ガス削減目標に言及のない途上国
附属書Ⅱ締約国: 非附属書I国による条約上の義務履行のため資金協力を行う義務のある国(先進国)



京都議定書

-Kyoto Protocol-

 1995年にベルリンで開催された第1回気候変動に関する国際連合枠組条約締約国会議(COP1)において、同条約の目標達成状況が審査された結果、現在の方策では不充分であるという結論に達し、COP3までに先進国に数値化された削減目標を課す議定書を策定することが決定された(ベルリンマンデート)。この決定に従って交渉が継続的に実施され、1997年京都で開催されたCOP3において2008年~2012年(第一約束期間)における温室効果ガス排出量を1990年比で先進国(附属書Ⅰ国)全体で少なくとも-5%を目指すため、欧州-8%、米国-7%、日本-6%等、法的拘束力を有する数値目標を課す「京都議定書」が採択された。合わせて、国際的に協調して目標を達成するための仕組みとして京都メカニズム(排出量取引、共同実施(JI)、クリーン開発メカニズム(CDM))が導入された。当時、世界最大の排出国であった米国が京都議定書には発展途上国に対する義務付けがないこと等を理由に京都議定書を締結しないこととなったが、2005年2月、所定の要件を満たし議定書は発効した(締約国数:192ケ国・機関)。
 その後、第一約束期間が終了する2013年以降の扱いについて検討がなされ、2012年11月にカタール・ドーハで開催されたCOP18において、2013年~2020年を京都議定書第二約束期間とすることが合意された。しかし、議定書で削減対象となるのが世界全体の排出量の約25%を占めるにすぎないこと等を理由に、2011年11月~12月に南アフリカ・ダーバンで開催されたCOP17において、わが国は第二約束期間に参加しないことを決めた(ロシア・カナダ等も不参加に)。



パリ協定

-Paris Agreement-

 2020年以降の温室効果ガス排出削減に係る国際枠組みについては、2011年11月~12 月、南アフリカ・ダーバンで開催されたCOP17において2015年までに新たな枠組みを採択することが合意され、以降、全ての国が参加する新たな枠組み構築に向け交渉の場として設けられた「ダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)」等において議論が進められた。
 また、2013年11月、ポーランド・ワルシャワで開催されたCOP19では、全ての国がCOP21に十分先立って、各国が自ら定める約束草案(INDC – 注参照)を示すことで合意された。この決定に基づき、我が国も2015年7月、2030年度に2013年度比-26.0%(2005年度比-25.4%)とする約束草案を提出した。
  (注)INDC: Intended Nationally Determined Contributionsの略
 このように、2015年における合意に向けた国際的な取組みが進展していく中で、2015年11月~12月にフランス・パリでCOP21が開催され、京都議定書に代わる、2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠組みとして「パリ協定」が採択された。同協定は、史上初めて全ての国が参加する枠組みであり、内容も京都議定書とは大きく異なって、わが国がかねて主張してきた「全ての主要国が参加する公平かつ実効性のある国際枠組みの構築」に向け大きく前進するものである。

協定中に盛り込まれた主な要素は以下のとおり。
①世界共通の長期目標として2°C目標の設定。1.5°Cに抑える努力を追求することに言及
② 主要排出国を含む全ての国が削減目標を5年ごとに提出・更新
③ 全ての国が共通かつ柔軟な方法で実施状況を報告し、レビューを受ける
④ 適応の長期目標の設定、各国の適応計画プロセスや行動の実施、適応報告書の提出と定期的更新
⑤ イノベーションの重要性の位置づけ
⑥ 5年ごとに世界全体の実施状況を確認する仕組み(グローバル・ストックテイク)
⑦ 先進国が資金の提供を継続するだけでなく、途上国も自主的に資金を提供
⑧ わが国提案の二国間クレジット制度(JCM)も含めた市場メカニズムの活用を位置づけ

 
 パリ協定は、その発効要件(① 締約国数55ケ国以上、かつ② 締約国の合計排出量が世界全体の55%以上)を満たした日の30日後に発効することとされているが、2016年10月5日時点でこの要件を満たしたため、同年11月4日に発効。

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