活動

1.第一次評価報告書 5.技術報告書
2.第二次評価報告書 6.特別報告書
3.第三次評価報告書 7.温室効果ガス
インベントリープログラム
4.第四次評価報告書 8.その他



1.第一次評価報告書(1988~1992)

 IPCCは、下記の第I~IIIの各作業部会を組織し、1990年に「来世紀末までに全球平均気温が3℃程度,海面 が約65cm上昇する」こと等を織り込んだ「評価報告書」を発表した。同報告書は気候変動に関する知見を集大成・評価したものとして高い評価を受け、基本的な参考文献として政策立案者や科学者等に広く利用されている。

  • 第I作業部会:気候変動に関する科学的知見の評価

  • 第II作業部会:地球温暖化が環境および経済・社会に与える影響

  • 第III作業部会:気候変動への対応戦略

 又IPCCは、1992年2月に国際連合気候変動枠組条約(UNFCCC:United Nations Framework
Convention on Climate Change)交渉に寄与するため、気候変動に関する最新の情報を収録した補足報告書を発表した。

 

  



2.第二次評価報告書(1992~1996)

 第二次評価報告書は、第一次評価報告書以降における気候変動に関する最新の科学的、技術的及び社会経済学的評価を行い、1996年にジュネーブで行われる気候変動枠組条約第2回締約国会議(COP2)に提出するため、1992年11月の第8回全体会合においてその作成が決定された。そして、従来の第II・第III作業部会を統合して新第II作業部会とし、新たに第III作業部会を編成する組織改正が行われた。この改正の特徴としては以下の2点が挙げられる。

①従来どおり自然科学、社会科学両面からの評価を行うが、特に経済学的評価に重点をおくこととされた。
②先進国が独断で行っているのではないことを強調するため、各作業部会は従来の先進国議長方式から先進国・途上国の共同議長方式に運営が変更された。

組織改正後のIPCCの編成は以下のとおり。

第I作業部会:気候変動の科学的知見
第II作業部会:気候変動の自然と社会経済への影響及び適応策並びに緩和策 
第III作業部会:気候変動の社会的影響と政策並びに温室効果 ガス排出シナリオ 

 第二次評価報告書の一部は、INC(Intergovernmental Negotiating Committee for a FCCC:気候変動枠組条約交渉委員会)からの要請を受け、「特別報告書」(1994年特別報告書後述)として先行してまとめられ第10回全体会合での承認後1995年3~4月に開催されたCOP1(The
first Conference of the Parties:気候変動枠組条約第1回締約国会議)にて報告された。

 第二次評価報告書は、各作業部会の報告書と、統合報告書(Synthesis Report) から構成されている。さらに、統合報告書は各作業部会の報告書から政策決定者向けにその要約をまとめたSPM
(Summary for Policymakers:政策立案者向け要約)と、その他独自の内容により構成されている。

 第二次評価報告書の採択は、1995年の7~12月に開催された各作業部会の総会並びに1995年12月の第11回全体会合(ローマ)にて行われた。各作業部会総会においては、まずSPMが各行毎に審議され、採択(adopt)
された。各作業部会報告書については、SPMの採択後一括で審議され、SPMにおける修正を反映することを条件として全体会合にて承認(approve)
された。

 又全体会合では、統合報告書の採択にむけて審議が行われた。当初、統合報告書は各作業部会のSPMに加え、UNFCCC(the United
Nations Framework Convention on Climate Change :気候変動枠組条約)第2条(目的)の運用に資する諸状況を総合的にまとめることとされていたが、各作業部会のSPMに含まれていない独自の表現は削除され、結果として各作業部会のSPMの総合版となった。

第二次評価報告書作成後の活動

 IPCCは1995年12月に第二次評価報告書を採択し、1993年11月に始まった報告書作成に関連する一連の作業を終了した。他方、UNFCCCの発効(1994年3月)によりCOP
(The Conference of the Parties:締約国会議)が組織され、条約9・10条に基づき以下の2つの補助機関が発足した。

SBI (the Subsidiary Body for Implementation:実施のための補助機関)
SBSTA (the Subsidiary Body for Scientific and Technological Advice:
科学的及び技術的な助言のための補助機関)

 このことにより、条約の実施に直接関連する科学的調査はSBSTAに移行したので、SBSTAとIPCCの作業分担が行われると予想されていた。しかしながら、SBSTAの立ち上がりが組織編成等で遅れ、実質的な活動が開始されないことから、気候変動枠組条約事務局からIPCCに当面
の作業を依頼することが提案され、補助機関の会議で決議された。これを受け、IPCCのビューロー会議において、気候変動枠組条約補助機関からの依頼への対応を含む今後の活動の方向について検討が行われ、次のことが決定された。

①補助機関の要請に応えて、技術報告書(Technical
Paper)、特別報告書(Special
Report)を作成する。
②技術報告書は、気候変動枠組条約締約国が、特定の手段に関する国際的な科学的・技術的予測を必要としている場合に作成され、過去の評価報告書と過去の特別報告書に含まれている資料をベースにしたものの範囲内で執筆する。
③特別報告書は、過去の評価報告書でカバーしきれなかった部分について追加的に新規評価作業を行う。
④ボーリン議長の辞任に伴い、次期議長の選出を行う。

 上記決定に基づき、1996年から1997年にかけて4つの技術報告書が作成された。この中で、1996年発表の技術報告「気候変動緩和の技術、政策、措置」は、1996年12月の第5回AGBM会合(Ad
Hoc Group on Berlin Mandate:ベルリンマンデートに関するアドホックグループ(2000年以降の温室効果 ガスの数量目標を検討する特別グループ))に提出された。本技術報告は、第二次評価報告書を基に気候変動の緩和策について、エネルギー供給、産業、交通
、農業等の分野別に整理するとともに、分野横断的な経済的手段として、炭素税や排出権取引等についても利点、課題を整理している。

 又、特別報告書は補助機関会合等からの要請に基づき、いくつかの主題に関して作成されており、1994年の特別報告書に加えて、種々の特別報告書が作成済みあるいは作成中である。中でも吸収源(シンク)に関する特別報告書「土地利用、土地利用変化と林業」(LULUCF)は、特別な経緯を経て作成された。京都議定書の吸収源の項目はCOP3の終盤になってようやく合意されたため、議定書における吸収源関連の条文解釈が必ずしも一定しておらず、実施方法も不明確な点が多い。

 そこで、1998年6月にボンで開催されたSBSTA8においてIPCCにLULUCFにおける吸収源に関する科学的検討が依頼され、その報告書を受けて2000年に予定されるCOP6で実施方法を議論することが決まった。IPCCでは、本テーマが政策に直接関連することから、ワトソン議長自らが、タスクフォースを組織し、本特別報告書を作成する運びとなった。この報告書は、2000年5月に行われた第16回全体会合(モントリオール)にて承認され、その後SBSTA12(ボン)直前に行われた非公式会合(同じくボン、2000年6月5日~10日)にて紹介された。

[第二次評価報告書の概要]



3.第三次評価報告書(1996~2001)

IPCCでは、第二次評価報告書以降の気候変動に関する最新の科学的、技術的及び社会経済学的評価を行い、2001年に行われる気候変動枠組条約締約国会議に提出するため、1995年12月11日~15日に開催された第11回全体会合(ローマ)において第三次評価報告書の作成が決定された。

第三次評価報告書は、地域別の評価を重視し、途上国や産業界、NGOからの参加者を積極的に取り込む等の方向で検討を進めた。特に地域別評価では、気候変動による影響・適応策について社会経済的な観点も含め総合的に地域分析を行い、技術や部門横断的手段などの緩和策についても地域の市場ベースでの費用対効果を評価した。

第三次評価報告書作成にあたり1996年9月の第12回全体会合において、第II作業部会の共同議長であったワトソン博士(米)が議長に選任された。同博士は所信表明の中で、途上国・市場経済移行国の専門家の積極的な参加、気候変動の地域的特性の重視等を強調した。

ワトソン博士はこれまでに、世界銀行の環境部長、米国航空宇宙局(NASA)の地球惑星ミッション局科学課長、プロセス計画室長、米国大統領府科学技術政策環境担当補佐官等を歴任し、2002年8月現在もミレニアムエコシステム・アセスメント-生態系保全の為の条約や環境政策に関する各国政府の意思決定に必要な科学的情報を提供し、対策の促進に資することを目的とする生態系の評価を行う組織であり、2001年6月にUNEPや世界銀行の支援によって立ち上げられ、2005年3月をめどに報告書を策定する予定-の共同議長等として活躍している。

さらに、1997年9月の第13回全体会合において第三次評価報告書の骨子、スコープが決定されるとともに、ビューロー・メンバーを再編成した。

作業部会の分担についても若干の変更を行い、以下のとおり、影響及び適応策と緩和策を分けた。

第I作業部会:気候変動の科学的側面からの評価
第II作業部会:気候変動の影響及び適応策の社会・経済的側面からの評価
第III作業部会:気候変動の緩和策の社会・経済的側面からの評価

その後、1998年9月の第14回全体会合において、各作業部会各章の詳細のアウトライン及び執筆者等が決定された。

統合報告書を含む第三次評価報告書は、2001年9月の第18回全体会合にて採択された。(報告書はIPCCホームページで入手可能。)

TAR作成における特徴

①Cross-Cutting Issuesについて
1995年作成の第二次評価報告書では3つの作業部会を設定し、その分野毎に評価を行ったが、専門用語の統一等、各作業部会に共通する課題が調整されていなかった。この反省から第三次評価報告書では、各作業部会の共通の課題となる部分をCross-Cutting
Issuesと称して、共通の枠組みで統一的に扱うことを決めた。これらの事項は以下のとおり:

(a) Perspective on wwwelopment, sustainability and equity
(b) Costing methods
(c) Frameworks for decision making, including cost-benefit
analysis
(d) Uncertainties
(e) Integrated assessment
(f) Scenarios
(g) Biogeochemical/ ecological feedback
(h) Sinks

上記のうち(a)~(d)については、執筆者への手引きとなるガイダンスペーパーを作成し、考え方、用語の統一などを図った。((e)~(f)については、特別報告書などでカバーした。)特に(a)(b)については、執筆者間の相互理解を深めるため数度のIPCC
Expert Meetingが開催された。本ガイダンスペーパーは、2000年7月に完成し、IPCC公式ホームページで紹介されている。(Guidance
Papers on the Cross Cutting Issues of the Third Assessment Report
of the IPCC Edited by R.Pachauri, T.Taniguchi, K.Tanaka, ISBN: 4-9980908-0-1
http://www.ipcc.ch/pub/support.htm
参照 )

   
②統合報告書について
第三次評価報告書では、各作業部会の評価報告書に加え、各作業部会の結果等をまとめた「統合報告書」(Synthesis Report)が作成された。この「統合報告書」は、各作業部会の「政策決定者向け要約」(Summary
for Policy maker)と、気候変動枠組条約締約国会議等から質問のあった「政策に関連する科学的、技術的、社会経済的課題」(Policy
Relevant Scientific, technical and socio-economic Questions) に答える部分で構成されている。

[第三次評価報告書の概要]



4.第四次評価報告書(2003~2007予定) 背景 / 現状

背景

第三次評価報告書(TAR)の完成後初めて開催された第19回全体会合(ジュネーブ、2002年4月)にて、第四次評価報告書の作成が正式に決定された。過去3つの評価報告書は、気候変化を科学的、及び技術的な側面から評価しており、政治規定的(policy
prescriptive)になりやすい内容を中立的立場から分析している点において、広い層からその作成が支持されていた。そこでIPCCは、2001年4月に開催された第17回全体会合(ナイロビ)と同年9月に開催された第18回全体会合(ウェンブレー)において既に第三次評価報告書完成以降の活動について議論を開始していた。第19回全体会合では、作成の有無に加え、どういった構成で報告書を作成するか等も決定した。

第四次評価報告書は、TARと同じ作業部会の構成(WG I:科学的根拠、WG II:影響・適応・脆弱性、WG III:緩和対策、インベントリー・タスクフォース*)で執筆するが、今までの報告書が長すぎたという反省から、TAR以降の気候変化に関する研究や、継続的に行っているモニターリング等の評価を、包括的だがより短く、明確な焦点をもった報告書としてまとめる事となった。又、最新情報も取り入れることとなった。

*インベントリー・タスクフォース:温室効果ガス排出量等の算定方法等を取り決めている「温室効果ガス・インベントリー・プログラム」を実施しており、現在は「土地利用、土地利用変化、及び林業」に関する3つのタスクを負っている。(7.その他を参照)

3つの作業部会による報告書の作成順序について、第18回全体会合までは、WG I(気候変化の科学的根拠)の報告書と、その結果をふまえて執筆するWG
II(影響・適応・脆弱性)とWG III(緩和策)の報告書を同時期に完成させることは適切でない、という議論が展開されていた。つまり時間差(Stagger)を設けて報告書を完成させる方が論理的であるという意見が多く聞かれていた。しかし第19回会合では、先にWG
Iが報告書を完成させたとしてもモニターリング等は他の2つの作業部会が執筆している間も継続されていることから、特にWG Iのみの報告書を、時間差をつけてまで完成させる必要は無い、という意見が優勢になり、結局UNFCCCへのインパクトも考慮して2007年までに各作業部会が連続的(Sequence)に報告書を完成させることで合意された。各作業部会の報告書の完成時期は以下のとおりである。

WG 1: 2007年1-3月
WG 2 & 3:2007年中旬
統合報告書(SYR)を書くとすれば2007年末

統合報告書の有無・範囲・性格等はあくまでも全体会合にて決定することとなり、詳細に関しては第20回全体会合(2003年)にて提案、及び承認されることになった。もしも統合報告書を作成すると決定された場合には、TARの反省点も考慮して、IPCCとUNFCCCの科学的及び技術的な助言のための補助機関(SBSTA)とがより密に意見交換を行うことによってなるべく早めに質問を作成することが話し合われた。

なお、現ビューローメンバーの任期は第四次評価報告書最終版が作成されてから、1回目から2回目の全体会合までと決定された。この他、各国は、横断的課題に関しても留意する必要がある点や、第四次報告書完成後のoutreachの重要性、途上国からの執筆者の参加推進、英語以外の言語の研究成果を認める必要性等を指摘した。



4.第四次評価報告書(2003~2007予定) 背景 / 現状

現状

第四次評価報告書(AR4)で取り扱われる横断的課題(Cross-Cutting Themes)や各作業部会(WG)報告書のアウトラインについては、2回にわたって開催されたスコーピング会合(SM)で検討された。その後WG会合でアウトラインや今後の作業スケジュールが検討され、第21回全体会合で採択された。執筆者の募集も開始され、各国からの候補者リストをもとに、2004年4月のIPCCビューロー会合を経て翌月に正式に選出された。統合報告書で扱う問題に関しては、2004年7月に開催された統合報告書スコーピング会合で話し合われ、第22回全体会合(2004年11月)において統合報告書の作成が正式に決定し、そのアウトライン等に関しても検討が行われた。以下に現在までのAR4に関する議論の概要を示す。

第1回スコーピング会合(2003年4月14~16日、モロッコ・マラケシュ)

AR4作成準備として、WG別にAR4の骨格と横断的課題の取扱いについて議論。
経済産業省 IPCC第四次評価報告書第一回スコーピング会合結果概要参照。)

第2回スコーピング会合(2003年9月1~4日、ドイツ・ポツダム)

AR4の骨子案の検討、及び7つの横断的課題に関して事前配布された概念ペーパーをふまえて各WGにおいて取扱いについて検討。
環境省地球環境局研究調査室 第2回IPCC第4次評価報告書スコーピング会合の概要参照。)

第21回全体会合・WG会合(2003年11月3~7日、オーストリア・ウィーン)

各WG会合のアウトライン、作業スケジュール、及び予算等が採択された。
2004年4月の執筆者選定に向けて各国から専門家(執筆候補者)の募集を開始。
第21回全体会合参加報告書 ページ1~6参照。)
WG IIIの第7回会合の議論の詳細な記録は以下を参照。
第7回WG III会合記録
各WGのアウトラインの和訳は以下のとおり:

GISPRI O WG I アウトライン
GISPRI O WG II アウトライン
GISPRI O WG III アウトライン
AR4で取り扱う横断的課題(7つ)と担当は以下のとおり:
横断的課題 主に担当するWG アンカー
リスクと不確実性 1 Manning(US)
Petit(フランス)
地域的視点 1 Giorgi(イタリア )
Carter(フィンランド)
2 Kundzewicz(ポーランド)
Mata(ベネズエラ)
主要な脆弱性(条約2条) 2 Schneider(US)
Anisimov(ロシア)
適応と緩和(統合的アプローチ) 3 Grubb (イギリス)
Huq(バングラデッシュ)
持続的発展(SD) 3 Srivastava(インド)
Heller(US)
技術 3 Edmonds(US)
Moreira(ブラジル)

第22回全体会合(2004年11月9~11日、インド・デリー)

AR4統合報告書の作成が決定され、形式や長さ、トピック、スケジュールなどについて検討された。
各WGより、2004年4月のビューロー会合でAR4の執筆者・査読者を選出し、2004年末から2005年初めにゼロ次ドラフトをTSUに提出する予定である旨、報告。
その他特別報告書の進捗状況の報告
  第22回全体会合参加報告書

なお、2005年4月にエチオピア・アディスアベバで開催された第23回全体会合ではAR4の進捗報告は議題になかった。
2005年9月の第24回全体会合(カナダ・モントリオール)では各WGから進捗状況について報告があった。

  第24回全体会合参加報告書



5.技術報告書

IPCC技術報告書(Technical Paper)は、気候変動枠組条約締約国が、特定の手段に関する国際的な科学的・技術的予測を必要としている場合、又はIPCCが必要と判断した場合に、過去のIPCC評価報告書と特別報告書に含まれている資料をベースにして作成されたものである。IPCCがこれまでに発行した技術報告書は次のとおりである。(原文はhttp://www.ipcc.ch/pub/techrep.htm、GISPRI仮和訳は[各種報告書ダウンロード]を参照)

・技術報告書1
気候変動緩和の技術、政策及び対策(1996年11月)
(Technologies, Policies and Measures for Mitigating Climate Change)

・技術報告書2
IPCC第二次評価報告書で使われた単純気候モデルの紹介(1997年2月)
(An Introduction to Simple Climate Models used in the IPCC Second Assessment
Report)

・技術報告書3
大気中温室効果ガスの安定化:物理的、生物的、社会経済的影響(1997年2月)
(Stabilization of Atmospheric Greenhouse Gases: Physical, Biological and
Socio-Economic Implications)

・技術報告書4
二酸化炭素排出制限案の影響(1997年10月)
(Implications of Proposed CO2 Emissions Limitations)

・技術報告書5
気候変動と生物多様性(2002年4月)
(Climate Change and Biodiversity)

なお、現在作成中の報告書は以下のとおり:

・気候変動と水 (2007年7-9月頃完成予定) → 現状
(Climate Change and Water)

その他、第21回全体会合では、AR4の成果物一式として各地域に関する技術報告書の作成が事務局より提案された。当事項について第22回全体会合の再協議の結果地域に関する報告書は作成されないこととなったが、その代わりに各WG報告書の中で地域の情報を索引として付けることを検討することとなった。


気候変動と水に関する技術報告書  
  (TPCCW: Technical Paper on Climate Change and Water)



1. 背景

GISPRI IPCC19(2002年4月、ジュネーブ)にて水と気候ダイアローグ等から水と気候に関する特別報告書の作成が依頼される。
GISPRI 気候変動と水に関する諮問会合(2002年11月11-12日、ジュネーブ)にて国際機関及び専門家と検討。①AR4が完成する頃には既に古くなってしまうことから2005か2006年の特別報告書完成はあまり意味がない、②AR4をベースにしたTPにした方が意味がある、③AR4では水に関してTARよりもより統合し扱いを拡大することとする、の3点に合意。
GISPRI IPCC20(2003年2月、パリ)にて特別報告書ではなくCCT(Cross Cutting Theme:横断的課題)としてAR4内で扱うこととパネルで決定。また、IPCC21でスコーピング・ペーパーが提出された。

2. 主旨

GISPRI 水関連の気候変動に対する自然効果と人為的影響のリンク及び適応・緩和オプションに関する理解を深める。特に政策決定者及び利害関係者に情報を提供し、シナジー効果とトレードオフ等についても理解してもらう。
GISPRI TPCCWには、主に適応計画の有無と水資源への影響に焦点を置き、水文学については特に指摘するべき新科学的結果のみハイライトする。
GISPRI AR4CCTでの議論をベースとするが、利用者の利便性を考えて一つの文書にまとめる。

3. 対象

水資源管理、気候変動、戦略的プランニング、社会経済発展に携わっている政策決定者、科学者団体等。


4. 執筆者

AR4の執筆者に大きく頼ることとなるが、IPCC手順に従ったLA選定プロセスを踏む。民間、NGOの関与も確保する。
特に水文学、水管理、気候学、気象学、生態学、農業、空間プランニング、経済学、社会学、保険といった分野の専門家が必要。


5. スケジュール

2005年7-9月 CLAとLAのリスト編纂。利害関係者等と協議開始
2006年4-6月 WGビューローによるLA選定
2006年7-9月 第1回LA会合→第1次案作成
2006年10-12月 専門家/政府レビュー
2007年1-3月 第2回LA会合→第2次案作成
2007年4-6月 最終政府レビュー
2007年7-9月 IPCCビューローと協議の上TPを完成
2008年初旬 出版

TPをAR4完成後すぐに出版するために2005年に協議を始めるが、執筆者の作業はAR4が承認されるまで開始しない。



6.特別報告書

IPCCでは具体的なテーマに関する特別報告書(Special Reports)も発行している。これら特別報告書は、1つまたは複数のWGのガイダンスの下で、評価報告書と同じ執筆・レヴュー手続きを経て発行される。1994年特別報告書に加えて、次の特別報告書が作成済み・作成中である。(原文があるものはIPCCのホームページ、GISPRI仮和訳は[各種報告書ダウンロード]を参照)

・1994年特別報告書

気候変動の放射強制とIPCC IS92排出シナリオの評価
(Radioactive Forcing of Climate Change and An Evaluation of the IPCC IS1992 Emissions Scenarios)
気候変動の影響と適応策の評価のための技術ガイドライン→絶版
(IPCC Technical Guidelines for Assessing Climate Change Impacts
and Adaptations with a Summary for Policy Makers and a Technical
Summary)
温室効果ガス目録のためのIPCCガイドライン→絶版(1996年改訂版ガイドラインに置き換え)
(IPCC Guidelines for National Greenhouse Gas Inventories)

・ 気候変動の地域影響:脆弱性の評価(1997年11月)
(Special Report on the Regional Impacts of Climate Change: An Assessment of Vulnerability)

・ 航空機と地球大気(1999年4月)
(Special Report on Aviation and the Global Atmosphere)

・ 技術移転の手法上及び技術上の課題(2000年5 月)
(Special Report on Methodological and Technological Issues in Technology Transfer)

・ 排出シナリオ(2000年5月)
(Special Report on Emissions Scenarios: SRES)

・ 土地利用、土地利用の変化及び林業(2000年5月)
(Special Report on Land Use, Land-Use Change, and Forestry)

なお、作成中の特別報告書は次のとおりであるが、第18回会合にて決定されたDecision 4により、ビューローメンバーによる特別報告書の優先順位を決定する枠組みと条件が全体会合にて承認されるまで新たな採択はしないこととなった。特別報告書の作成優先順位を決定する枠組みと条件については、20回会合で決定された。→IPCC-20参加報告書2)参照

・ 二酸化炭素回収・貯留技術

   (Special Report on Carbon Dioxide Capture and Storage)
WG III共同議長であるメッツ博士(蘭)によって紹介されたこのトピックは、もともと技術報告書として作成するようCOP7(2001年10~11月:モロッコ・マラケシュ)にて決定されていたが、IPCCは、この技術に関する過去の報告書が存在しないこと等から技術報告書にする意味がないと判断し、第19回会合で(2002年4月)地中・海洋両方における炭素の隔離・貯留・回収に関する特別報告書を作成することに合意した。同年11月カナダにてワークショップを開き、CO2回収技術や貯蔵オプション、コスト効率性、リスク管理等の点について協議し、スコーピング・ペーパー、スケジュール、詳細なアウトライン(目次案)についても検討された。その後、2003年初めに執筆者が選定され、4回の執筆者会合を経て同報告書は2005年秋に完成した。2005年9月の第24回全体会合で承認・受諾された。(詳細はIPCC-20、21、22、24の検討事項・参加報告書参照)

・ オゾン層保護と地球気候システム:HFCs・PFCsに関する課題

   (Special Report on Safeguarding the Ozone Layer and the Global Climate System: Issues Related to
Hydrofluorocarbons and Perfluorocarbons)
COP8(2002年10月:インド・デリー)及び第14回モントリオール議定書締約国会議での決定を受け、IPCC第20回全体会合(2003年2月:フランス・パリ)で同テーマの特別報告書作成が決定し、内容、スケジュール、予算、委任条項等に関するスコーピング・ペーパーが提出・採択された。IPCC側はWGI及びIII(Metz氏(オランダ)、Davidson氏(シエラ・レオーネ)両WG
III共同議長及びSolomon WG I共同議長の3名が中心となっている)、そしてモントリオール議定書の技術・経済評価パネル(Technology and Economic Assessment Panel)と合同で活動を進めていくことになった。第21回、第22回会合で進捗状況が報告された(IPCC-21検討事項ページ7IPCC-22参加報告書ページ12)。2005年4月の第23回全体会合で受諾された。



7.温室効果ガスインベントリープログラム

(National Greenhouse Gas Inventories Programme)

NGGIPは、温室効果ガス排出量等を算定する方法・実例等を評価・開発し、それらに関する情報を発信する役目を担う。同プログラムの下で、方法論に関する報告書(Methodology Reports)が作成され、温室効果ガス排出量の算定・報告のためのソフトウェアが開発される。
従来NGGIPはIPCCの第I作業部会とOECD (the
Organization for Economic Co-operation and
wwwelopment:経済協力開発機構 )、IEA(International

Energy Agency:国際エネルギー機関)の共同事業としてOECDが事務局となって運営していたが財政事情の悪化に伴い、IPCC議長より各国政府に対して同プログラム事務局の受け入れ打診がなされた。そこで日本(当時の環境庁)は、事務局として(財)地球環境戦略研究機関(IGES)に技術支援ユニット(Technical

Support Unit: TSU)を設置し、事務局運営に係る資金提供と、タスクフォース共同議長の受け入れを申し出、1998年10月第14回全体会合にて了承された。その後、日本は共同議長の一人として平石尹彦氏(IGES上級コンサルタント)を選出した。

NGGIPに関する詳しい情報・報告書等はNGGIPホームページを参照。

タスクフォースビュロー(TFB)・メンバー

NGGIPの報告書は以下の通り

1.2006年インベントリガイドライン
これまでに各国の温室効果ガス排出量の算定方法に関するガイドラインを3回発行してきた。1995年のIPCC
国別GHGインベントリガイドライン、1996年の改訂1996IPCC国別GHGインベントリガイドライン、そして2006年に完成した2006IPCC国別インベントリガイドラインである。2006ガイドラインの概要はこちら

2.LULUCFに関するタスク
現在まで土地利用(Land Use)、土地利用の変化(Land-use Change)、林業(Forestry)に関する3つのタスクを負っていた(それぞれの頭文字をとってLULUCF)。タスク1,2の報告書(Methodology Reports)は第21回全体会合で採択されたが、タスク3の検討は延期され、作業は終了となった。
詳細は以下のリンク参照。











  [タスク1] 土地利用、土地利用の変化及び林業に関するグッドプラクティスガイダンス

(Good Practice Guidance for Land Use, Land-use
Change and Forestry)









  [タスク2] 森林の土地劣化とその他植生の消失の定義と排出目録の方法論的オプションに関する報告書

(Definition and Methodological Options to
Inventory Emissions from Direct Human-induced

Degradation of Forests and wwwegetation of
Other Vegetation Options)










  [タスク3] GHG排出源および吸収源における直接的人為的影響を間接的人為的影響ないし自然効果から識別する方法に関する報告書案

(Factoring Out Direct Human Induced-Changes
in Carbon Stocks)



8.その他

(1)温暖化の影響と気候の分析にかかわるデータ及びシナリオに関するタスクグループ
(Task Group on Data and Scenario Support for Impacts and Climate Analysis: TGICA)

同タスクグループはシュミレーションモデル、温暖化影響評価、排出シナリオの専門家で構成される。またIPCCデータセンター(IPCC
Data Distribution Centre: DDC)を設置し、最新情報とデータを提供している。

(2)ワークショップと専門家会合

ワークショップと専門家会合はIPCC、IPCCワーキンググループおよびTFIが作業やタスクを進めていく上で必要だと判断した場合開かれる。またIPCC発行のある特定の報告書について詳しく議論するとき、パネルに特別報告書をあるテーマにおいて発行すべきか等の勧告する際にも開催される。

これら会合の議事録は各種報告書と異なり、正式なレビュープロセスを経ずにIPCCにて補助資料として発行される。過去のワークショップ・会合の議事録(英語)はこちら

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