1995年1号

IPCC第10回総会(ナイロビ)に参加して

去る11月10日から12日までナイロビのUNEP本部においてIPCC第10回総会が開催された。今次総会は、来年3月に気候変動枠組み条約に関する第1回締約国会議が開催されるに際し、IPCCからは現在取りまとめ中の第2次報告書の中からその中間段階におけるトピックス(特別 報告)として各WG(3グループ)より4件の報告書を提出することになっており、その4件の採択と1995年12月(第2次報告書の完了時期)以降のIPCCの活動についてその資金的裏付けを含めて意見を出し合うこと(決定は1995年12月に開催予定の次回総会にて行われる)が主な議事であった。

 総会では、(1)前総会議事録の採択、(2)第1回締約国会議への特別 報告の採択、(3)1994年11月迄の財政報告、(4)1995年12月迄の予算案等が型通 り承認され、「IPCCの将来」については議長提案(引き続きIPCCの独立性を保持しつつ5年毎に科学的知見の集約・評価・提供を図っていく。)に関する基本的な合意が確認された。

 今総会のトピックスとしては、温室効果 ガス対策の実施・進行を世界レベルで遅延させるという産油諸国の戦略的な対応が、より明らかになったことが挙げられる。INC10(1994年8月)においてサウジアラビアを中心とする産油諸国の対応戦略が初めて表面 化したが、この動きは科学・技術的知見のみを扱うとされていたIPCCの場でも露になった。今総会を前にしたあるWGの会合(1994年9月末)において、サウジアラビアはIPCCレポート自体の存在意義を無くすような文章を追加せよとの主張を繰り返し、最終的には今総会直前(11月7日・9日にナイロビにて急遽開催された)のWG再開会合において同主張と相殺する形で「温室効果 ガス排出シナリオがレポートの目的に対して適正である」と謳ったパラグラフの削除に成功した。この経緯からも、地球温暖化問題の難しさを痛感させられた。

 

▲先頭へ