1995年2号

地球環境問題懇談会から -廃棄物・リサイクルの最近の動向-

 平成6年11月28日、交友会館にて第18回地球環境問題懇談会が開催された。その中で「リサイクルをめぐる最近の動向」について、信谷和重氏(通 商産業省環境立地局再資源課対策室課長補佐)に講演していただいた概略をこの紙面 にて報告する。

 今回私の方からお話する内容の中心は、昨年7月に公表しました産業構造審議会の意見具申であります。その中でリサイクル問題に対する通 産省の今後の方向といったものを示しています。ポイントは、この問題に対する役割分担の明確化であります。これについては従来から、産業界、消費者、地方自治体の間でお互いの役割分担をめぐって議論があるところであります。リサイクルに関して登場するプレーヤーは上記の3者ですが、まず消費者はゴミを出す人であり、ここで求める役割は、廃棄物を分けて出してください、分別 排出してくださいということです。2番目に、地方公共団体に対しては分別 回収をしてくださいということを求めています。最後に、事業者の役割といて、市町村が分別 回収したものをできるだけ使いましょうというシステムを提言しています。

 このようなシステムを提言する背景には、一般 廃棄物の増加により市町村の持つ最終処分場の残余容量がどんどん下がってきているという状況があります。ちなみに、ゴミの総発生量 は、市町村が集めている5,077万tに、古紙回収業者あるいはアルミ缶の集団回収を加えた6,721万tが家庭から出るゴミです。そのうち、1,813万tがリサイクルされている。(主に紙で1,500万t程度、残りがアルミ缶 、スチール缶、瓶)そして3,270万tが市町村で焼却等により減量化され、残りの1,638万tが埋め立てられる量 となります。そしてこの埋め立て余地というものが、長いトレンドでみるとどんどん下がってきておりこのままでは7~8年で満杯になってしまいます。

 また海外の動きを見ますと、ドイツ、フランス等でこの問題に関する新しい制度が動き始めており、日本でも何かできないかというのが、最近の動きの一番根本にあるものだと思います。

 私どもが提案したシステムでは、回収は地方公共団体であります。ドイツとは違ってフランスのように地方公共団体がゴミを取りにいく。そのための費用負担はゴミを出す人が負担する。ここはフランスとも違うところです。集めるところの実行も、その費用も市町村に持ってもらい、事業者の役割としてはそれをいかに使うかということになります。この再生資源を利用する段階にも非常にコストはかかります。この部分を事業者の方で負担したらどうかというのが私どもの提言であります。

 上記以外の産業構造審議会の報告書のポイントを簡単に説明しますと、主要な点は2点あります。一つはサーマル・リサイクルの位 置づけです。これは、廃棄物の焼却熱をエネルギーとして利用するリサイクルで、具体例でいうと、ゴミ処理場にある温水プールとか福祉施設への熱供給といったものです。これについては、リサイクルをいくら徹底してもそれができないゴミ(生ゴミ、プラスチツクフィルム、汚れた紙等)もあるわけで、こういったものを分別 して事業者に引き取らせるよりは、市町村で燃やしその熱を回収するサーマル・リサイクルにしたらどうかということを提案しています。

 特にサーマル・リサイクルを推進するに際しては、市町村サイドからもいろいろな要望が出ています。まず技術開発をしてほしい。設置者として発電とか熱の利用に詳しくないので、支援をしてほしい。また、規制緩和の要望もあります。この点については、通 産省のなかで現在検討中です。

 もう一つはケミカル・リサイクルの話です。これは最近非常に注目を浴びているシステムです。この対象はプラスチツクです。この素材は、非常に便利な反面 、なかなか処理が厄介で、市町村レベルでは悪者扱いされています。燃やすのが一番簡単なのですが、プラスチツクを燃やすと何が出るか分からないといった反対によって燃やせないところがあったり、缶 や紙のようにリサイクルが容易ではない場合には、このシステムが最後の手段として注目されているわけです。

 このシステムは、プラスチツクを化学反応によってモノマーやナフサに転換して、再び原料や燃料にして使うシステムで、幾つかの民間企業によってこの技術は実用化されつつあります。これが可能になると、仮に市町村がプラスチツクを分別 しても全部油にできるわけですから、この点で非常に注目されている技術で、厚生省も最近、盛んに研究会でこれを検討しております。

 次は、事前評価ガイドラインです。これは、今、家電や自動車の分野で事前評価(例えば、再利用のため分別 しやすいようにする、またはリサイクルしやすいものにするといった配慮を事前に製品に組み込むこと)をすることをリサイクル法で義務づけていますが、これをできるだけほかの製品にも広げたいということで、この中でガイドラインを提示させていただきました。

 

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