1997年2号

《新委員会紹介》 「環境保全目的の貿易措置と途上国における 環境保全に関する調査」研究委員会

 弊所では新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)より受託し、「環境保全目的の貿易措置と途上国における環境保全に関する調査」研究委員会を発足させたので、以下に概要を紹介する。

1. 研究の背景と目的

 地球温暖化をはじめとする地球環境問題の解決は、人類が直面 している重要課題となっており、国連の気候変動枠組条約締約国会議(COP)において、2000年以降の温室効果 ガスの目標値の設定等について議論されているところである。

 共同実施は、地球温暖化防止のために、複数の国が共同して温室効果 ガスの抑制、吸収、固定化を行うとともに、その成果を当該複数国で配分しカウントする手法であり,COP1においてボランタリーベースでの「共同実施活動」を実施することを決定した。我が国においては、「共同実施活動ジャパン・プログラム」を創設し、共同実施活動プロジェクトの推進体制を整備したところである。

 温暖化等の地球環境問題への対応を考えると、今後の高い経済成長が予想される発展途上国における環境問題への対応が極めて重要であろう。途上国においては、環境保全への対応を図りつつ、経済成長を目指すバランスのとれた政策が求められており、そのためには、先進国から途上国への技術・資金・ノウハウ等の移転とともに、貿易による環境技術の移転が重要な要素となっている。

 一方、環境保全と貿易措置に関する問題は、WTO、OECD等における重要なテーマであり、今後の社会経済システムのあり方を考える上でも重要な要素となっている。

 そこで今回、共同実施推進の基礎調査として、環境保全と調和した国際貿易制度の構築に向けての方策を検討することを目的として、多国間環境条約の貿易制限措置と自由貿易との関係、産業界・民間NGOの環境保全活動が貿易に与える影響を調査するとともに、発展途上国における環境保全への取り組み、途上国への技術移転と貿易措置との関係等について調査研究を行う。

2. 研究内容

(1) 多国間環境条約と貿易制限措置と自由貿易原則との関係

・規制目的と手段
・手続きの透明性
・貿易措置以外の代替手段
・環境条約の効果的な実施の確保

(2) 国際環境条約の遵守・履行確保措置

・通報、モニタリング等の諸手法とその課題
・GEF機能の分析
・法的拘束力の分析

(3) 産業界・民間NGOの環境保全活動が貿易に与える影響

(4) 発展途上国における貿易措置と環境技術移転のあり方

・環境保全に関する途上国の取り組み
・先進国から途上国への技術・資金・ノウハウ等の移転促進
・共同実施活動
・環境技術移転を目的とした政府間援助とその効果
・貿易措置に基づく環境技術移転のあり方

(5) 環境保全と調和した活力ある国際貿易制度の構築に向けての方策

3. 研究委員会メンバー(五十音順、敬称略)

委員長 森嶌 昭夫  上智大学法学部教授
委 員  磯崎 博司  岩手大学人文社会科学部助教授
       岩渕  勲   新日本製鐵 環境管理部長
       大塚  直   学習院大学法学部教授
       加藤 久和  名古屋大学法学部教授
       加藤 峰夫  横浜国立大学経済学部助教授
       唐澤 健一  東京電力 環境部副部長
       小林  料   東京電力 顧問
       佐橋 陽介  新日本製鐵 環境管理部地球環境対策グループ長
       道垣内正人   東京大学大学院法学政治学研究科教授
       諸戸 孝明  伊藤忠商事 社会関連管理部長
       山口 光恒  慶應義塾大学経済学部教授

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